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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1225995 |
審判番号 | 不服2008-17626 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-10 |
確定日 | 2010-10-28 |
事件の表示 | 特願2000-344112「文書閲覧システム、文書閲覧方法及び情報記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月24日出願公開、特開2002-149679〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年11月10日の出願であって、平成20年2月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年7月10日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成20年7月10日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年7月10日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正により、少なくとも特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。 「【請求項1】 ハイパーリンクされたテキスト構造をもつハイパーリンク文書を表示する表示装置と、 操作者が指でタッチ操作して位置指示情報を入力するタッチパネル構造の入力装置とを積層配置して操作者が表示物を見る場所と触る場所とが近接するようにした文書閲覧システムであって、 前記表示装置に表示されたハイパーリンク文書に含まれるハイパーリンク情報を検索するハイパーリンク情報検索手段と、 該ハイパーリンク情報検索手段により検索されたハイパーリンク情報に基づいて操作者が指でタッチ操作しやすいような選択オブジェクトを前記ハイパーリンク文書の表示領域とは分離して別の表示領域に表示する選択オブジェクト表示手段とを有し、 該選択オブジェクト表示手段により表示された選択オブジェクトを操作者が選択したときには、対応するハイパーリンク情報に基づき、ハイパーリンク先の文書を表示する文書閲覧システムであって、 前記表示装置の表示面よりも前記入力装置の入力面の面積を大きく設置し、表示面の端からタッチ面との間に直線状の溝を設け、操作者が溝を上下左右になぞる動作によって、若しくは、表示面の端からタッチ面との間に、スクロールする為のボタン位置に一定の溝を設け、操作者がタッチすることによって、ハイパーリンク文書、若しくは選択オブジェクトの表示に対し、所定のスクロール操作を行うことを特徴とする文書閲覧システム。」 上記補正は、請求項1に記載した発明の「手」を「指」とし、「文書閲覧システム」について「前記表示装置の表示面よりも前記入力装置の入力面の面積を大きく設置し、表示面の端からタッチ面との間に直線状の溝を設け、操作者が溝を上下左右になぞる動作によって、若しくは、表示面の端からタッチ面との間に、スクロールする為のボタン位置に一定の溝を設け、操作者がタッチすることによって、ハイパーリンク文書、若しくは選択オブジェクトの表示に対し、所定のスクロール操作を行う」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、塩見隆一、適応型WWW自動検索手法、情報処理学会研究報告Vol.98 No.81 P.25-32には(以下、「引用例」という。)図面とともに、以下の事項が記載されている。 A.「4 リンク集優先検索アルゴリズム Webぺージを調査した結果を基に、以下のアルゴリズムを決定した。図7の具体例とともに説明する。 [ステップ0]除外リストの作成と検索情報のセット 取得禁止のWebぺージ、WWWサイトを除外リストに登録する。検索キーワードと検索起点を検索情報に登録する。収集したハイパーリンクのURL、アンカー文字列、説明文字列、ALT属性文字列、取得フラグ、リンク集フラグ、リンクスコア、ぺージスコアを格納するハイパーリンクテーブルを用意する。 [ステップ1]ハイパーリンクテーブルの初期化 ハイパーリンクテーブルに検索起点のURLを登録する。取得フラグはTRUEにセットする(図7(1))。 [ステップ2]HTMLテキスト取得と評価 ハイパーリンクテーブルから、取得フラグがTRUEのURLを取り出し、ネットワークを通して対応するHTMLテキストを取得する。取得が終了したら取得フラグをDONEにセットし、ぺージスコアを計算してハイパーリンクテーブルに登録する(図7(2))。 ぺージスコアは次式で計算する。 ぺージスコア=HTMLテキスト中の検索キーワード数/HTMLタグを取り除いたファイルサイズ [ステップ3]ハイパーリンクの抽出と評価 取得したHTMLテキストからハイパーリンク(URL、アンカー文字列、ALT属性文字列、説明文字列)を抽出し、ハイパーリンクテーブルに登録する。ただし、除外リストに該当するハイパーリンクは登録しない。取得フラグはFALSEにセットする。リンク集へのハイパーリンクと判定した場合は、リンク集フラグをTRUEにセットする。リンクスコアを計算してハイパーリンクテーブルに登録する(図7(3))。リンクスコアはアンカー文字列と説明文字列に出現する検索キーワード数である。 [ステップ4]ハイパーリンク選択 取得フラグがFALSEのハイパーリンクから、以下の選択基準の中で上位の選択基準に該当するハイパーリンクをlつ選択し、取得フラグをTRUEにする(図7(4))。 選択基準l:リンク集へ リンク集フラグがTRUEで、抽出元Webぺージのぺージスコアが最も高いハイパーリンク。 選択基準2:リンク集から外部サイトヘ 抽出元Webぺージのリンク集フラグがTRUEで、リンクスコアが最も高い外部サイトへのハイパーリンク。 選択基準3:リンクスコア リンクスコアが最も高いハイパーリンク。ただしリンクスコア0のハイパーリンクは選択しない。 選択基準4:抽出元Webぺージのぺージスコア 抽出元Webぺージのぺージスコアが最も高いハイパーリンク。 上記、基準はネットワークに大きな負荷を与えない設定となっている。また、特定のサイトに負担をかけないため、同ーサイトへのハイパーリンクは6回以上選択しない。 [ステップ5]ハイパーリンクの収集 以下の条件を満たすまで、ステップ2?4を繰り返し、ハイパーリンクを収集する(図7(5))。尚、括弧内は実際に用いている値で、ネットワークに大きな負荷を与えないようにしている。 ・有効ハイパーリンクを一定数(10)以上収集した。 ・HTMLテキストの取得回数が一定数(10)に達した。 ・選択基準を満たすハイパーリンクがない。 ・選択基準4でハイパーリンクを選択した回数が一定数(5)を越えた。 [ステップ6]提示 リンクスコアが0より大きいハイパーリンクを以下の基準で順に表示する。 表示基準l:抽出元Webぺージがリンク集。 表示基準2:過去に提示された回数が少い。 表示基準3:リンクスコアが高い。 5 WWW閲覧支援システム 学習アルゴリズムを説明する前に、適応型WWW自動検索手法を実行する検索エージェントが組み込まれたWWW閲覧支援システムについて説明する。 図8は、擬人化されたエージェントが一覧表示されている状態を表す。ユーザーは5つのエージェントに対して、それぞれ検索起点、検索キーワードを設定し、自動検索を指示することができる。 各エージェントはユーザーからの指示で自動検索を行ない図9のように検索結果を表示する。検索後、画面右上の「更に検索」ボタンをクリックすると、その時点のハイパーリンクテーブルの状態から追加検索が実行される。追加検索は何度でも実行可能である。画面右上の「エージェントー覧」ボタンをクリックすると図8のエージェントー覧画面に戻り、ハイパーリンクデーブルの内容は破棄される。 ここで、最初の検索からエージェント一覧画面に戻ってハイパーリンクテープルが破棄されるまでを検索タームと呼ぶことにする。 図9の画面左には表示基準に基づいて、上位30個の検索されたハイパーリンクのアンカー文字列が一覧表示される。アンカー文字列をクリックすると、エージェントからのメッセージとして画面中央上にハイパーリンクの説明文字列が表示される。ダブルクリックすると対応するハイパーリンク先のWebぺージが画面中央のWWWブラウザに表示される。」(第28頁第7行?第30頁第2行) B.図9には、画面の左にハイパーリンクのアンカー文字列が一覧表示され、画面中央にはハイパーリンク先のWeb頁が表示されている。 