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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1226196
審判番号 不服2008-21375  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-21 
確定日 2010-11-05 
事件の表示 平成11年特許願第221621号「ゲームシステム及び情報記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月20日出願公開、特開2001- 46742〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I 手続の経緯

本願は平成11年8月4日に出願された特許出願であって、平成19年12月13日付け拒絶理由通知書によって拒絶理由が通知され、それに対して平成20年2月14日付けで意見書ならびに手続補正書が提出されたものの、同年7月16日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、前記拒絶査定を不服として平成20年8月21日に請求された拒絶査定不服審判事件であって、同年9月18日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成21年5月1日付けで審尋がなされたが、回答はなされなかった。


II 平成20年9月18日付け手続補正についての補正の却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕

平成20年9月18日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕

1.本件補正の目的

本件補正は、明細書の特許請求の範囲を補正するものであって、その補正は、補正前(平成20年2月14日付け手続補正によって補正。以下、同じ。)の請求項1,3,9,11を削除し、補正前の請求項2の、

「【請求項2】 ゲーム画像を生成するためのゲームシステムであって、
操作手段が有する1又は複数の操作キーを所与の操作手順で操作することで実行されるゲーム操作コマンドのリストを、プレーヤに対して表示するリスト表示処理手段と、
前記ゲーム操作コマンドリストの中からプレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを、プレーヤの簡易操作で実行できるように前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる割り当て処理手段と、
選択されたゲーム操作コマンドが割り当てられた前記操作キーをプレーヤが操作した場合に、割り当てられたゲーム操作コマンドを実行する実行手段とを含み、
前記実行手段が、
前記操作手段に対する第1の操作によって前記ゲーム操作コマンドが選択されたことを契機として、プレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを前記プレーヤの簡易操作に依らずに実行する処理を行い、
前記割り当て処理手段が、
前記操作手段に対する第2の操作によって前記ゲーム操作コマンドが選択されたことを契機として、プレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを前記操作手段の所与の操作キーに割り当てることを特徴とするゲームシステム。」

なる記載を、

「【請求項1】 ゲーム画像を生成するためのゲームシステムであって、
操作手段が有する1又は複数の操作キーを所与の操作手順で操作することで実行されるゲーム操作コマンドのリストを、プレーヤに対して表示するリスト表示処理手段と、
前記ゲーム操作コマンドリストの中からプレーヤの選択操作によって選択可能であって、所定の確定操作を伴って選択されたゲーム操作コマンドを、プレーヤの簡易操作で実行できるように前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる割り当て処理手段と、
選択されたゲーム操作コマンドが割り当てられた前記操作キーをプレーヤが操作した場合に、割り当てられたゲーム操作コマンドを実行する実行手段とを含み、
前記実行手段が、
前記確定操作を伴わない前記操作手段に対する第1の操作によって前記ゲーム操作コマンドが選択されたことを契機として、プレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを前記プレーヤの簡易操作に依らずに実行する処理を行い、
前記割り当て処理手段が、
前記確定操作を伴う前記操作手段に対する第2の操作によって前記ゲーム操作コマンドが選択されたことを契機として、プレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを前記操作手段の所与の操作キーに割り当てることを特徴とするゲームシステム。」
と限定し、その項番を繰り上げて請求項1とする補正を含むものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。


そこで、本件補正後の請求項1に記載されている発明特定事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて、以下に検討する。


