• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F24D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24D
管理番号 1226004
審判番号 不服2008-26638  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-16 
確定日 2010-10-28 
事件の表示 特願2000-263441号「トイレ暖房装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月22日出願公開、特開2002-81669号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年8月31日の出願であって 、平成20年9月9日付けで拒絶査定がなされ(発送:9月16日)、これに対し、同年10月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成20年10月16日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年10月16日付け手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前に
「トイレ室温を検知する室温検知手段と、ファンとヒータを有する暖房ユニットと、トイレ室温を設定する温度設定手段と、トイレの使用を検出する使用検知手段と、前記室温検知手段で検出した室温と前記温度設定手段によって設定された設定温度にもとづいて暖房ユニットを制御し、かつ、前記使用検知手段によってトイレの使用を検知した時には前記温度設定手段の設定温度を高温側へ補正する暖房制御手段を備えてなるトイレ暖房装置。」
とあったものを、
「トイレ室温を検知する室温検知手段と、ファンとヒータを有する暖房ユニットと、トイレ室温を設定する温度設定手段と、トイレの使用を検出する使用検知手段と、前記室温検知手段で検出した室温と前記温度設定手段によって設定された設定温度にもとづいて暖房ユニットを制御し、かつ、前記使用検知手段によってトイレの使用を検知した時には前記温度設定手段で使用者が設定した設定温度よりもさらに高い温度に設定温度を補正するとともに前記室温検知手段からの検知温度が低温を検知すればするほど補正幅を大きくし、高温を検知すればするほど補正幅を小さくする補正を行う暖房制御手段を備えてなるトイレ暖房装置。」(下線は当審にて付与、以下同様)
と補正することを含むものである。

以上のように、本件補正は、使用検知手段によってトイレの使用を検知した時の使用者が設定した設定温度の高温側への補正幅に関し「前記室温検知手段からの検知温度が低温を検知すればするほど補正幅を大きくし、高温を検知すればするほど補正幅を小さくする」と特定する事を補正事項として含むものである。

2.新規事項追加に関する検討
そこで、上記補正事項が、新規事項の追加に該当しないかにつき検討する。
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、使用検知手段によってトイレの使用を検知した時に使用者が設定した設定温度を高い温度に補正することについては、【請求項2】、段落【0010】、【0017】、【0018】、【0021】、図3、図5、図7、図8等、各所に記載されているが、その補正幅に関して「前記室温検知手段からの検知温度が低温を検知すればするほど補正幅を大きくし、高温を検知すればするほど補正幅を小さくする」ことは当初明細書等のどこにも記載も示唆もされていない。
かつ、前記補正幅に関して「前記室温検知手段からの検知温度が低温を検知すればするほど補正幅を大きくし、高温を検知すればするほど補正幅を小さくする」ことが、当初明細書等の記載から自明な事項とも認められない。

請求人が審判請求書で補正の根拠とする当初明細書等の段落【0031】には、確かに、
「また、吹き出し口5からの温風の影響を受けにくいトイレ室内の温度が10℃のポイントよりも高い時には、トイレ室温が2.5℃上昇しても、室温検知手段6の検知温度は1度しか上昇しない。よって、暖房制御手段8では室温検知手段6からの検知温度を、「低温を検知すればするほど補正幅を大きくし、高温を検知すればするほど補正幅を小さくする」補正を行っている。よって、トイレ室温と室温検知手段6の検知温度との関係としては、
検知温度10℃以下の場合…『トイレ室温=3×検知温度-35』
検知温度10℃以上の場合…『トイレ室温=2.5×検知温度-27.5』となる。」の記載が存在する。
しかし、段落【0031】における「低温を検知すればするほど補正幅を大きくし、高温を検知すればするほど補正幅を小さくする」補正は、正確な室温度を求めるための検知手段6からの検知温度の補正であって、使用者が設定した設定温度の補正ではない。

