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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E02F
管理番号 1225576
審判番号 不服2008-30983  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-08 
確定日 2010-10-21 
事件の表示 特願2002-264637「廃棄土砂の処理と、土砂、砂、砂利運搬のシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004-100306〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成14年9月10日の出願であって、平成20年11月5日付けで拒絶査定がなされ、同年12月8日付けで拒絶査定に対する審判の請求がなされ、同日付けで手続補正書が提出されたものである。
これに対し、当審において、平成22年4月26日付けで拒絶理由通知がなされたところ、平成22年5月25日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

2 本願発明
本願発明は、上記平成22年5月25日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】 工事現場と、採砂地との中間に処理工場を設け、この処理工場で前記工事現場において発生した廃棄土砂を再利用できるように処理するために、前記処理工場には、廃棄土砂の有害物の無害化処理、pH調整、固液分離処理、分級処理よりなる廃棄土砂の処理手段と排水処理手段を有し、前記処理手段で処理して得た土砂を前記採砂地の埋戻し用、土地改良用、又は土地造成用に用いることができるようにし、前記工事現場から処理工場へ廃棄土砂及び排水を運搬する車輌と、処理工場から工事現場又は生コン工場に砂、砂利及び処理水を運搬する車輌とを共用すると共に、採砂地と処理工場間の砂利を運ぶ車輌又は船舶と、処理工場と採砂地の埋戻し用、土地改良用又は土地造成用に処理土砂を運ぶ車輌又は船舶とを共用することを特徴とした廃棄土砂の処理と、土砂、砂、砂利運搬のシステム。」(以下、「本願発明」という。)

3 刊行物の記載内容
刊行物1:特開平9-66244号公報
刊行物2:特開平5-192695号公報
刊行物3:特開2001-225053号公報
刊行物4:特開平8-71335号公報

当審における拒絶理由で引用し、本願出願前に頒布された刊行物1には、次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 土木工事現場から掘り出されたコンクリートガラや石を含む残土を、土砂及び所定の塊寸法以下の再生用コンクリートガラ等と、所定の塊寸法以上の廃棄用コンクリートガラ等とにふるい分けると共に、ふるい分けた廃棄用コンクリートガラ等を粉砕して再びふるい分けながら、土砂に所定の比率で再生用コンクリートガラ等を混合して、埋め戻し土や盛り土に再生することを特徴とする残土のリサイクル方法。」
(1b)「【0014】
【発明の実施の形態】・・・図1は、第1実施形態の設備であり、土木工事現場から掘り出されたコンクリートガラや石を含む残土5をトラック3で搬送し、郊外の仮置き場6に搬入して、この仮置き場6においてリサイクルする小規模な設備である。
【0015】トラック3で搬入した残土5は、ステップS1で、仮置き場6の第1置き位置6Aに仮置きする。」
(1c)「【0017】ステップS2(図6のフローチャートも参照)で、仮置きされた残土5をパワーショベル8の網バケット7Aですくい上げ、必要に応じて振動させると、土砂及び所定の塊寸法(例えば0?7立方cm)以下の再生用コンクリートガラや石11がふるい穴7bを通過し、第2置き位置6Bに落下して仮置きされると共に、所定の塊寸法(例えば7立方cm)以上の廃棄用コンクリートガラ等12が網バケット7A内に残って、残土5が土砂及び再生用コンクリートガラ等11と、廃棄用コンクリートガラ等12とに自然にふるい分けられる。
【0018】
ステップS3で、パワーショベル8の網バケット7A内に残った廃棄用コンクリートガラ等12を第3置き位置6Cに仮置きし、仮置きされた廃棄用コンクリートガラ等12をパワーショベル10のクラッシャー9により、再生用コンクリートガラ等11の塊寸法となるように粉砕する。
【0019】
そして、ステップS4で、粉砕された廃棄用コンクリートガラ等12をパワーショベル8の網バケット7Aですくい上げると、すくい上げた廃棄用コンクリートガラ等12の内、再生用コンクリートガラ等11の塊寸法に粉砕されたものがふるい穴7bを通過し、第2置き位置6Bで、先に仮置きされた土砂及び再生用コンクリートガラ等11の上に落下して仮置きされるようになる。
【0020】
以下、ステップS3とステップS4とを繰り返して、廃棄用コンクリートガラ等12が網バケット7Aで完全にふるい分けされなくなるまで、つまり、全ての廃棄用コンクリートガラ等12が再生用コンクリートガラ等11になるまで、粉砕とふるい分けを繰り返す。・・・」
(1d)「【0021】ステップS6で、第2置き位置6Bの土砂及び再生用コンクリートガラ等11は、残土5を搬入してきたトラック3、あるいは別のトラック3で搬送して土木工事現場に搬入し、埋め戻し土や盛り土として使用する。
【0022】上記にようにして、全ての残土5は、地盤の締まりが良い埋め戻し土や盛り土として再生されて、有効にリサイクルできるようになる。・・・」

