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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01F
管理番号 1225999
審判番号 不服2008-20159  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-07 
確定日 2010-10-28 
事件の表示 特願2002- 81746号「スラリー製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月30日出願公開、特開2003-275568号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成14年 3月22日の特許出願であって、平成20年 7月 3日付けで拒絶査定がなされ、この査定を不服として、同年 8月 7日付けで本件審判請求がなされるとともに同年 9月 2日付けで手続補正(前置補正)がなされた。
一方、当審においても平成22年 6月 3日付けで拒絶理由を通知し、これに対して、応答期間内である平成22年 7月28日付けで手続補正がなされる共に意見書が提出されたところである。
そして、この出願の請求項1?8に係る発明は、上記平成22年 7月28日に提出された手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
溶媒供給手段から供給された溶媒を、漏斗形状の上縁部から越流させ、粉体切出手段から内部に供給される粉体と共に落下させる粉体導入手段と、
前記粉体導入手段から前記粉体と前記溶媒を吸引し、スラリーと混合する吸引混合手段と、
前記スラリーを貯溜しながら前記スラリーを前記粉体導入手段に供給することなく前記吸引混合手段との間のみで前記スラリーのみを循環させる貯溜手段とを備えることを特徴とするスラリー製造装置。」

2.引用例とその記載事項
平成22年 6月 3日付け拒絶理由通知で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭56-139910号公報(以下「引用例1」という。)には、「セメントミルク混合装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載又は示されている。

(ア)「本発明はこのような欠点を除去したセメントミルク混合装置の改良に係り、セメントミルクと混合水を合してノズルから噴出し、攪乱、混合動力源とするセメントミルクなどのジエツトミキサー方式混合装置において、ジエツトミキサーに装備した底部が円錐形で円筒状のセメント供給口の内側壁部に、円筒周方向に指向して周方向に所定の間隔を存して配設された複数個の散水ノズルと、セメントホツパー下部の排出口が前記セメント供給口のの円錐部に所定の間隔を存して嵌装されたセメントホツパーとを備えたことを特徴とするもので、その目的とする処は、セメントホツパー部に連続的に供給される粉体が附着、吸水固化によるホツパー開口部の閉塞を確実に防止しうるセメントミルク混合装置を供する点にある。」(第2ページ左上欄第7行?右上欄第1行)

(イ)「以下本発明を第2図ないし第4図に図示の実施例について説明すると、(1)はセメント粉体で、同セメント粉体(1)はセメントホツパー(2)から重力により底部が円錐形で円筒状のセメント供給口(3)を介してジエツトミキサー(4)に適宜供給されるようになつている。
しかして前記セメントホツパー(2)の下部排出口は、前記セメント供給口(3)の円錐部の下縁より僅かに上方に位置して所定の間隙を存して同心状に配設されている。
また前記セメント供給口(3)の上方内側壁部に4個の散水ノズル(5)が周方向に亘り90°の間隔を存し周方向へ指向して配設されている。
さらにジエツトミキサー(4)の端壁に水平方向へ指向してミキサーノズル(6)が設けられており、同ミキサーノズル(6)より噴出されるセメントミルクと混合水の混合液によりセメントホツパー(2)から落下供給されるセメント粉体をジエツトミキサー(4)内に吸引するとゝもに混合液と混合させるようになつている。
さらにまたジエツトミキサー(4)の排出端を内部に配設したセメントミルクタンク(7)には、セメントミルク中のセメント分の沈殿を防止する攪拌機(8)が設けられている。
またセメントミルクタンク(7)の底部からミキサーノズル(6)に亘りミルク循環用ポンプ吸入管(9)、ミルク循環ポンプ(10)およびミルク循環用ポンプ吐出管(11)が順次接続されている。
さらに混合水用タンク(12)に吸入管(13)を介して混合水供給ポンプ(14)の吸入口が接続され、同ポンプ(14)の吐出口に一端が接続された吐出管(15)に混合水流量調整弁(16)および混合水用流量計(17)が介装され、同吐出管(15)の他端は仕切弁(18)を介してミルク循環用ポンプ吸入管(9)に接続されるとゝもに、仕切弁(19)を介装した供給管(20)および環状連結管(21)を介して散水ノズル(5)に接続されている。」(第2ページ右上欄第19行?右下欄第14行)

