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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1226042
審判番号 不服2007-15458  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-01 
確定日 2010-10-27 
事件の表示 平成 9年特許願第217474号「プログラム可能な医療用イメージング・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月 7日出願公開、特開平10-207700〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年8月12日(パリ条約による優先権主張1996年8月13日、米国)の出願であって、平成18年10月31日付けで拒絶理由が通知され、平成19年2月7日付けで手続補正がなされたものの、同年2月28日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年6月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるともにに同日付けで手続補正がなされ、同年7月19日付けで前置報告がなされ、平成21年5月1日付けで当審より審尋がなされ、同年10月19日付けで回答書が提出され、同年11月27日付けで当審より拒絶理由が通知され、平成22年4月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明は、平成22年4月22日付け手続補正書で補正された明細書及び図面のからみて、その請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「複数のセルを表示するグラフィック・ユーザ・インターフェース、前記セルの各々を特定する情報を格納するメモリ装置、及び前記メモリ装置及びグラフィック・ユーザ・インターフェースに結合されている処理装置を持つコンピュータで構成されているプログラム可能な医療用イメージング・システムに於いて、
前記複数のセルは、前記プログラム可能な医療用イメージング・システムで生成された医療情報を含む少なくとも1つのセルを含んでおり、
前記処理装置は、前記複数のセルのオーバーラップを検出して補正するセル・オーバーラップ検出及び補正ルーチンを実行し、
前記セル・オーバーラップ検出及び補正ルーチンは、
1)前記複数のセルの内の第1のセルの寸法の変更に応答して呼び出され、前記第1のセルが観察テンプレート上の他のセルとオーバーラップしているかを検出し、2)セルのオーバーラップが検出された場合、(a)最小オーバーラップ補正距離Dminを決定し、(b)前記第1のセルをこうして決定された最小オーバーラップ補正距離Dminだけ移動させ、(c)第1のセルを移動させた後、第1のセルが別のセルとオーバーラップしているかどうかを検出するアルゴリズムを含んでおり、
前記セル・オーバーラップ検出及び補正ルーチンが、更に、前記アルゴリズム2)(c)でセルのオーバーラップが検出された場合、アルゴリズム2)(a)に戻り、アルゴリズム2)(a)及び2)(b)を実行するアルゴリズムを含んでいることを特徴とするプログラム可能な医療用イメージング・システム。」

3.引用例
当審から通知された拒絶理由通知に引用された特開平3-269487号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。

A.「 〔産業上の利用分野]
本発明は、ディスプレイ画面上に複数のウィンドウを設定し、それぞれのウィンドウごとに独立した情報処理を実現可能にしているマルチウィンドウシステムにおける複数ウィンドウの重なり抑止制御方式に関する。
マルチウィンドウシステムには、利用者が同時に複数のウィンドウを表示して、複数の業務を並行して遂行できるという利点がある。しかし、ディスプレイの表示面の大きさには制限があり、一般には、ウィンドウは相互に重なった状態で表示されるため、効率のよい業務遂行のためには、ウィンドウの表示位置や重なりを最適にするような制御が必要とされる。
〔従来の技術〕
従来、ウィンドウの重なりが最小になるように再配置したり、ウィンドウの表示位置を整列させたりすることにより、表示の最適化を図ることが行われている。
(中略)
そのため、同一の業務で使用している複数のウィンドウは 本来は重ね合わせたくないにもかかわらず、互いに重なり合ってしまい、利用者にとっては、大事な情報が隠蔽されてしまって、ウィンドウを見やすくしようとした操作が、かえって業務遂行の効率向上に結び付かない場合が少なくない。」(公報2頁左上欄1行?右上欄12行)

B.「 本発明は上記問題点の解決を図り、一つの業務を実行するプログラムが、相互に関連を持つ複数のウィンドウを使用する場合に、それらのウィンドウが重なり合わず、かつ最適な位置に最適な大きさで表示されるようにし、利用者の操作によって必要な情報が隠れてしまわないようにすることを目的としている。」(公報2頁左下欄2行?7行)

