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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1226060
審判番号 不服2009-19062  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-07 
確定日 2010-10-27 
事件の表示 特願2003-522394「らせん構成要素を有するステント」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 6日国際公開、WO03/17870、平成16年 7月22日国内公表、特表2004-521720〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成13年12月11日(パリ条約による優先権主張 平成12年12月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年6月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月7日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで明細書の特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成21年10月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年10月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「【請求項1】
本体を有する拡張可能なステントであって、非拡張時に、前記本体は、
H形状の接続セグメントによって接続される複数の拡張可能ならせんセグメントと、
それぞれ互いに平行に積み重ねられることにより、共線的な円筒軸を有し、互いに隣接して、交差する前記らせんセグメントの前記接続セグメントによって互いに取り付けられた複数の円筒形構成要素とを有し、該円筒形構成要素の各々が、
隣接の円筒形構成要素とほぼ同一の方向で、ほぼ同一の円周を形成し、
前記らせんセグメントの前記接続セグメントによって互いに結合されて、前記円筒形構成要素の前記円周を形成する複数の円周方向セグメントによって形成されるステント。」
(なお、下線は、補正箇所を明示するために付したものである。)

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された、発明を特定するために必要な事項である「複数の拡張可能ならせんセグメント」を「H形状の接続セグメントによって接続される複数の拡張可能ならせんセグメント」と、発明を特定するために必要な事項である「交差する前記らせんセグメントによって互いに取り付けられた複数の円筒形構成要素」を「交差する前記らせんセグメントの前記接続セグメントによって互いに取り付けられた複数の円筒形構成要素」と、「らせんセグメントと交差する部分によって互いに結合されて」を「らせんセグメントの前記接続セグメントによって互いに結合されて」と、それぞれ限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について、以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第99/49810号(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている(付記した訳文は、パテントファミリーである特表2002-509759号公報の記載に基づく。)。

a.「Fig. 1 illustrates a stent 10 having a rest length Lr and an un-deployed or reduced diameter Dr. The stent 10 is of the design shown in the aforementioned U.S. patent application. The slot of the novel beam construction, as will be described, is not shown in Fig. 1.
For ease of illustration, the stent 10 is shown flat in Fig. 2 which illustrates a rest circumference Cr (Cr=πDr). In Fig. 2, locations A, B, C, D and E are shown severed from their normally integrally formed locations A1,B1,C1,D1 and E1. This permits the stent 10 to be shown as if it were severed at normally integrally formed locations A-A1, B-B1, C-C1, D-D1 and E-E1, and laid flat. Fig. 6 is an enlarged portion of the view of Fig. 2 to better illustrate a cell structure as will be described.
The stent 10 is a reticulated, hollow tube. The stent 10 may be expanded from the rest diameter Dr (and corresponding rest circumference Cr) to an expanded or enlarged diameter. Fig. 3 is a view similar to Fig. 2 (i.e., illustrating the expanded stent 10 as it would appear if longitudinally split and laid flat). Since Fig. 3 is a twodimensional representation, the enlarged diameter is not shown. However, the enlarged circumference Ce is shown as well as a length Le following expansion. The expanded diameter is equal to Ce/π. 」(第4ページ第3?19行)
「図1は、静止状態の長さLrおよび未展開状態すなわち縮径状態の直径Drを有するステント10を示す。ステント10は上記米国特許出願に記載の構造を有する。図1には、後述する新規の梁構成の溝(slot)は示されていない。
図示を分かりやすくするために、ステント10を平面状にして図2に示し、静止状態の円周をCr(Cr=πDr)とする。図2において、位置A、B、C、DおよびEは、通常一体形成される位置A1、B1、C1、D1およびE1から切り離されたものである。これにより、ステント10を、通常一体形成される位置A-A1、B-B1、C-C1、D-D1およびE-E1で切り離し、平らに延ばしたように示すことができる。図6は、図2の一部を拡大したものであり、後述するセルの構造をより詳細に示している。
ステント10は網状の中空管である。ステント10は、静止直径Dr(およびそれに対応する静止円周Cr)から、拡張した直径、すなわち拡径に拡張することができる。図3は、図2と同様の図である(すなわち、縦方向に分割し、平らに延ばした場合の拡張したステント10を図示している)。図3は二次元的に表しているため、拡径が示されていない。しかし、拡大された円周Ceは、拡張後の長さLeと共に示されている。拡張した直径はCe/πに等しい。」

