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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1225567
審判番号 不服2008-18946  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2010-10-21 
事件の表示 特願2003-384178「画像形成装置、印刷ジョブ送信装置、データ管理装置、プログラム、記録媒体および印刷用紙の供給方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-144815〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年11月13日の出願であって、平成19年4月24日付けで通知された拒絶理由に対し、同年7月9日に手続補正書が提出されたが、平成20年6月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月24日付けで審判請求がされるとともに、同年8月4日付けで手続補正書が提出され、その後、当審から送付した審尋に対し、平成22年3月8日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成20年8月4日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成20年8月4日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正事項
平成20年8月4日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の平成19年7月9日付け手続補正書により補正された、

「【請求項1】
ネットワークとのインタフェースである送受信部と、印刷の条件を指定する印刷条件を含んでいる、上記送受信部に入力される印刷ジョブに応じてトレイ選択信号を生成する制御部と、用紙を格納するための複数の用紙トレイを有し、上記制御部より送信される上記トレイ選択信号に応じて選択した上記用紙トレイの一つから、印刷するための用紙を供給する給紙トレイ部とを備えた画像形成装置において、
上記送受信部から上記ネットワークを介して接続されるデータ管理装置には、印刷条件に応じた用紙種類の優先順位を示す順位テーブルを複数集めた登録テーブルを複数含んだ設定情報が記憶されており、上記登録テーブルは、画像形成装置ごとに設けられており、
上記印刷ジョブから上記印刷条件を抽出するとともに、上記データ管理装置にアクセスして、上記設定情報から、抽出した上記印刷条件に応じた上記順位テーブルを取得する動作制御部と、
上記動作制御部より送信される上記順位テーブルに基づいて、用紙トレイを選択するための上記トレイ選択信号を生成するトレイ選択部とを、上記制御部が有しており、
上記送受信部は、予め、上記印刷ジョブの送信元である印刷ジョブ送信装置から当該画像形成装置についての上記登録テーブルを受信するようになっており、
上記データ管理装置は、当該画像形成装置および上記印刷ジョブ送信装置から上記登録テーブルを取得し、上記登録テーブルを複数集めて上記設定情報として記憶していることを特徴とする画像形成装置。」

から、

「【請求項1】
ネットワークとのインタフェースである送受信部と、印刷の条件を指定する印刷条件を含んでいる、上記送受信部に入力される印刷ジョブに応じてトレイ選択信号を生成する制御部と、用紙を格納するための複数の用紙トレイを有し、上記制御部より送信される上記トレイ選択信号に応じて選択した上記用紙トレイの一つから、印刷するための用紙を供給する給紙トレイ部とを備えた画像形成装置において、
上記送受信部から上記ネットワークを介して接続されるデータ管理装置には、印刷条件に応じた用紙種類の優先順位を示す順位テーブルを複数集めた登録テーブルを複数含んだ設定情報が記憶されており、上記登録テーブルは、画像形成装置ごとに設けられており、
上記印刷ジョブから上記印刷条件を抽出するとともに、上記データ管理装置にアクセスして、上記設定情報から、抽出した上記印刷条件に応じた上記順位テーブルを取得する動作制御部と、
上記動作制御部より送信される上記順位テーブルに基づいて、用紙トレイを選択するための上記トレイ選択信号を生成するトレイ選択部とを、上記制御部が有しており、
上記送受信部は、予め、上記印刷ジョブの送信元である印刷ジョブ送信装置から当該画像形成装置についての上記登録テーブルを受信するようになっており、
上記データ管理装置は、当該画像形成装置および上記印刷ジョブ送信装置から上記登録テーブルを取得し、上記登録テーブルを複数集めて上記設定情報として記憶しており、
上記印刷条件は、上記印刷ジョブ送信装置の装置情報であることを特徴とする画像形成装置。」

に補正された。また、請求項8,10,15についても、同様の補正がされた。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するための事項である「印刷条件」に対して、「印刷ジョブ送信装置の装置情報である」という限定を付加したものである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用刊行物

