• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1225889
審判番号 不服2007-1149  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-12 
確定日 2010-10-25 
事件の表示 特願2003-501176「モバイルデバイスに提供されるサービスの永久的なレコードを生成する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 5日国際公開、WO02/98107、平成17年 5月26日国内公表、特表2005-515523〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年5月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年5月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年10月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成19年1月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年2月13日に手続補正がなされ、当審において平成22年1月27日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対して同年4月26日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年4月26日に提出された手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
モバイルデバイスにサービスを提供し、該モバイルデバイスのロケーションに該サービスの永久的なレコードを生成する方法であって、該方法は、
サービスサーバから、プリントサーバにあるサービスデータを受信するステップであって、該プリントサーバは、種々の特定のプリンタに印刷されるプリントの品質を最適化するために格納されたプリントデータを含むものであり、前記サービスサーバは、
前記モバイルデバイスによって送信されたサービスのための要求を受信し、
前記サービスデータがプリントされる、前記モバイルデバイスのロケーションにある特定のプリンタを識別する情報を受信し、
前記サービスデータを作成するために、サービスのための前記要求を処理するものである、ステップと、
前記プリントサーバにおいて、前記サービスデータおよび前記識別された特定のプリンタのための格納された前記プリントデータを処理して、前記特定のプリンタのための前記最適の品質プリントを生成する様式で特定のプリンタに対する入力データを生成するステップと、
前記モバイルデバイスに該入力データを送信するステップであって、前記モバイルデバイスは、前記サービスの永久的なレコードを提供するために、該入力データを、前記モバイルデバイスのロケーションにある前記特定のプリンタに通信する、ステップと
を包含する、方法。」


2.引用例
(1)引用例1
当審の拒絶理由で引用された特開2001-103233号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0002】
【従来の技術】以下、従来の情報入出力システムについて説明する。近年、ノートパソコンおよびPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯情報端末、PHS(Personal Handy-Phone System)および携帯電話等の移動体通信端末の普及により、使用場所に左右されることなく、文書の作成処理や、電子メール等の通信処理を容易に行えるようになった。また、これらの端末においては、備えられた通信機能を利用することにより、ネットワーク(通信回線)を介して通信事業者から各種サービス(銀行の各種サービス(残高照会、振込、振替)、各種チケットの予約、航空券予約等)の提供をうけることができる。
【0003】しかしながら、従来の携帯情報端末では、作成した文書や上記各種サービスにより得られた情報の印刷出力を行うプリンタについては、装備しておらず、たとえば、移動中に印刷出力を容易に行うことができなかった。そこで、最近では、携帯情報端末の使用者が、出先(移動先)の指定場所(プリンタ)に、所望の情報を印刷出力可能な情報入出力システムが提案されている。」

(イ)「【0053】まず、第1次制御として、たとえば、端末1の使用者は、表示画面に表示されたメニューの中から所望の処理(大項目:銀行へのアクセス、チケットまたは航空券の購入等)を選択し(ステップS1)、つぎの操作に移行する(ステップS2,Yes)。なお、つぎの操作に移行しない場合(ステップS2,No)は、ここで、処理を終了する。ここでは、端末1とホストコンピュータ4が基地局2および移動通信制御局を介して通信を行うことになり、以降、端末1では、ホストコンピュータ4の制御によるメニューを選択する。」

