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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B66B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B |
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管理番号 | 1226017 |
審判番号 | 不服2009-4878 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-05 |
確定日 | 2010-10-28 |
事件の表示 | 特願2000- 51944「エレベーターの制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月 4日出願公開、特開2001-240323〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、平成12年2月28日の出願であって、平成20年9月1日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年11月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年1月27日付けで拒絶すべき旨の査定がなされ、これに対し同年3月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同年4月3日付けで手続補正書が提出されて明細書について補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成21年12月14日付けで書面による審尋がなされたものである。 第2.平成21年4月3日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成21年4月3日付けの手続補正を却下する。 〔理由〕 1.本件補正について (1)本件補正の内容 平成21年4月3日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成20年11月10日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(a)に示す請求項1ないし11を、下記の(b)に示す請求項1ないし9と補正するものである。 (a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし11 「【請求項1】 交流電力を整流して直流電力に変換するコンバータと、前記直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換するインバータと、前記可変電圧可変周波数の交流電力に基づき電動機を制御してエレベーターを運転するコントローラとを備えたエレベーターの制御装置において、 前記直流電力を貯蔵する電力蓄積装置と、 前記電力蓄積装置の温度を検出する温度検出手段と、 前記温度検出手段により検出された温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電電力量及び放電電力量の最大値を、常温のときの仕様値よりも小さい値に設定するとともに、高い温度の場合には、充電電力量及び放電電力量の最大値を、常温のときの仕様値よりも小さい値に設定して駆動信号を出力する充放電制御回路と、 前記駆動信号に従って前記電力蓄積装置の充放電を行う充放電回路と を備えたことを特徴とするエレベーターの制御装置。 【請求項2】 前記充放電制御回路は、前記温度検出手段により検出された電力蓄積装置の温度が、氷点下の低い温度のときに、即ち電力蓄積装置の充電特性の低下によって回生電力を十分に充電できない状態であるときに、充電可能な電流値で定電流充電を行うとともに、検出温度が上昇したら定電流充電を終了するように駆動信号を出力する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項3】 前記充放電制御回路は、前記検出温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電状態の範囲を、通常の充電状態の範囲よりも小さい通常範囲より狭い中間範囲に設定するとともに、高い温度の場合には、充電状態の範囲を、通常の充電状態の範囲よりも小さい値に設定する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項4】 前記充放電制御回路は、予め設定された所定期間内における検出温度を平均した平均温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電状態の範囲の上限値を、通常の充電状態の範囲の上限値よりも小さい値に設定するとともに、高い温度の場合には、充電状態の範囲の上限値を、通常の充電状態の範囲の上限値よりも小さい値に設定する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項5】 前記充放電制御回路は、予め設定された所定期間内における検出された最低温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電状態の範囲の上限値を、通常の充電状態の範囲の上限値よりも小さい値に設定するとともに、高い温度の場合には、充電状態の範囲の上限値を、通常の充電状態の範囲の上限値よりも小さい値に設定する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項6】 前記充放電制御回路は、前記インバータの入力電圧が予め設定した所定電圧で定電圧となるように制御し、かつ前記検出温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電電流の上限値を、通常の充電電流の上限値よりも小さい値に設定するとともに、高い温度の場合には、充電電流の上限値を、通常の充電電流の上限値よりも小さい値に設定し、前記電力蓄積装置への充電電流が設定した所定の上限値に到達すると前記充電電流が前記上限値を越えないように制御して回生電力を前記電力蓄積装置へ充電するための駆動信号を出力する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項7】 