C.「第1図は本発明の構成例を示す。
第1図において、10はCPUおよびメモリなどからなる処理装置、11はディスプレイ、12はマウスやキーボードなどの入力装置、13は入力装置12からの入力を制御する入力制御部、14はマルチウィンドウの制御機能を持つウィンドウ制御部、15はウィンドウ操作検知部、16は複数のウィンドウを使用して業務を遂行する応用処理部、17はウィンドウ操作内容判定部、18はウィンドウ再配置処理部、19は各ウィンドウの表示位置、サイズ、表示状態などの情報を記憶するウィンドウ属性記憶部を表す。
応用処理部16は、オペレーティング・システムが提供する入力制御部13およびウィンドウ制御部14の機能を利用し、ディスプレイ11の画面上にウィンドウと呼ばれる複数の対話領域を設定して、一つの業務を遂行するものである。
ウィンドウ制御部14におけるウィンドウ操作検知部15は、入力装置12からの入力によるウィンドウの移動や拡大などの操作を、入力制御部13からの通知により検知する。
ウィンドウ操作検知部15は、ウィンドウ操作を検知すると、そのウィンドウ操作情報を応用処理部16に通知する。
その通知により、応用処理部16のウィンドウ操作内容判定部17は、ウィンドウ操作の内容を調べ、ウィンドウ属性記憶部19にあらかじめ設定したウィンドウの位置やサイズなどの属性情報を参照して、応用処理部16が使用する関連するウィンドウが重なり合うかどうかを判定する。
ウィンドウ再配置処理部18は、ウィンドウ操作内容判定部17の判定により、関連するウィンドウが重なり合うことがわかった場合、それらが互いに重なり合わないように、ウィンドウの位置と大きさを自動調整し、その調整結果をウィンドウ制御部14に通知して、ウィンドウの再配置を行う。」(公報2頁左下欄9行?3頁左上欄7行)

D.「 例えば第3図(イ)に示すようなディスプレイ画面21の表示状態で、利用者により、ウィンドウW1を、点線の枠で示すウィンドウWl’に拡大する指示が行われたとする。この場合、ウィンドウW1を指定された大きさまで拡大すると、その結果のウィンドウWl’ はウィンドウW2と重なり合うことになる。
この操作を行った場合、第1図に示すウィンドウ操作検知部15では、ウィンドウサイズの変更が行われたことが検出される。その通知により、ウィンドウ操作内容判定部17は、変更後のウィンドウと同一プログラムから表示されている他のウィンドウとの位置関係を検査する。
ウィンドウが重なり合わなければ、そのままサイズ変更処理へと進むが、第3図(イ)の場合、ウィンドウが重なり合うと判定される。この例では、ウィンドウW2はサイズ変更禁止のウィンドウであるため、ウィンドウW1は、ウィンドウW2の直前までしか拡大できないと判定し、拡大後のサイズを補正して、重なり合わないように決定する。
この補正した結果に従って、ウィンドウ再配置処理部18は、第3図(ロ)に示すように、ウィンドウW1を表示する。」(公報3頁右下欄9行?4頁左上欄12行)

E.「 また、第4図(イ)に示すようなディスプレイ画面21の表示状態で、利用者により、ウィンドウWlを2点線の枠で示すウィンドウWl’に移動する指示が行われたとする。この場合、ウィンドウW1を指定された位置まで移動すると、その結果のウィンドウW1’はウィンドウW2と重なり合うことになる。
この操作を行った場合、第1図に示すウィンドウ操作検知部15では、ウィンドウの移動操作が行われたことが検出される。その通知により、ウィンドウ操作内容判定部17は、移動後のウィンドウと同一プログラムから表示されている他のウィンドウとの位置関係を検査する。
ウィンドウが重なり合わなければ、そのままサイズ変更処理へと進むが、第4図(イ)の場合、ウィンドウが重なり合うと判定される。そこでウィンドウW1は、ウィンドウW2の直前の位置までしか移動できないと判定し、移動後の位置を、重なり合わない範囲内で、指示された位置に最も近い位置に補正する。
この補正した結果に従って、ウィンドウ再配置処理部18は、第4図(ロ)に示すように、ウィンドウW1を表示する。」(公報4頁左上欄13行?右上欄15行)