b.「The cells 12 have a longitudinal or major axis XM-XM and a transverse or minor axis Xm-Xm. In the embodiments of Figs. 1 - 3, the major axis XM-XM is perpendicular to the longitudinal cylindrical axis X-X of the stent 10. In the embodiments of Figs. 8 and 9, the major axis XM'-XM' is parallel to the longitudinal cylindrical axis X'-X' of the stent 10'. The cell 12 is symmetrical about axes XM-XM and Xm-Xm.
The cell 12 is defined by portions of the tube material including first and second longitudinal segments or support beams 14. The beams 14 each have a longitudinal axis Xa- Xa (shown in Fig. 6). The beams' longitudinal axes Xa-Xa are parallel to and positioned on opposite sides of the cell major axis XM-XM.
Referring to Fig. 6, each of longitudinal beams 14 has an undulating pattern to define a plurality of peaks 17, 21, 25 and valleys 19, 23. The peaks 17, 21, 25 are spaced outwardly from the longitudinal axes Xa-Xa and the valleys 19, 23 are spaced inwardly from the longitudinal axes Xa-Xa. As used in this context, "inward" and "outward" mean toward and away from, respectively, the cell's major axis XM-XM.
Each of the peaks 17, 21, 25 and valleys 19, 23 is a generally semi-circular arcuate segment. The peaks 17, 21, 25 and valleys 19, 23 are joined by parallel and spaced-apart straight segments 16, 18, 20, 22, 24 and 26 which extend perpendicular to the major axis XM-XM. Linearly aligned straight end portions 16, 26 of opposing segments 14 are joined at first and second longitudinal connection locations 27 spaced apart on the major axis XM-XM. First and second transverse connection locations 28 are spaced apart on the minor axis Xm-Xm. The first and second transverse connection locations 28 are positioned at the apices of the center peaks 21 ofthe longitudinal beams 14.」(第4ページ第27行?第5ページ第18行)
「セル12は、縦軸すなわち主軸XM-XMおよび横軸すなわち副軸Xm-Xmを有する。図1ないし図3の実施の形態において、主軸XM-XMは、ステント10の縦方向の円筒軸X-Xに垂直である。図8および図9の実施の形態において、主軸X’M-X’Mは、ステント10’の縦方向の円筒軸X’-X’に平行である。セル12は、XM-XM軸およびXm-Xm軸に対して対称である。
セル12は、第1および第2の縦セグメントすなわち支持梁14を含む管の材料部分によって形成される。梁14は、それぞれ縦軸Xa-Xa(図6参照)を有する。この梁の縦軸Xa-Xaは、セルの主軸XM-XMに平行であり、セルの主軸の両側に位置する。
図6を参照して、縦方向の梁14はそれぞれ、複数の山部17、21、25および谷部19、23を形成する波状のパターンを有する。山部17、21、25は縦軸Xa-Xaより外側(outward)に間隔をおいて配置され、谷部19、23は縦軸Xa-Xaよりも内側(inward)に間隔をおいて配置される。この文脈において使用する場合、「inward」はセルの主軸XM-XMに向かうことを意味し、「outward」はセルの主軸から離れることを意味する。
山部17、21、25および谷部19,23はそれぞれ、通常、半円弧状のセグメントである。山部17、21、25および谷部19、23は、主軸XM-XMに対して垂直に延び、平行に間隔をあけて配置された直線セグメント16、18、20、22、24および26によって連結される。対向するセグメント14の直線状に並ぶ直線端部16、26は、主軸XM-XM上に離れて配置された第1および第2の縦方向の連結位置27で直結される。第1および第2の横方向の連結位置28は、副軸Xm-Xm上に離れて配置される。第1および第2の横方向の連結位置28は、縦方向の梁14の中央山部21の尖端に位置する。」

c.「While three cells 12 are shown in Fig. 2 longitudinally connected surrounding the circumference Cr of the stent, a different number could be so connected to vary the properties of the stent 10 as a designer may elect. Likewise, while each column of cells 12 in Fig. 2 is shown as having three longitudinally connected cells 12, the number of longitudinally connected cells 12 could vary to adjust the properties of the stent. Also, while each longitudinal segment 14 is shown as having three peaks 17, 21, 25 per longitudinal segment 14, the number of peaks could vary.」(第8ページ第25?32行)
「 図2では、3つのセル12がステントの円周Crに沿って縦方向に連結しているが、設計者の選択に従ってステント10の特性を変化させるために、異なる数のセルをそのようにつなぐことができる。同様に、図2におけるセル12の各列は、縦方向に連結した3つのセル12を有するが、縦方向に連結されたセル12の数は、ステントの特性を調整するために変更することができる。また、それぞれの縦セグメント14は、縦セグメント14ごとに3つの山部17、21、25を有するが、山部の数は変更することができる。」