これらの記載によれば、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ハイパーリンクテーブルに検索起点のURLを登録し、対応するHTMLテキストを取得し、取得したHTMLテキストからハイパーリンク(URL、アンカー文字列、ALT属性文字列、説明文字列)を抽出し、ハイパーリンクテーブルに登録し、 選択基準に該当するハイパーリンクを選択し、 条件を満たすまで繰り返し,ハイパーリンクを収集し、 表示基準に基づいてハイパーリンクを表示し、 ハイパーリンクの表示は、画面左に表示基準に基づいて、上位30個の検索されたハイパーリンクのアンカー文字列が一覧表示され、アンカー文字列をクリックすると、エージェントからのメッセージとして画面中央上にハイパーリンクの説明文字列が表示され、ダブルクリックすると対応するハイパーリンク先のWebぺージが画面中央のWWWブラウザに表示される、 WWW閲覧支援システム」 3.対比 本願補正発明を、引用発明と比較する。 引用発明はハイパーリンク先のWeb頁を表示しているから、ハイパーリンクされたテキスト構造をもつハイパーリンク文書を表示する表示装置を有していることは明らかである。 引用発明は、画面左にハイパーリンクのアンカー文字列を表示し、画面中央にハイパーリンク先のWeb頁を表示している。アンカー文字列はクリックされる、即ち入力部分を成しているから、引用発明と本願補正発明は、操作者が表示物を見る場所と入力する場所とが近接するようにした文書閲覧システムである点で一致し、さらにハイパーリンク情報検索手段により検索されたハイパーリンク情報に基づいて操作者が入力する入力部分をハイパーリンク文書の表示領域とは分離して別の表示領域に表示する手段を有している点でも一致する。 引用発明では、ハイパーリンクテーブルに検索起点のURLを登録し、対応するHTMLテキストを取得し、取得したHTMLテキストからハイパーリンク(URL、アンカー文字列、ALT属性文字列、説明文字列)を抽出しているから、ハイパーリンク文書に含まれるハイパーリンク情報を検索するハイパーリンク情報検索手段を備えているといえる。 引用発明では、アンカー文字列をダブルクリックすると対応するハイパーリンク先のWebぺージが画面中央のWWWプラウザに表示されるから、引用発明と本願補正発明は、表示された入力部分を操作者が選択したときには、対応するハイパーリンク情報に基づき、ハイパーリンク先の文書を表示する文書閲覧システムである点で共通する。 すると、本願補正発明と引用発明とは次の一致点及び相違点がある。 [一致点] 「ハイパーリンクされたテキスト構造をもつハイパーリンク文書を表示する表示装置と、 操作者が表示物を見る場所と入力する場所とが近接するようにした文書閲覧システムであって、 ハイパーリンク文書に含まれるハイパーリンク情報を検索するハイパーリンク情報検索手段と、 ハイパーリンク情報検索手段により検索されたハイパーリンク情報に基づいて操作者が入力する入力部分をハイパーリンク文書の表示領域とは分離して別の表示領域に表示する手段とを有し、 表示された入力部分を操作者が選択したときには、対応するハイパーリンク情報に基づき、ハイパーリンク先の文書を表示する文書閲覧システム。 [相違点1] 本願補正発明は、表示装置と操作者が指でタッチ操作して位置指示情報を入力するタッチパネル構造の入力装置とを積層配置しており、操作者の入力がタッチ操作によるのに対して、引用発明はタッチパネルではなく、入力がクリックによる点。 [相違点2] 本願補正発明のハイパーリンク検索手段が、表示装置に表示されたハイパーリンク文書に含まれるハイパーリンク情報を検索しているのに対して、引用発明では表示装置に表示されているハイパーリンク文書に含まれるハイパーリンク情報を検索するとは記載されていない点。 [相違点3] 本願補正発明では、ハイパーリンク情報に基づく、指でタッチ操作しやすいような選択オブジェクトを入力部分に表示しているのに対して、引用発明ではアンカー文字列を表示している点。 [相違点4] 本願補正発明では、表示装置の表示面よりも前記入力装置の入力面の面積を大きく設置し、表示面の端からタッチ面との間に直線状の溝を設け、操作者が溝を上下左右になぞる動作によって、若しくは、表示面の端からタッチ面との間に、スクロールする為のボタン位置に一定の溝を設け、操作者がタッチすることによって、ハイパーリンク文書、若しくは選択オブジェクトの表示に対し、所定のスクロール操作を行うのに対して、引用発明にはタッチ操作による入力のこと、スクロール及び溝の記載もない点。 4.判断 [相違点1][相違点3]について ハイパーリンクを有するボタンを表示し、ボタンを選択することによりハイパーリンク文書を表示することは周知(特開平10-312260号公報の選択ボタン3-a?3-bに関する記載、特開2000-207089号公報の補助入力領域とナビゲートボタンに関する記載及び図12、図13を参照。)