前記充放電制御回路は、前記インバータの入力電圧が予め設定した所定電圧で定電圧となるように制御して回生電力を前記電力蓄積装置へ充電し、かつ前記検出温度が高い温度の場合には電力蓄積装置の電圧上限値を、通常の電力蓄積装置の電圧上限値よりも大きい値に設定し、前記電力蓄積装置の電圧が設定した所定の上限値に到達すると回生電力の前記電力蓄積装置への充電を停止するための駆動信号を出力する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項8】 前記充放電制御回路は、通常温度では、前記電力蓄積装置への充電電流を最も充電効率の良い所定電流値の定電流になるよう制御し、かつ前記検出温度が電力蓄積装置の充電能力が低下する低い温度、または高い温度の場合には、前記電力蓄積装置への充電電流を前記所定電流値よりも低く制限した定電流になるように制御して回生電力を前記電力蓄積装置へ充電するための駆動信号を出力する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項9】 発生する熱が伝わる前記電力蓄積装置の近傍に配置され前記コンバータ及び前記インバータ間の母線間に接続された抵抗をさらに備え、 前記充放電制御回路は、前記検出された電力蓄積装置の温度が、氷点下の低い温度の場合には、回生電力を前記抵抗により消費させるとともに、低い温度でない場合には、回生電力を電力蓄積装置に充電させる ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項10】 前記電力蓄積装置から離れた場所に配置され前記コンバータ及び前記インバータ間の母線間に接続された第2の抵抗をさらに備え、 前記充放電制御回路は、前記検出された電力蓄積装置の温度が前記低い温度でない場合には、前記電力蓄積装置に前記回生電力を充電できないときは前記回生電力を前記第2の抵抗により消費させる ことを特徴とする請求項9記載のエレベーターの制御装置。 【請求項11】 日時を計時する時計手段をさらに備え、 前記充放電制御回路は、前記時計手段から取得した日時に基づき日時、日付、月、または季節に応じた温度を推定し、推定した温度に応じて充放電電力量を制御して駆動信号を出力する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし9(下線は、補正箇所を明示するためのものである。) 「【請求項1】 交流電力を整流して直流電力に変換するコンバータと、前記直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換するインバータと、前記可変電圧可変周波数の交流電力に基づき電動機を制御してエレベーターを運転するコントローラとを備えたエレベーターの制御装置において、 前記直流電力を貯蔵する電力蓄積装置と、 前記電力蓄積装置の温度を検出する温度検出手段と、 前記温度検出手段により検出された温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電電力量及び放電電力量の最大値を、温度が25℃のときの仕様値よりも小さい値に設定するとともに、高い温度の場合には、充電電力量及び放電電力量の最大値を、温度が25℃のときの仕様値よりも小さい値に設定して駆動信号を出力する充放電制御回路と、 前記駆動信号に従って前記電力蓄積装置の充放電を行う充放電回路とを備え、 前記充放電制御回路は、 前記温度検出手段により検出された電力蓄積装置の温度が、氷点下の低い温度のときに、即ち電力蓄積装置の充電特性の低下によって回生電力を十分に充電できない状態であるときに、充電可能な電流値で定電流充電を行うとともに、検出温度が上昇したら定電流充電を終了するように駆動信号を出力し、かつ 前記検出温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電状態の範囲を、通常の充電状態の範囲である50?80%よりも小さい40?70%に設定するとともに、高い温度の場合には、充電状態の範囲を、通常の充電状態である50?80%よりも小さい値に設定する ことを特徴とするエレベーターの制御装置。 【請求項2】 前記充放電制御回路は、予め設定された所定期間内における検出温度を平均した平均温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電状態の範囲の上限値を、通常の充電状態の範囲の上限値よりも小さい値に設定するとともに、高い温度の場合には、充電状態の範囲の上限値を、通常の充電状態の範囲の上限値よりも小さい値に設定する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項3】 前記充放電制御回路は、予め設定された所定期間内における検出された最低温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電状態の範囲の上限値を、通常の充電状態の範囲の上限値よりも小さい値に設定するとともに、高い温度の場合には、充電状態の範囲の上限値を、通常の充電状態の範囲の上限値よりも小さい値に設定する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項4】 前記充放電制御回路は、前記インバータの入力電圧が予め設定した所定電圧で定電圧となるように制御し、かつ前記検出温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電電流の上限値を、通常の充電電流の上限値よりも小さい値に設定するとともに、高い温度の場合には、充電電流の上限値を、通常の充電電流の上限値よりも小さい値に設定し、前記電力蓄積装置への充電電流が設定した所定の上限値に到達すると前記充電電流が前記上限値を越えないように制御して回生電力を前記電力蓄積装置へ充電するための駆動信号を出力する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項5】 