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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M |
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管理番号 | 1226056 |
審判番号 | 不服2008-22289 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-01 |
確定日 | 2010-10-27 |
事件の表示 | 特願2004-534933号「水およびエタノールの混合物を燃料に変換する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日国際公開、WO2004/024847、平成17年12月22日国内公表、特表2005-539168号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成14年11月11日(パリ条約による優先権主張 平成14年(2002年)9月16日、中華人民共和国)の国際出願であって、その請求項1から7に係る発明は、平成22年1月21日付けの当審の拒絶理由通知に対する平成22年4月26日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1から7に記載されたとおりのものであって、請求項1に記載された発明は次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】水をエタノールと4:1ないし1:1の重量比で混合し、 得られた混合物を加熱して蒸発させ、蒸気混合物を生成し、 前記蒸気混合物を、電圧が6V以上である直流電界を通過させることを特徴とする、水を燃料に変換する方法。」(以下「本願発明」という。) 2.当審の平成22年1月21日付けの当審の拒絶理由通知の概要 (1)理由1について。 本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (2)理由2について。 本件出願の請求項1から7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3.理由1についての当審の判断 (1)本願請求項1に記載の発明について。 本願発明は、「水をエタノールと4:1ないし1:1の重量比で混合し、得られた混合物を加熱して蒸発させ、蒸気混合物を生成し、前記蒸気混合物を、電圧が6V以上である直流電界を通過させることを特徴とする、水を燃料に変換する方法。」というものである。 そして、この方法に関し、発明の詳細な説明には、以下のような説明がなされている。 【技術分野】 【0001】本発明は、水およびエタノールの混合物を燃料に変換するための方法およびその装置に関する。特に、本発明は、油またはガスを燃料として用いて、水を熱機関用の補助燃料に変換するための方法およびその装置に関する。 【背景技術】 【0002】水を電解して水素ガスを生成し、水素の可燃性により水を燃料に変換することができる。しかし、水の電解には電力を消費し過ぎ、安全でないため、水を電解して燃料に変換するという方法は、今日まで産業界では採用されなかった。超音波技術で水を噴霧した後、それを補助燃料として用いる方法も、実用的でないため、実際には適用されていない。特許文献1(中華人民共和国特許出願第97107052.0号)は、水を燃料に変換する技術的方法を開示しており、その方法では、触媒の作用により水が蒸気の状態で反応する。しかし、これは、現在まで実際には適用されていなかった。技術上の実現可能性に関係なく、経済性の点のみからいえば、この方法は触媒を消費し、反応器内のある条件においてのみ、実施することが可能である。このように、この装置および方法は複雑であり、費用がかかる。 【発明が解決しようとする課題】 【0003】本発明の目的は、エネルギー源を節約し、油およびガスの消費を低減し、環境汚染を緩和するために、現存の電力設備に使用される油およびガスの補助燃料として用いる燃料へと水を変換する新規な方法およびその装置を提供することである。また、本発明の装置は、安全に動作することが可能であり、利便性よくしかも容易に維持することができる。 【課題を解決するための手段】 【0004】上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。 【0005】本発明による水を燃料に変換する方法は、水をエタノールとある重量比で混合し、得られた混合物を加熱して蒸発させ、蒸気混合物を生成し、前記蒸気混合物を、直流電界を通過させることを特徴とする。その後、水を燃料に変換する工程が完了する。 【0006】一般に、水とエタノールの混合比は、重量比で4:1から1:1までの範囲である。 【0007】直流電界の電圧は、6V以上である。 ・・・ 【0018】 1. 本発明では、水とエタノールを混合し、加熱して混合液を蒸発させる。その後、蒸気となった混合物は、直流電界を通過する。電界の作用により、水素ガス等の可燃性ガスが浮遊し、燃料ガスパイプおよび燃料ガス回収パイプを介して、エンジンシステムに流れ込む。酸素ガスおよび単位重量が大きい他のガスは下降し、排気ガスパイプおよび排気ガス回収パイプを介して排気される。その結果、水を燃料に変換するという本発明の目的が達成される。この燃料は、油またはガスを燃料として用いるエンジンに対して、補助燃料として用いることが可能である。 (2)本願明細書が特許法36条4項の規定に適合するか否かについて。 明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないものであるから、この点について検討する。 本願発明の名称は、「水およびエタノールの混合物を燃料に変換する方法」であって、特許請求の範囲請求項1によれば、「水をエタノールと4:1ないし1:1の重量比で混合し、得られた混合物を加熱して蒸発させ、蒸気混合物を生成し、前記蒸気混合物を、電圧が6V以上である直流電界を通過させることを特徴とする、水を燃料に変換する方法。」というものであり、物を生産する方法の発明であるものと認められる。 そして、物を生産する方法の発明においては、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき当業者がその物を製造できるように記載しなければならないものである。 