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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20056282 審決 特許
不服200627219 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12Q
管理番号 1225961
審判番号 不服2007-18840  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-05 
確定日 2010-10-28 
事件の表示 特願2000-574294「形質細胞腫瘍細胞の検出又は測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月30日国際公開、WO00/17395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は,1999年8月20日(日本国特許庁受理,優先権主張平成10年9月18日)を国際出願日とする出願であって,平成19年5月30日付で拒絶査定がなされ,平成19年7月5日にこれを不服とする審判請求がなされるとともに平成19年8月3日に手続補正がなされ,その後,平成22年5月27日付で,拒絶理由が通知され,これに対し,平成22年7月30日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。
そしてその請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成22年7月30日に提出された手続補正書により補正された本願明細書及び図面の記載からみて以下のとおりのものである。

「【請求項1】 サンプル中の形質細胞腫瘍細胞の検出又は測定方法において,形質細胞腫瘍細胞に特異的な又は強く発現されているポリヌクレオチドを増幅し,そして増幅生成物を検出又は測定することを含んで成り,前記ポリヌクレオチドがHM1.24抗原をコードするmRNAであり,前記増幅方法がRT-PCRであり,当該RT-PCR法に配列番号3に示す塩基配列を有するプライマーと塩基配列4に示す塩基配列を有するプライマーを用いることを特徴とする方法。」

第2 当審の拒絶理由
平成22年5月27日付の拒絶理由の概要は,本願発明は,本願優先日前に頒布されたBlood, 84 (1994) p.1922-1930(以下,「引用例1」という。),特開平10-155494号公報(以下,「引用例2」という。)及び癌と化学療法, 24 (1997) p.257-265(以下,「引用例3」という。)に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,また,本願発明について,本願は,明細書及び図面の記載が,平成14年法律第24号による改正前の特許法第36条第4項(以下,単に「特許法第36条第4項」という。)に規定する要件を満たしていないというものである。

第3 当審の判断
1.進歩性について
(1)引用例
引用例1には,「HM1.24と名付けられ,新しい終末B細胞に制限された抗原を定める単クローン抗体(MoAb)は,ヒトプラズマ細胞系に対して発生した。アンチHM1.24と呼ばれたMoAbは,多発性骨髄腫かワルデンシュトローム型マクログロブリン血症を持った患者の骨髄か末梢血から得たモノクローンの腫瘍性のプラズマ細胞と同様に,5つの異なる人間のミエローマ細胞系に反応した。HM1.24抗原はまた,成熟したIgを分泌するB細胞(プラズマ細胞およびリンパプラズマ細胞)で発現したが,正常な個人あるいはプラズマ細胞非関連の悪性腫瘍を持った患者の末梢血,骨髄,肝臓,脾臓,腎臓あるいは心臓に含まれていた他の細胞によっては,発現しなかった。およそ84,000のサイト/細胞を示す9.2×10^(8)M^(-1)の親和定数で,人のRPMI 8226ミエローマ細胞へ,アンチHM1.24 MoAbは結合した。還元条件下の免疫沈殿分析によって,このMoAbは,29?33 kDの分子量の膜糖タンパク質を認識した。我々の研究は,HM1.24関連タンパク質が後期のB細胞成熟の特定のマーカーを提供し,潜在的に多発性骨髄腫および関連するプラズマ細胞疾患の免疫療法用の目標抗原として役立つことを示す。」(要約の項)と記載されている。

引用例2には,HM1.24抗原のcDNA配列(配列番号103)が記載され,段落【0005】には,「Goto, T.らはヒト形質細胞を免疫して得られた,B 細胞系列に特異的に発現する分子量が29-33kDaの抗原を認識するマウスモノクローナル抗体HM1.24を報告している(Blood (1994) 84, 1922-1930)。モノクローナル抗体HM1.24が認識する抗原は,B 細胞の終末分化に関連した抗原であると考えられること(Goto, T. et al., Jpn. J. Clin. Immun. (1992) 16, 688-691),および形質細胞腫を移植したマウスにモノクローナル抗体HM1.24を投与すると,この抗体が腫瘍に特異的に集積したこと(尾崎修治ら,第19回日本骨髄腫研究会総会プログラム,一般演題3 )から,モノクローナル抗体HM1.24は,ラジオアイソトープで標識することによる腫瘍局在の診断や,ラジオイムノセラピー(radioimmunotherapy)などのミサイル療法に応用することが可能であることが示唆されている。」と記載されている。

引用例3には,「血流中の癌細胞は血行性転移成立の前段階であることに変わりなく,これを特異的かつ高感度に検出することができれば,少なくともハイリスク群の抽出が期待できる。このような考えに基づき,癌遺伝子の変異や組織特異的なmRNAの発現に着目して血液中遊離癌細胞の検出が広く行われるようになってきた。」(はじめにの項)と記載され,
258頁の「2.RT-PCR法」の項には,サイトケラチン,MUC1,PSA,チロシナーゼ,PSMA,MAGE3,AFPなどの上皮性癌細胞で特異的に発現される遺伝子について説明され,
262頁?263頁には定量的RT-PCRについて説明されている。