前記充放電制御回路は、前記インバータの入力電圧が予め設定した所定電圧で定電圧となるように制御して回生電力を前記電力蓄積装置へ充電し、かつ前記検出温度が高い温度の場合には電力蓄積装置の電圧上限値を、通常の電力蓄積装置の電圧上限値よりも大きい値に設定し、前記電力蓄積装置の電圧が設定した所定の上限値に到達すると回生電力の前記電力蓄積装置への充電を停止するための駆動信号を出力する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項6】 前記充放電制御回路は、通常温度では、前記電力蓄積装置への充電電流を最も充電効率の良い所定電流値の定電流になるよう制御し、かつ前記検出温度が電力蓄積装置の充電能力が低下する低い温度、または高い温度の場合には、前記電力蓄積装置への充電電流を前記所定電流値よりも低く制限した定電流になるように制御して回生電力を前記電力蓄積装置へ充電するための駆動信号を出力する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項7】 発生する熱が伝わる前記電力蓄積装置の近傍に配置され前記コンバータ及び前記インバータ間の母線間に接続された抵抗をさらに備え、 前記充放電制御回路は、前記検出された電力蓄積装置の温度が、氷点下の低い温度の場合には、回生電力を前記抵抗により消費させるとともに、低い温度でない場合には、回生電力を電力蓄積装置に充電させる ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。 【請求項8】 前記電力蓄積装置から離れた場所に配置され前記コンバータ及び前記インバータ間の母線間に接続された第2の抵抗をさらに備え、 前記充放電制御回路は、前記検出された電力蓄積装置の温度が前記低い温度でない場合には、前記電力蓄積装置に前記回生電力を充電できないときは前記回生電力を前記第2の抵抗により消費させる ことを特徴とする請求項7記載のエレベーターの制御装置。 【請求項9】 日時を計時する時計手段をさらに備え、 前記充放電制御回路は、前記時計手段から取得した日時に基づき日時、日付、月、または季節に応じた温度を推定し、推定した温度に応じて充放電電力量を制御して駆動信号を出力する ことを特徴とする請求項1記載のエレベーターの制御装置。」 (2)本件補正の目的 本件補正により、特許請求の範囲において、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1ないし3のいずれかの一の請求項に記載された充放電制御回路について限定を付加するとともに、本件補正前の請求項1ないし3の他の二つの請求項を削除するものであって、請求項1に関する本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、本件補正後の請求項2ないし9は、各請求項に記載された発明特定事項からみて、それぞれ、本件補正前の請求項4ないし11に対応するものであり、本件補正後の請求項2ないし9は、本件補正後の請求項1を直接にあるいは間接的に引用する形式で記載されているところであり、本件補正後の請求項2ないし9に関しても、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.本件補正の適否についての判断 本件補正における請求項1ないし9に関する補正事項は、上記1.(2)で検討したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、次に本件補正により補正された請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明(以下、それぞれを単に「本願補正発明1」、「本願補正発明2」、「本願補正発明3」‥‥‥ともいう。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 2-1.本願補正発明1に関して(特許法第29条第2項) 2-1-1.原査定の拒絶理由に引用された引用文献 2-1-1-1.特開昭61-267675号公報(以下、「引用文献1」という。) (1)引用文献1の記載事項 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 (a)「交流電源を直流に変換する整流回路の直流出力を可変周波数可変電圧の交流に変換して誘導電動機を駆動しエレベータを運転する電圧形インバータを用いたエレベータの制御装置において、前記交流電源停電時に前記インバータへ電力を供給する蓄電池と、前記蓄電池と前記インバータ入力部との間に接続し蓄電池電圧を昇圧してインバータ入力部へ電力を供給又はインバータ入力部の電圧を降圧して蓄電池へ電力を供給する。双方向性の直流-直流変換器と、前記交流電源が停電時には前記蓄電池電圧を昇圧して前記インバータ入力部へ電力を供給させ、前記交流電源正常時には、前記インバータ入力部の電圧に応じて電力変換方向及び蓄電池の充放電電流を制御する前記直流-直流変換器のゲート制御回路で構成することを特徴とするエレベータの制御装置。」(第1ページ左下欄5ないし20行) (b)「本発明は、停電時着床制御の電源として備えた蓄電池を、エレベータ制動時に生ずる回生電力の吸収場所として利用できることに着目し、蓄電池と電圧形インバータとの間に直流-直流変換器を接続することにより、エレベータ制動時にはインバータ入力部から蓄電池へ電力を供給して回生電力の吸収をし、また、直流-直流変換器として双方向の電力変換が可能なものを用い、エレベータ始動時や停電時には蓄電池からインバータ入力部へ電力を供給し、エレベータ始動時のインバータ入力電圧低下の抑制、停電時着床制御をして、上記目的を達成する。」(第2ページ右上欄10行ないし同ページ左下欄1行) (c)「第1図は本発明によるエレベータの制御装置の一実施例の構成を示した図である。