(ウ)「【0064】<実施の形態2>図8は、本発明にかかる情報入出力システムの実施の形態2の構成を示す図である。図8において、1aは、実施の形態1と同様のものであり、表示画面の操作により、各種サービスを提供するホストコンピュータの情報を容易にアクセス可能とし、さらに、操作を行う使用者が、該情報をアクセス可能な使用者かどうかを認証するための認証コードを後述する入出力制御装置に対して送信する、携帯情報端末、PHS、および携帯電話等の移動体通信端末(以降、単に端末1と呼ぶ)である。端末1aにおいて、実施の形態1の端末1と異なる点は、たとえば、出力(印刷)処理を行う場合、直接、ホストコンピュータから出力対象のデータを受け取り、そのデータを入出力制御装置に送信する点である。
【0065】また、4aは端末1の使用者に提供可能なサービスに関するデータベースを備え、前記出力対象となるデータを、移動通信制御局3および基地局2を介して、端末1aに送信するホストコンピュータであり、5aは回線接続(一般電話回線、ISDN回線、専用線等)された入出力制御装置6との間で本人認証を行う入出力用ゲートウェイサーバである。なお、その他の構成については、先に説明した実施の形態1の構成と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】以下、上記のように構成される情報入出力システムの動作を説明する。なお、第1次制御については、先に説明した実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。第2次制御として、たとえば、端末1aの使用者は、ホストコンピュータ4aからの制御で表示画面に表示されたメニューの中から所望の処理(小項目:出力する情報および画面表示、または出力する情報およびプリントアウト等)を選択する。 【0067】このとき、端末1aからは、たとえば、選択項目の1つである「プリントアウト」に対応するコマンドが送信される。そして、このコマンドを受け取ったホストコンピュータ4aでは、出力対象となるデータをデータベースから読み出し、端末1aに対して送信する。最後に、ホストコンピュータ4aは、端末1aに対して、プリント枚数、およびデータ量等の情報を送信する。
【0068】つぎに、第3次制御として、端末1aの使用者は、端末1aの操作またはキーボード13の操作により、入出力制御装置6に対して、本人ID(たとえば、暗証番号や自分の電話番号等)を入力する。このとき、入出力制御装置6では、受け取った本人IDを入出力用ゲートウェイサーバ5aに送信する。ここで、入出力用ゲートウェイサーバ5aは、受け取った本人IDと、内部に予め登録してあるIDと、を比較し、一致した場合に、端末1aの使用者が先に保管しておいたデータをアクセス可能であることを認証する。なお、一致しない場合には、端末1aにエラーを表示する制御を行い、再度、本人IDの入力処理を行う。
【0069】そして、入出力ゲートウェイサーバ5aによる認証後、端末1aの使用者は、先に第2次制御にて保管しておいたデータを、端末1aの操作により、入出力制御装置6に対して送信する。このとき、入出力制御装置6では、出力処理に伴う課金処理(実施の形態1と同様の方法で行う)を行う。その後、第3次制御の最後の処理として、入出力制御装置6では、端末1aからのデータを、近隣に設置されたプリンタ等の外部機器に出力(印刷)する。なお、本実施の形態においては、上記に示す本人認証処理に限らず、たとえば、実施の形態1にて説明した方法を用いて処理を行うこととしてもよい。
【0070】以上、本実施の形態によれば、端末1aの操作で、入出力制御装置6に対して本人IDを入力することにより、特定の本人IDを知る端末1aの使用者だけが、所望のデータを出力(印刷)可能である。すなわち、端末1aの使用者が、端末1aの持ち主(契約者)である場合にだけ所望のデータを出力させることができるため、従来と比較して、情報の安全性(セキュリティ)について、より高い信頼性を確保することができる。これにより、本実施の形態では、端末1aの使用者が、各種サービスを提供するホストコンピュータ4a内の情報を容易にアクセスすることができ、さらに、情報の安全性を確保しつつ、該情報を容易に外部機器に出力させることができる。
・・・中略・・・
【0072】また、本実施の形態によれば、課金処理において、たとえば、予め所定の金額を入金しておく現金回収装置15や、電子マネーを用いることにより、課金を確実に行うことができる。」(下線は当審にて付加した。)

ここで、上記摘記事項の特に(ウ)によれば、携帯情報端末、PHS、および携帯電話等の移動体通信端末(以下、単に「移動体通信端末」という。)とホストコンピュータが通信を行い、移動体通信端末の操作によって、移動体通信端末はホストコンピュータから各種サービスを提供されるものであるから、ホストコンピュータは、移動体通信端末によって送信された各種サービスのための要求を受信していると考えられる。

また、上記摘記事項の(ウ)によれば、ホストコンピュータは、出力対象となるデータをデータベースから読み出し、移動体通信端末に対して送信する。移動体通信端末は保管しておいたデータを、入出力制御装置6に対して送信し、入出力制御装置6では、移動体通信端末からのデータを、近隣に設置されたプリンタ等の外部機器に出力(印刷)している。したがって、プリンタは移動体通信端末の近隣にあると考えるのが自然であり、ホストコンピュータは、出力対象となるデータを、移動体通信端末に送信するものであり、移動体通信端末は出力対象となるデータを近隣のプリンタに送信し、印刷するものと考えられる。

したがって、上記摘記事項(ア)?(ウ)によれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「移動体通信端末に、各種サービスを提供し、移動体通信端末の近隣に設置されたプリンタにおいて印刷する方法であって、該方法は、
ホストコンピュータが、移動体通信端末によって送信されたサービスのための要求を受信し、
ホストコンピュータが、移動体通信端末からのコマンドにより、出力対象となるデータをデータベースから読み出す、ステップと、
ホストコンピュータが、出力対象となるデータを、移動体通信端末に送信するステップであり、移動体通信端末は出力対象となるデータを近隣のプリンタに送信し、印刷する、ステップと
を包含する、方法。」