2.本件補正発明

本件補正発明は、上記「1.本件補正の目的」で記載した本件補正後の請求項1記載のとおりのものである。


3.引用例

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、ターニングポインツ,The PlayStation BOOKS 闘神伝3 オフィシャルガイド,日本,ソフトバンク株式会社,1997年 3月31日,初版,p.6-8,130(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術的事項の記載がある(下線は当審で付した)。

a.第8頁下欄中央
「FOR BIGINNER
一発必殺技について
一部の必殺技は、キーコンフィグ画面で、R・Lボタンに登録できる。特に初心者は、技の出が早く、威力の大きな技を登録するといいだろう。」

b.第130頁左上欄
「必殺技一覧」という表題と共に、「技名」と「コマンド」の一覧が記載されている。
また、「コマンド」は、白抜きの矢印の記号と、○内に□や○内に△等の記号とで表されており、各「コマンド」は2以上の複数の記号の組合せを含んでいる。

c.第6?8,130頁には、2体のキャラクタ同士が対戦するシーン等のゲーム画面の写真が記載されている。


〔摘記事項等からの認定事項〕

d.引用例1は電子ゲーム機であるプレイステーションの攻略本であり、「闘神伝3」はプレイステーションで実行されるゲームであるから、上記摘記事項「c.」のゲーム画面の写真はゲームを実行する電子ゲーム機に接続された表示装置の画面を示しており、その記載は当該ゲームの画面を表示する表示装置およびゲームを実行する電子ゲーム機からなるシステムの存在を示している。

e.上記摘記事項「b.」の記載について、技術常識を参酌すると、白抜き矢印の記号は電子ゲーム機であるプレイステーションのコントローラの方向キーを意味し、○内に□や○内に△等の記号はコントローラの□ボタンや△ボタン等のボタンを意味しており、「コマンド」とは、それらの方向キーやボタンに関する所定の操作手順により入力されるものであり、「必殺技」はそれらの「コマンド」に対応している。


〔引用例1に記載された発明の認定〕
これらの記載事項および認定事項からして、引用例1には、

「表示装置および電子ゲーム機からなるシステムであって、
表示装置にはゲーム画面が表示され、
コントローラが有する方向キーやボタンを所定の操作手順で操作することにより入力されるコマンドに対応する必殺技があり、
一部の必殺技は、キーコンフィグ画面で、R・Lボタンに登録でき、初心者は、技の出が早く、威力の大きな技を登録するとよい、ゲームを実行する電子ゲーム機を有するシステム。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


(2)引用例2
原査定および審尋の際に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平9-75541号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の技術的事項の記載がある(下線は当審で付した)。

f.「【0060】また、図11に示すように、ゲームインタレスト情報としてコマンドの説明を表示するようにしてもよい。これにより、初心者でも簡単にゲーム内容を把握することができる。
【0061】特に、格闘ゲームにおいて、登場人物ごとに使用できる技が異なる場合がある。この様な場合には、以下のように階層構造でゲームの使用方法を表示させることにより、より多くの情報を的確に表示させることができる。まず、図12Aに示すように、サブ画面33に登場人物の一覧を表示する。つぎに、ゲームのプレイヤは、詳細説明を欲する登場人物を指示する。例えば、「大門五郎」が選択された場合には、図12Bに示すように、指示された登場人物の技を詳細説明として表示する。
【0062】なお、かかる表示の際、この表示コマンドに対応した動きをキャラクタに実演させるようにしてもよい。
【0063】このように、ゲームの使用方法をサブ画面33に表示させることにより、ゲームROMカートリッジを入れ替えた場合でも、説明の為のシールを取り替える必要がない。したがって、複数のゲームカートリッジを有するゲーム装置に特に有用である。また、ゲームの内容に新しい人物を登場させるように変更を加えた場合でも、説明の為のシールを取り替える必要がない。
【0064】なお、前記詳細説明を欲する登場人物の入力は、例えば、操作レバー42、52で与えてもよく、タッチパネル式にしてもよい。」

g.図12Bにおいて、登場人物の技をリスト表示する画面が示されている。


4.本件補正発明と引用発明との対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

<対応関係A>
引用発明の「ゲーム画面」、「表示装置および電子ゲーム機からなるシステム」および「コントローラ」は、本件補正発明の「ゲーム画像」、「ゲームシステム」および「操作手段」に相当する。