図において、1は交流電源、2は整流回路、3は平滑コンデンサ、4は電圧形インバータ、5は誘導電動機、6は電動機に直結又は電動機と減速機を介して結合したシーブ、7はエレベータのカゴ、8はつり合いおもり、9は本発明による停電時着床制御装置、10は蓄電池、11は蓄電池電圧とインバータ入力電圧の異なる2つの直流電圧間で双方向の電力変換を行なう直流-直流変換器、12は直流-直流変換器11に昇圧用ゲート信号α_(1)、又は降圧用ゲート信号α_(2)を与えることにより電力変換の方向及び蓄電池電流Ibを制御するゲート制御回路で、電源電圧検出器14で検出された電源電圧の検出値V_(S)、蓄電池電流検出器15で検出された蓄電池電流の検出値V_(I)、蓄電池充電量検出器16で検出された蓄電池充電量検出値V_(b)、インバータ入力電圧検出器13で検出されたインバータ入力電圧検出値V_(C)を入力し、これらの検出値に応じてゲート信号α_(1)又はα_(2)を発生するものである。」(第2ページ左下欄5行ないし同ページ右下欄4行) (d)「本発明によれば、電圧形インバータを用いたエレベータ制御装置において、蓄電池と双方向性の直流-直流変換器及びその制御回路を付加するだけで停電時着床が可能となった。又、通常運転時にも直流-直流変換器を動作して蓄電池の充放電を行なうことにより、エレベータ制動時の回生電力吸収場所として蓄電池を利用し、省エネとなるばかりかエレベータ始動時には、始動電力の一部を蓄電池から供給することにより、電源設備容量を小さくできる効果もある。」(第4ページ左上欄2ないし11行) (2)上記(1)からわかること (ア)上記(1)(a)及び(c)から、「整流回路2」は、「交流電源1の交流電力を整流して直流電力に変換する」ものであることがわかる。 (イ)上記(1)(a)及び(c)から、「電圧形インバータ4」は「直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換する」ものであることがわかる。 (ウ)上記(1)(a)及び(c)から、「電圧形インバータ4」によって変換された「可変電圧可変周波数の交流電力に基づき誘導電動機5を制御してエレベータを運転する」ことがわかる。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)から、引用文献1に記載のエレベータの制御装置において、「交流電源1の交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路2」と、「直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換する電圧形インバータ4」とを備え、「前記可変電圧可変周波数の交流電力に基づき誘導電動機5を制御してエレベータを運転する」以上、「電圧形インバータ4」によって直流電力から変換された「前記可変電圧可変周波数の交流電力に基づき誘導電動機5を制御してエレベータを運転するコントローラ」を当然に備えていることがわかる。 (3)引用文献1に記載の発明 上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、引用文献1には、次のような発明(以下、「引用文献1に記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「交流電源1の交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路2と、直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換する電圧形インバータ4と、前記可変電圧可変周波数の交流電力に基づき誘導電動機5を制御してエレベータを運転するコントローラとを備えたエレベータの制御装置において、 前記直流電力を貯蔵する蓄電池10と、 前記蓄電池10の電圧と前記電圧形インバータ4の入力電圧の異なる二つの直流電圧間で双方向の電力変換を行なう直流-直流変換器11と、 前記直流-直流変換器11の電力変換の方向及び前記蓄電池10の電流を制御するゲート制御回路12とを備えるエレベーターの制御装置。」 2-1-1-2.特開平11-283678号公報(以下、「引用文献2」という。) 引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (a)「【0002】…(中略)…図12は電気自動車等に用いられる組電池の出力可能パワー(曲線L10,L11)および入力可能パワー(曲線L20,L21)を定性的に示した図である、縦軸はパワー(kW)、横軸は電池のDOD(放電深度)を表す。ここで、曲線L10,L20は電池温度が常温の場合の特性を、曲線L11,L21は電池温度が低温の場合の特性をそれぞれ示しており、低温の場合には常温の場合に比べて出力および入力可能パワーが低下する。」(段落【0002】) (b)「【0008】…(中略)…図1は本発明による充電制御装置の一実施の形態を説明する図であり、電気自動車の走行駆動機構の構成を示すブロック図である。1は複数の単セルC1?Cnから構成される組電池であり、例えば、リチウムイオン電池等が用いられる。2は組電池1の各単セルC1?Cnのセル電圧Vcの検出とともに各単セルC1?Cnの充放電制御を行うセルコントローラである。組電池1はインバータ3に直流電力を供給し、インバータ3は直流電力を交流電力に変換してモータ4へ電力を供給する。また、回生時には車両の走行エネルギーがモータ4およびインバータ3を介して電気エネルギーに逆変換され、組電池1が充電されるとともに車両に回生ブレーキがかかる。組電池1の電圧V,電流Iおよび温度Tはそれぞれ電圧センサ5,電流センサ6,温度センサ7によって計測されバッテリコントローラ8へ送られる。バッテリコントローラ8は、電池の電圧V,電流I,温度Tおよびセルコントローラ2からのセル情報(セル電圧など)や記憶装置9に予め入力された制御データ等に基づいてインバータ3の出力制御や回生制御等を行なう。10は外気温度を計測するための温度センサである。」(段落【0008】) (c)「【0019】次に、図9,10を用いて冷却加温制御について説明する。図9は、横軸を電池1のDOD,縦軸を電池温度Tbとしたときの冷却モード,加温モードおよびブロアオフモードの領域を表したものである。