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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F22D
管理番号 1225929
審判番号 不服2008-2466  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-05 
確定日 2010-10-29 
事件の表示 特願2000-189139号「ボイラプラントとボイラプラントの給水処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月 9日出願公開、特開2002- 5410号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判請求に係る出願は、平成12年 6月23日の出願であって、平成19年 9月 3日付けで拒絶理由が通知(発送:平成19年 9月11日)され、平成19年11月 9日に拒絶理由に対する意見書と補正書が提出され、平成19年12月14日付けで拒絶査定(発送:平成20年 1月 7日)がなされ、これに対し、平成20年 2月 5日に拒絶査定不服審判が請求され、同年 2月14日に補正書が提出されたが、この補正は、当審で平成22年 3月 9日付け(発送:平成22年 3月24日)で却下し、平成19年11月 9日に補正された特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明に対して、平成22年 3月 9日付け(発送:平成22年 3月10日)で特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨の拒絶理由を通知し、それに対して、意見書が平成22年 5月 6日に提出され、さらに、平成19年11月 9日に補正された特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明に対して、平成22年 6月 2日付け(発送:平成22年 6月 9日)で特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨の拒絶理由を通知し、それに対して、意見書と補正書が平成22年 8月 4日に提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成22年 8月 4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「ボイラと、該ボイラからの蒸気を用いる発電用の蒸気タービンと、該蒸気タービンで使用した蒸気から復水を得て、該復水を脱塩処理してボイラに供給するボイラ給水系統を備えたボイラプラントにおいて、空気中の酸性成分のみを除去する酸性成分除去装置と、該酸性成分除去装置で得られ、酸性成分以外の窒素ガス及び酸素を含む成分はそのまま残存する空気をボイラ給水系統に注入する空気注入装置とを備えたことを特徴とするボイラプラント。」

3.平成22年 6月 2日付け拒絶理由で引用した刊行物1?4及びその記載事項

刊行物1:特開平6-94209号公報
刊行物2:特開平8-178207号公報
刊行物3:特開昭62-46135号公報
刊行物4:特開昭52-127467号公報

(1)刊行物1には、図面とともに特に次の記載がある。

ア.「【産業上の利用分野】本発明は、発電用等の蒸気ボイラプラントのボイラ給水処理方法に関する。」(第【0001】段落)

イ.「一方酸素注入処理においては、鉄系材料表面にヘマタイト(Fe_(2)O_(3))が生成し保護皮膜となる。ヘマタイトはマグネタイトに比して溶解度が遥かに小さく、結晶粒子も小さいので腐食抑制効果もマグネタイトよりも大きく、鉄の溶出量は小さくなる。更に高流速部でも、スケール(マグネタイト+ヘマタイト)は波状にならないので圧力損失を増加させることもない。」(第【0004】段落)

ウ.「【実施例】本発明の一実施例を、図1によって説明する。図1は本発明による方法を貫流ボイラユニットに用いた場合の系統図であり、系統水は次のように流れる。復水器2→復水ポンプ3→復水脱塩装置4→復水昇圧ポンプ5→低圧給水加熱器6→脱気器7→脱気器貯水槽8→給水ポンプ9→高圧給水加熱器10→節炭器11→ボイラ12→タービン1→復水器2。
この貫流ボイラユニットにおいては、各機器及び各配管を防食するため、図3に示す場合と同様に、アンモニア注入装置13を用いて復水脱塩装置4の後流にアンモニアを注入し、節炭器11の入口のボイラ給水のpHを8.0?8.5に調整する。また同時に、酸素注入装置14を設け、復水器2の出口に酸素を酸素注入弁15を経て注入し、節炭器11の入口でボイラ給水中の酸素濃度が0.02?0.2mg/lとなるようにする。」(第【0016】段落、第【0017】段落)