(2-1)引用刊行物
本願の出願前に頒布された特開2003-125156号公報(原査定の拒絶理由における引用文献1、以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(1a)「【0016】図2は、図1に示すファクシミリ装置の制御系を示す図である。同図において、201はCPUであり、本装置全体の動作を制御する。202はシステムバスであり、各種データの授受や制御命令の授受等を行う。203はROMであり、CPU201を制御するためのプログラムが格納されている。204はSRAMであり、発信元情報やユーザ登録情報等を記憶するためのメモリである。206はモデムであり、画像信号を音声帯域の信号に変復調するものである。207は網制御ユニット(NCU)であり、電話回線208と本装置との接続を制御するものである。209はスピーカ駆動回路であり、モデム206、システムゲートアレイ211、NCU207を選択し、スピーカ210より音声を出力するものである。
(中略)
【0021】224は記録紙を副走査方向に搬送するためのLFモータ、225はLFモータ224を駆動するためのLFモータドライバである。226はプリントヘッドを装着したキャリッジを駆動するためのCRモータ、227はCRモータ226を駆動するためのCRモータドライバである。228は不図示のホストPCとの接続を行い、プリンタ機能を実現するためのホストi/fである。」

(1b)「【0036】図4は、記録印字時に給紙される記録紙の選択例を示す図である。尚、記録紙サイズは、「A4」サイズ固定となっており、指定項目はないが、複数サイズの記録紙をサポートする場合は記録紙サイズの情報も併せて記録紙の選択を行う。また、図中の指定情報はユーザが設定可能で、設定例は固定的なものではない。ユーザはオペレーションパネル218からキー入力により、指定情報を入力し、入力されたデータはSRAM204に格納される。
【0037】図4に示すように、2つのカセットA,Bと手差しトレーについて個別に記録紙の種別指定と、各モードに対して給紙選択するカセットの指定を行えるように構成されている。図中の数字は、各印字モードにおける給紙選択を複数行う際に付けられる優先順位であり、数字が大きいほど優先順位は低くなることを示す。また、複数の指定がなされているモードでは、印字出力時に優先順位の高い記録紙を使用して記録を行い、最優先の記録紙がない場合は、順次優先順位の低い記録紙を選択して印字出力を行う。尚、×印は対応する印字モードでは給紙を禁止することを示している。」

(1c)「【0055】次に、図4に示すように、記録印字時に給紙される記録紙の選択設定が行われている場合に、ホストPCからのプリント指示によりプリントする動作について説明する。
【0056】図7は、PCプリント時の給紙選択処理を示すフローチャートである。まず、ステップS701において、ホストPCからの印字指示があると、CPU201はカラー印字が指示されたか否かを判断する。ここで、カラー印字が指示されている場合はステップS702へ進み、CPU201はプリントヘッド216がキャリッジに装着されているか、カラープリントヘッドか否かをプリントヘッドセンサ217の出力により判断する。ここで、カラープリントヘッドがキャリッジに装着されていない場合はステップS617へ進み、例えば「カラープリントヘッドをセットして下さい」というプリントヘッド216のセットを促すメッセージをオペレーションパネル218上のLCDに表示し、スピーカ210によって同メッセージを音声で出力して処理を終了する。
【0057】また、ステップS702において、カラープリントヘッドがキャリッジに装着されている場合はステップS703へ進み、CPU201は指定モードがカラー高品位モードか否かを判断する。ここで、高品位モードであれば、図4に示したモード記録紙対応に基づき、カラープリント高品位モード時の第一優先の記録紙(カセットA)があるか否かを記録紙検出センサ221の出力によって判断する。ここで、カセットAに記録紙があった場合はステップS705へ進み、カセットAを選択し、記録紙選択処理を終了し、プリント動作を開始する。また、ステップS704において、記録紙がセットされていない場合、第2優先の記録紙の指定はないのでステップS714へ進み、CPU201は、例えば「記録紙をセットして下さい」という記録紙のセットを促すメッセージをオペレーションパネル218上のLCDに表示し、スピーカ210によって同メッセージを音声で出力して処理を終了する。
【0058】また、ステップS703において、指定モードがカラー高品位モードではなく、カラー標準モードの場合はステップS707へ進み、図4に示したモード記録紙対応に基づき、カラー標準モード時の第一優先の記録紙(カセットB)があるか否かを記録紙検出センサ221の出力によって判断する。ここで、カセットBに記録紙があった場合はステップS708へ進み、カセットBを選択し、記録紙選択処理を終了し、プリント動作を開始する。また、ステップS707において、カセットBに記録紙がなかった場合はステップS714へ進み、CPU201は、例えば「記録紙をセットして下さい」という記録紙のセットを促すメッセージをオペレーションパネル218上のLCDに表示し、スピーカ210によって同メッセージを音声で出力して処理を終了する。
【0059】一方、上述のステップS701において、モノクロプリントが指定された場合はステップS709へ進み、CPU201はプリントヘッド216がキャリッジに装着されているか否かを判断する。ここで、プリントヘッド216がキャリッジに装着されていない場合はステップS715へ進み、例えば「プリントヘッドをセットして下さい」というプリントヘッド216のセットを促すメッセージをオペレーションパネル25上のLCDに表示し、スピーカ210によって同メッセージを音声で出力して処理を終了する。
【0060】また、ステップS709において、プリントヘッド216が装着されている場合はステップS710へ進み、CPU201は図4に示したモード記録紙対応に基づき、モノクロプリント時の第一優先の記録紙(カセットB)があるか否かを記録紙検出センサ221の出力によって判断する。ここで、カセットBに記録紙があった場合はステップS711へ進み、カセットBを選択し、記録紙選択処理を終了し、プリント動作を開始する。また、ステップS710において、カセットBに記録紙がセットされていない場合はステップS712へ進み、第2優先の手差しトレーに記録紙があるかを判断する。ここで、手差しトレーに記録紙があった場合はステップS713へ進み、手差しトレーを選択し、記録紙選択処理を終了し、プリント動作を開始する。また、手差しトレーに記録紙がなかった場合はステップS714へ進み、CPU201は、例えば「記録紙をセットして下さい」という記録紙のセットを促すメッセージをオペレーションパネル218上のLCDに表示し、スピーカ210によって同メッセージを音声で出力して処理を終了する。」