記載事項(1d)において、「第2置き位置6Bの土砂及び再生用コンクリートガラ等11は、残土5を搬入してきたトラック3で搬送して土木工事現場に搬入し、埋め戻し土や盛り土として使用する」とは、「工事現場から仮置き場6への残土5の運搬に使用するトラック3と、仮置き場6における処理を経た処理土を埋め戻し土や盛り土として使用するために運搬するトラック3とを共用する」ものといえるから、これらの記載によれば、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「土木工事現場とは別に、郊外に仮置き場6を設け、土木工事現場から掘り出されたコンクリートガラや石を含む残土5を再利用できるよう、仮置き場6で、残土5をふるい分けると共に、ふるい分けた廃棄用コンクリートガラ等を粉砕して再びふるい分けながら、土砂に所定の比率で再生用コンクリートガラ等を混合する処理を行い、該処理を経た処理土を埋め戻し土用や盛り土用として使用する残土のリサイクル方法であって、工事現場から仮置き場6への残土5の運搬に使用するトラック3と、仮置き場6における処理を経た処理土を埋め戻し土や盛り土として使用するために運搬するトラック3とを共用する、残土のリサイクル方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

同刊行物2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 建設残土を土と土以外のアスファルト或いはコンクリート或いはその他の建設残土とに分離し、前記土をその状態のままで使用可能なものと、その状態のままでは使用不可能なものとに分離し、そのままでは使用不可能な土には適切なものを加えて混合したり或いは物理的処理或いは化学的処理或いは機械的処理をすることにより、土質を改良したり或いは強度を高めたりして埋戻し用或いは路盤強化用或いはその他の建設工事用材料として再利用を可能としてなる建設残土の再利用のための建設残土の土質改良法。」
(2b)「【0002】
【従来の技術】従来、建設工事の現場で掘削などにより掘り起こした残土を工事現場以外のところに搬出することが建設工事に伴う最初の仕事であるがその仕事で生じる残土がきわめて有用性の高い土砂であることもあり、その土砂を土地追成のための有用な材料として埋戻しなどによる再使用を可能とすることもあった。ところが・・・その殆どの場合建設廃材がはいっていたり、含水率が高くて泥状物となっていて、それらは埋戻しなどに再使用することができる状態ではなく産業廃棄物として産業廃棄物処理法に従い処理することが義務付けられている。・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はその状態のままでは使用することに適さない上述の建設残土を適切に処理して再利用しうるようにすることを目的とするものである。」
(2c)「【0009】
【実施例4】まず、ホッパーから供給された原料をスクリーンによって分離しそのスクリーンを通過したものを計量器にかけるようにし、前記スクリーンを通過しなかったものは破砕機にかけて破砕して再びスクリーンにかけ、そこでスクリーンを通過しうる大きさにし、その通過したものを前記計量器にかけるようにし、前記計量器で計量したものと所望量の石灰との混合体を混合機にかけて均質な状態になるまで混合し、次に混合機から排出させたものをさらにスクリーンにかけて、そのスクリーンを通過しえなかったものを破砕機にかけて再度前記スクリーンにかけそこで通過したものを改良土として使用しうるようにしてなる建設残土の再利用のための建設残土の土質改良法である。」
(2d)「【0015】
【実施例10】高い含水率の建設残土を脱水処理して所望の含水率まで下降させて改良土にすることにより、施工現場での盛土工その他の原料にするようにしてなる建設残土の再利用のための建設残土の土質改良法である。」

これらの記載によれば、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。
「 建設工事現場の残土を、土と土以外の建設残土とに分離し、前記土をその状態のままで使用可能なものと、その状態のままでは使用不可能なものとに分離し、そのままでは使用不可能な土は、スクリーンによる分離、石灰を添加する処理、或いは脱水処理する等の物理的処理または化学的処理をすることにより土質を改良し、埋戻し用或いは路盤強化用或いはその他の建設工事用材料として再利用する建設残土の土質改良法。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