エ.「なお、前記実施例では、酸素をボイラ給水に注入するようにしているが、復水脱塩装置4の上流でボイラ給水に注入される酸素としては、純酸素ガスの代りに普通の空気を注入することも可能である。空気には300ppm程度の炭酸ガスや微量の二酸化硫黄が含まれているが、pH8?8.5の領域では、これらは大部分がHCO_(3)^(-)、CO_(3)^(2-)やHSO_(3)^(-)とイオン化しているので、復水脱塩装置4でこれらを除去することができ、後流のボイラ12やタービン1で障害を惹き起す恐れがない。」(第【0024】段落)

これらの記載事項ア.?エ.及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「ボイラ12と、発電用等の蒸気ボイラプラントのタービン1と、復水器2で復水を得て、該復水を復水脱塩装置4で脱塩処理して、復水器2→復水ポンプ3→復水脱塩装置4→復水昇圧ポンプ5→低圧給水加熱器6→脱気器7→脱気器貯水槽8→給水ポンプ9→高圧給水加熱器10→節炭器11→ボイラ12からなるボイラ給水系統を備えた蒸気ボイラプラントにおいて、空気を復水脱塩装置4の上流で注入し、空気中の炭酸ガスや二酸化硫黄を復水脱塩装置4で除去する蒸気ボイラプラント。」

さらに、刊行物1には、図面とともに特に次の記載もある。

オ.「一方、復水器2の出口に酸電気伝導度計(H型強酸性陽イオン交換樹脂を通してpH調整剤のアンモニアを吸着除去して、ボイラ給水中の溶解塩類のみを酸の形に置換して電気伝導度を測定するもの)16を設置する。また、前記酸素注入装置14内に収容された酸素は、復水脱塩装置4の出口に酸素注入弁17を経て、節炭器11入口でボイラ給水中の酸濃度が0.02?0.2mg/lとなるように注入されるようになっている。前記酸電気伝導度計16の信号により、前記酸素注入弁15と酸素注入弁17の開閉を自動制御する。
すなわち、酸電気伝導度計16が検出するボイラ給水の酸電気伝導度の値が0.2μS/cm以下では弁15を「開」、かつ、弁17を「閉」として酸素は復水器2の出口においてボイラ給水に注入され、ボイラ給水中に不純物が多く含まれて、酸電気伝導度計16の検出するボイラ給水の酸電気伝導度の値が0.2μS/cmを超えると、酸電気伝導度計16の信号により自動的に弁15を「閉」、かつ、弁17を「開」として、不純物の多いボイラ給水が復水脱塩装置4で浄化された後にボイラ給水に酸素が注入される。
通常の貫流ボイラの運転状態では、復水器2におけるボイラ給水(復水)中の溶存酸素は数ppbで、その酸電気伝導度(純度)は0.2μS/cmであって、図3(a)に示すように、通常の貫流ボイラの給水のpH8.5近傍では腐食量は極めて大きくなる。しかし、本実施例では、酸電気伝導度計16で検出する復水器2の出口のボイラ給水の酸電気伝導度が0.2μS/cm以下の場合には、復水器2の出口で酸素を注入しているために、図3(c)に示すように、復水器2の出口の酸素注入点から復水脱塩装置4までの腐食量を著しく小さくすることができる。
一方、復水器2における冷却水漏洩等によってボイラ給水の酸電気伝導度が高くなると、酸素濃度が高い時には図3に示すように、腐食量が大きくなる。本実施例では、電気伝導度計16で検出する復水器2の出口のボイラ給水の酸電気伝導度が0.2μS/cmを超えた場合には、ボイラ給水への酸素の注入点が復水器2の出口から復水脱塩装置4の出口に切換えられる。このようにして、復水脱塩装置4でボイラ給水の不純物が除去され酸電気伝導度が低下した状態の復水脱塩装置4の出口のボイラ給水に酸素が注入されるために、復水器2出口から復水脱塩装置4までの腐食を防止することができる。」(第【0018】段落?第【0021】段落)

