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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1226276
審判番号 不服2008-25859  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-08 
確定日 2010-11-04 
事件の表示 特願2003-401129「パケットログ記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日出願公開、特開2005-167450〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成15年12月1日の出願であって、平成20年4月17日付けの拒絶理由通知に対し同年6月13日付けで手続補正がなされたものの、同年9月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月8日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年10月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成20年10月8日付けの手続補正は補正前の平成20年6月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「ネットワークを伝播するパケットを記録するパケットログ記録装置において、
ネットワークケーブルの各接続口に各々対応して設けられた複数の表示器から構成される表示手段と、
記憶手段と、
受信したパケットの中で伝播中に不変である部分を抽出してハッシュ関数を用いてハッシュ値に変換すると共に前記ハッシュ値を前記記憶手段のアドレスとみなして、該当するアドレスの特定ビットにビットを立てて前記パケットが伝播したことを記録すると共に同一アドレスの前記接続口に対応付けた特定ビットにビットを立てて前記パケットを受信した前記接続口を記録し、問い合わせのあった不正なパケットが前記記憶手段に記録されている場合には、前記不正なパケットを受信した接続口に対応する前記表示器を点灯、若しくは、点滅させて前記不正なパケットを受信した接続口であることを示す演算制御手段とを備えたことを特徴とするパケットログ記録装置。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「ネットワークケーブルの接続口を複数有しネットワークを伝播するパケットを記録するパケットログ記録装置において、
複数の前記接続口に各々対応して設けられた複数の表示器から構成される表示手段と、
記憶手段と、
受信したパケットの中で伝播中に不変である部分を抽出してハッシュ関数を用いてハッシュ値に変換すると共に前記ハッシュ値を前記記憶手段のアドレスとみなして、該当するアドレスの特定ビットにビットを立てて前記パケットが伝播したことを記録すると共に同一アドレスの前記接続口に対応付けた特定ビットにビットを立てて前記パケットを受信した前記接続口を記録し、問い合わせのあった不正なパケットが前記記憶手段に記録されている場合には、前記不正なパケットを受信した接続口に対応する前記表示器を点灯、若しくは、点滅させて前記不正なパケットを受信した接続口であることを示す演算制御手段とを備えたことを特徴とするパケットログ記録装置。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、「パケットログ記録装置」が「ネットワークケーブルの接続口を複数有し」ている点を付加することにより、「パケットログ記録装置」の構成を限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。

(2)引用発明および周知技術
a.引用発明1
原査定の拒絶理由に引用された特開2003-298648(以下、「引用例1」という。)には「パケットログ記録装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ネットワークを伝播するパケットを記録してパケットの伝播経路を追跡するパケット経路追跡システムで用いられるパケットログ記録装置に関し、特に記憶容量を低減することが可能なパケットログ記録装置に関する。」(第2頁、段落0001)

イ.「【0005】図3はこのような従来のパケット経路追跡システムの一例を示す構成ブロック図である。図3において1は攻撃者(アタッカー)が操作する端末、2はDDoS攻撃等のターゲットとなるサーバ、3及び4はISP(Internet Service Provider:インターネットサービス提供業者:以下、単にISPと呼ぶ。)、5,6,7及び8はルータ、9,10及び11は伝播するパケットの情報を記録するパケットログ記録装置である。
【0006】端末1はルータ5を介してISP3に接続され、ISP3はルータ6及びルータ7を介してISP4に接続される。また、サーバ2はルータ8を介してISP4に接続される。
【0007】さらに、端末1とルータ5との間の回線にはパケットログ記録装置9が接続され、ルータ6とルータ7との間の回線にはパケットログ記録装置10が接続され、サーバ2とルータ8との間の回線にはパケットログ記録装置11が接続される。」(第2頁、段落0005-0007)