d.図面のFIG.6には、連結位置28が左右に2箇所図示されており、右側に示された一方の連結位置28に着目すると、当該連結位置28の左下部には、直線セグメント16、山部17、直線セグメント18、谷部19、直線セグメント20よりなるS字状の部材(以下、この部材を「S字状部材」という。)が、連結位置28の左上部には、直線セグメント22、谷部23、直線セグメント24、山部25、直線セグメント26よりなる逆S字状の部材(以下、この部材を「逆S字状部材」という。)が、それぞれ接続されていること、また、連結位置28の右上部には、S字状部材と同様の部材が、連結位置28の右下部には、逆S字状部材と同様の部材が、それぞれ接続されていることが読み取れる。さらに、これら2つのS字状部材と2つの逆S字状部材とが接続される連結位置28の形状は、H形状であることも分かる(以下、2つのS字状部材及び2つの逆S字状部材が接続されるH形状の部材を「接続部材」という。)。

e.記載事項cの「図2では、3つのセル12がステントの円周Crに沿って縦方向に連結している」という記載及び図面のFIG.1、FIG.2、FIG.6によれば、ステント10を成す網状の中空管の表面には、S字状部材、逆S字状部材、及びH形状の接続部材が規則的に配列されており、S字状部材とH形状の接続部材とが交互に連続して連結される部分は、ステント10を成す網状の中空管の表面で三重らせん状に配置されることが読み取れる。
ここで、ステント10を成す網状の中空管の表面にらせん状に配置される、S字状部材とH形状の接続部材とが交互に連続して連結される部分を、以下、「らせん部」という。

f.図面のFIG.3を参照すれば、らせん部は、ステント10が拡径した際に、拡張することが読み取れる。

g.記載事項cの「図2では、3つのセル12がステントの円周Crに沿って縦方向に連結している」という記載及び図面のFIG.1、FIG.2、FIG.6を参照すれば、ステントの円周方向には、3つのS字状部材及び3つの逆S字状部材が交互に配置され、円筒形状を成していることが読み取れる。
ここで、ステントの円周方向に配置される、3つのS字状部材及び3つの逆S字状部材から成る円筒形の部材を、以下、「円筒形部材」という。

h.図面のFIG.1、FIG.2、FIG.6によれば、ステント10において、複数の円筒形部材は、互いに平行に積み重ねられ、共通の円筒軸X-Xを有すること、各円筒形部材は、隣接の円筒形部材とほぼ同一の方向で、ほぼ同一の円周を形成していること、隣接する円筒形部材は、接続部材により互いに互いに取り付けられていること、が読み取れる。

i.図面のFIG.2、FIG.6によれば、各らせん部と各円筒形部材とは、互いに交差して配置されていることも読み取れる。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「網状の中空管を有する拡径に拡張することができるステント10であって、縮径時に、前記網状の中空管は、
H形状の接続部材によって接続される拡張可能な三重のらせん部と、
それぞれ互いに平行に積み重ねられることにより、共通の円筒軸X-Xを有し、互いに隣接して、交差する前記らせん部の前記接続部材によって互いに取り付けられた複数の円筒形部材とを有し、該円筒形部材の各々が、
隣接の円筒形部材とほぼ同一の方向で、ほぼ同一の円周を形成し、
前記らせん部の前記接続部材によって互いに結合されて、前記円筒形部材の前記円周を形成する複数のS字状部材及び逆S字状部材によって形成されるステント10。」