(ウ)「第2図ないし第4図に図示の実施例は前記したように構成されているので、仕切弁(18)(19)を開放し、混合水流量調整弁(16)を適当に調整した後、セメントミルク循環ポンプ(10)および混合水供給ポンプ(14)を運転し、かつ攪拌機(8)を稼働させると、セメントミルク循環ポンプ(10)はセメントミルクタンク(7)から既に混合したセメントミルク(22)の一部と、混合水用タンク(12)内から混合水供給ポンプ(14)で吸引し吐出する混合水(23)をそれぞれ吸引し、ジエツトミキサー(4)に装備したノズル(6)からジエツトミキサー(4)内に噴出する。この場合、ミルク循環ポンプ(10)において、混合水供給ポンプ(14)に比べて吐出容量については、ミルク循環ポンプ(10)の方を若干大きく、吐出圧力の充分大きなものを使用するため、定常状態でミルク混合中にはミルク循環ポンプ(10)内を流れる流体の殆どが混合水(23)となる。
そしてノズル(6)から噴出した混合液(混合水とセメントミルク)の速度のエネルギーによりミキサー(4)に供給されるセメント粉体(1)を吸引し、ジェットミキサー(4)内で攪乱、混合し、セメントミルク(22)となってセメントミルクタンク(7)内に排出する。」(第2ページ右下欄第15行?第3ページ左上欄第16行)

(エ)「またセメントホツパー(2)をジエツトミキサー(4)に直接接続せず、その中間に底部が円錐形状をした円筒状のセメント供給口(3)を配設し、セメントホツパー(2)の吐出口部を円筒状に形成し、混合水供給ポンプ(14)で吐出する混合水(23)の一部を分岐抽出してセメント供給口(3)に設けられた散水ノズル(5)に導き、同散水ノズル(5)より混合水(23)を周方向へ噴出させたゝめ、セメントホツパー(2)から供給吐出するセメント粉体(1)の大部分は、セメント供給口(3)の底部開口部に落下してジエツトミキサー(4)に吸引されて混合水(23)と混合されるが、一部分のセメントは直接あるいは浮遊状となってセメント供給口(3)の底部内壁およびそれらの周辺部に附着しようとしても、このセメント粉体は散水ノズル(5)から流出する混合水により常に洗い流され、ミキサー(4)内に流入し、かくしてセメント供給口(3)の閉塞が効果的に防止される。」(第3ページ左上欄第17行?右上欄第13行)

(オ)摘記事項(ウ)、(エ)と第3図からみて、「底部が円錐形状をした円筒状のセメント供給口(3)の該円錐形状の上部から混合水(23)を噴出させたこと」および「セメント供給口(3)が、噴出させた混合水(23)を、セメントホツパー(2)からセメント供給口(3)の内部に供給されるセメント粉体(1)と共に落下させること」は明らかである。

(カ)セメントミルクタンク(7)は「セメントミルク(22)を貯留するものである」ことは明らかである。
また、摘記事項(エ)には、セメント供給口(3)に設けられた散水ノズル(5)には、混合水(23)を導き、周方向に噴出させる旨の記載があることと第2図からみて、「セメントミルク(22)をセメント供給口(3)に供給することのないものである」ことは明らかである。
そして、第2図からみて、セメントミルクタンク(7)とジエツトミキサー(4)との間のみでセメントミルク(22)を循環させていることは明らかである。

これらの事項からみて、上記引用例1には、
「混合水供給ポンプ(14)で吐出する混合水(23)を、底部が円錐形状をした円筒状のセメント供給口(3)の該円錐形状の上部から噴出させ、セメントホッパー(2)から内部に供給されるセメント粉体(1)と共に落下させるセメント供給口(3)と、
前記セメント供給口(3)から前記セメント粉体(1)を吸引しセメントミルク(22)と混合水(23)の混合液と混合するジエツトミキサー(4)と、
前記セメントミルク(22)を貯留しながら前記セメントミルク(22)をセメント供給口(3)に供給することなく前記ジエツトミキサー(4)との間のみで前記セメントミルク(22)を循環させるセメントミルクタンク(7)を備えると共に前記セメントミルク(22)と混合水(23)の混合液をジエツトミキサー(4)のミキサーノズル(6)より噴出したセメントミルク混合装置」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