(2)引用例2
当審の拒絶理由で引用された特開2000-207145号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(エ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、携帯型コンピュータからサーバコンピュータにアクセスしてデータファイルを読み取っていたが、携帯型コンピュータとしてより小型のPDAを用いた場合は、PDAが筐体の大きさや電池寿命に依存した機器構成になって、メモリサイズが小さかったり、CPU処理能力が低くかったりして、結果的に印刷機能が貧弱になるので、接続したプリンタを有効に使うには、サブノート型PC程度の機能が最低限必要となっていた。すなわち、個人データのアドレス帳やスケジュール管理の機能を使うにはPDAで十分であるが、他のデバイスと連携させて使うモバイルコンピューティングでは、機能的に不十分な部分が多く、使いこなすことができなかった。
【0007】本発明の目的は、上記のような問題点を解決し、携帯情報端末を他のデバイスと連携させても使い勝手の良い情報処理システムおよびその通信制御方法を提供することにある。」

(オ)「【0019】次に、PDA105に接続される携帯型のプリンタ106の動作を説明する。プリンタ106とPDA105の間は、赤外線を用いたIrDA(infrared data association )や、RS-232Cを用いたシリアルインタフェイス等で接続してある。プリンタ106へ出力されるプリントイメージデータのデータフォーマットは、汎用のプリンタを用いる場合は、プリンタエミュレーション(ESC/P、X24E、等)に沿ったコマンド形式となって出力される。この汎用のプリンタをPC(パーソナルコンピュータ)に接続して動作させる場合は、PC上で実行されるプリンタドライバソフトによって、印刷データは各プリンタごとのコマンド合わせて変換され出力されるようなっている。
【0020】しかしながら、一般的に使われているPDAでは、プリンタにデータを出力するような機能は実装されていないのが現実である。その理由としては、PDAはその使用形態として持ち歩いて使うことが必須条件なので、小型、長時間駆動、低価格である必要があり、PCのような高機能デバイスを組み合わせた構成にすることができない。
【0021】また、現状でも、物理的には、PDAとプリンタを接続して印刷を行うことは可能であるが、この場合の印刷結果はま、PDAからはプリンタエミュレーションを用いないで、単純なASCIIコードを出力する程度になるので、ASCII文字を印刷するくらいしかできない。このようなシステムでは、カラー印刷やグラフィック印刷もできないので、メールの内容を印刷して見る程度の機能しか実現できない。
【0022】PDAを使ったモバイルコンピューテイングで、データベース上の文書データファイル101をプリンタ106に印刷するまでの動作を図2を参照して説明する。外出先のPDA105が自宅内のホームサーバ102に対してRAS等のサービスを用いて接続され、ホームサーバ102のデータベースから印刷を行いたい文書データファイル101が選択される。ホームサーバ102は選択された文書データDOCを読み出し、さらに、その文書データDOCをプリンタのエミュレーションに合わせてイメージデータPRNに変換する。得られたイメージデータPRNはモデム103を介して一般公衆回線に送信される。PDA105は携帯電話の機能を有するので、基地局104を介して一般公衆回線に対して無線の接続を行い、イメージデータPRNを基地局104を介して受信する。そして、受信されたイメージデータPRNはプリンタ106に対してそのまま出力され、イメージデータPRNに基づき印刷される。
【0023】・・・略・・・
【0024】この構成は、外出先で用いたPDA105自体の機能が、プリンタ106に対してデータ変換を行える機能を持っていない場合に有効である。
【0025】・・・略・・・
【0026】・・・略・・・
【0027】図5は図2のPDA105の動作の一例を示すフローチャートである。S1051にて、無線通信部1051から一般公衆回線を経由してホームサーバ102に接続される。このときの操作は、表示部1055上のダイアルアップ接続のアイコンをクリックしてホームサーバへの接続動作が実行される。ついで、S1052にて、ホームサーバ102に対して印刷を行うデータファイルが選択される。PDA105の表示部1055にホームサーバ102上のデータファイルリストが表示され、そのデータファイルリストから必要なファイルが選択されるようになっている。そして、S1053にて、選択されたデータファイルをプリンタのエミュレーションに合わせたイメージデータに変換する指示を与える。これはホームサーバ102上で実行するデータコンバージョンの部分であり、プリンタの種類に合わせたドライバを使い、サーバ上のデータファイルをイメージデータに変換することが可能である。S1054にて、イメージデータをモデム103を介して一般公衆回線に送信させる。S1055にて、PDA105は無線通信部1051を経由してイメージデータを受信する。受信したイメージデータはPDA105内部のRAM1054に貯めることなく、そのままプリンタに対して出力される。S1056にて、インタフェース部1057を介しプリンタ106にイメージデータを出力する。S1057にて、ホームサーバ102との接続回線を切断し、PDA105による印刷処理を完了させる。
【0028】ここで、S1053で実行されるホームサーバ102によるデータコンバートについて説明すると、このホームサーバ102で扱うことのできるデータファイルの種類は、ホームサーバ102にインストールされているアプリケーションによって、対応するデータの種類が決定される。すなわち、ホームサーバ102自体でデータファイルを読み出し印刷するときと同様の処理を、PDA105の指示に応じて行うのが本実施の形態であるので、ホームサーバ102上でのデータ処理としては特殊なことを行う必要はない。
【0029】また、プリンタ106については、一般的に使われている汎用プリンタを用いて、そのプリンタに対応したプリンタドライバがホームサーバ102にインストールしてあれば動作するので、システム環境については特殊なデバイスを用いる必要はない。
【0030】以上切々したような処理を行うことにより、ホームサーバ102上のデータファイルを、PDA105に接続されたプリンタ106で印刷を行う場合に、PDA105は印刷したいデータファイルとプリンタ106の種類に合わせたデータフォーマットを選択し、ホームサーバ102に対して指示することにより、その指示情報を基に、ホームサーバ102はプリンタ106に合わせたデータフォーマットにデータファイルを変換し、PDA105はホームサーバ102から送信されたプリントイメージデータを受信し、プリンタ106にそのまま出力するデータトランスレート動作を行うことにより、印刷処理をすることが可能となる。」(下線は当審で付加した。)