3-2.対比・判断
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ステント10」は、その機能又は構造からみて本願補正発明の「ステント」に相当し、以下同様に、「拡径に拡張することができるステント10」は「拡張可能なステント」に、「縮径時」は「非拡張時」に、「接続部材」は「接続セグメント」に、「らせん部」は「らせんセグメント」に、「拡張可能な三重のらせん部」は「複数の拡張可能ならせんセグメント」に、「共通の円筒軸X-X」は「共線的な円筒軸」に、「円筒形部材」は「円筒形構成要素」に、「円筒形部材の前記円周を形成する複数のS字状部材及び逆S字状部材」は「円筒形構成要素の前記円周を形成する複数の円周方向セグメント」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1における「網状の中空管」とは、拡張可能なステント10の本体そのものであることから、本願補正発明の「本体」に相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明1とは、本願補正発明の用語を用いて表現すると、
「本体を有する拡張可能なステントであって、非拡張時に、前記本体は、
H形状の接続セグメントによって接続される複数の拡張可能ならせんセグメントと、
それぞれ互いに平行に積み重ねられることにより、共線的な円筒軸を有し、互いに隣接して、交差する前記らせんセグメントの前記接続セグメントによって互いに取り付けられた複数の円筒形構成要素とを有し、該円筒形構成要素の各々が、
隣接の円筒形構成要素とほぼ同一の方向で、ほぼ同一の円周を形成し、
前記らせんセグメントの前記接続セグメントによって互いに結合されて、前記円筒形構成要素の前記円周を形成する複数の円周方向セグメントによって形成されるステント。」
という点で一致し、両者の間に相違点はない。

よって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成21年4月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
本体を有する拡張可能なステントであって、非拡張時に、前記本体は、
複数の拡張可能ならせんセグメントと、
それぞれ互いに平行に積み重ねられることにより、共線的な円筒軸を有し、互いに隣接して、交差する前記らせんセグメントによって互いに取り付けられた複数の円筒形構成要素とを有し、該円筒形構成要素の各々が、
隣接の円筒形構成要素とほぼ同一の方向で、ほぼ同一の円周を形成し、
前記らせんセグメントと交差する部分によって互いに結合されて、前記円筒形構成要素の前記円周を形成する複数の円周方向セグメントによって形成されるステント。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第00/71053号(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている(原文において、ウムラウトのある文字はウムラウトのない文字で、また、エスツェットは「ss」にて代用した。付記した訳文は、パテントファミリーである特表2003-532441号公報の記載に基づく。)。

j.「Die Erfindung betrifft eine radial aufweitbare Gefassstutze zur Verwendung zum Offenhalten von Blutgefassen oder sonstigen Organwegen in menschlichen oder tierischen Korpern. Diese gitterformige Gefassstutze besteht aus mehreren rohrformigen Elementen mit einer zickzackformigen Ringstruktur von geringer Breite, die mit bogenformigen oder S-formigen Stegen miteinander verbunden sind.」(第1ページ第4?9行)
「本発明は人間又は動物の身体内の器官の血管又はその他の通路を開放して保持するために使用される管支持物に関する。この格子(グリッド)形の管支持物は小さな幅のジグザグ形の環状構造をもつ数個の管状要素からなり、それらは弓形又はS字形の棒で連結される。」

k.「Die in den Figuren dargestellten Gefassstutzen weisen zickzack-formige Ringelemente mit sternformigen Segmenten und andersartig geformten Verbindungselementen auf. Daher wird aus Grunden der Ubersichtlichkeit in den Figuren nur Beispiele von abgerollten Gitterstrukturen der rohrformigen Gefassstutze oder ein Ausschnitt davon dargestellt.」(第7ページ第3?7行)
「図に示される管支持物は星形の区分及び異なる形状の連結要素をもつジグザグ形の環状要素を示す。明瞭にするため、管状の管支持物の展開されたグリッド構造、又はその部分の例のみが図には示される。」

l.「In Fig. 13 eine weitere Ausfuhrungsform der Erfindung mit schiangenformigen Ringelementen 27,28 im Aussenbereich dargestellt, die jeweils durch hantel- formige Stege 18 verbunden sind, und zickzackformige Ringelemente 2,3 im Mittelbereich, die durch flexiblere S-formige Stege 20 verbunden sind.