同刊行物3には、次の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】汚染土壌に、粘性土、陽イオン交換体及びカルシウム化合物を混合して土壌を改質することを特徴とする汚染土壌の改質方法。」
(3b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は汚染土壌の改質方法及び汚泥の改質方法に関し、詳しくは、鉱物類を使用してイオン交換を行い、併せて新結晶相の発生による土壌中の有害成分(土壌中に汚染物質として含まれる有害重金属類や砒素等)の吸着・固定化反応を進行させて水に対する不溶化を図り、汚染土壌の無害化を図る汚染土壌の改質方法、工事現場で発生し
た廃棄土砂を再利用できるように、の無機汚泥を改質したりあるいはその後固化する汚泥の改質方法に関する。」
(3c)「【0022】本発明において、汚染土壌を改質するには、以下の態様が挙げられるが、これらに限定されない。例えば・・・その汚染土壌を掘り出して改質を行う(大量の汚染土壌の改質を行う必要がある場合など)。
【0023】更に掘り出して改質する際に、処理施設に移送して改質してもよい・・・」
(3d)「【0024】本発明の改質において、汚染土壌を調査確認することは重要である。汚染土壌の確認には、必要があればボーリング等を行い、地層深部の土壌までもサンプリングし、可能ならば現場で分析し、汚染状況(汚染物質と汚染濃度等)の平面的広がり及び垂直方向の広がりを迅速に把握する。かかる調査確認によって掘り出しの容量(面積×深さ)を把握する。」
(3e)「【0054】本発明の他の汚泥の改質方法は、建設汚泥等無機汚泥の脱水ケーキ含有成分を調査確認し、汚染されていることが確認された汚泥に粘性土、ゼオライト類、カルシウム化合物及び又はマグネシウム化合物二価又は三価の鉄塩及び又はアルミニウム塩を混合して汚泥を改質した後、生石灰及び又はセメント系固化剤を混合固化した後にクラッシャー等で粒度調整したものを、二酸化炭素等を用いて炭酸化処理を行い、生成物を路床材等の材料として使用できることを特徴とするものである。」

同刊行物4には、次の事項が記載されている。
(4a)「【0035】
【実施例】・・・図1は、本発明による液体処理システムを、ゴルフ場などの大型レジャー施設の建設現場に設置し、工事排水などの汚泥水処理に用いた実施例である。この液体処理システムは、汚泥水を貯留する沈殿槽13と、該沈殿槽13の上澄水を浄化するための水処理装置7と、該沈殿槽13のオーバーフロー排水を濾過するための排水処理装置24とが設けられており、・・・
【0036】工事排水などの汚泥水は、排水溝25より沈殿槽13に流入し、汚泥21などの固体は該沈殿槽13の底部に沈殿する。上澄水は、該沈殿槽13に設置されたフロート式水中ポンプ16により水処理装置7に送られ、該水処理装置7で浄化処理される。この浄化水は工事現場にて洗浄水などの雑用水として再利用することができる。」

