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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1226057
審判番号 不服2009-1059  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-13 
確定日 2010-10-27 
事件の表示 特願2006-171710「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月10日出願公開、特開2008- 3251〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年6月21日の特許出願であって、平成20年8月7日付けで手続補正がなされ、同年10月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
平成21年1月13日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は次のものであると認める。

「 第1の基板上に設けられたコモン電極および画素電極の間に横電界を発生させるIPS構造を有する液晶表示装置において、
信号線と前記画素電極との間に前記コモン電極を延長してさらに設け、前記画素電極の周囲が前記コモン電極により覆われて、ゲート線と前記画素電極との間に前記コモン電極を延長してさらに設けたことを特徴とする液晶表示装置。」(以下「本願発明」という。)

3 引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-119237号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 走査信号を伝達する走査線、映像信号を伝達する信号線、前記走査線と前記信号線が交差してなる格子状の画素、前記画素に設けられて前記走査線および前記信号線と接続され、走査信号に基づいて映像信号のスイッチングを行う薄膜トランジスタ、この薄膜トランジスタと接続された駆動電極、この駆動電極と対向するように配置された対向電極、この対向電極と他の画素の対向電極とを相互に接続する共通配線を備えたTFTアレイ基板と、このTFTアレイ基板に対向するように設けられた対向基板と、前記TFTアレイ基板と前記対向基板との間に封入され、前記駆動電極および対向電極が基板面に平行な電界を発生させて駆動する液晶とを備えた面内スイッチング型液晶表示装置において、前記TFTアレイ基板は、前記駆動電極および対向電極を前記信号線の形成される層とは異なる前記液晶に近い層に形成されたことを特徴とする面内スイッチング型液晶表示装置。」

(2)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アレイ基板に対して平行な電界を発生して液晶を駆動する面内スイッチング型(In Plain Switching型:以後、IPS型と略す)液晶表示装置に係わり、更に詳しくは信号線からの漏れ電界の影響を軽減し、遮光領域を減らすことにより開口率を高めた高輝度な液晶表示装置の構造に関する。」

(3)「【0028】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図において従来と同一符号は従来のものと同一あるいは相当のものを表す。図1はこの発明の実施の形態1によるIPS型液晶表示装置の一画素の構造を模式的に示す断面図であり、図2はその平面図である。なお、図1は図2に示すA-Aにおける断面図を示したものである。図において、1はガラス基板、2は走査線、3は信号線、4は薄膜トランジスタ(TFT)、5は駆動電極、6は対向電極、7は保持容量形成用電極、8は共通配線、9はゲート絶縁膜、10は保護膜、11は液晶、12はブラックマトリックス(BM)、14はコンタクトホール、15はトランジスタのソース電極、16はトランジスタのドレイン電極である。また、20はアレイ基板(ガラス基板1、信号線3、駆動電極5、対向電極6等で構成されている)、30はアレイ基板20に対向して配置された表示画面となる対向基板、40は信号線3と対向電極6の間の隙間であるスリット、50は画素の開口部である。・・・
【0029】次に、図1、図2に基づいて、IPS型液晶表示装置の画素の構造について説明する。図において、1はガラス基板であり、このガラス基板1上に走査線2が形成されている。この走査線2を覆うようにゲート絶縁膜9が積層され、このゲート絶縁膜9上に信号線3が設けられている。この信号線3の上に保護膜10が積層され、保護膜10の上に駆動電極5、対向電極6が設けられている。TFTアレイ基板20は以上説明したような構造となっている。前記TFTアレイ基板20と対面するように設けられている基板30は、前記TFTアレイ基板20との間に液晶11を挟持する対向基板である。本発明にかかるIPS型液晶表示装置は、前記TFTアレイ基板の表面に沿って電界を発生させ、この電界の方向を制御することにより液晶11を駆動する。
【0030】図2は、図1に示したIPS型液晶表示装置を平面図で示すものである。図2において、2は走査線、3は信号線であり、この走査線2、信号線3により囲まれた領域が一つの画素となる。4は、走査線2と信号線3の交点に設けられた薄膜トランジスタ(TFT)であり、薄膜トランジスタ4の有する3つの電極のうちゲート電極は走査線2と、ソース電極15は信号線3と接続されている。薄膜トランジスタ4の有する3つの電極のうち、ドレイン電極16は保護膜10(図示せず)を介した上の層にコンタクトホール14により駆動電極5と接続されている。この駆動電極5と噛み合わさるように対向して設けられているのが対向電極6であって、対向電極6は共通配線8と同じ層に形成されて相互に接続されている。図示しないが共通配線8は隣接する他の画素の対向電極6を接続している。なお、駆動電極5と対向電極6、共通配線8は、信号線3より上の層に同時に形成されている。
【0031】7は駆動電極5の電位を保持するための保持容量であって、対向電極6とドレイン電極16を上下に積層して形成したものである。40は信号線3と対向電極6との間のスリットであって、図1に示す対向基板30に設けられたブラックマトリックス12は、バックライトを光源として前記スリット40を透過する漏れ光を遮光するものである。50は開口部であり、開口部の面積が大きくなれば高画質な液晶ディスプレイを得ることができる。なお、IPS型液晶表示装置は、TFTアレイ基板20上に設けられた駆動電極5と対向電極6の間で、薄膜トランジスタ4のドレイン電極16と接続された駆動電極5に書き込まれる電荷を保持し、ガラス基板1表面に沿って電界を発生させて液晶11を駆動するので、対向基板30は電極を備えない無電極基板である。以下、実施の形態1にかかるIPS型液晶表示装置の画素を構成するTFTアレイ基板のプロセスフローの一例について説明する。
【0032】図4、図5、図6はTFTアレイ基板のプロセスフローを示す図である。なお、図4?図6の左側の図はTFTアレイ基板を、右側の図は走査線2を走査線駆動回路に実装する端子部を示す図である。図4において、工程1は、ガラス基板1の上に走査線2をCr、Al、Mo、Ta、Cu、Al-Cu、Al-Si-Cu、Ti、W等の単体あるいはこれらの合金、あるいはITO(Indium Tin Oxide インジウム錫酸化物)等の透明材料、あるいはこれらを積層した構造で、膜厚を50nmから800nm程度の厚さで形成するものである。この走査線2は薄膜トランジスタ4のゲート電極としても機能する。走査線2を形成する際のエッチング方法として、図4では断面が台形状になるテーパーエッチングを例に示したが、断面が長方形となるようなエッチング方法を用いてもよい。」