よって、使用検知手段によってトイレの使用を検知した時の使用者が設定した設定温度の高温側への補正幅を「前記室温検知手段からの検知温度が低温を検知すればするほど補正幅を大きくし、高温を検知すればするほど補正幅を小さくする」と特定することは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。

したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

3.結び
以上の通りであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成20年8月19日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】 トイレ室温を検知する室温検知手段と、ファンとヒータを有する暖房ユニットと、トイレ室温を設定する温度設定手段と、トイレの使用を検出する使用検知手段と、前記室温検知手段で検出した室温と前記温度設定手段によって設定された設定温度にもとづいて暖房ユニットを制御し、かつ、前記使用検知手段によってトイレの使用を検知した時には前記温度設定手段の設定温度を高温側へ補正する暖房制御手段を備えてなるトイレ暖房装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由にて引用された刊行物である特開平7-279216号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

ア.「【産業上の利用分野】本発明は、温水洗浄便座の温水温度、便座温度、あるいはトイレル-ム温度等を制御する温度制御方法に関する。」(段落【0001】)

イ.「【実施例】次に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は、ノズルNZから温水を噴射して使用者の尻部及び女性局部等を洗浄する機能を備えた温水洗浄便座1の構成を示した透視斜視図である。図1に示すように温水洗浄便座1の後部に設けられたロ-タンク2の傍には温水洗浄便座1の各機能を制御するプリント基板装備の制御回路3が取着されている。この制御回路3にはマイクロコンピュ-タCPUが設けられており、マイクロコンピュ-タCPUの温度制御プログラムにより、温水タンク4に内蔵された温水ヒ-タ5、便座6を暖房する便座ヒ-タ7、トイレル-ムの温度を上昇させるトイレル-ムヒ-タ8などが温度制御される。尚、上記温度制御のために、温水タンク4には温水温度センサ5Sが、便座6には便座温度センサ7Sが、またトイレル-ムにはトイレル-ム温度センサ8Sが設けられており、各センサは上記制御回路3に接続されている。
一方、温水洗浄便座1が設置された家屋内(ワンル-ムマンション等の場合は室内)の人を検知する家屋内人検知器9,10と、トイレル-ムの人を検知するトイレル-ム人検知器11とが設けられており、それぞれの家屋内人検知器は前記制御回路3に接続されている。これらの家屋内人検知器9、10は、例えば照明灯のスイッチに連動し、照明灯のスイッチがオン状態になったときに家屋内に人が居ることを検知するタイプ、玄関キ-の開閉に連動するタイプ、あるいは人の外出または帰宅に応じて検知順序が異なるように二つの反射形光センサ、あるいは超音波センサを玄関に配置し、外出する方向の順序で二つのセンサが人を検知したとき、家屋内に人が居ないことを検知するタイプなどが使用される。一方、トイレル-ムの人を検知するトイレル-ム人検知器11は、例えば反射形光センサ、あるいは超音波センサなどが使用される。」(段落【0007】?【0008】)

ウ.「図4は第2実施例の節電可能な温度制御フロ-チャ-トである。図4に示すように、家屋内に人が居ないと判断した場合には、温水ヒ-タ5、便座ヒ-タ7、あるいはトイレル-ムヒ-タ8に対する通電を遮断するか、温度を最低温度に設定する第1の節電モ-ドで温水温度、便座温度、あるいはトイレル-ム温度を制御する。一方、家屋内に人が居るがトイレル-ムの近くに居ない場合は、温度を最低温度に設定する第2の節電モ-ドで温度制御し、更に、温水洗浄便座またはトイレル-ムに最も近い場所で人が検知された場合(トイレル-ム人検知器11が人を検知)は、温水洗浄便座の温水温度、便座温度、あるいはトイレル-ム温度を通常の設定温度、即ち通常モ-ドで温度制御する。」(段落【0011】)