4 対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の「仮置き場」、「コンクリートガラや石を含む残土5」、「ふるい分け」、「トラック」は、それぞれ、本願発明の「処理工場」、「廃棄土砂」、「分級処理」、「車輌」に相当し、刊行物1記載の発明の「盛り土用」は、「土地造成用」に相当する。
また、刊行物1記載の発明の「仮置き場」と、本願発明の「処理工場」は、いずれも「工事現場とは別の場所」に設けられている点で共通するから、両者は、次の点で一致する。
「工事現場とは別の場所に処理工場を設け、前記処理工場で前記工事現場で発生した廃棄土砂を再利用できるように処理するために、前記処理工場は、分級処理を含む廃棄土砂の処理手段を有し、前記処理手段で処理して得た土砂を埋戻し用、又は土地造成用に用いることができるようにし、
前記処理工場で行う前記廃棄土砂の処理手段を経て得た土砂を埋戻しに利用する為に運搬する車輌と、前記工事現場から処理工場への廃棄土砂の運搬に使用する車輌とを有する
廃棄土砂の処理と、土砂、砂、砂利運搬のシステム。」
また、両者は、次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、処理工場が「工事現場と、採砂地との中間」に設けられ、採砂地からの砂、砂利が処理工場に運搬されているのに対し、刊行物1記載の発明は、採砂地からの砂、砂利が処理工場に運搬されるものではなく、処理工場の位置が限定されていない点。
[相違点2]
処理工場が、本願発明では、有害物の無害化処理、pH調整、固液分離処理、分級処理よりなる廃棄土砂の処理手段と排水処理手段を有しているのに対し、刊行物1記載の発明では、分級処理よりなる廃棄土砂の処理手段のみを有している点。
[相違点3]
相違点1に関して、本願発明は、工事現場から処理工場へ廃棄土砂及び排水を運搬する車輌と、処理工場から工事現場又は生コン工場に砂、砂利及び処理水を運搬する車輌とを共用するのに対して、
刊行物1記載の発明は、工事現場から処理工場への廃棄土砂運搬用の車輌と埋戻し用土運搬用の車輌を共用するものであるが、工事現場から処理工場への車輌が排水を運搬するものであるか明らかではなく、処理工場への運搬に使用した車輌が、工事現場又は生コン工場に(採砂地からの)砂、砂利及び処理水を運搬するものではない点。
[相違点4]
相違点1に関して、本願発明は、採砂地と処理工場間の砂利を運ぶ車輌又は船舶と、処理工場と採砂地の埋戻し用、土地改良用又は土地造成用に処理土砂を運ぶ車輌又は船舶とを共用するのに対し、
刊行物1記載の発明はそもそも、採砂地と処理工場間に砂、砂利の運搬経路を備えていない点。

5 判断
(1)相違点1について
相違点1について検討すると、従来から、採砂地から採取した砕石、砂や砂利は、処理施設に運搬し、分級、破砕、洗浄等を行い、砂利置場で保管され、必要とされる工事現場等に運搬されていることは本願出願前周知である(例えば、当審の拒絶理由で提示した特開平2-33540号公報には、砂や砂利を処理施設で分級、破砕、洗浄することが記載されている。)。
また、刊行物2に記載されているように、工事現場から、排出される残土には、そのままで利用できる有用性の高い土砂も含まれるから、採砂地から採取した砂や砂利も、工事現場から排出される有用性の高い土砂と同じ処理工場に運搬し、分級、破砕等の処理を行うこと、すなわち、工事現場の廃棄土を処理する処理工場と採砂地から採取した砂や砂利等を処理する工場を兼用させることは当業者が容易に想到しうることである。
そして、採砂地から採取した砂や砂利を処理、保管するとともに工事現場から発生する廃棄土砂を処理するための処理工場を、輸送距離が短くなる等の輸送に適した場所に設けることは、当業者が当然考慮すべきことであり、処理施設を工事現場と採砂地との中間に設けることは、当業者が容易に想到しうることである。
例えば、東京周辺の千葉県等に処理工場に設け、東京の周辺の工事現場の廃棄土をこの処理工場に運搬するとともに、福島県の採砂地から採取した砕石等を、この千葉県の処理工場に運搬するようなことは、適宜なしうることである。

(2)相違点2について
相違点2について検討すると、刊行物2記載の発明の「スクリーンによる分離」、「石灰を添加する処理」、「脱水処理」は、それぞれ本願発明の「分級処理」、「pH調整」、「固液分離」及びに相当するから、刊行物2記載の発明には、工事現場で発生した廃棄土砂を再利用できるように、pH調整、固液分離処理することが示されている。
また、刊行物3には、建設汚泥等を別に設けた処理施設で無害化処理することが記載され、刊行物4には、建設現場で発生する工事排水などの汚泥水を処理して、浄化水を再び工事現場で使用することが記載されている。
そうすると、刊行物1記載の発明において、工事現場で発生する残土に有害物質や多量の水分が含まれている場合に、水分や、有害物質等を処理するために、処理工場で、有害物の無害化処理、pH調整、固液分離処理を行う手段を設けるとともに、排水処理手段を設けるようにすることは当業者が容易に想到しうることである。

なお、請求人は、平成22年5月25日付け意見書において、刊行物4は、「汚水を浄化するための濾過材及び水処理装置又は流体処理システム」に関する発明であり、本願発明のような掘削残土の浄化とは根本的に異なる、と主張しているが、刊行物4には、「液体処理システムを、ゴルフ場などの大型レジャー施設の建設現場に設置し、工事排水などの汚泥水処理に用いた」例が記載され、工事現場で発生する汚泥を処理し、浄化水として再利用することが開示されているのであり、この技術を処理工場における建設汚泥の処理に採用することは当業者が容易に想到しうることである。

