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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1226247
審判番号 不服2008-4282  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-21 
確定日 2010-11-04 
事件の表示 平成10年特許願第345947号「データ記録装置及び出力装置、データ出力システム、データ記録方法及び出力方法、データ記録及び出力方法、並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月23日出願公開、特開2000-173181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成10年12月4日に出願したものであって、平成19年8月31日付けの拒絶理由通知に対する応答期間内の同年11月5日付けで手続補正がなされたが、平成20年1月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月21日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに同年3月24日付で手続補正がなされた。
その後、平成22年5月24日付けで前置報告書に基づく審尋がなされ、同年7月21日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成20年3月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年3月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成20年3月24日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲については、補正前に、

「【請求項1】
符号化ストリームが多重化された多重化ストリームが入力され、入力されたこの多重化ストリームの最大ビットレートを検出するビットレート検出手段と、
入力された上記多重化ストリームをストリームファイルとして記録媒体に記録するとともに、上記ビットレート検出手段により検出した上記多重化ストリームの最大ビットレートを情報ファイルとして、上記ストリームファイルとは別に記録媒体に記録する記録手段とを備えるデータ記録装置。
【請求項2】
上記多重化ストリームとしてトランスポートストリームが入力される入力手段と、
入力された上記トランスポートストリームの基準参照時間を検出する基準参照時間検出手段と、
上記基準参照時間検出手段が検出した基準参照時間に同期したタイムスタンプを生成し、このタイムスタンプを入力された上記トランスポートストリームの各パケットに付加するタイムスタンプ付加手段と、
上記タイムスタンプ付加手段によりタイムスタンプが付加された上記トランスポートストリームを記憶する記憶手段とを備え、
上記記録手段は、上記トランスポートストリームが上記記憶手段に格納されているときにはこのトランスポートストリームをこの記憶手段から抜き出して一定レートで記録媒体に記録し、上記トランスポートストリームが上記記憶手段に格納されていないときには記録媒体への記録を停止することを特徴とする請求項1記載のデータ記録装置。
【請求項3】
ストリームファイルとして記録媒体に記録された、符号化ストリームが多重化された多重化ストリームと、上記ストリームファイルとは別に、情報ファイルとして上記記録媒体に記録された、上記多重化ストリームの最大ビットレートとを上記記録媒体からそれぞれ再生する再生手段と、
上記再生手段により再生した多重化ストリームをディジタルインターフェースを介して外部に出力するディジタル伝送手段とを備え、
上記ディジタル伝送手段は、上記最大ビットレートに基づき上記ディジタルインターフェースのデータ転送速度を確保して、上記多重化ストリームを出力することを特徴とするデータ出力装置。
【請求項4】
上記ディジタル伝送手段は、上記多重化ストリームとともに上記最大ビットレートを、上記ディジタルインターフェースを介して外部に出力することを特徴とする請求項3記載のデータ出力装置。
【請求項5】
上記記録媒体には、多重化ストリームとしてトランスポートストリームが記録され、このトランスポートストリームには、基準参照時間に同期したタイムスタンプが各パケットに付加され、各パケットに付加されている上記タイムスタンプに基づき、上記ディジタル伝送手段により伝送する上記トランスポートストリームの伝送時刻を制御する伝送制御手段を備えることを特徴とする請求項3記載のデータ出力装置。
【請求項6】
符号化ストリームが多重化された多重化ストリームが入力され、入力されたこの多重化ストリームの最大ビットレートを検出するビットレート検出手段と、
入力された上記多重化ストリームをストリームファイルとして記録媒体に記録するとともに、上記ビットレート検出手段により検出したこの多重化ストリームの最大ビットレートを情報ファイルとして、上記ストリームファイルとは別に上記記録媒体に記録する記録手段と、
上記記録媒体から上記記録手段が記録した多重化ストリームと、上記多重化ストリームの最大ビットレートとをそれぞれ再生する手段と、
上記再生手段により再生した多重化ストリームをディジタルインターフェースを介して外部に出力するディジタル伝送手段とを備え、
上記ディジタル伝送手段は、上記多重化ストリームとともに記録媒体に記録された上記最大ビットレートに基づき上記ディジタルインターフェースのデータ転送速度を確保して、上記多重化ストリームを出力することを特徴とするデータ出力システム。
【請求項7】
上記ディジタル伝送手段は、上記多重化ストリームとともに上記最大ビットレートを、上記ディジタルインターフェースを介して外部に出力することを特徴とする請求項6記載のデータ出力システム。
【請求項8】
符号化ストリームが多重化された多重化ストリームが入力し、
入力した上記多重化ストリームの最大ビットレートを検出し、
入力した上記多重化ストリームをストリームファイルとして記録媒体に記録するとともに、上記検出した上記多重化ストリームの最大ビットレートを情報ファイルとして、上記ストリームファイルとは別に記録媒体に記録することを特徴とするデータ記録方法。
【請求項9】
ストリームファイルとして記録媒体に記録された、多重化ストリームと、上記多重化ストリームが記録される際に検出され、上記ストリームファイルとは別に、情報ファイルとして上記記録媒体に記録された上記多重化ストリームの最大ビットレートとを記録媒体からそれぞれ再生し、
上記最大ビットレートに基づきディジタルインターフェースのデータ転送速度を確保し再生した上記多重化ストリームを上記ディジタルインターフェースを介して外部に出力することを特徴とするデータ出力方法。
【請求項10】
上記多重化ストリームとともに上記最大ビットレートをディジタルインターフェースを介して外部に出力することを特徴とする請求項9記載のデータ出力方法。
【請求項11】
符号化ストリームが多重化された多重化ストリームを入力し、
入力した上記多重化ストリームの最大ビットレートを検出し、
入力した上記多重化ストリームをストリームファイルとして記録媒体に記録するとともに、上記検出した上記多重化ストリームの最大ビットレートを情報ファイルとして、上記ストリームファイルとは別に記録媒体に記録し、
ストリームファイルとして記録媒体に記録された、上記多重化ストリームと、上記ストリームファイルとは別に、情報ファイルとして上記記録媒体に記録された上記多重化ストリームの上記最大ビットレートとを上記記録媒体からそれぞれ再生し、
上記最大ビットレートに基づき上記ディジタルインターフェースのデータ転送速度を確保し再生した上記多重化ストリームを上記ディジタルインターフェースを介して外部に出力することを特徴とするデータ記録及び出力方法。
【請求項12】
多重化ストリームがストリームファイルとして記録されるとともに、上記多重化ストリームの最大ビットレートが情報ファイルとして、上記ストリームファイルとは別に記録されていることを特徴とする記録媒体。」
とあったところを、