同拒絶理由通知で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-296320号公報(以下「引用例2」という。)には、「粉体と液体との混合装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

(キ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粉体と液体との混合装置に関し、特に粉末活性炭と水とを混合して活性炭スラリーを製造するための混合装置に関する。」

(ク)「【0008】また、本発明の粉体と液体との混合装置は、第2の液体供給手段は、案内部材を間隙を持って取り囲む槽を備え、案内部材と槽との間の環状空間に液体を供給するようになっていることを特徴としてもよい。このようにすれば、槽と案内部材との間の環状空間に液体が溜まり、液位が粉体受入口の高さまで達したとき、案内部材と槽との間の間隙より液体が越流し、粉体受入口から案内部材の内壁面を伝って粉体排出口に向かって流れ込む。」

(ケ)「【0020】活性炭サイロ41の下部には、逆円錐型のコーン部41aが形成されている。このコーン部41aの下方にはロータリバルブ50及びバタフライ弁51が配設され、ロータリバルブ50によって粉末活性炭の切り出しを行うことができると共に、バタフライ弁51によって計量ホッパ52内の粉末活性炭の量を調節することができるようになっている。」

(コ)「【0027】まず、自動弁16,19を開放し、ライン17を介して給水源18よりエジェクタ15へ給水を開始する。次に自動弁27を開放し、ライン28を介して給水源18よりエジェクタ供給槽22へ給水を開始する。すると、液溜め部29に水が溜まり始め、その水位が粉体受入口12の高さまで達したときに、間隙21から粉体受入口12を越流し、案内部材11の傾斜板14の内壁面を伝って粉体排出口13に向かって水が流れ始める。その後に、定量供給機57の運転を開始する(装置の停止作業は上記の逆の手順で行う)。なお、エジェクタ供給槽22への水の供給量は、案内部材11の傾斜板14の内壁面全体に水膜ができる程度の水量でよく、水量の目安としては粉末活性炭濃度が10?20[重量%]程度になるように設定する。
【0028】定量供給機57の排出口58より排出された粉末活性炭は、接続管59を通ってエジェクタ供給槽22に送られる。そして、投入口23から投入された粉末活性炭は、エジェクタ供給槽22内を案内部材11に向かって落下する。そして、案内部材11の粉体受入口12より受け入れられ、粉体排出口13に落下してきた粉末活性炭は、案内部材11の傾斜板14の内壁面を伝って流れてきた水とともに、吸引口15aよりエジェクタ15内に吸い込まれ、粉末活性炭と水とが混合され活性炭スラリーが形成される。そして、活性炭スラリーはライン20を介して図示しない活性炭接触槽に移送される。・・・」

同拒絶理由通知で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-234号公報(以下「引用例3」という。)には、「液体中に粉体を混合する装置」に関し、図面と共に以下の事項が記載されている。

(サ)「【0011】図3は、混合装置10を合成ゼオライトのイオン交換工程に用いた場合における、混合工程を示すフローチャートである。原料となるゼオライト粉末を、バグフィルター40に導入し、ロータリーバルブ42を介して定量的かつ連続的に混合装置10に供給する。混合装置10において液体ライン26からの硫酸アンモニウム水溶液と混合された懸濁液は、撹拌槽44に送給されて均一に分散された後、更に次の工程に送られる。混合装置10の液体ライン26には、硫酸アンモニウム水溶液と共に撹拌槽44内の分散液を循環させて供給する。」

同拒絶理由通知で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-304026号公報(以下「引用例4」という。)には、「粉粒体混練装置」に関し、図面と共に以下の事項が記載されている。