図9において、T0は常温時の電池温度、T1およびT2は電池1の冷却・加温不要温度範囲の下限値および上限値であり、T3はT3<T1の条件を満たす電池温度である。なお、A1,A3はそれぞれ電池温度T1,T3に対応する規定放電深度である。電池温度がTb>T2の領域(冷却モード)では、図6に示す切換機構314aを閉状態に、開閉機構314bを開状態にして外気を外気導入口312aから電池室311に導入し、外気により電池1を冷却するとともに、ヒータコア32で暖められた空気を配管315へ分岐する。このとき、ブロアユニット33を駆動して電池室311内および配管315内の空気を強制的に排出口313から排出する。 【0020】また、図9の加温モード領域では、ヒータコア32を発熱させ、すなわち、充電モードを均等モードまたは制動モードに設定し、切換機構314aを開状態に、開閉機構314bを閉状態にして外気導入口312aから電池室311に外気を導入する。その結果、ヒータコア32によって暖められた外気によって電池1が暖められる。この場合もブロアユニット33を駆動して電池室311内の空気を強制的に排出する。」(段落【0019】及び【0020】) (d)「【0022】次に、図11に示すフローチャートを用いて回生充電時の制御を説明する。なお、この制御は図2のバッテリーコントローラ8により行われ、イグニッションキースイッチがオンになったならば図11のフローがスタートする。ステップS1は運転者によってアクセルが踏まれているか否かを、すなわちアクセルのオンオフを判定するステップであり、アクセルがオフの場合にのみステップS2へ進む。ステップS2では電池1の電池状態(容量、容量バラツキ、電池温度等)の確認を行う。すなわち、各単セルC1?C4のセル電圧Vcおよび電池温度Tbを検出し、電池容量(例えば、放電深度DOD),容量バラツキΔVc等を算出する。 【0023】ステップS3では電池1のDODが規定放電深度Ab(電池温度がTbのときの規定放電深度)以上か否かを判定し、(DOD)<Abの場合にはステップS4へ進み、(DOD)≧Abの場合にはステップS11に進んで充電モードを通常回生モードに設定した後ステップS6へ進む。ステップS4は容量バラツキΔVcがΔVc>ΔVmaxであるか否かを判定するステップであり、ΔVc>ΔVmaxの場合にはステップS5へ進んで充電モードを均等モードに設定し、ΔVc≦ΔVmaxの場合にはステップS12に進んで充電モードを制動モードに設定する。 【0024】次いで、ステップS6で温度センサ10により外気温度Taを確認したならば、ステップS7へ進む。ステップS7は電池温度TbがTb<T1,T1≦Tb≦T2およびT2<Tbのいずれの条件を満足するかを判定し、Tb<T1の場合にはステップS9へ、T1≦Tb≦T2の場合にはステップS8へ、T2<Tbの場合にはステップS13へ進む。ステップS7においてステップS9へ進んだ場合には、規定放電深度Abが(DOD)≧Abを満足するか否かを判定し、(DOD)≧Abの場合にはステップS8へ進み、(DOD)<Abの場合にはステップS10へ進んで加温モードに設定すると共にブロアユニット33をオンにしてステップS8へ進む。ステップS7においてステップS13へ進んだ場合には、ステップS13で外気温度Taが電池温度Tbより大きいか否かを判定する。Ta>Tbの場合にはステップS8へ進み、Ta≦Tbの場合にはステップS14へ進んで冷却モードに設定すると共にブロアユニット33をオンにし、その後ステップS8へ進む。ステップS8はイグニッションキースイッチがオフされたか否かを判定するステップであり、オンの場合にはステップS1へ戻り、オフの場合には一連の動作を終了する。」(段落【0022】ないし【0024】) (e)「【0025】以上説明したように、本実施の形態では、従来からセルコントローラに具備されている均等充電用の抵抗R1?R4を用いることによって、回生充電時の組電池1の温度Tbが低温である場合には、抵抗R1?R4の一部(均等モードの場合)または全て(制動モードの場合)に充電電流をバイパスしてそのときの熱エネルギーで組電池1を暖めるようにした。そのため、従来は回生できず機械的ブレーキで無駄に消費していたエネルギーを組電池1の昇温に利用できるとともに、組電池1の温度を速やかに昇温させることにより電池特性の向上を図ることができる。」(段落【0025】) 2-1-1-3.実願平1-148587号(実開平3-91037号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。) 引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (a)「第3図はブロック図、第4図は温度に対する充電終了電圧の特性図である。 図において、1は充電器の入力端子、2は定電流を電池に供給する定電流回路、3は充電器の出力端子、4は充電電圧を検出する電圧検出回路、5は電圧検出回路4を制御する第1の温度補償回路である。 充電器の入力端子1に直流電圧源が供給され、充電器の出力端子3には充電を行なう電池が接続される。この直流電圧源は定電流回路2に加えられ定電流充電をするための定電流を出力端子3に供給している。 一方、充電電圧を検出する電圧検出回路4に出力端子3から充電電圧が供給され、充電が進行して適度な充電状態になった充電電圧を検出し、この検出信号で定電流回路2を制御して、定電流回路2の定電流供給を止め、出力端子3に接続された電池の充電を終了させる。 また、上記電圧検出回路4には第1の温度補償回路5が作用していて、特に高温時の温度補償を行なっている。この第1の温度補償回路5は温度センサーを備え、高温時に電圧検出回路4の検出電圧を下げるように動作して、高温時の充電率を減少させ、高温時の電池の充電による劣化を防止している。」(明細書第2ページ2行ないし同第3ページ6行) (b)「充電による電池の劣化を広い温度範囲で防止するため、複数の温度センサーや非線形素子などを使用して、第4図に示すような温度に対する充電終了電圧特性を得ることは可能であるが、温度補償回路が複雑になりコストアップになる。しかも、図のように低温時t以下の低温時においては実用的な充電率を得ることができないという欠点があった。」