3.対比
本願発明を引用例1発明と対比すると、

(a)引用例1発明の「移動体通信端末」「ホストコンピュータ」「プリンタ」が、それぞれ本願発明の「モバイルデバイス」「サービスサーバ」「プリンタ」に相当する。

(b)本願発明における「永久的なレコード」とはプリンタによる印刷物であって、「モバイルデバイスのロケーションに該サービスの永久的なレコードを生成する」とは、モバイルデバイスの近隣で印刷物が生成されるということであるから、引用例1発明の「移動体通信端末に、各種サービスを提供し、移動体通信端末の近隣に設置されたプリンタにおいて印刷する方法」は本願発明の「モバイルデバイスにサービスを提供し、該モバイルデバイスのロケーションに該サービスの永久的なレコードを生成する方法」に相当する。

(c)引用発明の「ホストコンピュータが、移動体通信端末からのコマンドにより、出力対象となるデータをデータベースから読み出す」工程は、本願発明の「前記サービスデータを作成するために、サービスのための前記要求を処理する」工程に相当する。

(d)本願発明の「前記モバイルデバイスに該入力データを送信するステップであって、前記モバイルデバイスは、前記サービスの永久的なレコードを提供するために、該入力データを、前記モバイルデバイスのロケーションにある前記特定のプリンタに通信する」工程において、「該入力データ」とは、プリンタへの入力データであり、印刷を行うデータであるから、引用例1発明の「出力対象となるデータ」に相当し、本願発明の「永久的なレコード」とは上記(b)で言及したように印刷物を意味しており、また、本願発明の「前記モバイルデバイスのロケーションにある前記特定のプリンタ」とはモバイルデバイスの近隣に位置するプリンタを意味している。したがって、引用例1発明の「ホストコンピュータが、出力対象となるデータを、移動体通信端末に送信するステップであり、移動体通信端末は出力対象となるデータを近隣のプリンタに送信し、印刷する」工程が、本願発明の「前記モバイルデバイスに該入力データを送信するステップであって、前記モバイルデバイスは、前記サービスの永久的なレコードを提供するために、該入力データを、前記モバイルデバイスのロケーションにある前記特定のプリンタに通信する」工程に相当する。

