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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F17D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F17D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F17D
管理番号 1225605
審判番号 不服2009-25666  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-25 
確定日 2010-10-21 
事件の表示 特願2004-112298「ホースライン」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月27日出願公開,特開2005-299701〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成16年4月6日の出願であって,平成21年10月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,以下のように補正された(補正された内容を,以下,「補正事項」という。)。
「マリンホース(1)のホース本体(2)の両端に,それぞれ円筒状のニップル(3A)と該ニップル(3A)の先端に径方向外側に突設する連結用フランジ(3B)とからなる連結部(3)を固設し,長手方向に複数の前記マリンホースを配列すると共に,少なくとも2本の前記マリンホース(1)の連結用フランジ(3B,3B)間に該連結用フランジ(3B)よりも小径の連結リング(11)を介して相互の連結用フランジ(3B,3B)間をボルトとナットで連結することによりホースラインを形成し,前記連結リング(11)の表面に,該ホースライン内を移送される流体の状態を検出するセンサー(13)と,該センサー(13)からの検出信号に基づいて前記流体の状態情報を発信する発信手段(14)と,前記マリンホース(1)の揺動を利用して発電する電源(15)とを有する流体情報発信装置(12)を取り付けたホースライン。」

(2)補正事項の検討
上記補正事項により,「センサー」と,「発信手段」と,「電源」とを有する「流体情報発信装置」を連結リングの表面に取り付けた構成,即ち,「流体情報発信装置」の一部を形成する「センサー」自体をも連結リングの表面に取り付けた構成のものが含まれることとなった。

一方,願書に最初に添付した明細書には,段落【0021】に「各連結リング11には,ホースラインHL内を移送される流体の状態情報を発信する流体情報発信装置12が取り付けられている。この流体情報発信装置12は,図3,4に示すように,ホースラインHLの流路W内に設置され,移送される流体の状態(圧力や温度など)を検出するセンサー13と,このセンサー13からの検出信号に基づいて流体の状態情報を外部に発信する発信手段14,及び電源15とを備えている。発信手段14と電源15は,連結リング11の外周面に取り付けた密閉容器S内に収容されている。」と記載されている。
この記載によれば,連結リングの表面(外周面)には,「発信手段」と「電源」とを収容した「密閉容器」が取り付けられた構成とされているが,流体の状態を検出する「センサー」自体は連結リングの表面ではなく,ホースラインの流路内に設置された構成とされているものと解される。

さらに,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)には,「流体情報発信装置」の一部を形成する「センサー」自体をも連結リングの表面に取り付けた構成については何等記載及び示唆されていない。

また,当初明細書等の記載から,流体の状態を検出する「センサー」自体を連結リングの表面に取り付けることが,当業者に自明であるとも,当初明細書等に記載されていたに等しい事項であるともいえず,さらに,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるともいえない。

したがって,上記補正事項を含む補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。
よって,上記補正事項を含む本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第3項の規定に適合しないものである。

(3)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

[理由II]
本件補正が,仮に,改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満たしているとした場合について以下検討する。

(1)補正後の請求項1に記載された発明について
補正後の請求項1については,前記「[理由I](1)」を参照のこと。

本件補正による特許請求の範囲の請求項1の補正は,実質的に,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数のマリンホースを連結してなるホースラインであって」とする態様について「マリンホースのホース本体の両端に,それぞれ円筒状のニップルと該ニップルの先端に径方向外側に突設する連結用フランジとからなる連結部を固設し,長手方向に複数の前記マリンホースを配列すると共に,少なくとも2本の前記マリンホースの連結用フランジ間に該連結用フランジよりも小径の連結リングを介して相互の連結用フランジ間をボルトとナットで連結することによりホースラインを形成し,前記連結リングの表面に」とする態様に限定し,同じく「センサーと,・・・発信手段とを有する流体情報発信装置を備えると共に,前記流体情報発信装置は,マリンホースの揺動を利用して発電する電源により作動するホースライン」について「センサーと,・・・発信手段と,マリンホースの揺動を利用して発電する電源とを有する流体情報発信装置を取り付けたホースライン」と限定するものであって,改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
a)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-182748号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,マリンホース異常記録装置に関し,更に詳細には,原油などの液体を陸上とタンカーとの間で送液するマリンホースを損傷するような衝撃・応力などの異常状態を非接触的に検出し,記録する装置に関するものである。」