本件補正後、
「【請求項1】
符号化ストリームが多重化された多重化ストリームが入力され、入力されたこの多重化ストリームの最大ビットレートを検出するビットレート検出手段と、
入力された上記多重化ストリームをストリームファイルとして記録媒体に記録するとともに、上記ビットレート検出手段により検出したこの多重化ストリームの最大ビットレートを情報ファイルとして、上記ストリームファイルとは別に上記記録媒体に記録する記録手段と、
上記記録媒体から上記記録手段が記録した多重化ストリームと、上記多重化ストリームの最大ビットレートとをそれぞれ再生する手段と、
上記再生手段により再生した多重化ストリームをディジタルインターフェースを介して外部に出力するディジタル伝送手段とを備え、
上記ディジタル伝送手段は、上記多重化ストリームとともに記録媒体に記録された上記最大ビットレートに基づき上記ディジタルインターフェースのデータ転送速度を確保して、上記多重化ストリームを出力するデータ出力システム。
【請求項2】
上記ディジタル伝送手段は、上記多重化ストリームとともに上記最大ビットレートを、上記ディジタルインターフェースを介して外部に出力することを特徴とする請求項2記載のデータ出力システム。
【請求項3】
符号化ストリームが多重化された多重化ストリームを入力し、
入力した上記多重化ストリームの最大ビットレートを検出し、
入力した上記多重化ストリームをストリームファイルとして記録媒体に記録するとともに、上記検出した上記多重化ストリームの最大ビットレートを情報ファイルとして、上記ストリームファイルとは別に記録媒体に記録し、
ストリームファイルとして記録媒体に記録された、上記多重化ストリームと、上記ストリームファイルとは別に、情報ファイルとして上記記録媒体に記録された上記多重化ストリームの上記最大ビットレートとを上記記録媒体からそれぞれ再生し、
上記最大ビットレートに基づき上記ディジタルインターフェースのデータ転送速度を確保し再生した上記多重化ストリームを上記ディジタルインターフェースを介して外部に出力するデータ記録及び出力方法。
【請求項4】
多重化ストリームがストリームファイルとして記録されるとともに、上記多重化ストリームの最大ビットレートが、上記多重化ストリームを再生しディジタルインターフェースを介してデータ転送速度を確保して外部に出力する際に用いられる情報ファイルとして、上記ストリームファイルとは別に記録されている記録媒体。」
とするものである。