(2)対比
本願発明と引用例3に記載された発明とを対比すると,上記摘記した引用例3の記載から明らかなように,両者は,「サンプル中の腫瘍細胞の検出又は測定方法において,腫瘍細胞に特異的な又は強く発現されているポリヌクレオチドを増幅し,そして増幅生成物を検出又は測定することを含んで成り,前記増幅方法がRT-PCRであることを特徴とする方法。」で一致するが,以下の点で相違している。
相違点1:本願発明は,形質細胞腫瘍細胞を検出又は測定するものであり,そのために,HM1.24抗原をコードするmRNAを増幅するものであるのに対し,引用例3には,そのようなことは記載されていない点。
相違点2:本願発明は,配列番号3に示す塩基配列を有するプライマーと配列番号4に示す塩基配列を有するプライマーを用いるものであるのに対し,引用例3には,そのようなことは記載されていない点。

(3)判断
相違点1について。
多発性骨髄腫患者の末梢血や骨髄に,骨髄腫細胞があることは周知であるから,引用例3に接した骨髄腫の当業者であれば,上皮性癌細胞ではなく,多発性骨髄腫で特異的に発現している遺伝子を対象に,末梢血や骨髄からその発現を検出すれば,早期診断も含め,多発性骨髄腫の診断ができることが容易に理解できることである。そして,引用例1には,HM1.24抗原が多発性骨髄腫細胞で発現していることが記載され,また,引用例2には,腫瘍の診断の示唆も記載されているのであるから,引用例3の上皮性癌細胞において特異的に発現している癌抗原遺伝子に代えて,HM1.24抗原遺伝子を用いて,定量的RT-PCRなどで形質細胞腫瘍細胞を検出することは,当業者が容易になしえることである。

相違点2について。
引用例2に記載されるHM1.24抗原のcDNA配列から,周知のPCRのプライマーの設計方法により,容易にHM1.24抗原のmRNAを増幅するプライマーを設計できるのであって,配列番号3に示す塩基配列を有するプライマー及び配列番号4に示す塩基配列を有するプライマーは,当業者が容易に設計できるプライマーの一つにすぎないものである。しかも,当業者が容易に設計できる多種のプライマーと比較して,配列番号3に示す塩基配列を有するプライマー及び配列番号4に示す塩基配列を有するプライマーに,当業者が予測できない格別な効果があるものでもない。
そうすると,特定の配列のプライマーだからといって,設計が困難であったものでも,格別顕著な効果があるものでもないから,両プライマーを採用することは,当業者が容易になしえたものとすべきものである。

したがって,本願発明は,引用例1?3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(請求人の反論について)
請求人は,(1)通常PCR法はfalse positiveが生じ検出の精度が良くないことが一般的で,本願の方法は,特定の配列を有するプライマーを用いることで,false positiveを抑えつつ,サンプル中の微量の形質細胞腫瘍細胞の検出又は測定を初めて可能としたこと,
(2)参考文献,Fu et al (EMBO Journal, 1996. Vol.15 pp.4392-4401)やRopponen et al (J Clin Pathol. 2001 Jul:54(7):533-8)の要約に記載されているように,mRNAの発現と蛋白の発現は必ずしも相関しないことは明らかであり,HM1.24蛋白が検出できるからといってHM1.24mRNAが検出できるとは限らないことなどを主張しているので検討する。

(1)の点について,引用例1には,正常のプラズマ細胞も,HM1.24抗原を発現していることが記載され,末梢血や骨髄をサンプルとしたときに,本願発明においても当然に,false positiveが生じるものであるし,本願の明細書の記載を見ても,他のプライマーと比較した記載もなく,特定の配列を有するプライマーを用いることで,false positiveを抑えつつ,サンプル中の微量の形質細胞腫瘍細胞の検出したことが確認できないものである。
(2)の点について,請求人の示す参考文献の要約は,mRNAが転写された後,蛋白質に翻訳されるまでに制御を受けていることが示されているもので,HM1.24mRNAが検出できるからといってHM1.24蛋白が検出できるとは限らないとはいえても,その逆のHM1.24蛋白が検出できるからといってHM1.24mRNAが検出できるとは限らないとはいえないものである。そして,引用例3に記載されるように,多くの癌細胞において,癌抗原のmRNAが発現し検出できているのである。

2.実施可能要件について
引用例1には,正常のプラズマ細胞も,HM1.24抗原を発現していることが記載されている。そうすると,末梢血や骨髄サンプル中のHM1.24抗原mRNAを増幅し検出しても,正常のプラズマ細胞も検出され,false positiveが生じるものであるから,正常のプラズマ細胞を検出しているのか,形質細胞腫瘍細胞を検出しているのか明らかでないことになり,本願発明について,発明の詳細な説明に,当業者が実施できる程度に,明確かつ十分な説明がなされていないことになる。
したがって,本願発明について,本願は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(請求人の反論について)
請求人は,配列番号3の塩基配列を有するプライマーと配列番号4の塩基配列を有するプライマーとの組合せを用いた場合に,ご指摘の懸念は存在しないことは,実施例1の結果から明らかであることを主張しているが,実施例1は,末梢血や骨髄をサンプルとしたものでなく,実施例1の結果から,末梢血や骨髄をサンプルとしたときに,false positiveが生じないとする技術的根拠が不明である。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1ないし引用例3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また,本願発明について,本願は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
したがって,本願に係る他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-26 
結審通知日 2010-08-31 
審決日 2010-09-13 
出願番号 特願2000-574294(P2000-574294)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C12Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深草 亜子  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 内田 俊生
加々美 一恵
発明の名称 形質細胞腫瘍細胞の検出又は測定方法  
代理人 福本 積  
代理人 石田 敬  
代理人 樋口 外治  
代理人 鶴田 準一  
代理人 西山 雅也  
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