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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1226245 |
審判番号 | 不服2008-2308 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-02-04 |
確定日 | 2010-11-04 |
事件の表示 | 特願2003-325436「情報アクセス装置およびキャッシュ記憶装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-110832〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年6月6日に出願した特願平9-149746号の一部を平成15年9月18日に新たな特許出願としたものであって、平成19年9月19日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月1日付けで手続補正がなされたが、同年12月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月1日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成20年3月1日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年3月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に係る発明 本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「指定された時刻に再生することを内容とする指示を伴うコンテンツ情報を含む放送信号を受信する手段と、 上記受信した放送信号から上記コンテンツ情報を取り出す手段と、 取り出した上記コンテンツ情報を、容量が一杯になったときには所定の規則にしたがって優先度の低いエントリを削除しつつ、ユーザの記録指示操作を伴うことなしに、記憶エントリに加えるキャッシュ記憶手段と、 上記キャッシュ記憶手段に記憶されたコンテンツ情報を、上記指定された時刻に対応して取り出す手段と、 上記キャッシュ記憶手段から取り出されたコンテンツ情報を再生する手段と、 上記キャッシュ記憶手段の記憶エントリの項目をリスト表示で表示領域に表示する手段と、 上記表示領域に表示された上記記憶エントリに対する指示に基づいて上記記憶エントリを削除禁止状態に設定する手段と、 上記削除禁止状態を解除するする手段とを有することを特徴とする情報アクセス装置。」 と補正された。 なお、上記記載のうち、「・・・解除するする手段・・・」との記載は、「・・・解除する手段・・・」の明らかな誤記であると認められる。 上記補正は、補正前の請求項1における「上記キャッシュ記憶手段の記憶エントリを表示領域に表示する手段」を「上記キャッシュ記憶手段の記憶エントリの項目をリスト表示で表示領域に表示する手段」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明における「・・・解除するする手段・・・」との記載を「・・・解除する手段・・・」に修正したもの(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-107526号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特開平8-65622号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。 (引用例1) A.「【特許請求の範囲】 【請求項1】 無線放送、衛星又はケーブルテレビジョンによって少なくとも一つのチャンネルを介して個別の番組として放送されたオーディオ及び/又はビデオ情報の記録及び読み出しの方法であって: - 受信用の少なくとも一つのチャンネルを選択する段階と; - 受信された信号をディジタル的に符号化する段階と; - 上記符号化されたディジタル信号を大容量記録媒体に記録する段階と; - 上記記録媒体上に記録された個別の各番組のインデックスを作成する段階と; - 記録された番組の少なくとも一つのメニューを作成する段階と; - スクリーン上に表示された記録された番組のメニューから少なくとも一つの番組を選択する段階と; - 上記選択された番組を読み出す段階と; - 上記読み出された信号を復号化する段階と; - 対応するオーディオ及び/又はビデオ情報を再生する段階とからなる方法。 ・・・(中略)・・・ 【請求項5】 上記記録された番組の中のある番組の直接的な消去を防止するため安全鍵が割り当てられている請求項1記載の方法。 ・・・(中略)・・・ 【請求項12】 上記アクセス制御手段(5)は、上記記録された番組の中のある番組の直接的な消去を防止するため、ユーザの要求で安全鍵を作成する請求項10記載の装置。」 B.「【0012】記録及び読み出し機能は、他の番組を記録している間に少なくとも一つの記録された番組の読み出しを可能にするため、相互に無関係であることが有利である。従って、顧客は自分のビデオ及び/又はオーディオ貯蔵器の内容を何時でも更新することが可能である。本発明の方法は、好ましくは、ユーザによって指定された番組が消去できないように安全機構が設けられる。このような態様によって、ユーザは保護された記録の個人的なコレクションを構築することが可能である。記録の中の一つを削除するため、ユーザは最初に安全機構を解除し、次いで、記録媒体から削除すべき記録を消去する。」 C.「【0017】 【発明の実施の形態】添付図面を参照して、その例に限定されることのない以下の実施例の詳細な説明を読むことにより、本発明はより良く理解され、他の利点及び特徴が明瞭になる。