上記した引用文献1の記載によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

複数のウインドウを表示するディスプレイ11、前記複数のウインドウの表示位置、サイズなどの情報を記憶するウインドウ属性記憶部19、及び前記ウインドウ属性記憶部19及びディスプレイ11に結合されている処理装置10により構成されているシステムにおいて、
前記処理装置は、ウインドウに対する位置の移動、大きさの変更を検知するウインドウ操作検出部15,ウインドウの重なりを判定するウインドウ操作内容判定部17及び、ウインドウの位置と大きさを自動調整するウインドウ再配置処理部18を有し、
ウインドウ操作検出部15は、複数のウインドウの内の1つのウインドウの位置の移動又は大きさの変更を検出したことをウインドウ操作内容判定部17に通知し、
ウインドウ操作内容判定部17は、移動又は変更後のウインドウと画面上の他のウインドウの重なり具合を判定し、重なり合う場合には、重なり合わない範囲内で指定された位置に最も近い位置又は重ならない直前のサイズに補正し、
ウインドウ再配置処理部18は、ウインドウ操作内容判定部17からの移動位置又はサイズの補正に従って、デイスプレイ11にウインドウを表示する
複数ウインドウの重なりを防止して表示するシステム

また、当審から通知された拒絶理由通知に引用された特開平7-282226号公報(以下、「引用文献2」という。)には、その図12,13とそれに関する説明によれば、次の技術事項が記載されている。

1つの画面を複数のウインドウに分割して各ウインドウに関連する画像を表示するものにおいて、複数のウインドウに医療診断画像を表示するシステム

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「ウインドウ」「ディスプレイ11」「ウインドウ属性記憶部19」「処理装置10」「重なり」「画面」は、それぞれ、
本願発明の「セル」「グラフィック・ユーザ・インターフェース」「メモリ装置」「処理装置」「オーバーラップ」「観察テンプレート」に相当する。
本願発明の「セル・オーバーラップ検出及び補正ルーチン」と引用発明の「ウインドウ操作内容判定部17」とは、セルのオーバーラップを検出している点では一致し、また、引用発明において「重なり合わない範囲内で指定された位置に最も近い位置に補正」するとされているから、重なり合っている範囲を算出し、算出した範囲に相当する距離だけ移動するようにウィンドウの位置を移動していることになる。この場合、「指示された位置に最も近い位置」に移動する距離は、重なり合わない最小の移動距離であるから、本願発明の「最小オーバーラップ補正距離」と同等のものである。
そして、引用発明の「ウインドウ操作内容判定部17」は、プログラムで実現されていることは明かであるから、引用発明の「ウインドウ操作内容判定部17」と本願発明の「セル・オーバーラップ検出及び補正ルーチン」とは、オーバーラップが検出された場合に最低限の補正によりオーバーラップを解消するアルゴリズムを有するオーバーラップ検出及び修正ルーチンである点で共通している。
本願発明の「セル・オーバーラップ検出及び補正ルーチン」は、寸法の変更に応答して呼び出されるものであるから、本願発明においても引用発明の「ウインドウ操作検出部15」と実質的に同等のものを有していることは明かである。
本願発明において、「セル・オーバーラップ検出及び補正ルーチン」によって、補正された第1のセルを表示するものであるから、本願発明が引用発明の「ウインドウ再配置処理部18」と同等のものを有することは明かである。

