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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1226246
審判番号 不服2008-2476  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-05 
確定日 2010-11-04 
事件の表示 特願2002-348625「ディスク・ドライブ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年7月2日出願公開、特開2004-185674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件審判の請求に係る特許願(以下、「本願」という。)は、平成14年11月29日に出願されたものであって、平成19年9月7日付けで、本願請求項1ないし14に係る各発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し(理由A)、及び、特許法第29条第2項の規定により(理由B)、いずれも特許を受けることができない旨の拒絶理由が通知され、平成20年1月18日付けで同拒絶理由で拒絶すべきものである旨の査定がなされ、これに対して、平成20年2月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

本願の請求項1ないし14に係る各発明は、平成17年11月29日付けの手続補正で補正された明細書及び図面からみて、特許請求の範囲請求項1ないし14に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
回転可能に配設されるディスク状記憶媒体と、
前記ディスク状記憶媒体にデータを書き込み、また、記録したデータを読み出すヘッドを有すると共に、当該ディスク状記憶媒体に対するデータの読み書き動作が可能な読み書き位置と当該ディスク状記憶媒体から待避する待避位置との間で当該ヘッドを移動させる可動部材と、
前記ヘッドが前記待避位置にあるときには前記可動部材をラッチ可能であり、当該ヘッドが前記読み書き位置にあるときには当該可動部材に接触しないラッチ機構と
を含むディスク・ドライブ装置。」


2.刊行物及びその記載
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特表平9-503608号公報(平成9年4月8日公開、以下、「刊行物」という。)には、以下の記載がある。

(2-1)
「ドライブが作動していない時の読み取り/書き込みヘッドの位置によって、ディスクドライブを更に2種類に分類することができる。「ダイナミックローディング式」ドライブにおいては、ヘッドがディスクから離れた位置(典型的にはランプ)に引き込まれる。」(4頁20?23行)