(1d)図4は以下のとおりのものである。

【図4】


(1e)図7は以下のとおりのものである。

【図7】


これらの記載から、引用刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ホストPCとの接続を行うためのホストi/fと、該ホストi/fに入力されるホストPCからの印字指示と、カラー高品位モード、カラー標準モード、モノクロプリントモードの指示に応じてカセットを選択する信号を生成するCPUと、記録紙を供給する複数のカセットを備えて、指示されたモードに応じて選択した上記複数のカセットから一つを選択する画像形成装置において、
モードに応じた用紙種類の優先順位を示すモード記録紙対応に基づいて、カセットを選択する信号を生成する部分を上記CPUが有している画像形成装置。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の
「ホストi/f」、
「ホストPC」、
「印字指示」、
「カセット」、
「カセットを選択する信号」、
「CPU」、
「記録紙」

は、それぞれ、本願補正発明の

「送受信部」、
「印刷ジョブ送信装置」、
「印刷ジョブ」、
「用紙トレイ」、
「トレイ選択信号」、
「制御部」、
「印刷するための用紙」

に相当する。

また、引用発明における「カラー高品位モード」「カラー標準モード」「モノクロプリントモード」は、いずれも印刷の条件を指定するものであることは明らかであるから、これらは、本願補正発明の「印刷条件」に相当する。さらに、引用刊行物には特段の名称はないが、引用発明における複数のカセットが備えられている部分が、本願補正発明の「給紙トレイ部」に相当する。
また、引用刊行物の図4を参照すると、モードと記録紙の対応はテーブル状となっていること、及び、画像モードと記録紙との複数の対応が1つのテーブルを構成していることが把握できるから、引用発明の「モードに応じた用紙種類の優先順位を示すモード記録紙対応」は、本願補正発明の「印刷条件に応じた用紙種類の優先順位を示す順位テーブル」、及び、「順位テーブルを複数集めた登録テーブル」に相当し、両者は、格納されている場所は異なるものの、「用紙種類の優先順位を示すためのテーブル」という点で共通している。
さらに、引用刊行物には、本願補正発明の「トレイ選択部」に相当する部分についての明記はないが、CPUにおいてトレイの選択のための信号を生成している以上、CPU内で信号を生成している部分が、本願補正発明の「トレイ選択部」に相当するといえる。