よって、本願発明と引用発明とは次の一致点で一致している。
(一致点)
複数のセルを表示するグラフィック・ユーザ・インターフェース、前記セルの各々を特定する情報を格納するメモリ装置、及び前記メモリ装置及びグラフィック・ユーザ・インターフェースに結合されている処理装置により構成されるシステムに於いて、
前記処理装置は、前記複数のセルのオーバーラップ検出及び修正ルーチンを実行し、
前記オーバーラップ検出及び修正ルーチンは、
1)前記複数のセルの内の第1のセルの寸法の変更に応答して呼び出され、前記第1のセルが観察テンプレート上の他のセルとオーバーラップしているかを検出し、2)セルのオーバーラップが検出された場合、最低限の補正によりオーバーラップを解消するアルゴリズムを含んでいるオーバーラップを防止して表示するシステム

また、本願発明と引用発明とは次の相違点で相違している。
(相違点1)
本願発明は、処理装置を持つコンピュータで構成されているプログラム可能な医療用イメージング・システムであり、少なくとの1つのセルに医療情報を含むものであるのに対し、引用発明は医療用イメージング・システムではなく、セルに医療情報を含んでいない重なりを防止して表示するシステムである点
(相違点2)
セルのオーバーラップが検出された場合、最低限の補正によりオーバーラップを解消するアルゴリズムが、本願発明ではセルの寸法の変更に対しセルの移動によってオーバーラップを解消するものであるに対し、引用発明では位置の移動又は大きさの変更に対し移動位置又はサイズの変更によってオーバーラップを解消するものである点
(相違点3)
セルのオーバーラップが検出された場合、最低限の補正によりオーバーラップを解消するアルゴリズムが、更に別のセルとのオーバーラップを検出した場合に、セルの移動によって別のセルとのオーバーラップを解消するものものであるに対し、引用発明はそのようなことをしていない点

4.相違点についての判断
(相違点1について)
上記2.引用例の項で引用文献2について認定したように、医療診断システムとして医療診断画像を複数のウインドウに表示するものは周知のものであるから、引用発明の重なりを防止して表示するシステムを医療情報を含むセルをオーバーラップしないように表示する医療診断システムに用いることは格別のことではない。

(相違点2について)
1つの画面上に複数のウインドウを重ならないように表示するためにウインドウの位置や大きさを自動的に調整する技術として、特開平5-282116号公報には、ウインドウの重なっている場合、サイズを縮小すると表示内容が枠外に出るためスクロールが必要となり使い勝手が悪いということを考慮して、まず、ウインドウの位置を移動して重なりを解消し、最大限の移動によっても重なりの解消ができないときにウインドウのサイズを縮小して重なりを解消する技術が開示されている。このように重なりの解消のためにウインドウの移動とサイズの縮小を組み合わせて調整することは通常に行うことであるから、寸法の変更によってオーバーラップが生じた場合にまずウインドウの移動によってオーバーラップを解消するように設計することは当業者が容易になし得ることである。

(相違点3について)
引用発明の目的を考えれば、引用発明において重なる可能性のあるウィンドウが複数存在することを想定していることは当然であり、重なり合うウィンドウが複数の場合、別のウィンドウとの重なりを検出することは普通に考慮することであるから、他のセルのほかに別のセルとのオーバーラップを検出するようにすることは格別のことではない。そして、特開平5-282116号公報の図3の処理フローとそれに関する説明によれば、ウインドウを少し移動させて重なりを検出し、重なりがある場合は更に少し移動させるようにステップバイステップにオーバーラップの検出と補正を行っているから、他のウインドウや別のウインドウとの重なりの解消をステップバイステップの手法と同様に順次行うようにすることは容易になし得ることである。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-28 
結審通知日 2010-06-01 
審決日 2010-06-17 
出願番号 特願平9-217474
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 石井 茂和
宮司 卓佳
発明の名称 プログラム可能な医療用イメージング・システム  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  

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