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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B67C |
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管理番号 | 1226204 |
審判番号 | 不服2009-15264 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-08-21 |
確定日 | 2010-11-05 |
事件の表示 | 特願2006- 32845「プラスチックボトル詰めミネラルウォーターの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日出願公開、特開2006-160373〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成15年3月31日に出願した特願2003-93855号(以下「原出願」という。)の一部を平成18年2月9日に新たな特許出願としたものであって,平成21年5月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2.原査定 原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。 「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1;特開平7-76325号公報 2;特開2001-161331号公報 3;特開平11-114029号公報 4;特公平6-22532号公報 5;特開2002-80017号公報 」 上記刊行物のうち,特開平7-76325号公報を,以下「引用例」という。 第3.当審の判断 1.本願発明 本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成20年12月8日付けで補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「プラスチックボトルの少なくとも内面を内面温度が65℃以上70℃未満で殺菌時間が3秒を超え5秒以下となるように湿熱加熱殺菌し,次いで殺菌済みプラスチックボトルに殺菌済みミネラルウォーターを充填し,プラスチックボトルの口部を密封することを特徴とするプラスチックボトル詰めミネラルウォーターの製造方法。」 2.引用刊行物記載事項 原出願の出願日よりも前に頒布された刊行物である引用例には,次の事項が記載されている。 a)「【請求項1】ボトルの内壁面を40?70℃で2?20秒間の条件で洗浄した後,ボトルの内壁面,又はボトルの外壁面及び内壁面を殺菌処理することを特徴とするボトルの殺菌方法。 【請求項2】殺菌処理が,湿熱加熱処理,又はオゾン水処理である請求項1記載のボトルの殺菌方法。 【請求項3】湿熱加熱処理の条件が,温度65?75℃,時間5?20秒間の条件である請求項2記載のボトルの殺菌方法。」 b)「【0016】すなわち,本発明は,ボトルに過剰な負荷をかけることなく,かつ短時間で殺菌できるボトルの殺菌方法を提供することを目的とするものである。【0017】また,本発明は,それほど耐熱性の高くない低耐熱性のボトルに対しても好適に適用することが可能なボトルの殺菌方法を提供することを目的とするものである。」 c)「【0022】次に,本発明について更に詳細に説明する。前記したように,本発明は,特定条件による洗浄方法と特定の殺菌手段を組み合わせると共に,特定の温度条件でボトルを洗浄することにより,洗浄後におけるボトルの殺菌条件を緩和させることができ,かつボトルの殺菌時間を短縮することを可能にする点にその特徴を有するものである。 【0023】本発明において,殺菌されるボトルの材質としては,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート等が例示されるが,これに限らず,これを同効のものに対しても適宜適用することが可能であり,例えば,これらの材質を使用し,常法によりブロー成形して得られるPETボトル等のプラスチックボトルに対して本発明の殺菌方法が適用される。 【0024】次に,これらのボトルに充填される液体としては,特に限定されるものではないが,例えば,果汁飲料,ヨーグルト飲料等の高酸性飲料,及び,水,フレーバードウォーター,ウーロン茶,緑茶等の低栄養飲料があげられるが,本発明の殺菌方法は,低pHの高酸性飲料はもとより,低栄養飲料に対しても好適に適用し得るものである。」 d)「【0028】次に,本発明における殺菌処理は,湿熱加熱処理,又はオゾン水処理により行うが,このうち,湿熱加熱処理の場合は,熱水又は蒸気により,65?75℃,5?20秒間,好ましくは,70?75℃,10?15秒間の処理条件で実施することが必要とされる。尚,かかる処理条件は,ボトルに対する負荷の限界値と,殺菌効果の限界値として設定されるものであり,当該条件からはずれた場合,所期の目的を達成することはできない。」 