(3)相違点3について
工事現場の廃棄土を処理する処理工場と採砂地から採取した砂や砂利等を処理する工場を兼用させることが当業者が容易に想到しうることは、上記「(1)相違点1について」で検討したとおりであり、また、処理工場に工事現場で発生する排水の処理手段を設けることが当業者が容易に想到しうることは、上記「(2)相違点2について」で検討したとおりである。
そして、刊行物1記載の発明は、廃棄土運搬用の車輌と埋戻し用土運搬用の車輌を共用するものであり、処理工場に廃棄土を運搬してきた車輌を処理工場からの搬出に使用することが示されているのであるから、処理工場で工事現場の廃棄土とともに採砂地からの砂等や、工事現場の排水をも処理するに際し、工事現場で発生した廃棄土や排水を車輌にて処理工場に運搬し、その運搬に使用した車輌を用いて、処理工場に保管されている砂や砂利、処理水を工事現場や生コン工場に運搬することは、当業者が容易に想到しうることである。

(4)相違点4について
相違点4について検討すると、採砂地と砕石や砂の処理施設との間に運搬経路を設けることは、上記「(1)相違点1について」で述べたとおり周知であり、また、砂、砂利の運搬に車輌や船舶を使用することは自明である。
そして、上記のとおり、刊行物1記載の発明には、処理工場に廃棄土を運搬してきた車輌を処理工場からの処理土の搬出に使用することが示されているのであるから、採砂地から採取した砂や砂利を処理工場に運搬するに伴い、これらの運搬に使用する車輌又は船舶を、採砂地への埋戻し用、土地改良用又は土地造成用に処理土砂を運ぶ車輌又は船舶と共用することは、当業者が容易に想到しうることである。

なお、請求人は、上記意見書において、刊行物1記載の発明において、「残土運搬用のトラックと埋戻し用土運搬用トラックの共用についての記載」があることが、本願発明の容易性の根拠とされているが、同記載に「トラック3、或いは別のトラック3で搬送」としてあるように、たまたま空いていれば用いることを示唆したものであり、本願発明のように、常時往復利用にすべく系統づける場合とは全く異なる、本願発明は、砂利運搬車の帰路に残土を運搬するので、常時往復利用している。また採砂地からの掘削砂利運搬と、中間処理工場からの埋戻し用再生土砂の運搬を行うように、必ず連続的に往復共使用できるようにしたシステムである、と主張している。
しかし、本願発明は、工事現場から処理工場へ廃棄土砂等を運搬する車輌を用いて、処理工場から工事現場又は、工事現場とは別の生コン工場に砂、砂利及び処理水を運搬する、採砂地から処理工場へ砂利等を運ぶ車輌又は船舶を用いて、処理工場から採砂地又は、採砂地とは別の土地改良用や土地造成用に処理土砂を運ぶものであって、常時往復利用するもの、必ず連続的に往復使用するものに限定されるものではない。
そして、処理工場への運搬に使用し空になった車輌を、処理工場からの運搬に利用することは、刊行物1に示されているように、普通に行われていることであり、採砂地からの掘削砂利を処理工場へ搬送するに際し、搬送に使用した車輌又は船舶を、処理工場からの運搬に利用することが格別困難であるとはいえない。

(5)効果及びまとめ
そして、本願発明の作用効果である、廃棄物を皆無にする循環処理ができるとの効果は刊行物1ないし4に記載の発明から予測できることであり、また、採砂の運搬と、掘削土砂等の処理前、処理後の運搬について陸運、海運を共用し、経費の低減を図り、合理化し得るとの効果は、運搬車輌を共用する刊行物1記載の発明、周知の採砂の搬送状況から予測することができるものであり、本願発明の作用効果は全体として、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、刊行物1ないし4記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし4記載の発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-17 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-08 
出願番号 特願2002-264637(P2002-264637)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 袴田 知弘  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 土屋 真理子
宮崎 恭
発明の名称 廃棄土砂の処理と、土砂、砂、砂利運搬のシステム  
代理人 涌井 謙一  
代理人 鈴木 正次  

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