<対応関係B>
引用発明の「必殺技」は、「コントローラが有する方向キーやボタンを所定の操作手順で操作することにより入力されるコマンド」に対応するものであるから、「一部の必殺技」を「R・Lボタンに登録」するとは、上記「コマンド」を登録するものといえる。
また、引用発明において、「初心者は、技の出が早く、威力の大きな技を登録するとよい」ということは、技術常識を踏まえると、「技の出」や「威力」等に関して登録可能な技に選択の幅があって、プレーヤの操作により任意の技を選択できることを示している。
さらに、引用発明において、所望の「一部の必殺技」を選択して登録すると、「R・Lボタン」に登録される「必殺技」は、当該所望の「一部の必殺技」に確定されるから、選択して登録する操作は、登録する「必殺技」を確定する操作を含んでいるといえる
そうすると、引用発明の「ゲームを実行する電子ゲーム機」において「コントローラが有する方向キーやボタンを所定の操作手順で操作することにより入力されるコマンドに対応する必殺技があり、一部の必殺技は、キーコンフィグ画面で、R・Lボタンに登録でき、初心者は、技の出が早く、威力の大きな技を登録するとよい」ことと、本件補正発明の「ゲーム操作コマンドリストの中からプレーヤの選択操作によって選択可能であって、所定の確定操作を伴って選択されたゲーム操作コマンドを、プレーヤの簡易操作で実行できるように前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる割り当て処理手段」を有することとは、「ゲーム操作コマンドの中からプレーヤの選択操作によって選択可能であって、所定の確定操作を伴って選択されたゲーム操作コマンドを、プレーヤの簡易操作で実行できるように前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる割り当て処理手段」を有する点で共通する。

<対応関係C>
引用発明の「一部の必殺技は、キーコンフィグ画面で、R・Lボタンに登録でき、初心者は、技の出が早く、威力の大きな技を登録するとよい、ゲームを実行する電子ゲーム機」は、技術常識を踏まえると、「R・Lボタン」を押すことで「一部の必殺技」を実行するものであるから、本件補正発明の「選択されたゲーム操作コマンドが割り当てられた前記操作キーをプレーヤが操作した場合に、割り当てられたゲーム操作コマンドを実行する実行手段」を含んでいる。

<対応関係D>
引用発明において、所望の「一部の必殺技」を選択して登録する際には、選択して登録する操作が行われたことを契機として、「R・Lボタン」への「必殺技」の登録が行われるといえるから、その選択して登録をする操作に応じた処理をする電子ゲーム機は、本件補正発明の「前記確定操作を伴う前記操作手段に対する第2の操作によって前記ゲーム操作コマンドが選択されたことを契機として、プレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる」「前記割り当て処理手段」を含んでいる。

以上の対応関係からして、本件補正発明と引用発明とは、

「ゲーム画像を生成するためのゲームシステムであって、
ゲーム操作コマンドの中からプレーヤの選択操作によって選択可能であって、所定の確定操作を伴って選択されたゲーム操作コマンドを、プレーヤの簡易操作で実行できるように前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる割り当て処理手段と、
選択されたゲーム操作コマンドが割り当てられた前記操作キーをプレーヤが操作した場合に、割り当てられたゲーム操作コマンドを実行する実行手段とを含み、
前記割り当て処理手段が、
前記確定操作を伴う前記操作手段に対する第2の操作によって前記ゲーム操作コマンドが選択されたことを契機として、プレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを前記操作手段の所与の操作キーに割り当てるゲームシステム。」の点で一致し、以下の相違点1?2の点で相違する。

(相違点1)
本件補正発明は「操作手段が有する1又は複数の操作キーを所与の操作手順で操作することで実行されるゲーム操作コマンドのリストを、プレーヤに対して表示するリスト表示処理手段」を有しており、「ゲーム操作コマンドのリスト」の中から「所与の操作キー」に割り当てる「ゲーム操作コマンド」を選択するのに対して、引用発明はリスト表示処理手段を有しておらず、「R・Lボタン」に「必殺技」を登録する際に必殺技のリストから選択する構成を有していない点。