本件補正の内容は、本件補正前の請求項12において、「情報ファイル」について、「上記多重化ストリームを再生しディジタルインターフェースを介してデータ転送速度を確保して外部に出力する際に用いられる」と限定し、そして、本件補正前の請求項1?5,8?11を削除して請求項の項番を整理したものである。
そうすると、本件補正は、請求項の削除及び発明特定事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号及び第2号に規定する請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項4に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-339630号公報(平成8年12月24日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は、当審で付与した。)

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、複数チャンネルの音声および映像機器の情報のうち、必要な情報を選択して記録再生できるマルチチャンネル記録再生装置に関する。」

(2)「【0054】図3において、6はProgram Association Table(以下、「PAT」という。)、7はPacket Identification(以下、「PID」という。)、8はProgram Map Table(以下、「PMT」という。)、9はAdaptation Field(以下、「APF」という。)、10はPeak Rate Flag(以下、「PRF」という。)、11はAudioパケット、12はVideoパケット、21はNetwork Informtion Table(以下、「NIT」という。)、22はConditional Access Table(以下、「CAT」という。)である。」

(3)「【0057】前記PMT8は、各programに対応して必ず1パケット存在し、伝送されたプログラム数のPMT8が連続して配置される。そして、これに続くAPF9(APF-0)には、各プログラムの実際の情報(Audio、Video等のデータパケット)をMPEG2デコードする時に必要な情報が書き込まれている。この中には、各プログラム毎にMPEG2エンコード時におけるピークレートを示すPRF10が含まれており、このPRF10を検出することによって、送られてきたプログラムの最大データレートが検出できる。
【0058】APF9(APF-0)の後にはaudioパケット11、videoパケット12が各プログラム毎に必要なパケット数連続して配置される。このprogram0の情報をすべて伝送した後、図3(d)のようにprogram1のAPF9(APF-1)が伝送され、以下、program0同様、audioパケット11、videoパケット12が連続して伝送される。
【0059】図2(a)および図3にて示したマルチチャンネル放送のビットストリーム信号は、図1で示すチャンネル選択器2によって、必要となる情報チャンネルのみが選択された後、その選択情報はバスインターフェース3(例えばIEEE1394に準拠したもの。)上に転送される。このバスインターフェース3においては、図2(b)で示されるように、CS信号31による1サイクル125μsを基準とし、マルチチャンネル放送のビットストリーム信号(図2(a))より高レート(例えば50Mbps程度)伝送が行われる。マルチチャンネル放送のビットストリーム信号の1パケット(188byte)は図2(b)のようにIso領域32にレート変換された形式で伝送される。」

(4)「【0062】図4は、例えばマルチチャンネル放送のビットストリーム信号中のプログラムprogram0?2とし、HDD4が受け取ったprogram0の情報を記録するデータ処理過程を示す図である。図4(a)は実際のprogram情報(program0?program2)の伝送例を示している。なおここでは、program0の情報単位(以下、「1ブロックパケット」という)を188×n(n≧1、nは自然数)、program1の情報単位を188×m(m≧1、mは自然数)、program2の情報単位を188×k(k≧1、kは自然数)で定義している。
【0063】図4(a)における衛星放送デコーダ1からのビットストリーム信号に対して、チャンネル選択器2は、図4(b)にしめすように必要な情報チャンネル(本実施例ではprogram0のみ)のみを選択して、バスインターフェース3に送出する。
【0064】バスインターフェース3からの伝送チャンネル情報は、図4(c)に示すような信号形態で、第1時間軸変換器50に入力される。ここで、図4(c)に示す信号では、前述のようにバスインターフェース3からの伝送チャンネル情報中のヘッダを検出することによりprogram0のみが抜き出されており、それ以外のprogram情報については無視される。タイマ装置51は24時間の基準カウンタを有しており、program0の情報が第一時間軸変換器50に到着した時刻を表すデジタルデータを例えば4(byte)のタイムスタンプとして生成される。
【0065】HDD4でのprogram0情報受信時は、図4(c)に示すように188×nパケット単位で情報が送られてくるが、1ブロックパケット以外の伝送時間(図4(c)の26bで示す期間)は、情報としては何等意味を持たない時間である。よって、program0をHDD4記録する場合、バッファ等で構成される第一時間軸変換器50によってこの伝送時間26bを縮めた信号に、タイムスタンプ付加器52において上記タイムスタンプ5を付加し、図4(d)の状態の信号がHDD4に入力される。このように、第一時間軸変換器50により1ブロックパケット以外の伝送時間を縮め、1ブロックパケット情報のデータレートを下げることによって、HDD4における記録レートを下げることができ、HDD4のアクセス時間を遅くでき装置を安価に作成することが可能となる。すなわち、26aの期間リアルタイムでデータを書き込む場合に比べて、(26a+26b)の期間で同種のデータを書き込めばよいので、アクセス時間をはるかに遅くすることが可能となり、これにより安価なHDD装置を使用できるものである。また、HDD4の代わりに例えばテープデータ装置へ記録を行う場合には、記録速度を26aの期間に合わせると、記録すべきprogram情報が存在しない26b期間分の無駄なテープ消費につながるが、上述のように(26a+26b)の時間で26aの期間のprogram情報を記録することにより、全体として記録時間の減少等不具合が発生するのを回避できる。無論HDD4同様、記録レートの低い安価なテープ装置が使えるということはいうまでもない。」