・「【0013】
【発明の実施の形態】以下添付の図面を参照し,一実施の形態により本発明を具体的に説明する。本実施の形態に使用したマリンホース1は,OCIMFホース・ガイドの規定に基づいて製造した長さ10.7mを有し,図1に示すように,両側端部にフランジ2aを取付けた口金2と,この口金2に嵌合するホース部3と,その周囲を囲むスポンジゴムなどからなる浮力材層4を設けたものであり,黒色の外皮ゴム層5の外側に,オレンジ色に着色したオレンジストライプ6を,例えばジブラ模様状に形成し,全体を加硫し一体としたものである。
【0014】そして,加速度センサ7-_(1),7-_(2),7-_(3)(図3:なおこれらのセンサを総称するときは単に7によって表す。以下同様)及び応力センサ8-_(1),8-_(2),8-_(3)(図3)を納めたセンサボックス9-_(1),9-_(2),9-_(3)を,図1に示すように所定位置に取付け,信号線10によって口金2部分に取付けた無線ユニット11に接続した。なお,図1に示す符号Sは作業船である。」

・「【0018】図3において,前記センサボックス9-_(1),9-_(2),9-_(3)から与えられる加速度信号及び応力信号は,それぞれ無線ユニット11に設けたマイクロコンピュータ(以下マイコン)12によって制御される加速度信号切換器手段13-a及び応力信号切換手段13-bによって,それぞれ前記加速度センサ7-_(1),7-_(2),7-_(3)及び応力センサ8-_(1),8-_(2),8-_(3),を走査し,それぞれのセンサから送られる信号をマイコン12に入力する。
【0019】加速度信号切換器手段13-aから出力される加速度センサ7-_(1),7-_(2),7-_(3)ごとの加速度信号と,応力信号切換手段13-bから出力される応力センサ8-_(1),8-_(2),8-_(3)ごとの応力信号とは,それぞれシグナルコンディショニング回路14-a,14-bに与えられ,予め定めたしきい値以上の入力のみ,衝撃の大きさに応じた複数段階による記号付けされ,マイコン12に入力される。
【0020】マイコン12には,前記異常加速度及び異常応力信号は,異常加速度,異常応力の外に,各マリンホース1,加速度センサ7-_(1),7-_(2),7-_(3),応力センサ8-_(1),8-_(2),8-_(3)などの識別番号,発生日時など,必要とするデータと共に,付属する記憶装置(図示せず)に入力すると共に,前記信号が入力されると,パラレルポート15からLEDユニット16に信号を出力し,夜間に異常衝撃及び/又は応力がマリンホース1に作用したとき,光を点滅させて信号が入力されたことを視認可能にした。
【0021】ところで,本実施の形態のマリンホース1からデータ送信は,陸上又は船上に配置した監視室(図示せず)に配置したパソコンからなるホストコンピュータ17の送信指令信号に基づいて行うようにした。この送信指令信号の送信と,無線ユニット11からの異常衝撃及び応力データの受信との管理は,受信ユニット18のマイコン19によって行うようにした。
【0022】前記無線ユニット11と受信ユニット18との間の交信は,それぞれのユニット11,17に取付けた,アンテナ20,無線機ユニット21,モデムユニット22,シリアルポート23によって行うようにした。なお,無線ユニット11及びセンサボックス9-_(1),9-_(2),9-_(3)内の機器を作動させる電源は,太陽電池24及びバッテリー25によってまかなうようにした。」

・「【0024】
【発明の効果】以上説明した本発明のマリンホース異常記録装置は,ホース寿命に影響を与える異常衝撃,異常応力などの異常外力を検出するセンサをマリンホースに取付け,検出されたデータを無線通信により陸上又は船上に設けた監視装置に入力し,マリンホースごとに管理可能にしたので,ホースの寿命及び交換時期の予測などの管理を行うことができる。」

・図2には,円筒状部と該円筒状部の先端に径方向外側に突設するフランジ2aとからなる口金2がホース部3に固設された構成が示され,図1には,所定位置の表面に,センサボックス9-_(1) ,9-_(2) ,9-_(3) と無線ユニット11を取り付けた構成が示され,図3には,無線機ユニット21と太陽電池24を有する無線ユニット11が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「マリンホース1のホース部3の両側端部に,それぞれ円筒状部と該円筒状部の先端に径方向外側に突設するフランジ2aとからなる口金2を固設し,前記ホース部3,口金2の所定位置の表面に,ホース寿命に影響を与える外力の状態を検出する外力センサ7,8を納めたセンサボックス9と,該外力センサ7,8からの検出信号に基づいて前記外力の状態を送信する無線機ユニット21と太陽電池24を有する無線ユニット11を取り付けた原油などの液体を送液するマリンホース。」

b)同じく,引用された特開平11-294677号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,配管内を流れる流体の状態(例えば,流量,色合い,気泡の混入状況など)を監視するサイトグラスに関するものである。」

