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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K |
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管理番号 | 1225986 |
審判番号 | 不服2008-9054 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-10 |
確定日 | 2010-10-28 |
事件の表示 | 特願2005-263713「回転電機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月29日出願公開,特開2007- 82285〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成17年9月12日の出願であって,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成20年1月28日付け手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。 「有底円筒状のフレームと, 前記フレームの開口部を覆って固定されたハウジングと, 前記ハウジングに設けられたフロントベアリング,および前記フレームに設けられたリアベアリングによって回転自在に支持されたシャフトと, 前記シャフトに取り付けられた回転子と, 前記回転子の外周を囲って前記フレームに固定された固定子と, 前記ハウジングの反前記回転子側で前記シャフトに接続されたボスと, 前記シャフトとともに回動し,珪素鋼板を積層した積層コアからなるレゾルバロータと, 前記レゾルバロータの外周を囲って固定され,前記レゾルバロータとの間のギャップパーミアンスを前記レゾルバロータと協同して変化させることによって前記回転子の回転角度を検出するレゾルバステータと を備え, 前記ボスは,ボス本体と,前記ボス本体から前記フロントベアリングに向かって延設されて先端部が前記フロントベアリングに当接したロータ保持部とを有し, 前記レゾルバロータは,前記ロータ保持部に取り付けられていること を特徴とする回転電機。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-339904号公報 (以下「引用刊行物」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は,例えば車両のステアリングの操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置に用いられるモータである回転電機に関するものである。」 ・「【0021】 【発明の実施の形態】実施の形態1.以下,この発明の一例である電動パワーステアリング装置用のモータについて説明するが,従来と同一または相当部材は同一符号を付して説明する。図1は回転電機であるモータ1の側断面図である。このモータ1は,円筒状のヨーク4と,このヨーク4内に対向して固定された4極の界磁永久磁石5と,ヨーク4の軸受収納部6に収納された第1の軸受7により一端が回転自在に支持された出力軸8と,この出力軸8に固定されたアマチュア9と,出力軸8の他端部に固定された整流子10と,この整流子10の表面にスプリング11の弾性力により当接したブラシ12と,このブラシ12を保持したブラシホルダ13と,ねじ14によりヨーク4と一体化されたハウジング15と,ハウジング15の中心部に固定され出力軸8の他端を回転自在に支持した第2の軸受16と,出力軸8の先端部に,圧入,固定され,また先端面が第2の軸受16に当接したボス40と,リード線19が貫通したグロメット20とを備えている。 【0022】図2は図1のボス40の側断面図,図3は図2のボス40の箇所Aの拡大図で,ボス40は,一端部に出力軸8の先端部が圧入,圧着される圧入孔41を有しているとともに,他端部に圧入孔41よりも内径が大きく入力軸23とスプライン係合されるスプライン穴36を有している。図4は出力軸8のボス40側の端部で,この端部は先端側のガイド部43及び圧入部44が形成されている。」 ・「【0027】実施の形態3.図7はこの発明の実施の形態3のモータ55の断面図,図8は図7のボス56の側断面図,図9は図8のボス56の正面図である。この実施の形態3では,ボス56にフランジ58が形成されている。フランジ58の外周部には等分間隔で切欠き部59が形成されている。このボス56は,主成分の鉄系金属にモリブデン,ニッケルが含有した焼結金属材料で構成されている。ハウジング15にはフランジ58に対向して配置された電磁ピックアップ60が固定されている。ここで,切欠き部59と検出素子である電磁ピックアップ60でボス56の回転を検知する検知手段を構成している。 【0028】この実施の形態3では,切欠き部59の有無でフランジ58と電磁ピックアップ60との間の磁気回路が変化し,その変化を検出することで,ボス56,出力軸8の回転を検出することができる。なお,図10のボス56はフランジ58の複数の切欠き部59の一部が接近して形成されている例である。この例では,検出素子として第1の電磁ピックアップと第2の電磁ピックアップとを周方向に間隔をおいて設け,検出信号周期が早くなる最初の検出信号を第1の電磁ピックアップが検出したか,第2の電磁ピックアップが検出したかで,出力軸8の回転方向を知ることができる。