(2-2)
「第1図に示すのは、ダイナミックローディングディスクドライブ10の平面図であって、このディスクドライブ10はドライブ本体10a、ディスク11、及びロータリーアクチュエータ12を備える。ディスク11はスピンドルとモータ13の結合体によって駆動され、その周りを回転する。アクチュエータ12の一端において、磁気ヘッド14及びカムフォロワー15が取り付けられ、後者はランプ(ramp)16の上に載る。第3図には、カムフォロワー15とランプ16の構造が更に詳細に示されている。
アクチュエータ12はピボットシャフト17の周りを回転し、マグネットアセンブリ(図示せず)と共にアクチュエータコイル18によって駆動される。アクチュエータコイル18は、マグネットアセンブリと共にボイスコイルモータを形成し、このボイスコイルモータはアクチュエータ12を旋回させて磁気ヘッド14をディスク11上の所望の位置に位置決めする。アクチュエータ12の末端部の近傍には慣性ラッチ19が配置されるが、これについては以下第2A図を参照してより詳細に説明する。
第2A図に示すのは、開状態若しくは非ロック状態にある慣性ラッチ19である。シャフト21の一端は慣性ボディ20に枢支され、慣性ボディ20が両方向に回転できるようになっている。シャフト21の別の一端は本体部分10aに取り付けられる。慣性ボディ20は第2A図においては円形のものとして示されているが、その形状はこれに限られるものではない。慣性ボディ20の形状はその動作との関連で重要ではないので、実質的にいかなる形状のものでも可能である。ロックピン22は慣性ボディ20の表面に取り付けられる。第2A図に示すように、慣性ラッチが非ロック状態にあるときのロックピン22のシャフト21を中心とした角度位置は、コイルばね23によって決定される。コイルばね23はドライブ本体部分10aに接合されたピン24と慣性ボディ20に接合されたピン25との間に延在する。指状部分26はアクチュエータ12から延出し、当接面27に隣接した部分に設けられる。当接面27はピン22が反時計方向に回転したときの経路に位置が合わせられている。
ドライブ10が動作中でないとき、磁気ヘッド14は通例第3図に示す構造によって拘束される。第3図に示されているのは、アクチュエータ12の反対側から見たランプ16である。この構造に関する詳細は、本出願の同時継続出願であり、本出願人に譲渡されたMorehouse等による“MiniatureHardDiskDriveForPortableComputer”という名称の1990年12月出願の米国特許出願第07/M-1489号明細書に記載されており、ここではこれを参照されたい。第3図に示すように、カムフォロワー15はランプ16の下に設けられた同形のカムフォロワー15aと鏡面対称をなす。カムフォロワー15及びカムフォロワー15aは、ディスク11から離れる向きに回動したとき、ランプ16の傾斜部分30に当接する。カムフォロワー15及びカムフォロワー15aが傾斜部分30に沿って更に左側に摺動するにつれ、磁気ヘッド14はディスク11の表面から持ち上げられて、カムフォロワー15及びカムフォロワー15aは最終的にロック位置31に達する。カムフォロワー15及び15aがロック位置31を越えて移動することは、止め部材(図示せず)により実質的に防止される。
ここで、慣性ラッチ19の動作について説明する。ディスクドライブがオフ状態の時、カムフォロワー15及び15aは通例ロック位置31において休止しており、慣性ラッチ19は第2A図に示すような非ロック状態にある。カムフォロワー15及び15aとランプ16との間の摩擦力は、小さな回転方向の衝撃によりアクチュエータ12が回動するのを抑制するだけの十分な強さなのである。しかし、ディスクドライブ10が時計方向の強い回転力を受けた場合、アクチュエータ12は本体部分10aに対して反時計方向に回転することがあり、磁気ヘッド14がディスク11に接触する可能性が出てくる。この場合、慣性ボディ20の慣性はばね23の力を上回り、慣性ボディ20も本体部分10aに対して反時計方向に回転する。従って、ピン22は、第2B図に示すように、角度βだけ回転して当接面27に達する。この位置において、ピン22はアーム26が更に右側に動くのを防ぎ、それによってアクチュエータ12が反時計方向に回転することを防止する。衝撃がなくなると、ばね23は慣性ボディ20が第2A図に示す非ロック位置に戻るように付勢し、カムフォロワー15及び15aはロック位置31に戻る。
ディスクドライブ10が強い反時計方向の力を受けた場合、アクチュエータ12は本体部分10Aに対して止め部材(図示せず)に達するまで回転し、その後カムフォロワー15及び15aはロック位置31に戻るので、問題は起こらない。」(9頁7行?11頁12行)

(2-3)
「第5図には、本発明の第2実施例が示されている。慣性ラッチ100は慣性ボディ101及びスリーブ102を有する。シャフト103は、慣性ラッチ100がどちらの方向にでも回転できるように、スリーブ102に枢支される。 シャフト103の反対側の一端は、本体部分10Bに圧入される。シャフト103は、本体部分10Bに螺嵌されたり、結合されたりしてもよい。慣性ラッチ100は、保持リング(例えばEクリップ)(図示せず)によってシャフト103に保持される。
慣性ボディ101はその一端につめ104を備えるように形成され、このつめ104は、末端部にフック104aを有する。シャフト103は、フック104aがアクチュエータ12の指状部分26と係合できるように本体部分10B上に配置される。ピン105は慣性ボディ101の上側表面から上向きに延出している。慣性ボディ101及びスリーブ102は、図に示すように別個の構成要素であるが、これらを一体に結合することも可能である。図において斜線で示すように、慣性ラッチ100はディスク11の下側に取り付けられる。
スリーブ102はポリカーボネイトを添加されたテフロン(登録商標)から作られるのが好ましく、慣性ボディ101に圧入される。慣性ボディ101はナイロン11(登録商標)を添加された(質量比85%の)青銅から作られる。
第6A図は、慣性ボディ101の平面図であり、第6B図は、第5図の矢印6Bの方向から見た慣性ボディ101の側立面図である。
第7図は、ディスクドライブ10のアクチュエータ12及び慣性ラッチ100が配置されたコーナー部分の組立分解図である。ロータリーアクチュエータ12は移動コイル型、即ち、磁石106が静止位置に保持され、アクチュエータ12の可動部分がコイル107を備えた型のものである。アクチュエータ12には、アクチュエータ12が本体部分10Bに結合された回転できるようにアクチュエータ12を枢支するベアリングアセンブリ108が備えられている。 磁石106を用いることにより、アクチュエータコイル107を貫通する磁場が生成される。磁石106は上側プレート109上におかれ、磁石106がアクチュエータ12の上側表面の上に来るようにされる。磁石アセンブリの下側プレート110は、上側プレート109の下向き折り返し部分111と共に、磁束経路の下側部分をなす。
上側プレート109のタブ109aはピン109の止め部材としての役目を果たし、慣性ラッチ100が時計方向に回転しすぎることを防止している。内側クラッシュ止めアセンブリ112は上側プレート109と下側プレート110との間に配置される。内側クラッシュ止めアセンブリ112は、アクチュエータ12が予定された内側移動経路を越えて回転し、読み取り/書き込みトランスデューサヘッドがディスク表面から離れたり、他のハードディスクドライブの構成要素にぶつかったりすることを防止している。」(13頁5行?14頁13行)