(明細書第3ページ13ないし20行) (c)「この考案によれば、電源より定電流回路を介して定電流を電池に供給して充電を行なう充電器であって、この充電電圧を電圧検出回路で検出し、この検出信号で定電流回路を制御する。 この電圧検出回路は第1の温度補償回路で温度補償される。この第1の温度補償回路は温度センサーを備え、特に高温時に電圧検出回路の検出電圧を下げるように動作し、高温時の充電率を減少させて電池の劣化を防止している 一方、上記定電流回路の定電流回路の定電流を制御する第2の温度補償回路を設けて、低温時の充電電流を常温時より下げるように温度補償をする。 このように、高温時と低温時に夫々独立した第1及び第2の温度補償回路を備え、広範囲な温度補償をすることができる。 充電が進行して適度な充電状態になった充電終了電圧を電圧検出回路で検出して、定電流回路の定電流供給を止め、出力端子に接続された電池の充電を終了させる。」(明細書第4ページ16行ないし同第5ページ14行) (d)「入力端子1に供給された直流電圧源は定電流回路2を介して出力端子3に充電用定電流を出力し、出力端子3に接続された電池を充電するができる。 出力端子3の充電電圧は電圧検出回路4で検出され、この検出信号で定電流回路2を制御する。一方、この電圧検出回路4は第1の温度補償回路5で特に高温時の温度補償がされ、更に定電流回路2は第2の温度補償回路6で特に低温時の温度補償がされる。 このように構成された充電器は、常温時定電流回路2で決められた値の定電流を電池に供給して充電を行なっている。電池が適度な充電状態になると、この充電状態の充電電圧を電圧検出回路4は検出して、定電流回路2の定電流出力を止めるように制御して充電を終了させる。」(明細書第6ページ5ないし20行) (e)「高温時においては、温度センサーから成る高温時の温度補償をする第1の温度補償回路5が動作し、電池の充電電圧が常温時よりも低い電圧で終了するよう充電率を減少させる。 高温時は電池の電圧が充電によって上昇しにくくなるため、充電電圧を下げ過充電や発熱による電池の劣化を防止することができる。第2図(A)(審決注:「第2図(B)」の誤記と認める。)は温度による充電終了電圧(V)特性を示した特性図であり、高温時(約60度以上)の充電終了電圧(V)が減少している。 低温時においては、温度センサーから成る低温時の温度補償をする第2の温度補償回路6が動作し、定電流回路2の定電流値を減少するよう制御する。低温時の充電電流を減らすことによって電池の劣化を防止することができる。第2図(B)(審決注:「第2図(A)」の誤記と認める。)は温度による充電電流(I)を示した特性図であり、低温時(約-10℃以下)の充電電流(I)が減少している。 このように第1の温度補償回路5と第2の温度補償回路6を用いることにより広い温度範囲で電池の劣化を防止して充電することができる。」(明細書第7ページ1行ないし同第8ページ1行) 2-1-1-4.特開平8-317572号公報(以下、「引用文献4」という。) 引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 (a)「【0014】 【実施例】以下、本発明を図に示す実施例について説明する。 (第1実施例)図1において、電気自動車駆動用の組電池1は多数の単電池11A、11B、…、11Nを直列に接続して構成されている。各単電池11A?11Nは複数の電池セルを含む公知の構造を有し、それぞれ電池温度を検出する温度センサ4が設けられている。組電池1からの給電線61には負荷リレー71を介して電気負荷8が接続されており、この給電線61中には電流センサ5が設けてある。 【0015】前記各単電池11A?11Nに対応してそれぞれ充電状態制御装置の子機2A、2B、…、2Nが設けられ、これら子機2A?2Nは同一構成で、電圧変換器21、温度変換器22、充電器23、通信インターフェース(I/F)24より成っている。充電器23から延びる一対の充電線62、63が、それぞれ対応する単電池11A?11Nの電極端子に接続されており、電圧変換器21は上記充電線62、63間の電圧(すなわち単電池11A?11Nの電圧)に比例した電圧信号を発する。前記温度変換器22には、各単電池11A?11Nの前記温度センサ4が接続されており、温度変換器22は電池温度に比例した温度信号を発する。」(段落【0014】及び【0015】) (b)「【0018】親機3にはCPU32が内蔵されている。このCPU32は、復調された各子機2A?2Nの電圧信号と温度信号を入力するとともに、前記電流センサ5からの電流信号を入力して、これら信号に基づき、後述の手順によって各単電池11A?11Nに対する充電電流を決定するとともに、各単電池11A?11Nの残存容量を算出して表示器33上へ表示する。」(段落【0018】) (c)「【0022】親機3は充電モードを続行しつつ、各子機2A?2Nから送信される電圧温度パルス信号(図3のステップ202)により各単電池11A?11Nの温度と電圧の検出を行う(図2のステップ104)。図2のステップ105では、続くステップ106で使用する電圧設定値を温度補正する。この電圧設定値は単電池11A?11Nが充電末期(約80%?90%充電状態)に達したと考えられる値であり、これは電池温度の上昇に応じて低下するため温度補正を要するのである。 【0023】図2のステップ106で、単電池11A?11Nの電圧が前記電圧設定値まで上昇してこれを越えると(図5)、親機3は、設定値を越えた単電池11A?11Nに対応する子機2A?2Nに対して第2の定電流で充電するように充電パルス信号を送信するとともに、当該定電流での充電時間タイマーを設定する(図2のステップ107)。 【0024】子機2A?2N側では前記充電パルス信号を受けて、充電器23により前記第2の定電流で単電池11A?11Nを充電する(図3のステップ203)。この第2の定電流は前記第1の定電流よりも小さい値としてある(図5)。親機3は前記第2の定電流での充電を続行しつつ、充電時間タイマーが設定値を越えたか否か確認する(図2のステップ108)。越えていなければ、ステップ109で子機2A?2Nから送信される電圧温度パルス信号(図3のステップ204)に基づいて単電池11A?11Nの温度と電圧の検出を行い、図2のステップ110では、続くステップ111で使用する電圧上限値を温度補正する。 