(4)「【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1にかかる面内スイッチング型液晶表示装置の一画素の構造を示す断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1にかかる面内スイッチング型液晶表示装置の一画素の構造を示す平面図である。
・・・」

(5)上記(3)の「7は駆動電極5の電位を保持するための保持容量であって、対向電極6とドレイン電極16を上下に積層して形成したものである。」(【0031】)との記載を踏まえると、図2から、「対向電極6」は、「保持容量7」が形成されている領域に至るよう「信号線3」と「駆動電極5」との間、及び「走査線2」と「駆動電極5」との間に延長されており、「駆動電極5」の周囲を囲んでいることが見て取れる。

(6)したがって、上記記載事項を総合すると、引用刊行物には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「走査信号を伝達する走査線、映像信号を伝達する信号線、前記走査線と前記信号線が交差してなる格子状の画素、前記画素に設けられて前記走査線および前記信号線と接続され、走査信号に基づいて映像信号のスイッチングを行う薄膜トランジスタ、この薄膜トランジスタと接続された駆動電極、この駆動電極と対向するように配置された対向電極、この対向電極と他の画素の対向電極とを相互に接続する共通配線を備えたTFTアレイ基板と、このTFTアレイ基板に対向するように設けられた対向基板と、前記TFTアレイ基板と前記対向基板との間に封入され、前記駆動電極および対向電極が基板面に平行な電界を発生させて駆動する液晶とを備えた面内スイッチング型(IPS型)液晶表示装置において、
前記TFTアレイ基板は、前記駆動電極および対向電極を前記信号線の形成される層とは異なる前記液晶に近い層に形成されており、
前記走査線は薄膜トランジスタのゲート電極としても機能し、
前記対向電極は共通配線と同じ層に形成されて相互に接続されており、
前記対向電極は、保持容量が形成されている領域に至るよう信号線と駆動電極との間、及び走査線と駆動電極との間に延長されており、駆動電極の周囲を囲んでいる、
面内スイッチング型(IPS型)液晶表示装置。」

4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「面内スイッチング型(IPS型)液晶表示装置」は、本願発明の「液晶表示装置」に相当する。

(2)引用発明の「駆動電極」は、本願発明の「画素電極」に相当する。

(3)引用発明の「対向電極」は、「共通配線と同じ層に形成されて相互に接続されている」ものであり、本願発明の「コモン電極」に相当する。

(4)引用発明の「TFTアレイ基板」は、「走査信号を伝達する走査線、映像信号を伝達する信号線、前記走査線と前記信号線が交差してなる格子状の画素、前記画素に設けられて前記走査線および前記信号線と接続され、走査信号に基づいて映像信号のスイッチングを行う薄膜トランジスタ、この薄膜トランジスタと接続された駆動電極、この駆動電極と対向するように配置された対向電極、この対向電極と他の画素の対向電極とを相互に接続する共通配線を備えた」ものであるから、本願発明の「『コモン電極および画素電極』がその『上に設けられた』『第1の基板』」に相当する。

(5)引用発明の「面内スイッチング型(IPS型)液晶表示装置」は、「前記TFTアレイ基板と前記対向基板との間に封入され、前記駆動電極および対向電極が基板面に平行な電界を発生させて駆動する液晶とを備えた」ものであるから、本願発明の「第1の基板上に設けられたコモン電極および画素電極の間に横電界を発生させるIPS構造を有する」との特定事項を備える。

(6)引用発明の「走査線」は、本願発明の「ゲート線」に相当する。

(7)引用発明において、「対向電極(コモン電極)」は、「保持容量が形成されている領域に至るよう信号線と駆動電極(画素電極)との間、及び走査線(ゲート線)と駆動電極(画素電極)との間に延長されており、駆動電極(画素電極)の周囲を囲んで」いるから、引用発明は、本願発明の「信号線と前記画素電極との間に前記コモン電極を延長してさらに設け、前記画素電極の周囲が前記コモン電極により覆われて、ゲート線と前記画素電極との間に前記コモン電極を延長してさらに設けた」との特定事項を備える。

したがって、両発明は、
「第1の基板上に設けられたコモン電極および画素電極の間に横電界を発生させるIPS構造を有する液晶表示装置において、
信号線と前記画素電極との間に前記コモン電極を延長してさらに設け、前記画素電極の周囲が前記コモン電極により覆われて、ゲート線と前記画素電極との間に前記コモン電極を延長してさらに設けた、液晶表示装置。」
である点で一致し、両発明の間には差異はない。

よって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明である。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2010-05-26 
結審通知日 2010-06-01 
審決日 2010-06-14 
出願番号 特願2006-171710(P2006-171710)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥田 雄介  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 杉山 輝和
田部 元史
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 曾我 道治  
代理人 上田 俊一  
代理人 梶並 順  
代理人 古川 秀利  
代理人 鈴木 憲七  

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