(相違点2)
本件補正発明は「実行手段が、前記確定操作を伴わない前記操作手段に対する第1の操作によって前記ゲーム操作コマンドが選択されたことを契機として、プレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを前記プレーヤの簡易操作に依らずに実行する処理を行」っているのに対して、引用発明ではそのような構成を有していない点。


5.検討・判断

上記各相違点について検討する。

(1)相違点1について
ゲームシステムの技術分野において、複数の選択肢から特定のものを選択させる場合に、複数の選択肢のリストを表示し、そのリストの中から選択させることは慣用手段に過ぎない。
また、ゲームシステムの技術分野において、所与の操作キーに技等を割り当てる際に、技等の候補のリストを表示し、そのリストの中から選択させることも周知の技術である(例えば、「スターオーシャン 公式ガイドブック」,日本,株式会社エニックス,1998年 10月1日,初版第5刷,p.24、「リアルバウト餓狼伝説スペシャル DOMINATED MIND オフィシャルガイド」,日本,ソフトバンク株式会社,1998年8月10日,初版,p.174、「攻略SP2.聖剣伝説 LEGEND OF MANA 発売直前の大攻略!」,電撃Playstation,メディアワークス,1999年7月23日,第5巻,第20号,通巻109号,p.52等を参照されたい)。
そうすると、引用発明において、上記慣用手段または周知の技術を付加して、選択可能な「一部の必殺技」のリストを表示し、そのリストの中から選択するようにシステムを構成することは、当業者にとって格別の創意を必要とすることではない。

(2)相違点2について
ゲームシステムの技術分野において、複数の技等の選択肢から特定のものを選択させる場合、プレーヤによる技等の選択の助けとなるように、各選択肢についての参考情報(例えば、技であれば、その説明文や攻撃力・攻撃範囲・コスト等のデータを表示する等。)を示す教示表示を行うことはよく行われていることであり、かつ、ゲームのプレイのし易さを高めることは周知課題であるから、引用発明において、「一部の必殺技」を登録させる際に、「必殺技」の選択の助けとなる何らかの教示表示を行うことは、当業者であれば適宜なし得る設計的事項である。
ここで、引用例2の上記摘記事項「f.」に示されているように、コマンドに対応した動きをキャラクタに実演させることで、その内容を初心者等にも把握し易くする表示を行う技術が記載されており、当該技術はプレーヤに対する教示表示の一種である。
そうすると、引用例2に記載されている、コマンドに対応した動きをキャラクタに実演させることでその内容を把握し易くする表示を行う技術を、引用発明の「一部の必殺技」を登録させる際に「必殺技」の選択の助けとなる教示表示として用いることは、当業者であれば容易になし得ることである。
さらに、個々の「必殺技」に対応してキャラクタに実演させる場合、登録する「必殺技」を確定する前に行う必要があるのは明らかであるし、その際、当該実演は確定操作以外の何らかの操作によって実行されることとなることも明らかである。


そして、本件補正発明が奏する作用効果は、引用発明、引用例2に記載された技術的事項および周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本件補正発明は、引用発明、引用例2に記載された技術的事項および周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