してみると、両者は、
「送受信部と、印刷の条件を指定する印刷条件と、送受信部に入力される印刷ジョブに応じてトレイ選択信号を生成する制御部と、用紙を格納するための複数の用紙トレイを有し、上記制御部より送信される上記トレイ選択信号に応じて選択した上記用紙トレイの一つから、印刷するための用紙を供給する給紙トレイ部とを備えた画像形成装置において、
いずれかの場所に用紙種類の優先順位を示すためのテーブルを有し、
用紙種類の優先順位を示すためのテーブルに基づいて、用紙トレイを選択するためのトレイ選択信号を生成するトレイ選択部を、上記制御部が有している画像形成装置。」
の点で一致し、

以下の点で相違する。

・相違点1
本願補正発明では、画像形成装置がネットワークに接続されていて、送受信部がネットワークとのインターフェースの機能を有しており、該ネットワークを介してデータ管理装置及び印刷ジョブ送信装置と接続されているのに対し、引用発明では、画像形成装置は、送受信部に相当するホストi/fを介して、印刷ジョブ送信装置に相当するホストPCと接続されているものの、ネットワークとは接続されておらず、データ管理装置とも接続されていない点。

・相違点2
用紙種類の優先順位を示すためのテーブルについて、本願補正発明では、データ管理装置が、当該画像形成装置および上記印刷ジョブ送信装置から順位テーブルを複数集めた登録テーブルを取得し、上記登録テーブルを複数集めて上記設定情報として記憶して、登録テーブルは画像形成装置ごとに設けられているのに対し、引用発明では、そのような構成となっていない点。

・相違点3
同じく用紙種類の優先順位を示すためのテーブルについて、本願補正発明では、画像形成装置の動作制御部がデータ管理装置にアクセスして、設定情報から、印刷条件に応じた上記順位テーブルを取得しているのに対し、引用発明では、用紙種類の優先順位を示すためのテーブルを画像形成装置内に有している点。

・相違点4
本願補正発明では、送受信部は、予め、上記印刷ジョブの送信元である印刷ジョブ送信装置から当該画像形成装置についての上記登録テーブルを受信するようになっているのに対し、引用発明では、用紙種類の優先順位を示すためのテーブルを予め画像形成装置内に有している点。

・相違点5
本願補正発明では、印刷の条件を指定する印刷条件を、印刷ジョブが含んでいるのに対し、引用発明では、モードの指定のための信号が、印刷ジョブに含まれているのかどうか不明である点。

・相違点6
本願補正発明では、印刷条件として印刷ジョブ送信装置の装置情報が含まれているのに対し、引用発明では、印刷条件は、カラー高品位モード、カラー標準モード、モノクロプリントモードの指示にすぎず、印刷ジョブ送信装置の装置情報は含まれていない点。

上記相違点について検討する。

・相違点1について
画像形成装置をネットワークに接続して、ネットワークを介してデータ管理装置であるサーバや、印刷ジョブ送信装置であるホストと接続して用いることは周知(必要であれば、特開2003-32487号公報、特開2003-216384号公報等参照)であり、引用発明の画像形成装置に、上記周知技術を適用して、ネットワークに接続して、ネットワークを介してデータ管理装置や印刷ジョブ送信装置と接続して用いるようにすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。

・相違点2について
本願補正発明では、画像形成装置に設けられている送受信部からネットワークを介してデータ管理装置と接続されていることを考慮すると、「画像形成装置」と「データ管理装置」は別の装置であることが理解できる。
これを踏まえると、上記相違点2は、いずれも「データ管理装置」に関する構成であって、「画像形成装置」の発明である本願補正発明の構成に影響を及ぼすものではないから、「画像形成装置」の発明として、本願補正発明と引用発明を対比した際の、実質的な相違点となるものではない。