エ.「また、第2の方法によれば、家屋内の人の有無を検知し、家屋内に人が居ない場合は、温水ヒ-タ、便座ヒ-タ、あるいはトイレル-ムのヒ-タに対する通電を遮断する第1の節電モ-ドで温度制御する一方、家屋内に人が居る場合は、温度を最低温度に設定する第2の節電モ-ドで温度制御し、更に温水洗浄便座またはトイレルームに最も近い場所で人が検知された場合は、温水洗浄便座の温水温度、便座温度、あるいはトイレル-ム温度を通常の設定温度で制御するため、無駄な電気エネルギ-の消費を防止することができる一方、急な温水洗浄便座の使用でも即座に通常の温度制御をするため快適な使用感が得られるという効果がある。」(段落【0014】)

オ.引用刊行物記載の装置は、「トイレルームヒータ8」を具備していることからトイレルーム暖房装置であることは自明である。また、引用刊行物における「トイレル-ム人検知器11」は、上記ウ.に「温水洗浄便座またはトイレル-ムに最も近い場所で人が検知された場合(トイレル-ム人検知器11が人を検知)は、温水洗浄便座の温水温度、便座温度、あるいはトイレル-ム温度を通常の設定温度、即ち通常モ-ドで温度制御する。」と記載されていることからみて、トイレの使用を検出するために設けられていることは明らかである。さらに、「トイレル-ム温度を通常の設定温度、即ち通常モ-ドで温度制御する。」の記載から、引用刊行物記載の「トイレルーム暖房装置」においても、トイレ使用時のトイレルーム通常温度を設定する何らかの温度設定手段が存在するものと解される。

以上を総合すると、引用刊行物には次の発明(以下「引用刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「トイレルーム温度センサ8Sと、トイレルームヒータ8と、トイレルーム通常温度を設定する温度設定手段と、トイレの使用を検出するトイレル-ム人検知器11と、前記トイレル-ム人検知器11によるトイレの使用が検知されない時には、トイレルーム温度センサ8Sと最低温度に設定した設定温度にもとづいて(節電モードで)トイレヒータ8を制御し、前記トイレル-ム人検知器11によるトイレの使用を検知した時には、設定温度を温度設定手段で設定した通常の設定温度に変更する(ことにより通常モードでトイレヒータ8を制御する)制御回路3を備えてなるトイレルーム暖房装置。」

3.発明の対比
本願発明と引用刊行物記載の発明を対比すると、引用刊行物記載の発明の「トイレルーム温度センサ8S」は本願発明の「トイレ室温を検知する室温検知手段」に相当し、以下同様に、「トイレルーム通常温度を設定する温度設定手段」は「トイレ室温を設定する温度設定手段」に、「トイレの使用を検出するトイレル-ム人検知器11」は「トイレの使用を検出する使用検知手段」に、「制御回路3」は「暖房制御手段」に、「トイレルーム暖房装置」は「トイレ暖房装置」に、各々相当する。
また、引用刊行物記載の発明の「トイレルームヒータ8」も本願発明の「ファンとヒータを有する暖房ユニット」も、共に「暖房手段」ということができる。
さらに、引用刊行物記載の「前記トイレル-ム人検知器11によるトイレの使用が検知されない時には、トイレルーム温度センサ8Sと最低温度に設定した設定温度にもとづいて(節電モードで)トイレヒータ8を制御し、前記トイレル-ム人検知器11によるトイレの使用を検知した時には、設定温度を温度設定手段で設定した通常の設定温度に変更する(ことにより通常モードでトイレヒータ8を制御する)制御回路3」も本願発明の「前記室温検知手段で検出した室温と前記温度設定手段によって設定された設定温度にもとづいて暖房ユニットを制御し、かつ、前記使用検知手段によってトイレの使用を検知した時には前記温度設定手段の設定温度を高温側へ補正する暖房制御手段」も、共に、「トイレの使用を検出する使用検知手段によって使用が検知されない時には、室温検出手段で検出した室温と低温の設定温度に基づいて暖房手段を制御し、かつ、前記使用検知手段によってトイレの使用を検知した時には設定温度を高温の設定温度に変更し暖房ユニットを制御する暖房制御手段」ということができる。