(2-4)
「第8A図に示すように、横向きアーム119は本体部分10Bの壁120と係合する。従って、慣性ラッチ100が反時計方向に回転すると、円形ばね117は引っ張られ、慣性ラッチ100に時計方向のトルクを与える。
ディスクドライブ10が時計方向の回転衝撃を受けた場合、上述のように、慣性ラッチ100の慣性モーメントは円形ばね117のトルクを上回り、慣性ラッチ100の本体部分10Bに対する反時計方向の回転を発生させる。従って、フック104aはアクチュエータ12の指状部分26に係合し、アクチュエータ12が回転して磁気ヘッド14がディスク11に接触することを防止する。衝撃がなくなると、円形ばね117の力が優勢になり、慣性ラッチ100を通常の位置、即ち、ピン105がタブ109aに係合する位置(第7図参照)に戻す。」(14頁末行?15頁9行)

以上の記載を、【図5】?【図8】の各図面を参照して整理すると、刊行物には、結局、次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているものと認める。

「ダイナミックローディング式のディスクドライブであって、
スピンドルとモータの結合体によって駆動され、その周りを回転する磁気ディスクと、
一端に磁気ヘッドが取り付けられ、ピボットシャフトの周りを回転して、磁気ヘッドを磁気ディスク上の所望の位置に位置決めするロータリーアクチュエータと、
ロータリーアクチュエータが、磁気ヘッドを磁気ディスクから離れる向きに回動し、ディスクドライブが動作中でないとき、磁気ヘッドを磁気ディスクの表面から持ち上げて、磁気ヘッドをロックするランプと、
アクチュエータの末端部の近傍に配置された慣性ラッチと、
を備えたディスクドライブであって、
慣性ラッチは、慣性ボディを有し、
慣性ボディは、その一端につめを備えるように形成され、このつめは、末端部にフックを有し、
磁気ヘッドがロック位置にあるとき、ディスクドライブが時計方向の回転衝撃を受けた場合、
慣性ボディがドライブ本体部分に対する反時計方向に回転し、フックがアクチュエータの指状部分に係合して、アクチュエータが回転して磁気ヘッドが磁気ディスクに接触することを防止し、
衝撃がなくなると、慣性ラッチを通常の位置に戻る
ディスクドライブ。」