(シ)「【0010】
【作用】先ず、粉粒体貯溜タンクに粉粒体を貯溜し、粉粒体貯溜タンクの底部の粉粒体流出口から粉粒体を供給可能にする。次に、加圧ポンプで加圧された高圧の圧力流体をジェットポンプに供給してジェットポンプ内に負圧を形成する。こうしてジェットポンプ内に負圧が形成されると、この負圧で粉粒体流出口が臨む粉粒体供給口の周辺の大気に連通した部分から外気を粉粒体流出口から供給された粉粒体とともに吸引しジェットポンプ内でジェット流に粉粒体及び外気とを確実に攪拌混合するのである。
【0011】この時、粉粒体流出口が臨む粉粒体供給口部分を流走するジェット流の飛沫は吸引される外気により粉粒体供給口の内方に押され、粉粒体流出口に付着することが無いのである。また、粉粒体を混練した液体を再び加圧ポンプに還流させて循環させると、粉粒体の混練比率が上昇するのに伴って、粘度が高まり、液体を加圧する加圧ポンプからジェットポンプの噴射ノズルに供給される高圧の流体の圧力が徐々に上昇する。この上昇する圧力の変化により、液体と粉粒体との混合比率を簡単に且つ正確に検出することもできるのである。」

(ス)「【0014】
【実施例】以下、本発明の粉粒体混練装置の一実施例を図面に基づいて説明する。
<実施例1>この実施例に係る粉粒体混練装置1はセメントミルクを形成するものであって、図1に示すように、水(液体)2を貯溜した貯溜槽3と、貯溜槽3の底部に水2を吸引して加圧する加圧ポンプ4と、加圧ポンプ4で加圧された高圧の圧力流体を噴射して負圧を形成するジェットポンプM.J.P と、後述するジェットポンプM.J.P の粉粒体供給口6にセメント(粉粒体)7を供給する粉粒体貯溜タンク8とを備えてなる。
【0015】上記ジェットポンプM.J.P は、加圧ポンプ4で加圧された高圧の水を小径の噴射ノズル9から当該噴射ノズル9よりも大径に形成された保護管10内に噴射し、保護管10の噴射ノズル9側に形成された負圧で吸気管11から外気を吸引して高圧のジェット流に混入させて混気ジェット流を形成し、この混気ジェット流を保護管10より大径の吸引管12に噴射させて吸引管12内に負圧を形成するとともに、吸引管12に形成された負圧で粉粒体を吸引する粉粒体吸引部13が形成してあり(図2参照)、吸引管12に吸引された粉粒体はその下流側に設けられている混合管14で充分混合された後、貯溜槽3に還流させるように構成されている。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「セメントミルク混合装置」は、本願発明の「スラリー製造装置」に相当し、以下同様に、「混合水供給ポンプ(14)」は「溶媒供給手段」に、「混合水(23)」は「溶媒」に、「円錐形状」は「漏斗形状」に、「セメント粉体(1)」は「粉体」に、「セメント供給口(3)」は「粉体導入手段」に、「セメントミルク(22)」は「スラリー」に「ジエツトミキサー(4)」は「吸引混合手段」に、「セメントミルクタンク(7)」は「貯溜手段」にそれぞれ相当する。
また、本願発明の「溶媒供給手段から供給された溶媒を、漏斗形状の上縁部から越流させ、粉体切出手段から内部に供給される粉体と共に落下させる粉体導入手段と」と、引用発明の「混合水供給ポンプ(14)で吐出する混合水(23)を、底部が円錐形状をした円筒状のセメント供給口(3)の該円錐形状の上部から噴出させ、セメントホッパー(2)から内部に供給されるセメント粉体(1)と共に落下させるセメント供給口(3)と」とは、「溶媒供給手段から供給された溶媒を、漏斗形状の上部から供給し、内部に供給される粉体と共に落下させる粉体導入手段と」である限りにおいて一致する。
そして、本願発明の「前記粉体導入手段から前記粉体と前記溶媒を吸引し、スラリーと混合する吸引混合手段と」と、引用発明の「前記セメント供給口(3)から前記セメント粉体(1)を吸引しセメントミルク(22)と混合水(23)の混合液と混合するジエツトミキサー(4)と」とは、「前記粉体導入手段から前記粉体を吸引し、少なくともスラリーと混合する吸引混合手段と」である限りにおいて一致する。