e)「【0035】尚,上記本発明方法で殺菌処理されたボトルは,飲料充填工程に搬送された後,例えば,孔径0.22μm以下の濾過膜で濾過したミネラルウォーター等の飲料を,クラス100以下の殺菌条件下で充填した後,上記方法と同様にして殺菌処理したキャップをして密封することにより製品化される。」 上記記載事項a)ないしe)によれば,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「プラスチックボトルの内壁面を40?70℃で2?20秒間の条件で洗浄した後,該内壁面を温度65?75℃,時間5?20秒間の条件で湿熱加熱処理による殺菌処理を行い,その後,濾過膜で濾過したミネラルウォーター等の飲料をクラス100以下の殺菌条件下で充填し,殺菌処理したキャップをして密封することにより,飲料入りプラスチックボトルを製造する方法。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「内壁面」は本願発明の「内面」に相当し,引用発明の「湿熱加熱処理による殺菌処理」は本願発明の「湿熱加熱殺菌」に相当する。 引用発明は,プラスチックボトルの内壁面を殺菌処理した後に,濾過膜で濾過したミネラルウォーター等の飲料をクラス100以下の殺菌条件下で充填するものであるから,本願発明における「殺菌済みプラスチックボトルに殺菌済みミネラルウォーターを充填し」との要件を備えるということができ,また,引用発明は,キャップをして密封する工程を含むから,本願発明における「プラスチックボトルの口部を密封する」との要件を備える。 したがって,本願発明と引用発明は,本願発明の表記にしたがえば, 「プラスチックボトルの少なくとも内面を湿熱加熱殺菌し,次いで殺菌済みプラスチックボトルに殺菌済みミネラルウォーターを充填し,プラスチックボトルの口部を密封するプラスチックボトル詰めミネラルウォーターの製造方法。」である点で一致し,次の点で一応相違する。 [相違点] 本願発明は,内面温度が65℃以上70℃未満で殺菌時間が3秒を超え5秒以下となるように湿熱加熱殺菌するのに対して,引用発明は,内壁面を温度65?75℃,時間5?20秒間の条件で湿熱加熱処理による殺菌処理を行う点。 上記相違点について検討する。 引用発明における湿熱加熱処理の条件は,内壁面の温度が65?75℃,処理時間が5?20秒間というものであるから,内壁面の温度と処理時間をそれぞれの数値範囲内で任意の値としたものを組み合わせることが一応可能であると考えられるが,内壁面の温度について該数値範囲(65?75℃)の中で低めの値を選択する場合は,殺菌効果を高めるために,処理時間については,該数値範囲(5?20秒)の中で長めの値とすることが必要であるとも考えられ,内壁温度について65?70℃の範囲内の所定の値とし,かつ処理時間について5秒とすること,すなわち本願発明における内面温度と殺菌時間の範囲に含まれるような選択をすることが当然に可能であるとまではいえないので,さらに検討を加えることにする。 殺菌時間がどれだけ必要であるかは,ボトルの前処理の状況,ボトルの形状や大きさなどによって左右されるものであり,また,どの程度の無菌状態が得られれば十分であると評価するかによって決められる事項である。また,本願発明は,殺菌時間の短縮を実現するために特別な工夫がなされたものでもない。そうしてみると,引用発明において,内壁温度について65?70℃の範囲内の所定の値とし,かつ処理時間について5秒,あるいはそれよりも若干短い値とすること,すなわち本願発明の内面温度(65?75℃)及び殺菌時間(3秒を超え5秒以下)の範囲に含まれるものとすることは,例えば,前処理としての洗浄を念入りに行ったり,殺菌効果についての評価限度を下げることにより,当業者が容易に想到し得たというべきである。 請求人は,審判請求書において「本願発明においては,殺菌処理前のボトルの内面洗浄は必要がない上に,必須の要件である湿熱加熱殺菌は,67℃?70℃未満,3秒以下,または65?70℃未満,3秒を超え5秒以下の条件で行えばよいのであって,殺菌時間は引用文献1のように5?20秒を必要としていない。」と主張するが,本願発明は,殺菌処理前にボトルの内面洗浄を行わないものに限定されるものではなく,また,殺菌時間についての主張は,本願発明も引用文献も「5秒」のところで重なっているのであるから,合理性がない。 以上のことから,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-03 |
結審通知日 | 2010-09-07 |
審決日 | 2010-09-24 |
出願番号 | 特願2006-32845(P2006-32845) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B67C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 裕一 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
熊倉 強 豊島 ひろみ |
発明の名称 | プラスチックボトル詰めミネラルウォーターの製造方法 |
代理人 | 原田 卓治 |
代理人 | 坂本 徹 |