この記載事項オ.及び図示内容を総合し、整理すると、刊行物1には、次の事項(以下「実施例1」という。)も記載されている。

「復水器2の出口に酸電気伝導度計16を設置し、酸電気伝導度計16が検出するボイラ給水の酸電気伝導度の値が0.2μS/cm以下では弁15を「開」、かつ、弁17を「閉」として酸素は復水器2の出口においてボイラ給水に注入され、ボイラ給水中に不純物が多く含まれて、酸電気伝導度の値が0.2μS/cmを超え、かつ酸素濃度が高い時には、腐食量が大きくなるので、これを防ぐため、酸電気伝導度計16の検出するボイラ給水の酸電気伝導度の値が0.2μS/cmを超えると、酸電気伝導度計16の信号により自動的に弁15を「閉」、かつ、弁17を「開」として、不純物の多いボイラ給水が復水脱塩装置4で浄化された後にボイラ給水に酸素が注入することにより、酸電気伝導度計16で検出する復水器2の出口のボイラ給水の酸電気伝導度が0.2μS/cm以下の場合には、復水器2の出口で酸素が注入されるために、復水器2の出口の酸素注入点から復水脱塩装置4までの腐食量を著しく小さくすることができ、電気伝導度計16で検出する復水器2の出口のボイラ給水の酸電気伝導度が0.2μS/cmを超えた場合には、ボイラ給水への酸素の注入点が復水器2の出口から復水脱塩装置4の出口に切換えられ、復水脱塩装置4でボイラ給水の不純物が除去され酸電気伝導度が低下した状態の復水脱塩装置4の出口のボイラ給水に酸素が注入されるために、復水器2出口から復水脱塩装置4までの腐食を防止することができる。」

(2)刊行物2には、図面とともに特に次の記載がある。

ア.「【産業上の利用分野】本発明はボイラの給水経路に腐食防止を行うための保護皮膜形成方法に関するものである。」(第【0001】段落)

イ.「【発明が解決しようとする課題】酸素ボンベ中には、酸素ガス以外にも一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物及び炭化水素等の腐食性ガスが含まれている。ところが、従来のボイラの給水経路の保護皮膜形成方法において、それらの腐食性ガスの濃度は、高いものであった。そのため、復水中に酸素ガスを注入する際、それらの腐食性ガスは、酸素ガスと一緒に注入されてしまう。その結果、水管の内面に保護皮膜が形成される前に、腐食性ガスにより、水管の内面は腐食され易くなる。」(第【0003】段落)

ウ.「【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するために請求項1の発明は、ボイラと復水器内との間に設けられ、復水器内で復水されたボイラ水をボイラに戻すための給水管を備え、給水管を流れるボイラ水に対し、腐食性ガス成分の低濃度なる濃縮された酸素ガスを供給することを要旨とするものである。」(第【0007】段落)

エ.「図1に示すように、汽力発電プラント1には酸素製造装置2が設けられている。まず、汽力発電プラント1について説明する。汽力発電プラント1にはボイラ3が設けられている。ボイラ3は火炉4と、火炉4に接続された節炭器5とを備えている。節炭器5は火炉4から排出される燃焼ガスを回収し、火炉4に供給される給水の余熱に利用される。火炉4内にはボイラ水が通過する図示しない水管が設けられ、水管の外部と燃焼ガスとが接触することにより蒸気が発生する。
火炉4の蒸気吹出し口には蒸気管6が接続され、・・・・」(第【0012】段落、第【0013】段落)

オ.「前記蒸気管6の下流端は蒸気タービン12に接続されている。・・・・蒸気タービン12には復水器13が接続されている。・・・・復水器13で復水されたボイラ水は、この復水ポンプ17によりボイラ3の節炭器5に圧送される。・・・・」(第【0015】段落、第【0016】段落)

カ.「・・・・酸素製造装置2について説明する。酸素製造装置2には酸素発生器27が備えられている。本実施例における酸素発生器27は、既に公知技術となっているPSA(Plessure Swing Adsorption:圧力スイング吸着)法により酸素を製造するものである。
PSA法とは、高圧の下で空気を吸着剤としてのゼオライトに接触させ、その空気中に含まれる窒素ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素をゼオライトにより吸着させ、高純度(80.0%?99.5%)の酸素を製造する方法である。・・・・」(第【0021】段落、第【0022】段落)