よって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。
(一致点)
トイレ室温を検知する室温検知手段と、暖房手段と、トイレ室温を設定する温度設定手段と、トイレの使用を検出する使用検知手段と、トイレの使用を検出する使用検知手段によって使用が検知されないときには、室温検出手段で検出した室温と低温の設定温度に基づいて暖房手段を制御し、かつ、前記使用検知手段によってトイレの使用を検知した時には設定温度を高温の設定温度に変更し暖房ユニットを制御する暖房制御手段を備えてなるトイレ暖房装置。

(相違点1)
暖房手段が、本願発明においては「ファンとヒータを有する暖房ユニット」であるのに対し、引用刊行物記載の発明においては「トイレルームヒータ8」である点。

(相違点2)
トイレ室温制御の基準値として設定される、トイレの使用を検出する使用検知手段によって使用が検知されない時の低温設定温度(以下単に「低温設定温度」という。)と使用検知手段によってトイレの使用を検知した時の高温設定温度(以下単に「高温設定温度」という。)の設定の仕方が、本願発明においては「低温設定温度」の設定を温度設定手段で行い、「高温設定温度」の設定を暖房制御手段による補正で行っているのに対し、引用刊行物記載の発明においては「高温設定温度」の設定を温度設定手段で行い、「低温設定温度」の設定を制御回路による(モード切り換えに伴う)変更により行っている点。

4.当審の判断
そこで、各相違点につき検討する。
(相違点1について)
トイレ暖房装置の技術分野において、暖房手段として「ファンとヒータを有する暖房ユニット」を用いることは、例えば、原査定の拒絶理由で引用された特開平6-248681号公報に従来の技術として記載(【0002】参照)されているように、従来より広く用いられている周知の技術手段であり、引用刊行物記載の発明において「トイレルームヒータ」単独の暖房手段に代えて「ファンとヒータを有する暖房ユニット」を用いることは、
当業者が、前記周知の技術手段に倣って、容易になし得た事項である。

(相違点2について)
引用刊行物記載の発明と本願発明は、温度設定手段で設定される設定温度が高温設定温度であるのか低温設定温度であるのか、制御手段(回路)で補正(変更)設定される設定温度が低温設定温度であるのか高温設定温度であるのかで相違しているものの、いずれの手段を採用しても、トイレの使用を検出する使用検知手段によって使用が検知されない時には低温設定温度に基づき省エネルギーの高い室温制御が行え、使用検知手段によってトイレの使用を検知した時には高温設定温度に基づき快適な使用感が得られる室温制御を行うことができ、効果面で格別な差異を有するものではない。
また、暖房装置の技術分野において、省エネルギーを目的として、低温設定温度と高温設定温度を切り換える制御を行うものにおいて、低温設定温度の設定と高温設定温度の設定を共に(使用者による)温度設定手段により行うことも、例えば、原査定の拒絶理由で引用した特開2000-104315号公報(段落【0014】?【0015】、【0017】参照)や、特開平7-190457号公報(段落【0022】参照)、特開2001-241731号公報(段落【0043】参照)記載のように、本願出願前周知の技術手段であり、低温設定温度の設定を温度設定手段で行うこと自体に困難性は無い。
よって、「低温設定温度」の設定を温度設定手段で行い、「高温設定温度」の設定を暖房制御手段による補正で行うか、「高温設定温度」の設定を温度設定手段で行い、「低温設定温度」の設定を制御回路による(モード切り換えに伴う)変更により行うかは、当業者が、適宜選択決定すべき設計的事項である。

そして、本願発明の奏する効果も、引用刊行物記載の発明、周知の技術手段から、当業者が予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

5.結び
以上のとおりであるから、本願発明は、引用刊行物記載の発明、周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-17 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-14 
出願番号 特願2000-263441(P2000-263441)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24D)
P 1 8・ 561- Z (F24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 前田 仁
松下 聡
発明の名称 トイレ暖房装置  
代理人 永野 大介  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 内藤 浩樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