本願発明の水を燃料に変換させる方法は、段落【0018】の記載によれば、水とエタノールを混合し、加熱して混合液を蒸発させ、その後、蒸気となった混合物は、直流電界を通過し、電界の作用により、水素ガス等の可燃性ガスが浮遊する、というものである。 この記載によれば、水から水素ガス等の可燃性ガスを発生させる方法として、電界の作用によるとされているが、具体的な条件に関しては、水をエタノールと4:1ないし1:1の重量比で混合することと直流電界の電圧が6V以上であること以外には特許請求の範囲にも発明の詳細な説明にも何ら記載されていない。 本願明細書の段落【0002】に背景技術として記載されているように、水が電気によって分解されて水素ガスが発生し得ることは、科学の常識として知られていることであるが、本願発明で「電界の作用により水素ガスが浮遊する」(段落【0018】)というのは如何なる作用によって生じる現象であるのか本願明細書を参照しても何ら明らかであるとはいえない。そして、その際の具体的条件として明細書において明らかにされている事項は、水をエタノールと4:1ないし1:1の重量比で混合することと直流電界の電圧が6V以上とすることのみであって、この記載された事項以外の諸条件如何にかかわらず、実際に水を燃料に変換できるのか不明である。しかも、本願明細書において、本願発明の条件で水を燃料に変換されたことが明らかに示されているような実施例が挙げられているものでもない。 よって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 4.理由2についての当審の判断 (1)引用文献の記載事項 (1-1)当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された、特開昭57-13182号公報(以下、「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。 a:「過熱した水蒸気の通路の前方に2つの通路を設け、その1方の通路の入口付近に+の電極を取り付け、他方の通路の入口付近に-の電極を取り付け、高電圧を印加して水素と酸素を連続して分解する装置。」(第1頁左下欄第5?9行) b:「この発明は、・・・2方向の通路の入口付近に+及び-の電極を取り付けこれに直流高電圧を印加して連続的に水をその構成部分に分解しようとするものである。」(第1頁左下欄第11?15行) 上記の各記載より、引用例1には、 過熱した水蒸気の通路の前方に2つの通路を設け、その1方の通路の入口付近に+の電極を取り付け、他方の通路の入口付近に-の電極を取り付け、これに直流高電圧を印加して水素と酸素を連続して分解する装置、が記載されている。(以下、「引用発明」という。) (1-2)当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された、特開昭63-219593号公報(以下、「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。 d:「1.酸化反応をするアノードと還元反応をするカソード及び前記両者間に位置する電解質から成る電解セルにおいて、アノードには還元体を供給し、カソードは酸化体を不共存にすることにより、電気化学的にカソードから水素を発生させることを特徴とする水素製造方法。 ・・・ 7.還元体が液体燃料からなることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の水素製造方法。 8.液体燃料がメタノールおよび/あるいはエタノール水溶液からなることを特徴とする特許請求の範囲第7項記載の水素製造方法。」(第1頁左下欄第5行?同右下欄第12行、第2図) (3)対比 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明でも「直流高電圧」であるから、引用発明に係る「水蒸気」は、本願発明の場合と同様に「電圧が6V以上である直流電界を通過」することになるものであり、また、「水素」は燃料としても利用されるものであるから、引用発明は「水を燃料に変換する方法」を開示する発明であると認められる。 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりと認められる。 【一致点】「水を加熱して蒸発させ、蒸気を生成し、前記蒸気を、電圧が6V以上である直流電界を通過させる、水を燃料に変換する方法。」である点。 【相違点】本願発明では、蒸気が、「水をエタノールと4:1ないし1:1の重量比で混合」した混合物を加熱して蒸発させた「蒸気混合物」であるのに対し、引用発明では「水蒸気」とするにとどまり、水をエタノールと混合すること及びその混合比については記載がない点。 (4)当審の判断 相違点について 本願発明では、蒸気が水のみではなく水とエタノールを混合した混合物を加熱して蒸発させたものである。エタノールが本願発明の方法においてどのような役割を果たしているのかは明らかではないが、引用例2には、電気化学的に水素を発生させる水素製造方法において、エタノール水溶液、すなわち水とエタノールの混合物を用いることが記載されており、引用発明において水に換えて水とエタノールの混合物を用いることは当業者が容易になし得ることである。 そして、水とエタノールの混合物の重量比の限定に如何なる技術的意義があるのか定かではなく、その数値範囲の限定は本願発明を実施するにあたり、当業者が適宜容易に定め得る事項にすぎない。 5.むすび したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められず、特許法第36条第4項のに規定する要件を満たしていない。 また、本願発明は、引用例1から2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-25 |
結審通知日 | 2010-06-01 |
審決日 | 2010-06-14 |
出願番号 | 特願2004-534933(P2004-534933) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(F02M)
P 1 8・ 121- WZ (F02M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 粟倉 裕二、島倉 理 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
横溝 顕範 小関 峰夫 |
発明の名称 | 水およびエタノールの混合物を燃料に変換する方法および装置 |
代理人 | 高田 幸彦 |