キ.「上記の表1によれば、酸素ボンベの酸素ガスと、PSA法とにより製造される酸素ガス中には、いずれも若干の腐食性ガスとが含まれている。しかし、PSA法によれば、一酸化炭素、二酸化炭素及び窒素酸化物の濃度は、酸素ボンベの場合と比較して10分の1になっている。また、PSA法による炭化水素の濃度は、酸素ボンベの場合と比較して30分の1になっている。」(第【0025】段落)

ク.「酸素発生器27にて製造された酸素ガスは、コンプレッサ30の駆動により酸素供給管28を介して給水管16に供給される。そして、酸素ガスはボイラ水に溶解され、給水管16内で酸素水となる。給水管16に酸素ガスが供給される際、制御回路は、電動コントロールバルブ33の開度を制御し、給水管16内の酸素濃度を150ppbにする。
給水管16の内壁面に酸素水が接触すると、給水管16の内壁面には3価の酸化鉄(Fe_(2)O_(3))からなる保護皮膜が形成される。この保護皮膜を形成する際、酸素水中に含まれる腐食性ガスの濃度は、極めて低いため、給水管16の内壁面が腐食され難い。
従って、本実施例のボイラの給水経路の保護皮膜形成方法によれば、PSA法により製造される酸素ガスに含まれる腐食性ガスの濃度は、酸素ボンベ等に含まれる濃度よりも極めて低い。そのため、保護皮膜の形成時において、腐食性ガスの濃度の低い酸素水を生成することができ、酸素水と給水管16の内壁面とが接触しても、給水管16の内壁面が腐食するのを低減できる。」(第【0033】段落?第【0035】段落)

以上の記載事項ア.?ク.及び図示内容を総合すると、刊行物2には、次の事項が記載されている。

「ボイラ3で得られる蒸気を蒸気タービン12で使用した後、該蒸気から復水器13で復水を得て、該復水を再びボイラ3の節炭器5に供給する給水系統において、空気中の窒素ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素をゼオライトにより吸着させ、除去して、腐食性ガスの濃度を低くし、酸素濃度を高くした空気を給水系統に注入するボイラの給水経路の給水管16に保護皮膜を形成するための給水処理方法。」

(3)刊行物3には、図面とともに特に次の記載がある。

ア.「[発明の技術分野]
本発明は、酸性ガス除去フィルタを装着した室内空気冷却器に関するものである。
[発明の技術的背景とその問題点]
工業地域に設置される電機機器は、亜硫酸ガス、硫化水素、塩化水素等の腐食性ガスの影響で、構成部品が腐食し、強度の低下や分解不可能等のトラブルを発生することがある。
これら腐食性ガスの発生を完全になくすことは、困難であるから、現実的には如何にしてその量を減少させるかに対策がとられている。この対策としては、
(1)腐食性ガスの発生源にシェルタを設置し、排気することにより、腐食性ガスの拡散を防止する。
(2)電機機器を密閉化し、外部からの腐食性ガスの侵入を防止する。
(3)活性炭のような吸着材を用いて腐食性ガスを除去する。
がある。ところで、
(1)の場合、極めて効果的な対策ではあり、腐食性ガス濃度を1/100程度に低減ずることができる。しかしながら、完全に腐食性ガスをなくすことはできない。
(2)の場合、(1)の場合と同様に効果的な対策であるが、温度上昇の大きい電機機器に対しては適用できない。
(3)の場合、吸着材の種類により吸着できるガスの種類や吸着能力が異なり、全ての酸性ガスを1種類の吸着材で吸着除去することができない。
[発明の目的]
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、酸性ガスを除去して電機機器等の腐食を防止する室内容器冷却器を提供することを目的とするものである。
[発明の概要]
本発明は、空気取入部から吸引した空気を箱体内部で冷却した後排出する室内空気冷却器において、空気取入部に、吸引した空気を接触させるアルカリ溶液を含浸した酸性ガス除去フィルタを設け、吸入した空気中の酸性ガスを化学反応により除去するようにしたものである。」(第1頁左欄第11行?第2頁左上欄第12行)