そうすると、両者は、
「溶媒供給手段から供給された溶媒を、漏斗形状の上部から供給し、内部に供給される粉体と共に落下させる粉体導入手段と、
前記粉体導入手段から前記粉体を吸引し、少なくともスラリーと混合する吸引混合装置と、
前記スラリーを貯留しながら前記スラリーを前記粉体導入手段に供給することなく前記吸引混合手段との間のみで前記スラリーを循環させる貯溜手段とを備えたスラリー製造装置」である点で一致し、以下の各点で相違するものと認められる。

<相違点1>
粉体導入手段が、本願発明では、溶媒を漏斗形状の「上縁部から越流させ」、「粉体切出手段」から内部に供給させる粉体と共に落下させるのに対して、引用発明では、溶媒を、漏斗形状の上部から噴出させ、セメントホツパー(2)から内部に供給される粉体と共に落下させるものであるものの、溶媒を漏斗形状の「上縁部から越流させ」るものではなく、セメントホッパーが切出手段を備えたものでない点。

<相違点2>
吸引混合手段が、本願発明では、粉体導入手段から粉体と「溶媒」を吸引し、スラリーと混合するのに対して、引用発明では、粉体導入手段から粉体を吸引し、スラリーと溶媒の混合液と混合するものであって、粉体導入手段から「溶媒」を吸引するか明記されていない点。

<相違点3>
貯溜手段が、吸引混合手段との間で、本願発明では、「スラリーのみ」を循環させるのに対して、引用発明では、スラリーを循環させるものの、吸引混合手段に「溶媒」も供給している点。

4.相違点の検討・当審における判断
<相違点1>について
上記引用例2の摘記事項(ク)、(コ)には、「水(溶媒)を案内部材11(漏斗形状)の上縁部から越流させること」が開示されると共に、上記引用例2の摘記事項(ケ)や上記引用例3の摘記事項(サ)に例示されるように、粉体の切出手段としてのロータリーバルブは、本願出願前に周知の技術であることから、上記相違点1における本願発明の構成については、引用発明に、上記引用例2に開示された事項、および、周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2>について
引用発明においても、上記引用例1の摘記事項(イ)や(ウ)に記載されるように、ミキサーノズル(6)から噴出した混合液(セメントミルクと混合水)の速度エネルギによりジエツトミキサー(4)に供給されるセメント粉体(1)(粉体)を吸引することが開示されていることから、散水ノズル(5)から供給され、セメント供給口(3)(粉体導入手段)から落下する混合水(23)(溶媒)もジエツトミキサー(4)(吸引混合手段)内において上記混合液の速度エネルギーによる吸引力を受けていることは明らかである。
また、セメントミルク(スラリー)と混合水(溶媒)の混合液も、濃度が薄くはなるもののスラリーであることには、違いはないことから、上記相違点2における本願発明の構成は、引用発明および引用例1に開示された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点3>について
上記<相違点2>についてにおいて、記載したように、セメントミルク(スラリー)と混合水(溶媒)の混合液も、濃度が薄くはなるもののスラリーであることには、違いはない。
さらに、上記引用例4の摘記事項(シ)、(ス)には、本願発明の吸引混合手段に相当する吸入管12および混合管14と貯留槽3(貯溜手段)の間で、「粉粒体を混練した液体を再び加圧ポンプに還流させて循環させる」ものが記載されており、「粉粒体を混練した液体」とは「スラリー」のことであるから、「スラリーのみを循環させる」手段が開示されている。
してみれば、吸引混合手段に、引用発明の「スラリーを循環させた上に溶媒を供給したもの」に代えて、上記引用例4に開示された「スラリーのみを循環させる」手段を適用して、上記相違点3における本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、上記相違点1?3を併せ備える本願発明の作用効果について検討してみても、引用発明、上記引用例1,2,4に開示された事項、並びに、上記周知技術から予測されるものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、上記引用例1,2,4に開示された事項、および上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-26 
結審通知日 2010-08-31 
審決日 2010-09-13 
出願番号 特願2002-81746(P2002-81746)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 雅博  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 藤井 昇
金丸 治之
発明の名称 スラリー製造装置  
代理人 磯野 道造  
復代理人 多田 悦夫  

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