【0025】ステップ111では、ステップ電圧が上限値に達したか否かを確認する。そして、当該ステップないし前記ステップ108の条件が成立すると、この条件が成立した単電池11A?11Nに対応する子機2A?2Nへの充電パルスの送信が停止され(図2のステップ112)、子機2A?2Nはこれに基づいて充電器23による単電池11A?11Nへの充電を停止する(図3のステップ205)。」(段落【0022】ないし【0025】) 2-1-2.本願補正発明1と引用文献1に記載の発明との対比 本願補正発明1と引用文献1に記載の発明とを対比すると、引用文献1に記載の発明における「交流電源1の交流電力」、「整流回路」、「電圧形インバータ」、「誘導電動機」、「蓄電池」、「直流-直流変換器」、「エレベータ」、及び「エレベータの制御装置」は、それらの意図する技術内容や構造及び機能等からみて、それぞれ、本願補正発明1における「交流電力」、「コンバータ」、「インバータ」、「電動機」、「電力蓄積装置」、「充放電回路」、「エレベーター」、及び「エレベーターの制御装置」に相当し、また、引用文献1に記載の発明における「(電前記直流-直流変換器11の電力変換の方向及び蓄電池10の電流を制御する)ゲート制御回路12」は、その機能からみて、本願補正発明1における「充放電制御回路」に相当する。 したがって、本願補正発明1と引用文献1に記載の発明は、 「交流電力を整流して直流電力に変換するコンバータと、直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換するインバータと、可変電圧可変周波数の交流電力に基づき電動機を制御してエレベーターを運転するコントローラとを備えたエレベーターの制御装置において、 前記直流電力を貯蔵する電力蓄積装置と、 駆動信号を出力する充放電制御回路と、 前記充放電制御回路からの駆動信号に従って前記電力蓄積装置の充放電を行う充放電回路とを備えるエレベーターの制御装置。」 である点で一致し、次の(相違点)において相違する。 (相違点) 本願補正発明1においては、「電力蓄積装置の温度を検出する温度検出手段」を備え、さらに、「充放電制御回路」が、 〈1〉「温度検出手段により検出された温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電電力量及び放電電力量の最大値を、温度が25℃のときの仕様値よりも小さい値に設定するとともに、高い温度の場合には、充電電力量及び放電電力量の最大値を、温度が25℃のときの仕様値よりも小さい値に設定して駆動信号を出力し」、 〈2〉「温度検出手段により検出された電力蓄積装置の温度が、氷点下の低い温度のときに、即ち電力蓄積装置の充電特性の低下によって回生電力を十分に充電できない状態であるときに、充電可能な電流値で定電流充電を行うとともに、検出温度が上昇したら定電流充電を終了するように駆動信号を出力し」、そして、 〈3〉「検出温度が、氷点下の低い温度の場合には、充電状態の範囲を、通常の充電状態の範囲である50?80%よりも小さい40?70%に設定するとともに、高い温度の場合には、充電状態の範囲を、通常の充電状態である50?80%よりも小さい値に設定する」 ように構成されているのに対し、引用文献1に記載の発明では、そもそも上記「温度検出手段」に相当するものを備えているか否かが不明である点(以下、単に「相違点」という。)。 2-1-3.相違点についての検討 まず、蓄電池等の電力蓄積装置においては、その充放電特性は、電池温度や周囲の環境温度等の変化により大きく影響を受けることは、上記2-1-1-2.ないし2-1-1-4.からみて、引用文献2ないし4に記載されているから、本件出願の出願前に従来から周知の技術事項である。次に、蓄電池の温度を温度検出手段により検出し、その検出温度に応じて充放電を制御して、充放電特性を向上させ、また、蓄電池の劣化を抑制することは、上記2-1-1-3.及び2-1-1-4.からみて、引用文献3及び4に記載されているから、本件出願の出願前に従来から周知の技術事項である。 さらに、電力蓄積装置の温度を検出し、その検出温度に応じて充電電力量及び放電電力量を制御する点は、上記2-1-1-4.(c)の段落【0022】からみて、引用文献4に示唆されているといえる。 また、電池の検出温度が、冷却・加温不要温度範囲の下限値より低い温度の領域、あるいは、冷却・加温不要温度範囲の上限値より高い温度の領域においては、電池特性としての充放電電力値の上限値を、冷却・加温不要温度範囲(すなわち、常温の領域)に比して小さくなるように設定して、電池の充放電の制御を行なうことで、電池の劣化を防ぎ、充放電特性を向上させることができることは、例えば、特開平11-187577号公報〈特に、段落【0021】ないし【0027】及び図3ないし図5の記載を参照されたい。〉及び特開平11-252808号公報〈段落【0012】ないし【0013】及び図1の記載を参照されたい。〉にも記載されている。 さらに、引用文献3には、上記2-1-1-3.からみて、「温度センサーにより検出された蓄電池等の温度が常温より低い温度の場合には、充電電流を減少させて、その充電可能な電流値で定電流充電を行なうようにしたこと」、「高温時に電圧検出回路4の検出電圧を下げるように動作して、高温時の充電率を減少させ、高温時の電池の充電による劣化を防止している。」及び「低温時t以下(審決注:「低温t以下」の誤記と認める。)の低温時においては実用的な充電率を得ることができない」ことが記載されている。 なお、本願補正発明1においては、「温度が25℃のときの仕様値」と規定することにより「25℃」を基準とし、また、低温時を「氷点下の低い温度」と特定しているけれども、蓄電池温度に関しては、「25℃」前後を基準とすることは、通常一般に行なわれている(必要であれば、例えば、特開平7-67209号公報〈段落【0024】の記載〉、特開平10-126976号公報〈段落【0011】の記載〉、特開平10-174297号公報〈段落【0003】及び【0004】の記載〉及び特開平11-187577号公報〈段落【0027】及び図5(a)の記載〉を参照されたい)。