(5)「【0072】以上、HDD4へprogram0の情報を記録する場合について説明したが、HDD4からの再生処理は次のようになる。HDD4から再生されたprogram情報は図5(a)、(b)に示すようなブロックパケット構成を持ったビットストリームを構成する。HDD4からのこのビットストリーム信号は図1に示す第2時間軸変換器53によってレート変換等の時間軸移動(変換)が行われるとともに、バスインターフェース3を介して第3時間軸変換器60に対して伝送するために、1ブロックパケットのprogram0の情報の1サイクル(125μs)に対し、例えば1パケット(188+4(タイムスタンプ)=192byte)単位で伝送する(出力する)。」

(6)「【0074】なお、上記説明では、program0情報を記録再生するためにハードディスクドライブ(HDD)を用いて説明したが、これに限定するものではなく、例えばDDS(ディジタル データ ストレージ)や、D8といったコンピュータのバックアップ用記録再生置等、記録再生することが可能な媒体であればどのようなものを利用してもよいことはいうまでもない。」

(7)「【0076】また、上記説明では、PRF10をAPF9内に設けたが、記録時programごとに設定できればAPF9内に設ける必要はなく、他の領域に書き込んでもよい。」

(8)「【0098】ところで、バス使用に関しては、常に安定してデータ転送を行うことができる様に、予め帯域予約という手続きを取っておく。例えば図12(b)の状態ではバスインターフェース3の基本サイクル(125μs)毎に188バイトのデータを一回送信することが保証される。
【0099】ただ、この際に必要以上のの帯域を予約すると、バス全体で無駄を生じる。例えば図12(b)の何も伝送していないサイクルがそれである。バス全体の容量分の帯域予約がなされている際には、他に使用したい装置があったとしても使用できないということになる(空きサイクルがあったとしても)。
【0100】このように、バス容量を他の機器を含めて皆で効率よく分け合い、使用することは大変重要なことである。したがって、データ伝送には必要最小限の帯域予約ですませるべきであり、こうすることで多数の装置がバス共有を図れることになる。このためには、例えば図12(e)に示した様に、1パケットを4分割にして各バスサイクル毎に順に伝送することを行えばよい。バスインターフェース3上に伝送する前にチャンネル選択器2によってMPEGの1パケットを4分割して、1/4パケットずつバスサイクル(125μs)毎に順次伝送する。このようにすれば、バスインターフェース3の帯域予約は、パケット毎に伝送する際と比べて1/4で済み、バスリソースの有効活用に大きく貢献することが可能となる。
【0101】図12(e)は、図12(c)の1パケットを4分割した後、バスインターフェース3上に伝送したものである。この処理は、バスインターフェース3上に伝送する前、すなわちチャンネル選択器2によってMPEG1パケットデータを4分割、すなわち1/4パケットごとにデータを選択する。
【0102】なお、上記説明では、1パケットを4分割する場合を説明したが、分割数についてはビットストリーム上のMPEGパケットの伝送状態(パケットの疎密)によって決定する。この基準としては、実施例1で説明した平均データレート(単位時間あたりのパケット伝送数)、またはピークレートを示すPRF10を基準にして最適分割数を決定する。」