・「【0006】
【発明の実施の形態】以下,図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1はサイトグラス本体の断面図,図2は流体監視部の一例を示す断面図,図3は流体監視部の他の一例を示す断面図,図4は流体監視部の別の一例を示す断面図である。図1中符号1はサイトグラス本体であり,このサイトグラス本体1の内部にはストレートな流体通路10が形成されている。そして,この流体通路10の入口及び出口にあたるサイトグラス本体1の両端部にはフランジ部11がそれぞれ形成されており,このフランジ部11と上下一対の配管Pのフランジ部P1とがボルト等の止着手段によって連結されるものである。また,前記サイトグラス本体1の中間部には,前記流体通路10に直交する装着孔12が形成されており,この装着孔12の先端部には,リング状の取付部材13によって透明窓13′が設けられている。なお,この取付部材13と透明窓13′は,必要に応じて,図5に示すように,閉塞部材13″に交換することが可能である。
【0007】図2中符号2は流体監視部である。この流体監視部2は,直管状の本体部20の中間部に,前記サイトグラス本体1の流体通路10と同径でかつ互いに対向する一対の貫通穴21が形成されており,これらの貫通穴21間が,流体通路10に連通する連通流路22とされている。また,前記本体部20の基端部には,透明窓23がリング状の取付部材24によって取り付けられている。さらに,前記本体部20の外周部には,両貫通穴21の中心線に直交する凹部(ガイド手段)25が形成されており,この凹部25に対応して,前記サイトグラス本体1の装着孔12内には,一対の凸部(ガイド手段)14が形成されている。」

・「【0011】・・・また,監視手段として,連通流路22内に,流体の流量を検出する流量計などの流体検出手段を設け,この流体検出手段が検出した検出値を発信器などの信号出力手段により電気信号として出力し,この出力信号に応じてバルブの開閉操作を行うようにしてもよく,さらに,前記流量検出手段が検出した検出値をメモリ(記録手段)に記録してデータとして蓄積するようにしてもよい。」

c)同じく,引用された特開2003-269683号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,建築構造物の床や天井,壁などの遮蔽部材に隠れた配管を調査する配管調査システムに関し,特に,配管の点検や更新時の,配管の劣化状態や配管の個体情報の調査に使用する配管調査システムに関する。」

・「【0016】図1は本発明の配管調査システムを実施する装置例を表した概略図である。この図に示す装置は無線通信システム(例えば非接触式ICカードの通信方式)を利用するもので,遮蔽部材に隠れた部分(例えば建物の天井裏や床下など)に配設された配管1を点検するために,状態検出部2と通信回路部3と情報端末4を備える。
【0017】状態検出部2は配管1の状態を検知するため,配管1と共に設置されており,状態検出部2には通信回路部3が電気的に接続されている。」

・「【0033】例えば配管1が水配管の場合,図4(審決注:図3の誤記と認められる。)に示すように配管1中の離れた二箇所にそれぞれ,圧力,流量,流速を検出する機能を持つ同一の状態検出部2A,2Bを配置する。配管中の一つの箇所に設けた状態検出部2Aにより検出される圧力をP_(A),流量をQ_(A),流速をV_(A)とし,同じ配管中のもう一つの箇所に設けた状態検出部2Bにより検出される圧力をP_(B),流量をQ_(B),流速をV_(B)とすると,配管が正常な状態のときはP_(A)=P_(B),Q_(A)=Q_(B),V_(A)=V_(B) である。しかし,P_(A)≠P_(B),Q_(A)≠Q_(B),V_(A)≠V_(B)になった場合,検査した配管に何らかの異常が生じていると判断できる。
【0034】そこで,図1?図3に示した構成の配管調査システムの場合,作業員は,検査する配管に対応する場所に情報端末4を設置し,情報端末4に配管の検査命令を入力し,配管中の一つの箇所の状態検出部2Aにより圧力P_(A),流量Q_(A),流速V_(A)を,もう一つの箇所の状態検出部2Bより圧力P_(B),流量Q_(B),流速V_(B)を検出し,これらの検出信号を評価部13に保持させる。このとき,評価部13では配管中の二箇所で検出された検出信号を比較し,一致している場合は検査した配管には異常なし,異なる場合は異常ありと評価し,このような評価結果を表示部14で作業員に知らせる。」