電動パワーステアリング装置用のモータでは,このことからステアリング24の回転方向が分かり,ステアリング24の戻し制御等にとって極めて有用な信号となる。また,検出信号の個数をカウントすることで,ステアリング24の角度を知ることもできる。」 ・図1には,有底円筒状のヨーク4と,該ヨークの開口部を覆って一体化されたハウジング15が示され,また,界磁永久磁石5がアマチュア9の外周を囲ってヨークに固定された態様が示されている。 ・図7には,ハウジング15の反アマチュア側で出力軸8にボスが接続された態様,及びボス56の第2の軸受側の一端部が該第2の軸受に当接した態様が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用刊行物には, 「有底円筒状のヨーク4と, 前記ヨークの開口部を覆って一体化されたハウジング15と, 前記ハウジングの中心部に固定された第2の軸受16,および前記ヨークの軸受収納部に収納された第1の軸受7によって回転自在に支持された出力軸8と, 前記出力軸に固定されたアマチュア9と, 前記アマチュアの外周を囲って前記ヨークに固定された界磁永久磁石5と, 前記ハウジングの反アマチュア側で前記出力軸に固定されたボス56と, 前記出力軸とともに回動し,外周部に切欠き部59が形成されたボスのフランジ58と, 前記フランジに対向してハウジングに固定され,前記切欠き部の有無でフランジとの間の磁気回路を変化させることによって出力軸の回転角度を検出する電磁ピックアップ60とを備え, 前記ボスは,第2の軸受側の一端部を前記第2の軸受に当接し, 前記フランジは,前記ボスと一体に形成されている,回転電機。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と引用発明を対比すると,以下のことが言える。 a.引用発明における「ヨーク4」は,機能・作用からみて本願発明における「フレーム」に相当し,以下同様に「一体化された」は「固定された」に,「ハウジングの中心部に固定された」態様は「ハウジングに設けられた」態様に,「第2の軸受16」は「フロントベアリング」に,「ヨークの軸受収納部に収納された」態様は「フレームに設けられた」態様に,「第1の軸受7」は「リアベアリング」に,「出力軸8」は「シャフト」に,「出力軸に固定された」態様は「シャフトに取り付けられた」態様に,「アマチュア9」は「回転子」に,「界磁永久磁石5」は「固定子」に,それぞれ相当している。 b.引用発明の「ボスのフランジ58」と本願発明の「レゾルバロータ」とは,「回転検出装置の回転側部材」との概念で共通するから,引用発明の「外周部に切欠き部59が形成されたボスのフランジ58」と本願発明の「珪素鋼板を積層した積層コアからなるレゾルバロータ」とは,「所定の構造を有する回転検出装置の回転側部材」との概念で共通する。 c.引用発明の「フランジに対向してハウジングに固定され」た態様と,本願発明の「レゾルバロータの外周を囲って固定され」た態様とは,「回転検出装置の回転側部材と所定の位置関係で固定され」たとの概念で共通する。また,引用発明において,出力軸とアマチュアとは一体で回転するから,引用発明の「フランジに対向してハウジングに固定され,切欠き部の有無でフランジとの間の磁気回路を変化させることによって出力軸の回転角度を検出する電磁ピックアップ60」と,本願発明の「レゾルバロータの外周を囲って固定され,レゾルバロータとの間のギャップパーミアンスをレゾルバロータと協同して変化させることによって回転子の回転角度を検出するレゾルバステータ」とは,「回転検出装置の回転側部材と所定の位置関係で固定され,前記回転側部材との間のギャップパーミアンスを前記回転側部材と協同して変化させることによって回転子の回転角度を検出する回転検出装置の固定側部材」との概念で共通する。 d.引用発明の「ボスは,第2の軸受側の一端部を前記第2の軸受に当接し,フランジは,前記ボスと一体に形成されている」態様と,本願発明の「ボスは,ボス本体と,前記ボス本体からフロントベアリングに向かって延設されて先端部が前記フロントベアリングに当接したロータ保持部とを有し,レゾルバロータは,前記ロータ保持部に取り付けられている」態様とは,「ボスは,フロントベアリング側の先端部がフロントベアリングに当接し,回転検出装置の回転側部材は前記ボスに設けられている」との概念で共通する。 したがって,両者は, 「有底円筒状のフレームと, 前記フレームの開口部を覆って固定されたハウジングと, 前記ハウジングに設けられたフロントベアリング,および前記フレームに設けられたリアベアリングによって回転自在に支持されたシャフトと, 前記シャフトに取り付けられた回転子と, 前記回転子の外周を囲って前記フレームに固定された固定子と, 前記ハウジングの反前記回転子側で前記シャフトに接続されたボスと, 前記シャフトとともに回動し,所定の構造を有する回転検出装置の回転側部材と, 前記回転検出装置の回転側部材と所定の位置関係で固定され,前記回転側部材との間のギャップパーミアンスを前記回転側部材と協同して変化させることによって前記回転子の回転角度を検出する回転検出装置の固定側部材とを備え, 前記ボスは,フロントベアリング側の先端部がフロントベアリングに当接し,回転検出装置の回転側部材は前記ボスに設けられている回転電機。」