〔請求の理由における主張についての検討〕
請求人は請求の理由において、上記相違点2に関して以下のとおり主張している。

「また、引用文献8では、段落0061において、格闘ゲームにおける登場人物の一覧を表示させ、プレーヤにより指示された登場人物の技を詳細説明として表示する旨が記載されており、段落0062において、表示コマンドに対応した動きをキャラクタに実演させるようにしてもよい旨が記載されています。
しかしながら、引用文献8では、段落0064において、詳細説明を欲する登場人物の入力は操作レバーによって与える旨が記載されています。このため、かかる引用文献8に係る発明において技を選択して実演する場合には、操作レバーで選択することのみによって技の実演が実行されるものと認められます。このため、引用文献1?引用文献3に係る発明と引用文献8に係る発明とを組み合わせた構成では、操作レバーでカーソル等を合わせただけでコマンドが即時実行されることとなり、プレーヤがキャラクタをレバー操作で選択している際にコマンドを実行するためのデータを幾度もロードする必要があって無用なメモリアクセスが発生するという不都合が生じ得ます。
一方、本願発明では、ゲーム操作コマンドを簡易操作に割り当てる場合およびゲーム操作コマンドを実演させる場合のいずれにおいても、十字キーで選択操作を行わせる点は共通させつつ、ゲーム操作コマンドを指定した状態でAボタンを押すという第1の操作が行われた場合には、ゲーム操作コマンドを実演し、ゲーム操作コマンドを指定した状態でBボタンを押すという第2の操作が行われた場合には、ゲーム操作コマンドを簡易操作に割り当てるようにしています。すなわち本願発明では、ゲーム操作コマンドを簡易操作に割り当てる際の操作とゲーム操作コマンドを実演させる際の操作を個別に設けているため、無用なメモリアクセスを抑えつつ、プレーヤが所望する技のみを的確に実演して見せることができるようになっています。
このように原審の審査官殿が指摘する引用文献の開示内容からでは、本願発明の構成を導き出すことはできません。」

なお、請求人は、上記主張で「引用文献8」と記載しているが、その主張内容からして、「引用文献8」は上記引用例2に対応する特開平9-75541号公報を指していると認められる(【0062】に表示コマンドに対応した動きをキャラクタに実演させるようにしてもよい旨が記載されているのは、特開平9-75541号公報である)。

しかし、当該主張は採用することができない。

第一に、引用例2において、技を選択して実演する場合についての選択手段には特段の制限は課されていないから、操作レバー等でカーソルをコマンドに合わせた後に選択ボタンを押す周知の選択手段を採用することは、当業者にとって格別の創意を必要とすることではない。

第二に、請求人の主張する本願発明の作用効果は、特許請求の範囲の記載に基づかないものである。
請求人は上記主張では、本願発明は十字キーで選択操作をして、AボタンまたはBボタンを押すことが「第1の操作」、「第2の操作」であると述べているが、本件補正発明の記載上、
「前記確定操作を伴わない前記操作手段に対する第1の操作」
「前記確定操作を伴う前記操作手段に対する第2の操作」
とされているだけであるので、請求人の主張するような限定されたものとなっていない。
例えば、十字キーや操作レバー等でカーソル等を合わせるだけでコマンドを登録するボタンを押さないことが「第1の操作」、十字キーや操作レバー等でカーソル等を合わせた後でコマンドを登録するボタンを押すことが「第2の操作」としたものであっても包含されているから、「操作レバーでカーソル等を合わせただけでコマンドが即時実行される」ようなものも包含されている。
そのため、仮に、引用発明、引用例2に記載された技術的事項および周知の技術に基いて想到する発明が、請求人が主張するように、操作レバーで選択することのみによって技の実演が実行されるものとなったとしても、請求人の主張する作用効果の相違は認められない。
そもそも、特許請求の範囲の記載上、メモリやメモリアクセスに密接に関係する事項は含まれていないし、どのようなメモリアクセスが行われるかはシステムの具体的構成に依存するから(例えば、大容量のバッファを有していて、ゲーム開始時にメモリから実演に必要なデータをバッファにまとめて蓄積できるようなシステム構成であれば、請求人の主張するような動作にはならない。)、請求人の主張する作用効果は特許請求の範囲の記載に基づいたものとはいえない。