3.対比
本願発明と刊行物発明とを対比する。
刊行物発明における「磁気ディスク」は「スピンドルとモータの結合体によって駆動され、その周りを回転する」ので、本願発明における「回転可能に配設されるディスク状記憶媒体」に相当する。
刊行物発明における「磁気ヘッド」は、本願発明における「前記ディスク状記憶媒体にデータを書き込み、また、記録したデータを読み出すヘッド」に相当する。
刊行物発明における「ロータリーアクチュエータ」は、磁気ヘッドを「磁気ディスク上の所望の位置に位置決めする」とともに、ディスクドライブが動作中でないときには、「磁気ヘッドを磁気ディスクの表面から持ち上げて」、磁気ヘッドをランプ位置まで移動させるので、本願発明における「ディスク状記憶媒体に対するデータの読み書き動作が可能な読み書き位置と当該ディスク状記憶媒体から待避する待避位置との間で当該ヘッドを移動させる可動部材」に相当する。
刊行物発明における「慣性ラッチ」は、「磁気ヘッドがロック位置にあるとき」、ディスクドライブが時計方向の回転衝撃を受けた場合、慣性ボディがドライブ本体部分に対する反時計方向に回転し、「フックがアクチュエータの指状部分に係合して、アクチュエータが回転して磁気ヘッドが磁気ディスクに接触することを防止」するので、本願発明における「ラッチ機構」と比較して、「ヘッドが前記待避位置にあるときには前記可動部材をラッチ可能」である点において一致する。

すると、本願発明と刊行物発明とは、次のとおりの一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
回転可能に配設されるディスク状記憶媒体と、
前記ディスク状記憶媒体にデータを書き込み、また、記録したデータを読み出すヘッドを有すると共に、当該ディスク状記憶媒体に対するデータの読み書き動作が可能な読み書き位置と当該ディスク状記憶媒体から待避する待避位置との間で当該ヘッドを移動させる可動部材と、
前記ヘッドが前記待避位置にあるときには前記可動部材をラッチ可能であるラッチ機構と
を含むディスク・ドライブ装置。」

[相違点]
本願発明では、ラッチ機構は、「ヘッドが前記読み書き位置にあるときには当該可動部材に接触しない」としているのに対して、刊行物発明では、この点に明確な特定がない点。


4.判断
相違点について検討する。
磁気ディスク等のドライブ装置のラッチ機構は、本来、ドライブ装置が非動作の状態等において、ランプ等によりロックされ、待避位置にある磁気ヘッドが、外部からの過大な衝撃で、そのロックが外れて待避位置から磁気ディスク側へ移動し、磁気ディスクと接触することを防止する目的のものである。
磁気ヘッドが待避位置を離れ、磁気ディスク上の所定位置で動作中の場合、磁気ヘッドはアクチュエータにより制御された状態で読取又は書込動作状態となるのであるから、動作中に、衝撃による回転等の可動部を有する慣性ラッチのよなラッチ機構が磁気ヘッド及びアクチュエータと接触した場合には、アクチュエータの制御及びヘッドによる読み書き動作等に著しい障害となることは自明であって、磁気ヘッドとラッチ機構とが互いに干渉することがないようにすることは、上記ラッチ機構の本来の目的からみて、当業者であれば、当然配慮すべき程度の事項にすぎない。
また、本願発明では、具体的にどのような手段により「接触しない」のか特定がないが、例えば特開2000-251424号公報には、段落【0044】に「ディスク装置における動作時」の慣性ラッチ機構の動作について慣性ラッチ機構が非ロック位置に移動することが記載され、ヘッドが読み書き位置にあるときには、アクチュエータに接触しないことが明らかである。また、特開2002-190170号公報の段落【0045】には、「通常の動作のとき」すなわちヘッドが読み書き位置にあるときについて「ラッチがキャリッジと接触しないように、キャリッジとラッチの間に隙間を設けた」と記載され、少なくとも、「ヘッドが前記読み書き位置にあるときには当該可動部材に接触しない」ラッチとされていることが明らかである。
以上のことからすると、刊行物発明においても、ヘッドが読み書き位置にあるとき、アクチュエータ等の可動部分にラッチ機構が干渉することがないよう、すなわち、可動部分とラッチ機構とが接触しないように構成することは、当業者が、格別の発明力を要すことなく、必要に応じて、適宜に採用し得る設計的事項の範囲内のことにすぎない。