本発明の装置は、テレビジョンの復号化器又はテレビジョン受像機に組み込まれる。図1に示されたように、本発明の装置は、無線又は衛星放送の場合にはアンテナ2によって捕捉され、或いは、ケーブルネットワークを介して受信された少なくとも一つのチャンネルからの信号を並列的に供給可能である周波数選択手段1を含む。上記周波数選択手段1は、幾つかの番組のチャンネルを並列的に提供するため、少なくとも一つのアナログ及び/又はディジタル方式“チューナ”を含む。上記周波数選択手段1によって出力された信号は、ディジタル符号化器3により処理される。ディジタル符号化器3は、必要に応じて、アナログ信号をディジタル信号に変換し、場合によっては、受信された信号のディジタル圧縮及び/又は多重化を保証する。符号化されたディジタル信号は、大容量記録媒体4a上に記録されるべく記録及び読み出し手段4に供給される。制御手段5と、(装置に一体化されたボタン又は遠隔コントローラの形をなす)ユーザインタフェースモジュール6は、ユーザに周波数選択手段1及び記録及び読み出し手段4の制御を可能にさせる。 ・・・(中略)・・・ 【0020】制御手段5はアクセス制御ユニットを含み、このアクセス制御ユニットによって、ユーザインタフェースモジュール6を介してユーザによって入力された少なくとも一つのアクセスコードが正しい場合に限り、記録された番組の中のある番組の読み出しの認可が与えられる。表示スクリーン7は、記録及び読み出し装置が接続、或いは、組み込まれたテレビジョンのスクリーンでも構わない。或いは、スクリーン7が内蔵された記録及び読み出し装置を作ることも可能である。この場合、ユーザがスクリーンを押すことにより制御手段5と対話することができるよう、スクリーン7は接触感受性タイプのスクリーンでも構わない。この例の場合、ユーザインタフェースモジュール6は、表示スクリーン7と組み合わされている。接触感受性スクリーン7は液晶タイプでもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0022】図2及び図3に表わされた例において、記録された番組のメニューが表示スクリーン7に表示される。明らかに、記録された番組を、例えば、テーマ(スポーツ、政治、映画、ドラマ等)、或いは、タイプ(映画に対し、例えば、アクション、ロマンス、刑事物等)によって幾つかのメニューに分類することができる。ユーザインタフェースモジュール6を用いて、ユーザはメニュー内の特定の番組を選択する。 【0023】次いで、制御手段5は、ユーザの個人的なコレクションに選択された番組が含まれている(この場合、番組は安全鍵によって保護されている)かどうかを検査する。既にその番組に安全処置が施されている場合、次のスクリーンに二つの選択肢:“消去”及び“読出”が表示される。上記番組に安全処置が施されていない場合、次のスクリーンには、上記二つの選択肢に加えて“収集”が含まれている。“収集”は、ユーザが制御手段5を介して安全鍵を関連付けることにより、上記番組を自分の個人的なコレクションに追加できるようにする。 【0024】選択肢“消去”が選択された場合、次のスクリーンは、ユーザがその選択肢を“確認”或いは“取消”(“消去”が誤って選択された場合)することを要求する。ユーザが“取消”を選択した場合、システムは番組選択スクリーンに戻る。ユーザが“確認”を選択した場合、装置は、番組が安全鍵によって保護されていないならば、その番組を消去する。番組が保護されている場合、ユーザはその番組を消去することが可能であるが、最初に、制御手段5を介して番組の安全処置を解除しなければならない。或いは、最終的に、番組を消去しないように決めることができる。システムは、次に、初期メニューに戻る。」 上記A?Cの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。) 「オーディオ及び/又はビデオ情報を含む放送信号を受信する手段と、 上記受信した放送信号から上記オーディオ及び/又はビデオ情報を取り出す手段と、 取り出した上記オーディオ及び/又はビデオ情報を記憶する大容量記録媒体と、 上記大容量記録媒体に記憶されたオーディオ及び/又はビデオ情報を取り出す手段と、 上記大容量記録媒体から取り出されたオーディオ及び/又はビデオ情報を再生する手段と、 上記大容量記録媒体に記憶されたオーディオ及び/又はビデオ情報の番組のメニューを表示する手段と、 ユーザの指示に基づいて上記記憶されたオーディオ及び/又はビデオ情報を消去禁止状態に設定する手段と、 上記消去禁止状態を解除する手段とを有する装置。」 (引用例2) D.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はメモリを備えたテレビジョン装置において、特に各種の受信内容から希望の放送プログラムをジャンル別に自動選択して、ファーストイン、ファーストアウトでメモリに蓄積しておき、多忙な視聴者も好きな時間に最新情報を時間を遡って視聴することを可能としたメモリ付テレビジョン装置に関するものである。」 E.「【0040】同じく、本発明のメモリ付テレビジョン装置の記録時の動作を図6のフローチャートを参照して説明する。ユーザがメモリ付テレビジョン装置1を受信中にリモコン部2を操作してこのFIFO動作モードを選択してスタートする(ステップSP1)。ステップSP2において、メモリ付テレビジョン装置1自身の保有する大容量メモリの記録可能な残量をチェックして記憶する。ステップSP3では、放送局からIDコード付で送信されてくる放送内容からカテゴリ等の情報を検出して記憶する。ステップSP4にて、ユーザが番組予約を行ったか否かの確認を行いユーザが番組予約を行った場合にはそのプログラムを優先して受理する。ユーザの番組予約が無い場合は、そのまま放送内容のカテゴリ毎の分類を行う。 