イ.「[発明の効果]
本発明は、以上のように構成されているから、簡易な構成で極めて効果的に酸性ガスを除去することができ、電機機器等の腐食によるトラブルを防止し、保守点検を容易とすることができる。」(第2頁右下欄第10行?第14行)

以上の記載及び図面を参照すると、刊行物3には、次の事項が記載されている。

「工業地域に設置される電機機器は、亜硫酸ガス、硫化水素、塩化水素等の腐食性ガスの影響で、構成部品が腐食し、強度の低下や分解不可能等のトラブルを発生するが、活性炭のような吸着材を用いて腐食性ガスを除去する場合は、吸着材の種類により吸着できるガスの種類や吸着能力が異なり、全ての酸性ガスを1種類の吸着材で吸着除去することができないが、アルカリ溶液を含浸した酸性ガス除去フィルタを設け、吸入した空気中の酸性ガスを化学反応により除去することにより、簡易な構成で極めて効果的に酸性ガスを除去することができる。」

(4)刊行物4には、図面とともに特に次の記載がある。

ア.「本発明は酸性ガスとアミンとの蒸気相反応、それに続くガス流から反応生成物を分離することによリ、ガス流から酸性ガス、例えば酸化窒素、二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、ハロゲンガス、ハロゲン酸ガス、有機酸ガス例えばギ酸、酢酸等を除くことによつてガス流を精製する方法に関する。本発明は特に化学工程末端ガス、ガス、石炭および油を燃焼させる発電所からの燃焼生成物、金属機械操作時の排出ガスおよび酸化窒素汚染の問題が存在するその他のガス放出物から窒素の酸化物を徐くのに有用である。」(第2頁右上欄第11行?左下欄第2行)

イ.「・・・・ガス流とアミン蒸気を混合してアミンと酸性ガスの間の蒸気相反応を行わせ、場合によつては更にアミンと酸性ガスの間の液相反応を行わせ、ガス流から反応生成物を分離し、精製されたガス流を大気中に放出することによつて達成される。」(第3頁右下欄第4行?第9行)

以上の記載及び図面を参照すると、刊行物4には、次の事項が記載されている。

「酸性ガスとアミンとの蒸気相反応、場合によつては更にアミンと酸性ガスの間の液相反応を行わせ、ガス流から酸性ガス、例えば酸化窒素、二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、ハロゲンガス、ハロゲン酸ガス等を除く。」

4.対比・判断
本願発明(以下「前者」という。)と引用発明(以下「後者」という。)を対比する。
後者の「ボイラ12」は前者の「ボイラ」に相当し、同様に、「発電用等の蒸気ボイラプラントのタービン1」は「ボイラからの蒸気を用いる発電用の蒸気タービン」に、「蒸気ボイラプラント」は「ボイラプラント」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「復水器2で復水を得」ることは、前者の「蒸気から復水を得」に相当する。
さらに、後者の「復水器2→復水ポンプ3→復水脱塩装置4→復水昇圧ポンプ5→低圧給水加熱器6→脱気器7→脱気器貯水槽8→給水ポンプ9→高圧給水加熱器10→節炭器11→ボイラ12からなるボイラ給水系統」は、前者の「復水をボイラに供給するボイラ給水系統」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明は次の一致点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]
「ボイラと、該ボイラからの蒸気を用いる発電用の蒸気タービンと、該蒸気タービンで使用した蒸気から復水を得て、該復水を脱塩処理してボイラに供給するボイラ給水系統を備えたボイラプラントにおいて、
空気をボイラ給水系統に注入するボイラプラント。」

[相違点1]
給水に注入する空気について、前者では、「空気中の酸性成分のみを除去する酸性成分除去装置酸性成分除去装置と、該酸性成分除去装置で得られ、酸性成分以外の窒素ガス及び酸素を含む成分はそのまま残存する」空気であるが、後者では、空気をなんら処理することなくボイラの復水脱塩装置4の上流に注入した点。