したがって、請求人の上記主張を参酌しても、本件補正発明の進歩性を是認することはできない。


6.本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



III 本願発明について

1.本願発明

平成20年9月18日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成20年2月14日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】 ゲーム画像を生成するためのゲームシステムであって、
操作手段が有する1又は複数の操作キーを所与の操作手順で操作することで実行されるゲーム操作コマンドのリストを、プレーヤに対して表示するリスト表示処理手段と、
前記ゲーム操作コマンドリストの中からプレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを、プレーヤの簡易操作で実行できるように前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる割り当て処理手段と、
ゲームプレイ中に前記操作手段に対して所定の操作が行われたことを契機として、当該ゲームプレイを中断させて前記リスト表示処理手段に前記ゲーム操作コマンドのリストを割込み表示させ、前記割り当て処理手段によって前記ゲーム操作コマンドを所与の操作キーに割り当てた後にゲームプレイを再開させる手段と、
選択されたゲーム操作コマンドが割り当てられた前記操作キーを再開されたゲームプレイにおいてプレーヤが操作した場合に、割り当てられたゲーム操作コマンドを実行する実行手段と、
を含むことを特徴とするゲームシステム。」


2.引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例1およびその記載事項は、前記「II」の「3.引用例」に記載したとおりである。


3.本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明とを対比する。

<対応関係E>
引用発明の「ゲーム画面」、「表示装置および電子ゲーム機からなるシステム」および「コントローラ」は、本願発明の「ゲーム画像」、「ゲームシステム」および「操作手段」に相当する。

<対応関係F>
引用発明の「必殺技」は、「コントローラが有する方向キーやボタンを所定の操作手順で操作することにより入力されるコマンド」に対応するものであるから、「一部の必殺技」を「R・Lボタンに登録」するとは、上記「コマンド」を登録するものといえる。
また、引用発明において、「初心者は、技の出が早く、威力の大きな技を登録するとよい」ということは、技術常識を踏まえると、「技の出」や「威力」等に関して登録可能な技に選択の幅があって、プレーヤの操作により任意の技を選択できることを示している。
そうすると、引用発明の「ゲームを実行する電子ゲーム機」において「コントローラが有する方向キーやボタンを所定の操作手順で操作することにより入力されるコマンドに対応する必殺技があり、一部の必殺技は、キーコンフィグ画面で、R・Lボタンに登録でき、初心者は、技の出が早く、威力の大きな技を登録するとよい」ことと、本願発明の「ゲーム操作コマンドリストの中からプレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを、プレーヤの簡易操作で実行できるように前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる割り当て処理手段」を有することとは、「ゲーム操作コマンドの中からプレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを、プレーヤの簡易操作で実行できるように前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる割り当て処理手段」を有する点で共通する。

<対応関係G>
引用発明の「一部の必殺技は、キーコンフィグ画面で、R・Lボタンに登録でき、初心者は、技の出が早く、威力の大きな技を登録するとよいゲームを実行する電子ゲーム機」は、技術常識を踏まえると、「R・Lボタン」を押すことで「一部の必殺技」を実行するものである。
そうすると、「一部の必殺技は、キーコンフィグ画面で、R・Lボタンに登録でき、初心者は、技の出が早く、威力の大きな技を登録するとよいゲームを実行する電子ゲーム機」と、本願発明の「選択されたゲーム操作コマンドが割り当てられた前記操作キーを再開されたゲームプレイにおいてプレーヤが操作した場合に、割り当てられたゲーム操作コマンドを実行する実行手段」とは、「選択されたゲーム操作コマンドが割り当てられた前記操作キーをプレーヤが操作した場合に、割り当てられたゲーム操作コマンドを実行する実行手段」を有する点で共通する。


以上の対応関係からして、本願発明と引用発明とは、

「ゲーム画像を生成するためのゲームシステムであって、
ゲーム操作コマンドの中からプレーヤにより選択されたゲーム操作コマンドを、プレーヤの簡易操作で実行できるように前記操作手段の所与の操作キーに割り当てる割り当て処理手段と、
選択されたゲーム操作コマンドが割り当てられた前記操作キーをプレーヤが操作した場合に、割り当てられたゲーム操作コマンドを実行する実行手段と、
を含むゲームシステム。」の点で一致し、以下の相違点3?4の点で相違する。