【0041】ステップSP5にて、カテゴリ領域の選択及び放送局の指定があればそのカテゴリコードを検出して記憶する。ステップSP6では、古い記録内容から順次消去され新しい放送内容を記録するFIFO動作を行う。ステップSP7において、そのカテゴリ領域に割り当てられたメモリ容量の残量チェックを行いカテゴリ領域の記録容量に余裕がある場合には、ステップSP8に移り、記録容量に余裕がない場合には、ステップSP6に戻りFIFO動作を繰り返し放送内容の更新を行う。ステップSP8において、放送時間等のIDコードをチェックし合致している場合はステップSP9に移り記録を継続開始し、不一致の場合は再度ステップSP8に戻り放送時刻の一致を図るように作用する。ステップSP10にて、一連の記録モード動作は終了する。」 上記D,Eの記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。) 「メモリを備えたテレビジョン装置において、放送プログラムをメモリに蓄積するに際し、記録容量に余裕がない場合には、古い記録内容から順次消去し、新しい放送内容を記録するようにすること。」 (3)対比 本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。 (あ)引用例1記載の発明における「オーディオ及び/又はビデオ情報」は、個別の番組内容すなわちコンテンツが含まれるものであり、本願補正発明における「コンテンツ情報」に相当するということができる。 (い)本願補正発明における「キャッシュ記憶手段」と、引用例1記載の発明における「大容量記録媒体」とは、ともに、「記憶手段」である点において共通するものである。 そして、引用例1記載の発明において「記憶する」ことは、本願補正発明において「記憶エントリに加える」ことに相当する事項である。 (う)引用例1記載の発明における「記憶されたオーディオ及び/又はビデオ情報の番組」は、本願補正発明における「記憶エントリの項目」に相当する。 そして、引用例1記載の発明において、「表示」を表示手段の「表示領域」に対して行うことは、当然のことである。 (え)引用例1記載の発明における「消去」は、本願補正発明における「削除」に相当する。 上記(あ)?(え)の事項を踏まえると、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。 (一致点) 本願補正発明と引用例1記載の発明とは、ともに、 「コンテンツ情報を含む放送信号を受信する手段と、 上記受信した放送信号から上記コンテンツ情報を取り出す手段と、 取り出した上記コンテンツ情報を記憶エントリに加える記憶手段と、 上記記憶手段に記憶されたコンテンツ情報を取り出す手段と、 上記記憶手段から取り出されたコンテンツ情報を再生する手段と、 上記記憶手段の記憶エントリの項目を表示領域に表示する手段と、 指示に基づいて上記記憶エントリを削除禁止状態に設定する手段と、 上記削除禁止状態を解除する手段とを有する装置。」 である点。 (相違点) 相違点1:本願補正発明においては、「コンテンツ情報」が「指定された時刻に再生することを内容とする指示を伴う」ものであるとともに、記憶手段に記憶されたコンテンツ情報を「上記指定された時刻に対応して」取り出すようなものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、そのようなものではない点。 相違点2:本願補正発明においては、「記憶手段」が「キャッシュ記憶手段」であるのに対し、引用例1記載の発明においては、「キャッシュ記憶手段」ではない点。 相違点3:本願補正発明においては、「記憶手段」が「取り出したコンテンツ情報を、容量が一杯になったときには所定の規則にしたがって優先度の低いエントリを削除しつつ、ユーザの記録指示操作を伴うことなしに、記憶エントリに加える」ものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、そのようなものではない点。 相違点4:本願補正発明においては、記憶エントリの項目を「リスト表示で表示領域に表示する」ようにし、かつ、「上記表示領域に表示された上記記憶エントリに対する指示に基づいて」記憶エントリを削除禁止状態に設定するようにしているのに対し、引用例1記載の発明においては、そのようにしているとはされていない点。 相違点5:本願補正発明は「情報アクセス装置」であるのに対し、引用例1記載の発明は「情報アクセス装置」ではない点。 (4)判断 そこで、上記相違点1?5について検討する。 (相違点1について) コンテンツの伝送・再生方法において、送信側でコンテンツに対して再生時刻情報を付加して送信し、受信側では該再生時刻情報に対応した時刻に該コンテンツを再生することは、例えば、特開平5-252495号公報等に見られるような周知技術にすぎない。 してみれば、引用例1記載の発明に対して上記周知技術を適用して、「コンテンツ情報」を「指定された時刻に再生することを内容とする指示を伴う」ものとし、かつ、記憶手段に記憶されたコンテンツ情報を、「上記指定された時刻に対応して」取り出すようなものとすることは、当業者が適宜になし得ることである。 (相違点2について) 一般に、受信した放送信号から取り出したコンテンツ情報を「キャッシュ記憶手段」に記憶することは、例えば、「後藤弘茂著『キャリアの多様化がWebキャストを促進する』,internet@ASCII,第2巻 第5号,株式会社アスキー,1997年5月1日,第166?167頁」(以下、「周知文献」という。)の第166頁左下の「Intercastのデモ画面」の図の説明において、「左上にはTV画面、下にはVBIで送られたHTMLデータが表示される。・・・(中略)・・・データはキャッシュされるので、あとで見ることもできる」と記載されている如く、周知技術にすぎない。 