・相違点3及び4について
相違点1について検討したとおり、画像形成装置をネットワークに接続して、ネットワークを介してデータ管理装置であるサーバや、印刷ジョブ送信装置であるホストと接続して用いることは周知であり、引用発明における画像形成装置を、そのように接続して用いることは適宜なし得ることである。また、そのように接続した場合には、ネットワークを介して、画像形成装置、データ管理装置、印刷ジョブ送信装置は相互に接続されているのであるから、三者間でのデータのやりとりは、適宜行えるものと考えられる。
また、ネットワークを介して接続された他の装置から入力された設定を、画像形成装置が取得するように構成する技術は周知(必要であれば、原審の拒絶査定において周知例として通知した特開平11-249846号公報、特開平7-141134号公報等参照)である。
さらに、複数のテーブルを集めて1つのテーブルとして記憶及び利用することも、適宜行えることである。
以上のことを考慮すると、画像形成装置内に用紙種類の優先順位を示すためのテーブルを有している引用発明の画像形成装置を、複数台ネットワークに接続して、ネットワークを介してサーバやホストと接続して用いた際に、印刷ジョブ送信装置であるホストから、予め順位テーブルを複数集めた登録テーブルを受信し、その後データ管理装置が、各画像形成装置から登録テーブルを集めて、さらに別途テーブルを作成し、各画像形成装置が再度データ管理装置にアクセスして、順位テーブルを取得するようにすることは、適宜なし得ることにすぎない。

・相違点5について
印刷ジョブに、カラーやモノクロといった印字モードの指定を含ませて送信することは周知(必要であれば、原審の拒絶の理由で引用した、特開2003-271367号公報、特開2002-67446号公報等参照)であり、モードの指定のための信号が、印刷ジョブに含まれているのかどうか不明である引用発明において、印刷ジョブにモードの指定のための信号を含ませて送信するようにして、本願補正発明のような構成とすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。

・相違点6について
印刷用紙を格納している複数の用紙トレイを有する画像形成装置において、印刷ジョブ送信装置であるホストの違いに応じて、用紙トレイの選択を変更するようにすることは周知(必要であれば、特開2001-191618号公報の段落【0002】,【0011】?【0017】、特開2001-80176号公報の請求項1及び2等参照)であり、引用発明における用紙トレイの選択にあたって、モノクロ、カラーといった印字モードの指定に加えて、印刷ジョブ送信装置であるホストの違いも考慮して選択を行うようにすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。

・効果について
効果の点についても、本願補正発明の効果は、引用発明及び周知技術から予測し得る程度のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明
平成20年8月4日付けの手続補正は上述のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の平成19年7月9日付け手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ネットワークとのインタフェースである送受信部と、印刷の条件を指定する印刷条件を含んでいる、上記送受信部に入力される印刷ジョブに応じてトレイ選択信号を生成する制御部と、用紙を格納するための複数の用紙トレイを有し、上記制御部より送信される上記トレイ選択信号に応じて選択した上記用紙トレイの一つから、印刷するための用紙を供給する給紙トレイ部とを備えた画像形成装置において、
上記送受信部から上記ネットワークを介して接続されるデータ管理装置には、印刷条件に応じた用紙種類の優先順位を示す順位テーブルを複数集めた登録テーブルを複数含んだ設定情報が記憶されており、上記登録テーブルは、画像形成装置ごとに設けられており、
上記印刷ジョブから上記印刷条件を抽出するとともに、上記データ管理装置にアクセスして、上記設定情報から、抽出した上記印刷条件に応じた上記順位テーブルを取得する動作制御部と、
上記動作制御部より送信される上記順位テーブルに基づいて、用紙トレイを選択するための上記トレイ選択信号を生成するトレイ選択部とを、上記制御部が有しており、
上記送受信部は、予め、上記印刷ジョブの送信元である印刷ジョブ送信装置から当該画像形成装置についての上記登録テーブルを受信するようになっており、
上記データ管理装置は、当該画像形成装置および上記印刷ジョブ送信装置から上記登録テーブルを取得し、上記登録テーブルを複数集めて上記設定情報として記憶していることを特徴とする画像形成装置。」

(2)引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶理由における引用刊行物の記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するための事項である「印刷条件」に対して付加されていた「印刷ジョブ送信装置の装置情報である」という限定を省いたものである。
してみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-10 
結審通知日 2010-08-17 
審決日 2010-09-06 
出願番号 特願2003-384178(P2003-384178)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康司  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 柏崎 康司
一宮 誠
発明の名称 画像形成装置、印刷ジョブ送信装置、データ管理装置、プログラム、記録媒体および印刷用紙の供給方法  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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