さらに、低温を「氷点下の低い温度」と特定することは当業者が適宜設定しうる程度のものと認められるし、特開平11-187577号公報の段落【0021】及び図3に示唆されているといえる。 したがって、引用文献1に記載の発明に、引用文献2ないし4に記載された技術手段を採用して、相違点1及び相違点2に係る本願補正発明1の発明特定事項とすることは、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到し発明しうる程度のものである。 しかも、本願補正発明1は、全体構成でみても、引用文献1に記載の発明及び引用文献2ないし4に記載された技術手段から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。 2-1-4.まとめ 以上のように、本願補正発明1は、引用文献1に記載の発明及び引用文献2ないし4に記載された技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 2-2.本願補正発明3、7及び8に関して(特許法第36条第6項第2号) (1)本件補正後の請求項3における「予め設定された所定期間内における検出された最低温度」の記載では、どの程度の期間をもって、「予め設定された所定期間」としているのか不明であり、請求項3が引用する請求項1に記載された事項との関係も定かでなく、本願補正発明3が明確でない。 (2)本件補正後の請求項7に記載された発明においては、「充放電制御回路」は、「氷点下の低い温度の場合には、回生電力を(電力蓄積装置の近傍に配置された)抵抗により消費させるとともに、低い温度でない場合には、回生電力を電力蓄積装置に充電させる」構成によって、「電力蓄積装置の温暖化を行なう」ものとしているが、請求項7は請求項1を引用する形式で記載されており、この「(回生電力を抵抗により消費させることによる)電力蓄積装置の温暖化」と、請求項1に記載された「氷点下の低い温度のときに」、「充電可能な電流値で定電流充電を行うとともに、検出温度が上昇したら定電流充電を終了するように駆動信号を出力する」構成による「電力蓄積装置の温暖化」との関係が明確にされておらず、本願補正発明7においては、氷点下の低い温度のときに、「電力蓄積装置の温暖化」の処理がどのように行われるのか不明であり、本願補正発明7が明確でない。 (3)本件補正後の請求項8に記載された発明においては、請求項7を引用する形式で記載されているが、「前記充放電制御回路は、前記検出された電力蓄積装置の温度が前記低い温度でない場合には、前記電力蓄積装置に前記回生電力を充電できないときは前記回生電力を前記第2の抵抗により消費させる」の記載は、その意図する技術内容が不明であり、請求項7に記載された事項との関連も定かでなく、本願補正発明8が明確でない。 (4)以上のように、本件補正後の請求項3、7及び8における記載が不備であるため、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであって、本願補正発明3、7及び8は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.手続の経緯及び本願発明 平成21年4月3日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし11に係る発明は、平成20年11月10日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の〔理由〕1.(1)の(a)の【請求項1】に記載したとおりのものである。 2.引用文献 原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開昭61-267675号公報)、引用文献2(特開平11-283678号公報)、引用文献3(実願平1-148587号(実開平3-91037号)のマイクロフィルム)、引用文献4(特開平8-317572号公報)の記載事項は、上記第2.の〔理由〕2-1-1.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記第2.の〔理由〕1.の(2)で検討したように、実質的に本願補正発明1における発明特定事項の一部についての限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明1が、上記第2.の〔理由〕2-1.に記載したとおり、引用文献1に記載の発明及び引用文献2ないし4に記載された技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載の発明及び引用文献2ないし4に記載された技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載の発明及び引用文献2ないし4に記載された技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-08-24 |
結審通知日 | 2010-08-31 |
審決日 | 2010-09-13 |
出願番号 | 特願2000-51944(P2000-51944) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B66B)
P 1 8・ 575- Z (B66B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 良憲 |
特許庁審判長 |
深澤 幹朗 |
特許庁審判官 |
西山 真二 金澤 俊郎 |
発明の名称 | エレベーターの制御装置 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 大宅 一宏 |
代理人 | 上田 俊一 |
代理人 | 上田 俊一 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 古川 秀利 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 大宅 一宏 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 古川 秀利 |