してみれば、引用例1記載の発明において、「記憶手段」を「キャッシュ記憶手段」とすることは、コンテンツ情報の種類に応じて当業者が適宜になし得ることである。 (相違点3について) 上記引用例2記載の発明に見られるように、「メモリを備えたテレビジョン装置において、放送プログラムをメモリに蓄積するに際し、記録容量に余裕がない場合には、古い記録内容から順次消去し、新しい放送内容を記録するようにすること」は、公知の技術である。 ここで、「記録容量に余裕がない場合」というのは、記憶手段の「容量が一杯になったとき」に相当する事項であり、「古い記録内容から順次消去し、新しい放送内容を記録する」ということは、「古い記録内容」を優先度の低いエントリとみなし、そのようなエントリを順次消去するという規則を「所定の規則」として採用することに他ならない。そして、上記引用例2記載の発明において行われる動作は、予めその規則を決めておけば、特にユーザの記録指示操作を伴うことなしに自動的に行われる動作であると解される。 よって、引用例1記載の発明に対して上記引用例2記載の発明を適用することにより、「記憶手段」を「取り出したコンテンツ情報を、容量が一杯になったときには所定の規則にしたがって優先度の低いエントリを削除しつつ、ユーザの記録指示操作を伴うことなしに、記憶エントリに加える」ものとすることは、当業者が適宜になし得ることである。 (相違点4について) 引用例1記載の発明において、「記憶されたオーディオ及び/又はビデオ情報の番組のメニューを表示する」にあたり、該「番組」すなわち「記憶エントリの項目」を「リスト表示」形式で表示するようにすることは、ごく普通に考えられることにすぎない。 そして、どの番組を「消去禁止状態」にするかを上記「リスト表示」形式で表示された番組の中から選択・指示するようにすることも、当業者が容易に想到し得ることである。 よって、引用例1記載の発明において、記憶エントリの項目を「リスト表示で表示領域に表示する」ようにし、かつ、「上記表示領域に表示された上記記憶エントリに対する指示に基づいて」記憶エントリを削除禁止状態に設定することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (相違点5について) 放送信号を受信する装置を、例えばインターネット上の情報等にアクセスする装置として動作させることは、上記周知文献等に見られるような周知技術にすぎない。 よって、引用例1記載の発明の「装置」を「情報アクセス装置」とすることは、当業者が適宜になし得ることである。 (本願補正発明の作用効果について) そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2に記載の発明及び周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例1,2に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成20年3月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年12月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載からみて次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「指定された時刻に再生することを内容とする指示を伴うコンテンツ情報を含む放送信号を受信する手段と、 上記受信した放送信号から上記コンテンツ情報を取り出す手段と、 取り出した上記コンテンツ情報を、容量が一杯になったときには所定の規則にしたがって優先度の低いエントリを削除しつつ、ユーザの記録指示操作を伴うことなしに、記憶エントリに加えるキャッシュ記憶手段と、 上記キャッシュ記憶手段に記憶されたコンテンツ情報を、上記指定された時刻に対応して取り出す手段と、 上記キャッシュ記憶手段から取り出されたコンテンツ情報を再生する手段と、 上記キャッシュ記憶手段の記憶エントリを表示領域に表示する手段と、 上記表示領域に表示された上記記憶エントリに対する指示に基づいて上記記憶エントリを削除禁止状態に設定する手段と、 上記削除禁止状態を解除する手段とを有することを特徴とする情報アクセス装置。」 なお、平成19年12月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1には、「・・・解除するする手段・・・」と記載されているが、この記載は「・・・解除する手段・・・」の明らかな誤記と認め、本願発明を上記のように認定した。 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「上記キャッシュ記憶手段の記憶エントリの項目をリスト表示で表示領域に表示する手段」の限定を省いて「上記キャッシュ記憶手段の記憶エントリを表示領域に表示する手段」としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例1,2に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明は、同様に、引用例1,2に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-08-25 |
結審通知日 | 2010-08-31 |
審決日 | 2010-09-13 |
出願番号 | 特願2003-325436(P2003-325436) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高瀬 勤 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
飯田 清司 池田 聡史 |
発明の名称 | 情報アクセス装置およびキャッシュ記憶装置 |
代理人 | 澤田 俊夫 |