Dadurch wird eine noch grossere Flexibilitat im Mittelbereich 24 erreicht. Als Besonderheit in dieser Darstellung sind die nach rechts geoffneten Bogen 7 der einzelnen Ringelemente 2,3 jeweils auf gleicher Hohe angeordnet. Beim Aufdehnen dieser Struktur bilden die einzelnen sich dann aufdehnenden S-formigen Stege 20 mit einzelnen geraden Stegen 9 der zickzack-formigen Ringelemente 2,3 jeweils eine umlaufende stabile Doppelhelixstruktur.」(第11ページ第7?16行)
「図13には、本発明の更なる態様が示され、蛇形の環状要素27、28が外側域に於てダンベル形棒18により連結されており、又ジグザグ形環状要素2、3が中央域に於てより可撓性のS字形棒20により連結されている。
この様にして、中央域24に於ける尚より大なる可撓性が達成される。この図の特殊性として、右へ開いている個々の環状要素2、3のアーチ7が等しいレベル上に配列されている。この構造の拡大に於て、その時拡大するであろう個々の棒20は個々の直線状棒9と一緒に、回転する二重らせん構造を形成するであろう。」

m.図面のFig.13及びFig.10を参照すれば、各環状要素2、3は、共線的な円筒軸を備えていること、隣接する環状要素とほぼ同一の方向で、ほぼ同一の円周を形成していることが読み取れる。

n.図面のFig.13によれば、一のジグザグ形の環状要素は、2つの直線状棒9を備えており、各直線棒状9の間には、「\/ \/ \」形状のジグザグ要素が形成されていることが読み取れる。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「中央域24を有する拡大可能な管支持物であって、非拡大時に、前記中央域24は、
S字型棒20と直線状棒9とからなる拡大可能な二重らせん構造と、
それぞれ互いに平行に積み重ねられることにより、共線的な円筒軸を有し、互いに隣接して、交差する前記二重らせん構造のS字形棒20によって互いに取り付けられた複数の環状要素2、3とを有し、該環状要素2、3の各々が、
隣接の環状要素2、3とほぼ同一の方向で、ほぼ同一の円周を形成し、
前記二重らせん構造と交差する部分である直線状棒9によって互いに結合されて、前記環状要素2、3の前記円周を形成する複数の『\/ \/ \』形状のジグザグ要素によって形成される管支持物。」

V.対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比する。
記載事項jの「人間又は動物の身体内の器官の血管又はその他の通路を開放して保持するために使用される管支持物」なる記載によれば、引用発明2の「管支持物」は、本願発明の「ステント」に相当している。
また、引用発明2の「中央域24」は、その機能又は構造からみて本願補正発明の「本体」に相当し、以下同様に、「拡大可能な管支持物」は「拡張可能なステント」に、「非拡大時」は「非拡張時」に、「S字型棒20と直線状棒9とからなる拡大可能な二重らせん構造」は「複数の拡張可能ならせんセグメント」に、「環状要素2、3」は「円筒形構成要素」に、「『\/ \/ \』形状のジグザグ要素」は「円周方向セグメント」に、それぞれ相当する。
さらに、本願発明の「交差する前記らせんセグメントによって互いに取り付けられた複数の円筒形構成要素」と引用発明2の「交差する前記二重らせん構造のS字形棒20によって互いに取り付けられた複数の環状要素2、3」とは、「交差する前記らせんセグメントによって互いに取り付けられた複数の円筒形構成要素」である点で、また、本願発明の「らせんセグメントと交差する部分によって互いに結合されて」と引用発明2の「二重らせん構造と交差する部分である直線状棒9によって互いに結合されて」とは、「らせんセグメントと交差する部分によって互いに結合されて」である点で、それぞれ共通している。

してみると、本願発明と引用発明2とは、本願発明の用語を用いて表現すると、
「本体を有する拡張可能なステントであって、非拡張時に、前記本体は、
複数の拡張可能ならせんセグメントと、
それぞれ互いに平行に積み重ねられることにより、共線的な円筒軸を有し、互いに隣接して、交差する前記らせんセグメントによって互いに取り付けられた複数の円筒形構成要素とを有し、該円筒形構成要素の各々が、
隣接の円筒形構成要素とほぼ同一の方向で、ほぼ同一の円周を形成し、
前記らせんセグメントと交差する部分によって互いに結合されて、前記円筒形構成要素の前記円周を形成する複数の円周方向セグメントによって形成されるステント。」
という点で一致し、両者の間に相違点はない。

よって、本願発明は、引用例2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。

VI.むすび
したがって、本願発明は、引用例2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-28 
結審通知日 2010-06-01 
審決日 2010-06-15 
出願番号 特願2003-522394(P2003-522394)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61M)
P 1 8・ 575- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴江 陽介  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 豊永 茂弘
関谷 一夫
発明の名称 らせん構成要素を有するステント  
代理人 三澤 正義  

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