引用例に記載のものはマルチチャンネル記録再生装置に関するものであるが、マルチチャンネルのプログラムが記録されている記録媒体として把握できることを踏まえて上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「プログラム毎のピークレートを示すPRF(Peak Rate Flag)を含むAPF(Adaptation Field)が配置されたビットストリームが記録された記録媒体であって、
ピークレートを示すPRFはバスインターフェースの帯域予約に使用される記録媒体。」

3.対比

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ビットストリーム」は、audioパケット、videoパケット等からなるものであるから、本願補正発明の「多重化ストリーム」に相当する。
(2)引用発明の「ピークレートを示すPRF」は、プログラムの最大データレートであるから、本願補正発明の「最大ビットレート」に相当する。
(3)引用発明の「バスインターフェース」は、本願補正発明の「ディジタルインターフェース」に相当する。
(4)引用発明の「ピークレートを示すPRF」は、「バスインターフェースの帯域予約に使用される」情報であるから、本願補正発明の「ディジタルインターフェースを介してデータ転送速度を確保して外部に出力する際に用いられる情報」に相当する。
(5)引用発明と本願補正発明の「記録媒体」は共通する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>
「多重化ストリームが記録されるとともに、上記多重化ストリームの最大ビットレートが、上記多重化ストリームをディジタルインターフェースを介してデータ転送速度を確保して外部に出力する際に用いられる情報として記録されている記録媒体。」の点。

そして、次の各点で相違する。
<相違点>
(a)「多重化ストリーム」について、本願補正発明は、「ストリームファイルとして記録される」のに対し、引用発明はファイルとして記録されているかどうか明確でない点。

(b)「最大ビットレート」について、本願補正発明は「上記多重化ストリームを再生しディジタルインターフェースを介してデータ転送速度を確保して外部に出力する際に用い」ると特定されているのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

(c)「最大ビットレート」について、さらに、本願補正発明は「情報ファイルとして上記ストリームファイルとは別に記録されている」のに対し、引用発明はAPF内に設ける点。

4.判断

そこで、上記相違点について検討する。

相違点(a)について
動画像記録において、動画像データをファイル化して記録することは周知(例えば、特開平7-296003号公報の段落【0002】【従来の技術】?【0004】等参照)であるから、引用発明においても、ビットストリームをストリームファイルとして記録することは上記周知技術から当業者が適宜なし得る程度のものである。

相違点(b)について
引用例には、再生処理において、HDDからのビットストリーム信号をバスインターフェースを介して伝送すること(摘示事項(5))が記載され、また、バスインターフェース使用に関しては、データ伝送に必要最低限の帯域予約をすませるべきであること(摘示事項(8))が記載されているから、引用発明において、バスインターフェースの帯域予約に使用されるピークレートを示すPRFを再生時に用いること、すなわち、相違点(b)の、「上記多重化ストリームを再生しディジタルインターフェースを介してデータ転送速度を確保して外部に出力する際に用い」ることは当業者が適宜なし得る程度のものである。

相違点(c)について
引用例には、PRF10をAPF9内に設けたが、記録時programごとに設定できればAPF9内に設ける必要はなく、他の領域に書き込んでもよいこと(摘示事項(7))が記載されている。
一方、管理情報を独立して管理ファイルとして記録媒体に記録することは周知(例えば、特開平4-252427号公報の段落【0026】、特開平5-227477号公報の段落【0028】、特開平7-6498号公報の段落【0010】等参照)である。そして、引用発明における「ピークレートを示すPRF」はバスインターフェースの帯域予約に使用されるものであるから、管理情報といえる。
そうすると、引用発明において、ピークレートを示すPRFをAPF内に設ける構成に代えて、独立した情報ファイルとすること、すなわち、相違点(c)の、「情報ファイルとして上記ストリームファイルとは別に記録されている」構成とすることは上記周知技術から当業者が容易に想到できたものである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用例及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成20年3月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成19年11月5日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項12に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1.」の補正前の「請求項12」として記載したとおりのものである。

2.引用例及びその記載

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から「上記多重化ストリームを再生しディジタルインターフェースを介してデータ転送速度を確保して外部に出力する際に用いられる」を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2[理由]3.4.」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項12に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-06 
結審通知日 2010-09-07 
審決日 2010-09-21 
出願番号 特願平10-345947
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松平 英  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 月野 洋一郎
関谷 隆一
発明の名称 データ記録装置及び出力装置、データ出力システム、データ記録方法及び出力方法、データ記録及び出力方法、並びに記録媒体  
代理人 小池 晃  
代理人 祐成 篤哉  
代理人 野口 信博  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 山口 茂  
代理人 藤井 稔也  

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