の点で一致し,以下の点で相違する。 [相違点1] 所定の構造を有する回転検出装置の回転側部材に関し,本願発明は,「珪素鋼板を積層した積層コアからなるレゾルバロータ」であるのに対し,引用発明は,「外周部に切欠き部が形成されたボスのフランジ」である点。 [相違点2] 回転検出装置の固定側部材に関し,本願発明は,「レゾルバロータの外周を囲って固定され,レゾルバロータとの間のギャップパーミアンスをレゾルバロータと協同して変化させることによって回転子の回転角度を検出するレゾルバステータ」であるのに対し,引用発明では,「フランジに対向してハウジングに固定され,切欠き部の有無でフランジとの間の磁気回路を変化させることによって出力軸の回転角度を検出する電磁ピックアップ」である点。 [相違点3] ボスの構造及び回転検出装置の回転側部材とボスとの関係に関し,本願発明は,「ボスは,ボス本体と,前記ボス本体からフロントベアリングに向かって延設されて先端部が前記フロントベアリングに当接したロータ保持部とを有し,レゾルバロータは,前記ロータ保持部に取り付けられている」のに対し,引用発明は,「ボスは,第2の軸受側の一端部を前記第2の軸受に当接し,フランジは,前記ボスと一体に形成されている」点。 4.当審の判断 上記相違点について以下検討する。 ・相違点1?3について 引用発明の電磁ピックアップも鉄系の焼結金属材料からなるフランジと対向することにより,切欠き部の有無で磁気回路が変化し(当然ギャップパーミアンスも変化する),その変化を検出することにより回転電機の出力軸の回転や回転方向を検知し,回転角度も知ることができるものである(上記2.の段落【0028】参照)。 また,同じく回転電機の回転制御のために用いられ,レゾルバロータとレゾルバステータ間のギャップパーミアンスの変化により回転角度を検出するレゾルバも周知のものである。 そして,回転電機の回転検出装置として,レゾルバを用いるか電磁ピックアップを用いるかは,必要に応じて任意に選択し得る設計事項というべきであるから,引用発明において,フランジと電磁ピックアップから成る回転検出装置に代えてレゾルバを採用することは,当業者が普通に試みる程度の事項であり,また,このような置換を阻害する格別の事情も認められない。 さらに,レゾルバを用いる際,レゾルバロータの磁性コアとして焼結コアを用いることも珪素鋼板の積層コアを用いることも何れも周知の事項(例えば,特開平02-72603号公報の第5図,第1?3図等とそれらに関する説明を参照のこと。)であり,かつ,後者のように積層コアを用いる際,軸に設けた円筒状の保持部で積層コアを保持することも例えば実願平1-35079号(実開平2-125569号)のマイクロフィルム,登録実用新案第3007926号公報に記載されるように周知技術である。 ここで,引用発明のボスも,図2,図8等から明らかなように,入力軸23とスプライン結合されるスプライン孔36を有する部分(本願発明の「ボス本体」に相当)と,当該部分から第2の軸受(本願発明の「フロントベアリング」に相当)に向かって延設されて先端部が第2の軸受に当接する,出力軸8の先端が圧入,圧着される圧入孔41を有する部分(以下「ロータ保持部相当部分」という。)とを備えており,その限りにおいて,本願発明のボスと構成上の相違はない。 そうすると,引用発明において,フランジと電磁ピックアップとから構成される回転検出装置に代えて周知のレゾルバを採用するに際しては,回転側部材のフランジに代えてレゾルバロータを設けることとなるが,これを周知の珪素鋼板を積層した積層コアで構成し,周知の保持構造に倣ってボスに設けると,レゾルバロータは必然的にボスの「ロータ保持部相当部分」に取り付けられる構成となり,このものにおいて「ロータ保持部相当部分」は本願発明の「ロータ保持部」に相当するものとなる。 したがって,引用発明において,上記周知の事項及び周知技術を勘案して,フランジと電磁ピックアップとで構成される回転検出装置に代えて,周知のレゾルバロータとレゾルバステータから構成されるレゾルバを採用するとともに,上記周知のレゾルバの積層コアの保持構成を採用することにより,相違点1?3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。 そして,本願発明の全体構成により奏される作用効果は,引用発明,上記周知の事項及び上記周知技術から予測し得る範囲のものと認められる。 よって,本願発明は,引用発明,上記周知の事項及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明,上記周知の事項及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-08-25 |
結審通知日 | 2010-08-31 |
審決日 | 2010-09-14 |
出願番号 | 特願2005-263713(P2005-263713) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 櫻田 正紀 |
特許庁審判長 |
大河原 裕 |
特許庁審判官 |
槙原 進 田良島 潔 |
発明の名称 | 回転電機 |
代理人 | 上田 俊一 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 古川 秀利 |
代理人 | 大宅 一宏 |
代理人 | 鈴木 憲七 |