[相違点2]
空気を注入する際に、前者では、「空気注入装置」を備えているが、後者では、「空気注入装置」については、不明である点。

ア.相違点1について
引用発明では、空気中に有って、給水配管に悪影響を及ぼすガスについては、空気を復水脱塩装置4の上流で注入することにより、空気中の炭酸ガスや二酸化硫黄を復水脱塩装置4で除去し、窒素ガス及び酸素を含む成分はそのまま残存している。ところが、空気を復水脱塩装置4の下流で注入すると、空気中の炭酸ガスや二酸化硫黄を復水脱塩装置4で除去できないので、何らかの装置を設け、空気中の炭酸ガスや二酸化硫黄を除去してから窒素ガス及び酸素を含む成分はそのまま残存している空気を注入する必要があることは、当業者にとって自明の技術的事項である。
つまり、本願発明のように、空気を給水に注入する位置を脱塩装置の前か後かを特定しないで、空気を注入するためには、必ず空気中の炭酸ガスや二酸化硫黄を除去する装置を設ける必要があることは、当業者にとって自明の技術的事項である。
また、脱塩装置と酸素の注入位置について、酸素を給水に注入する刊行物1の実施例1によると、通常は復水器2の出口から下流で脱塩装置の上流に酸素を注入するが、復水器2の出口の給水の酸電気伝導度が高い場合には、給水の酸素濃度を高くすると腐食量が大きくなるので、それを避けるために、給水が脱塩装置により不純物を除去され、酸電気伝導度が低くなった脱塩装置の下流に酸素を注入し、復水器2出口から復水脱塩装置4までの腐食を防止している。つまり、酸素の注入位置を給水の状態により、脱塩装置の上流と下流を選択して供給しているので、酸素(空気中の酸素も含む)の供給位置が脱塩装置の上流に限定されるものでもない。
刊行物2には、ボイラ給水に酸素を供給するために、空気から酸素以外のガスをゼオライトにより吸着除去し、酸素濃度を高くした空気を給水系統に注入する事項が記載されている。
さらに、刊行物3には、空気中の腐食性ガスにより電機機器が腐食するので、その内の酸性ガスを吸着材で除去しようとしても困難であるから、アルカリ溶液を含浸した酸性ガス除去フィルタを設け、吸入した空気中の酸性ガスを化学反応により除去することにより、簡易な構成で極めて効果的に酸性ガスを除去する事項が記載されている。
また、刊行物4には、酸性ガスとアミンとの蒸気相反応、場合によつては更にアミンと酸性ガスの間の液相反応を行わせ、ガス流から酸性ガス、例えば酸化窒素、二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、ハロゲンガス、ハロゲン酸ガス等を除く事項が記載されている。
以上のような事項を総合的に考え合わせれば、相違点1は、引用発明において、空気を復水脱塩装置4の上流で注入し、空気中の炭酸ガスや二酸化硫黄を復水脱塩装置4で除去することに代えて、実施例1に示されるように脱塩装置の下流でも空気を用いるために、脱塩装置で行う空気の処理に代えて、空気を同様の処理を行う装置を介して給水に注入するように変更し、空気を処理して給水に供給する装置として、刊行物2に記載された酸素を給水系に注入するするために、空気を酸素製造装置で処理し、処理した後の気体を給水に注入する事項、及び化学的な処理として刊行物3、4に記載された事項をそれぞれ参酌して、除去対象のガスを酸性ガスに限定した酸性成分除去装置に変更して設けることにより、当業者が容易に想到できたというべきである。

イ.相違点2について
引用発明で空気注入装置を設ける点について明らかではないが、給水系に気体を注入するために装置を設ける必要があることは自明(例えば、刊行物1に記載された実施例1では、酸素を注入するために、酸素注入装置14を設を設けている。)であり、空気を注入する引用発明において、空気注入装置を有することは明らかである。
したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。

[作用効果について]
そして、本願発明の奏する作用効果をみても、引用発明および刊行物2?4に記載された事項から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明に、刊行物2?4に記載された事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に、刊行物2?4に記載された事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-26 
結審通知日 2010-09-01 
審決日 2010-09-14 
出願番号 特願2000-189139(P2000-189139)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F22D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大屋 静男  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 佐野 遵
長浜 義憲
発明の名称 ボイラプラントとボイラプラントの給水処理方法  
代理人 松永 孝義  

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