なお、請求人は、請求理由において、特に、参考図を示しながら、
「この参考図は、本願発明の特徴を示した図4及び図6と比較し、その違いを明確するため、引用文献の第5図に示されるアクチュエータ12を磁気ヘッド14がディスク11上に乗る位置まで回転させ、且つ慣性ラッチ100をロックする方向に回転させたものです。
この参考図では、慣性ラッチ100のフック104aは、丁度フック104aの引き出し線が出ている部分にて、アクチュエータ12の指状部分26が突出した部分と重なっております。つまり、フック104aは、スライダ全体が記憶媒体上にあるにも関わらずアクチュエータと接触していることを示しております。
尚、スライダが記憶媒体上に位置する際に、アクチュエータ12の指状部分26とフック104aとが重なっていることが一目瞭然にご理解いただけるように、今回再度添付した参考図ではフック104aは黒く塗り潰すと共に、待避位置にあるアクチュエータ12及び回転前の慣性ラッチ100の残像を消去しております。」(主張1)
とした上で、
「そもそも、引用文献は、上記の通り本願発明の課題すら、開示はおろか全く示唆すらされていない以上、スライダが記憶媒体上にある位置にて、可動部材とラッチ機構とが接触しないようにする必要性もありません。」(主張2)
と主張しているが、以下のとおり、いずれも、採用できない。

(主張1について)
刊行物【図5】の符号を引用すると、刊行物発明は、ディスクドライブが時計方向の回転衝撃を受けた場合、慣性ボディ(101)が反時計方向に回転して、つめ(104)の末端部に形成されたフック(104a)がアクチュエータの指状部分(26)に係合して、アクチュエータが回転して磁気ヘッドが磁気ディスクに接触することを防止するものである。
刊行物【図7】の組立分解図みると、アクチュエータの「指状部分(26)」(【図7】の符号「86」は誤記であることは明らかである。)の近傍には、アクチュエータ自体に何ら「突出した部分」(【参考図】で、黒塗りしたフック部分(104a)と重なる(請求人の主張によれば、「接触」しているとされている)「白抜き部分」)はない。
刊行物で、【図1】、【図2】、【図10】、【図12】等の他の実施例の記載でも、「指状部分(26)」の形状は共通しており、「指状部分」には、突出した部分がないことは明らかである。
参考図の「白抜き部分」が、どのような要素部分かは、必ずしも明確ではないが、少なくとも、アクチュエータ(12)の一部である「指状部分」に附属したものではないことは明らかであり、請求人が示す【参考図】からみると、少なくとも、アクチュエータの構造部分と慣性ラッチの構造部分とは「接触」していないことは明らかである。
請求人が示す【参考図】によれば、刊行物発明も、「ヘッドが読み書き位置にあるときには可動部材に接触しないラッチ機構」を備えていることになるから、却って、前記相違点が刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しうるものであるということができ、請求人の主張1は採用できない。

(主張2について)
ラッチ機構の本来の目的が、ドライブ装置が非動作の状態等において、ランプ等によりロックされ、待避位置にある磁気ヘッドが、外部からの過大な衝撃で、そのロックが外れて待避位置から磁気ディスク側へ移動し、磁気ディスクと接触することを防止するものであるとき、
ドライブ装置が、読取又は書込等の動作状態で、磁気ヘッドが磁気ディスク上の所定位置にある場合、ラッチ機構の可動部の可動範囲と磁気ヘッドのアクチュエータなどの可動部材の動作範囲とが互いに干渉することがないような位置関係に配置、構成することは、ラッチ機構の本来の目的からみて、当業者であれば、当然に想定し得るところであることは、前記(4.判断)したとおりである。
刊行物発明においても、動作中のアクチュエータ等の可動部分にラッチ機構が干渉することがないよう、即ち、可動部分とラッチ機構とが接触しないよう構成することは、当業者が、格別の発明力を要すことなく、必要に応じて、適宜に採用し得ることと認められ、主張2は、採用できない。

結局、本願発明は、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-31 
結審通知日 2010-06-01 
審決日 2010-06-21 
出願番号 特願2002-348625(P2002-348625)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 重幸  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 早川 学
井上 信一
発明の名称 ディスク・ドライブ装置  
代理人 ポレール特許業務法人  

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