そうすると、本願発明と引用例1発明は以下の[一致点]で一致し、以下の[相違点1]?[相違点3]で相違する。

[一致点]
「モバイルデバイスにサービスを提供し、該モバイルデバイスのロケーションに該サービスの永久的なレコードを生成する方法であって、該方法は、
サービスサーバは、
前記モバイルデバイスによって送信されたサービスのための要求を受信し、
サービスデータを作成するために、サービスのための前記要求を処理するものである、ステップと、
前記モバイルデバイスに該入力データを送信するステップであって、前記モバイルデバイスは、前記サービスの永久的なレコードを提供するために、該入力データを、前記モバイルデバイスのロケーションにある前記特定のプリンタに通信する、ステップと
を包含する、方法。」

[相違点1]
本願発明は「サービスサーバから、プリントサーバにあるサービスデータを受信するステップ」を有するのに対して、引用例1発明はそのようなものではない点。

[相違点2]
本願発明においては「該プリントサーバは、種々の特定のプリンタに印刷されるプリントの品質を最適化するために格納されたプリントデータを含むもの」であり、さらに「前記プリントサーバにおいて、前記サービスデータおよび前記識別された特定のプリンタのための格納された前記プリントデータを処理して、前記特定のプリンタのための前記最適の品質プリントを生成する様式で特定のプリンタに対する入力データを生成するステップ」を有しているのに対して、引用例1発明はこのような構成を有さない点。

[相違点3]
本願発明は、サービスサーバが「前記サービスデータがプリントされる、前記モバイルデバイスのロケーションにある特定のプリンタを識別する情報を受信し」ているのに対して、引用例1発明はこのような構成を有さない点。


4.判断
上記相違点について検討する。

(1)[相違点1]について
相違点1とした本願発明の「サービスサーバから、プリントサーバにあるサービスデータを受信するステップ」は、平成22年4月26日に提出された意見書によれば、「一旦トランザクションが首尾よく完了されると、サービス165に対するデータのリクエスト処理および生成は、完了する。処理のその時点において、サービスサーバ70からモバイルデバイス10にメッセージが送られることができ、サービスに対するリクエストが完了されたことを確実にする(工程145)」という意味である。しかしながら、何らかの処理の完了に際し、メッセージを送出することは、工程管理の面から適宜なされる周知事項にすぎないから、相違点1とした構成は、当業者が引用例1発明及び周知の事項から容易に想到できたものである。

(2)[相違点2]について
上記摘記事項「2.(2)(エ),(オ)」から、引用例2には、携帯情報端末から単純なASCII文字を印刷だけではなく、カラー印刷やグラフィック印刷などもできるようにするため、ホームサーバにおいて、インストールされているドライバの中からプリンタの種類に合わせたドライバを使い、イメージデータに変換してから携帯情報端末に送信し、接続したプリンタによって印刷する技術が記載されている。また、引用例2に記載された事項は、移動体通信端末においてプリントを行うという引用例1発明と同様の分野に属するものである。したがって、引用例2に記載された上記技術を引用例1発明に適用し、種々の特定のプリンタに印刷されるプリントの品質を最適化するために格納されたプリントデータを含むサーバにおいて、識別された特定のプリンタのための格納された前記プリントデータを処理して、前記特定のプリンタのための前記最適の品質プリントを生成する様式で特定のプリンタに対する入力データを生成する構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。そしてその際、本願発明の「プリンタサーバ」に相当するサーバを設けるようにし、相違点2とした構成とすることは、当業者が設計に際して適宜なし得た程度の事項にすぎない。

(3)[相違点3]について
上記摘記事項「2.(2)(オ)」(特に下線部参照)によれば、引用例2には、携帯情報端末においてプリンタの種類に合わせたデータフォーマットを選択し、サーバに指示し、サーバ側ではこの指示情報を元にした処理を行う技術、すなわち、プリンタの種類を特定する情報をサーバが受信する技術が記載されている。そうしてみると、上記「[相違点2]について」において検討したように、引用例1発明に引用例2に記載された技術事項を適用する際、上述した、プリンタの種類を特定する情報をサーバが受信する技術を引用例1発明に適用することにより、相違点3とした本願発明の構成は当業者が容易に想到できたものである。

そして、本願発明の効果も引用例1発明、引用例2に記載された技術事項及び周知の事項から予測できる程度のものにすぎない。


5.むすび
上記「4.」で述べたとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例1発明、引用例2に記載された技術事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-01 
結審通知日 2010-06-04 
審決日 2010-06-15 
出願番号 特願2003-501176(P2003-501176)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 幸一谷口 信行  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 小林 義晴
山本 章裕
発明の名称 モバイルデバイスに提供されるサービスの永久的なレコードを生成する方法およびシステム  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