・「【0036】さらに,上記の水配管において,図6に示すように配管1中の離れた二箇所にてそれぞれ,温度を検出する機能を持つ同一の状態検出部として温度センサ19A,19Bを設置することにより,離れた温度センサ19A,19B付近の温度をそれぞれ検出することもできる。このように配管1中の離れた二箇所で検出された温度を比較し,その温度差が設計で想定される範囲を超える場合,離れた温度センサ19A,19B間に何らかの障害が発生したと推測できる。例えば図6に示すように,温冷水用の配管1の周囲に断熱材17が設けられていて,この断熱材17が温度センサ19A,19B間で破損している場合,上流側と下流側では温度センサの検出温度に想定外の温度差が生じる場合がある。」

(3)対比
そこで,本願補正発明と引用発明とを対比する。

まず,後者の「マリンホース1のホース部3の両側端部」は前者の「マリンホースのホース本体の両端」に,後者の「円筒状部と該円筒状部の先端に径方向外側に突設するフランジ2aとからなる口金2」は前者の「円筒状のニップルと該ニップルの先端に径方向外側に突設する連結用フランジとからなる連結部」に,それぞれ相当している。

次に,後者の「原油などの液体を送液するマリンホース」は,通常,前者の「長手方向に複数のマリンホースを配列すると共に,相互の連結用フランジ間をボルトとナットで連結することによりホースラインを形成し」た態様を具備するものと解される。

また,後者の「ホース部3,口金2の所定位置の表面」と前者の「連結リングの表面」とは,「所定部の表面」との概念で共通し,後者の「ホース寿命に影響を与える外力の状態を検出する外力センサ7,8」と前者の「ホースライン内を移送される流体の状態を検出するセンサー」とは,「ホース寿命に影響を与える所定の状態を検出するセンサー」との概念で共通し,後者の「外力センサ7,8からの検出信号に基づいて外力の状態を送信する無線機ユニット21」と前者の「センサーからの検出信号に基づいて流体の状態情報を発信する発信手段」とは,「センサーからの検出信号に基づいて所定の状態情報を発信する発信手段」との概念で共通し,後者の「太陽電池24」と前者の「マリンホースの揺動を利用して発電する電源」とは,「自然エネルギーを利用して発電する電源」との概念で共通し,後者の「センサボックス9」及び「無線ユニット11」と前者の「流体情報発信装置」とは,「所定情報発信装置」との概念で共通しているから,結局,後者の「ホース部3,口金2の所定位置の表面に,ホース寿命に影響を与える外力の状態を検出する外力センサ7,8を納めたセンサボックス9と,該外力センサ7,8からの検出信号に基づいて前記外力の状態を送信する無線機ユニット21と太陽電池24を有する無線ユニット11を取り付けた」態様と前者の「連結リングの表面に,該ホースライン内を移送される流体の状態を検出するセンサーと,該センサーからの検出信号に基づいて前記流体の状態情報を発信する発信手段と,前記マリンホースの揺動を利用して発電する電源とを有する流体情報発信装置を取り付けた」態様とは,「所定部の表面に,ホース寿命に影響を与える所定の状態を検出するセンサーと,該センサーからの検出信号に基づいて前記所定の状態情報を発信する発信手段と,自然エネルギーを利用して発電する電源とを有する所定情報発信装置を取り付けた」との概念で共通している。

したがって,両者は,
「マリンホースのホース本体の両端に,それぞれ円筒状のニップルと該ニップルの先端に径方向外側に突設する連結用フランジとからなる連結部を固設し,長手方向に複数の前記マリンホースを配列すると共に,相互の連結用フランジ間をボルトとナットで連結することによりホースラインを形成し,所定部の表面に,ホース寿命に影響を与える所定の状態を検出するセンサーと,該センサーからの検出信号に基づいて前記所定の状態情報を発信する発信手段と,自然エネルギーを利用して発電する電源とを有する所定情報発信装置を取り付けたホースライン。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
相互の連結用フランジ間をボルトとナットで連結する態様に関し,本願補正発明は,「少なくとも2本のマリンホースの連結用フランジ間に該連結用フランジよりも小径の連結リングを介して」いるのに対し,引用発明は,かかる「連結リング」を備えていない点。
[相違点2]
所定の状態情報発信装置を取り付けた「所定部」の表面に関し,本願補正発明は,「連結リング」の表面であるのに対し,引用発明は,「ホース部3,口金2の所定位置」の表面,即ち,「ホース本体,連結部の所定位置」の表面である点。
[相違点3]
センサーが検出する「ホース寿命に影響を与える状態」,発信手段で発信する「所定の状態情報」及び「所定情報」発信装置に関し,本願補正発明は,「ホースライン内を移送される流体の状態」,「流体の状態情報」及び「流体情報」であるのに対し,引用発明は,「外力の状態」,「外力の状態情報」及び「外力情報」である点。
[相違点4]
「自然エネルギー」を利用して発電する電源に関し,本願補正発明は,「マリンホースの揺動」を利用しているのに対し,引用発明は,「太陽電池」,即ち,「太陽光エネルギー」を利用している点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1及び2について
例えば,引用例2にも開示されているように,少なくとも2本(「一対」が相当)の配管の連結用フランジ(「フランジ部」が相当)間に連結リング(「サイトグラス」が相当)を介して相互の連結用フランジ間をボルトとナット(「ボルト等の止着手段」が相当)で連結する構成を有するものにおいて,所定の状態情報発信装置(「流体検出手段と発信器」が相当)を該連結リングを利用して取り付けることにより所定の状態(「流体の状態」が相当)を検出(「監視」が相当)することは,流体用配管の分野における周知技術である。
そうすると,引用発明において,所定の状態を検出するために,上記周知技術に倣い,上記連結リングを利用するように改変することは,当業者にとって容易である。
なお,上記連結リングを連結用フランジよりも小径とすることは,そのように構成するための格別な技術的困難性及びそのような構成による格別の効果が何等認められない以上,単なる設計的事項にすぎないものというべきである。
したがって,相違点1及び2は格別のものとはいえない。