(相違点3)
本願発明は「操作手段が有する1又は複数の操作キーを所与の操作手順で操作することで実行されるゲーム操作コマンドのリストを、プレーヤに対して表示するリスト表示処理手段」を有しており、「ゲーム操作コマンドのリスト」の中から「所与の操作キー」に割り当てる「ゲーム操作コマンド」を選択するのに対して、引用発明はリスト表示処理手段を有しておらず、「R・Lボタン」に「必殺技」を登録する際に、必殺技のリストから選択する構成を有していない点。

(相違点4)
本願発明は「ゲームプレイ中に前記操作手段に対して所定の操作が行われたことを契機として、当該ゲームプレイを中断させて前記リスト表示処理手段に前記ゲーム操作コマンドのリストを割込み表示させ、前記割り当て処理手段によって前記ゲーム操作コマンドを所与の操作キーに割り当てた後にゲームプレイを再開させる手段」を有しているのに対して、引用発明ではそのような構成を有していない点。


4.検討・判断

上記各相違点について検討する。

(1)相違点3について
ゲームシステムの技術分野において、複数の選択肢から特定のものを選択させる場合に、複数の選択肢のリストを表示し、そのリストの中から選択させることは慣用手段に過ぎない。
また、ゲームシステムの技術分野において、所与の操作キーに技等を割り当てる際に、技等の候補のリストを表示し、そのリストの中から選択させることも周知の技術である(例えば、「スターオーシャン 公式ガイドブック」,日本,株式会社エニックス,1998年 10月1日,初版第5刷,p.24、「リアルバウト餓狼伝説スペシャル DOMINATED MIND オフィシャルガイド」,日本,ソフトバンク株式会社,1998年8月10日,初版,p.174、「攻略SP2.聖剣伝説 LEGEND OF MANA 発売直前の大攻略!」,電撃Playstation,メディアワークス,1999年7月23日,第5巻,第20号,通巻109号,p.52等を参照されたい)。
そうすると、引用発明において、上記慣用手段または周知の技術を付加して、選択可能な「一部の必殺技」のリストを表示し、そのリストの中から選択するようにシステムを構成することは、当業者にとって格別の創意を必要とすることではない。

(2)相違点4について
ゲームシステムの技術分野において、所定の操作によりゲーム途中でポーズ(一時中断)をして、ゲーム進行を一時中断している間にキーコンフィグ等のゲーム環境の設定を行う画面を表示して設定変更を行い、設定変更後はゲームを再開させることは、周知の技術に過ぎない(例えば、特開平07-100267号公報(【0006】等)、特開平10-263206号公報(【0012】?【0014】等)等を参照されたい)。
そうすると、引用発明において、当該周知の技術を付加して、ゲーム途中に所定の操作でポーズ(一時中断)した状態で「一部の必殺技」を「R・Lボタンに登録」するキーコンフィグ画面を呼び出し表示し、必殺技の登録後はゲームを再開させるようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
また、ゲームを一時中断した状態でキーコンフィグ画面を呼び出せば、通常のゲーム処理に対する割込み処理になるから、その表示が割込み表示となるのは技術常識からして明らかであり、その際、上記「(1)相違点3について」で検討した、選択可能な「一部の必殺技」のリストを表示させる動作も割込表示となるのは当然のことである。


そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明および周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願発明は、引用発明および周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-03 
結審通知日 2010-09-08 
審決日 2010-09-22 
出願番号 特願平11-221621
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 言一  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 橋本 直明
森林 克郎
発明の名称 ゲームシステム及び情報記憶媒体  
代理人 布施 行夫  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 永田 美佐  

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