である。該ボタンは選択オブジェクトに相当するから、引用発明の入力手段として周知慣用のタッチパネルを採用し、引用発明のアンカー文字列に代えて周知のボタンを採用して、相違点1及び相違点3の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 [相違点2]について 引用発明においては、検索起点のURLを登録し、対応するHTMLテキストを取得し、取得したHTMLテキストからハイパーリンク(URL、アンカー文字列、ALT属性文字列、説明文字列)を抽出し、ハイパーリンクテーブルに登録し画面に表示しているから、検索起点のURLに対応するHTMLテキストを表示し、該HTMLテキストに含まれるハイパーリンクを表示できるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。 [相違点4]について タッチパネルにガイドを設けてスクロールし易くすることは周知(特開2000-172439号公報参照)であるし、通常はスクロール操作部にはデータの表示は行わないことを考慮すれば、表示面よりも入力面を大きくすることや、操作者がなぞる溝を設けてスクロール操作できるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願補正発明のように構成したことによる効果も、上記引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 5.むすび したがって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成20年7月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年8月7日付け手続補正により補正された、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 ハイパーリンクされたテキスト構造をもつハイパーリンク文書を表示する表示装置と、 操作者が手でタッチ操作して位置指示情報を入力するタッチパネル構造の入力装置とを積層配置して操作者が表示物を見る場所と触る場所とが近接するようにした文書閲覧システムであって、 前記表示装置に表示されたハイパーリンク文書に含まれるハイパーリンク情報を検索するハイパーリンク情報検索手段と、 該ハイパーリンク情報検索手段により検索されたハイパーリンク情報に基づいて操作者が手でタッチ操作しやすいような選択オブジェクトを前記ハイパーリンク文書の表示領域とは分離して別の表示領域に表示する選択オブジェクト表示手段とを有し、 該選択オブジェクト表示手段により表示された選択オブジェクトを操作者が選択したときには、対応するハイパーリンク情報に基づき、ハイパーリンク先の文書を表示する文書閲覧システム。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物及びその記載は、前記「第2 [理由] 2.引用刊行物」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本件補正は、「手」を「指」とし、「前記表示装置の表示面よりも前記入力装置の入力面の面積を大きく設置し、表示面の端からタッチ面との間に直線状の溝を設け、操作者が溝を上下左右になぞる動作によって、若しくは、表示面の端からタッチ面との間に、スクロールする為のボタン位置に一定の溝を設け、操作者がタッチすることによって、ハイパーリンク文書、若しくは選択オブジェクトの表示に対し、所定のスクロール操作を行う」との限定を付加するものであった。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 [理由] 4.判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-08-30 |
結審通知日 | 2010-08-31 |
審決日 | 2010-09-13 |
出願番号 | 特願2000-344112(P2000-344112) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 日下 善之 |
特許庁審判長 |
江嶋 清仁 |
特許庁審判官 |
近藤 聡 稲葉 和生 |
発明の名称 | 文書閲覧システム、文書閲覧方法及び情報記録媒体 |
代理人 | 生井 和平 |
代理人 | 生井 和平 |