・相違点3について
例えば,引用例3にも開示されているように,センサー(「状態検出部」が相当)が配管内を移送される流体(「水」が相当)の状態(「圧力,流量,流速,温度」が相当)を検出し,検出された流体の状態情報を発信手段(「通信回路部」が相当)で発信することで,配管寿命に影響を与える状態(「配管の劣化状態」が相当)を検出し得るようにすることは,流体用配管の分野における慣用技術である。
引用発明において,ホース寿命に影響を与える所定の状態を検出するとの課題を解決する範囲内のものとして,上記慣用技術を踏まえ,ホースライン内を移送される流体の状態を検出し,検出された流体の状態情報を発信手段で発信することにより,相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。

・相違点4について
一般に,自然エネルギーを利用して発電する電源として,太陽光を利用した太陽電池をはじめ,風を利用した風力発電装置や波の揺動を利用した波力発電装置(原査定時に提示された特開平11-159435号公報,特開2001-180575号公報等参照)等が良く知られているところである。
また,通常のフローティングタイプのマリンホースであれば,揺動を利用した発電が可能であることは明らかである。
そうすると,マリンホースに係る引用発明において,自然エネルギーを利用して発電する範囲内の電源として,揺動を利用して発電する電源を選択することにより,相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは,かかる選択に際し格別の技術的阻害要因が何等認められない以上,当業者にとって容易である。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明,上記周知技術及び上記慣用技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明,上記周知技術及び上記慣用技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記「2.」の[理由I]もしくは[理由II]のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成21年9月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「複数のマリンホースを連結してなるホースラインであって,該ホースライン内を移送される流体の状態を検出するセンサーと,該センサーからの検出信号に基づいて前記流体の状態情報を発信する発信手段とを有する流体情報発信装置を備えると共に,前記流体情報発信装置は,前記マリンホースの揺動を利用して発電する電源により作動するホースライン。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記「2.[理由II](2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.[理由II](1)」で検討した本願補正発明から,実質的に,「複数のマリンホースを連結してなるホースラインであって」とする態様について「マリンホースのホース本体の両端に,それぞれ円筒状のニップルと該ニップルの先端に径方向外側に突設する連結用フランジとからなる連結部を固設し,長手方向に複数の前記マリンホースを配列すると共に,少なくとも2本の前記マリンホースの連結用フランジ間に該連結用フランジよりも小径の連結リングを介して相互の連結用フランジ間をボルトとナットで連結することによりホースラインを形成し,前記連結リングの表面に」とする態様への限定を省き,「センサーと,・・・発信手段とを有する流体情報発信装置を備えると共に,前記流体情報発信装置は,マリンホースの揺動を利用して発電する電源により作動するホースライン」について「センサーと,・・・発信手段と,マリンホースの揺動を利用して発電する電源とを有する流体情報発信装置を取り付けたホースライン」への限定を省いたものである。

そうすると,本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は,前記「2.[理由II](3)」で抽出した相違点3及び4のみとなるため,前記「2.[理由II](4)」での検討を踏まえれば,本願発明は,引用発明及び上記慣用技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-23 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-06 
出願番号 特願2004-112298(P2004-112298)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F17D)
P 1 8・ 561- Z (F17D)
P 1 8・ 575- Z (F17D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 片岡 弘之
田良島 潔
発明の名称 ホースライン  
代理人 小川 信一  
代理人 野口 賢照  
代理人 斎下 和彦  

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