ウ.「【0015】図6はこのようなパケットログ記録装置の具体例を示す構成ブロック図であり、12は演算制御手段、13は記憶手段である。
【0016】観測点である回線からの入力は演算制御手段12に接続され、演算制御手段12の出力は記憶手段13に接続される。
【0017】ここで、図6に示すパケットログ記録装置の動作を図7を用いて説明する。図7は取得したパケットの記録方法を説明する説明図である。
【0018】図6中”LG21”に示すように観測点である回線から入力されたパケットは演算制御手段12に取り込まれ、IP(Internet Protocol)パケットの中で伝播中に不変である部分等を抽出する。
【0019】そして、演算制御手段12は抽出された情報をハッシュ関数を用いてハッシュ値に変換し、このハッシュ値を記憶手段13のアドレスとみなして、該当するアドレスにビットを立てる等してある特定のパケットが伝播したことを記録する。
【0020】ここで、ハッシュ関数とは、原文から固定長の疑似乱数(ハッシュ値)を生成する関数であって、このハッシュ関数は不可逆な一方向関数を含むために生成されたハッシュ値から元の原文を再現することはできない。また、同じハッシュ値となる異なるデータを作成することは極めて困難である。
【0021】例えば、演算制御手段12が、図7中”PI31”に示すような取得したパケットから抽出された伝播中に不変である部分にハッシュ関数を適用して、図7中”HV31”に示すようなハッシュ値(例えば、XXXXH:16ビットの16進数表現)を得られた場合を想定する。
【0022】この場合、演算制御手段12は得られたハッシュ値(XXXXH)を記憶手段13のアドレスとみなして、”XXXXH”のアドレスに図7中”WD31”に示すようにデータを書き込む。
【0023】例えば、データの書込み方法としては”00000000B(8ビットデータ)”から”00000001B”等(ビットを立てる)に変更することによってある特定のパケットが伝播したことを記録する。
【0024】そして、DoS攻撃等を受けたサーバが受信した不正なパケットに前記ハッシュ関数を適用して得られたハッシュ値に対応する記憶手段13のアドレスにビットが立っていれば不正なパケットがパケットログ記録装置が接続された回線を伝播したことになる。
【0025】この結果、図6に示すパケットログ記録装置ではパケットの情報を全て記憶手段に記録するのではなく、パケットの一部分にハッシュ関数を適用して得られたハッシュ値に対応する記憶手段のアドレスに記録する(ビットを立てる)ことにより、記憶手段の記憶容量は小さくて良く、効率良くパケットの情報を保持することが可能である。」(第3頁、段落0015-0025)

エ.「【0042】図1において25,26及び27は演算制御手段、28は記憶手段である。複数の異なる観測点である各回線(図示せず。)からの入力は演算制御手段25,26及び27に接続され、演算制御手段25,26及び27の出力は記憶手段28に接続される。
【0043】ここで、図1に示すパケットログ記録装置の動作を図2を用いて説明する。図2は取得したパケットの記録方法を説明する説明図である。但し、従来例で説明したパケット経路追跡システムの基本的な動作に関しては説明を省略する。
【0044】図1中”LG41”、”LG42”及び”LG43”に示すように各回線から入力されたパケットはそれぞれ演算制御手段25,26及び27に取り込まれ、IP(Internet Protocol)パケットの中で伝播中に不変である部分等を抽出する。
【0045】そして、演算制御手段25,26及び27はそれぞれ抽出された情報をハッシュ関数を用いて各々のハッシュ値に変換し、これらのハッシュ値を記憶手段28のアドレスとみなして、該当するアドレスの特定のビットを立てる等してある特定のパケットが伝播したことを記録する。
【0046】例えば、演算制御手段25が、図2中”PI51”に示すような取得したパケットから抽出された伝播中に不変である部分にハッシュ関数を適用して、図2中”HV51”に示すようなハッシュ値(例えば、XXXXH:16ビットの16進数表現)を得られた場合を想定する。
【0047】この場合、演算制御手段25は得られたハッシュ値(XXXXH)を記憶手段28のアドレスとみなして、”XXXXH”のアドレスの最上位ビット(Most Significant Bit:MSB)に図2中”WD51”に示すようにデータを書き込む。
【0048】同様に、例えば、演算制御手段26が、図2中”PI52”に示すような取得したパケットから抽出された伝播中に不変である部分にハッシュ関数を適用して、図2中”HV52”に示すようなハッシュ値(XXXXH)を得られた場合を想定する。
【0049】この場合、演算制御手段26は得られたハッシュ値(XXXXH)を記憶手段28のアドレスとみなして、”XXXXH”のアドレスの最下位ビットから6ビット目に図2中”WD52”に示すようにデータを書き込む。
【0050】さらに、例えば、演算制御手段27が、図2中”PI53”に示すような取得したパケットから抽出された伝播中に不変である部分にハッシュ関数を適用して、図2中”HV53”に示すようなハッシュ値(XXXXH)を得られた場合を想定する。
【0051】この場合、演算制御手段27は得られたハッシュ値(XXXXH)を記憶手段28のアドレスとみなして、”XXXXH”のアドレスの最下位ビット(LeastSignificant Bit:LSB)に図2中”WD53”に示すようにデータを書き込む。
【0052】すなわち、演算制御手段25,26及び27はハッシュ値が示すアドレスのうち”MSB”、”LSBから6ビット目”及び”LSB”にそれぞれデータを書き込むべきビットが割り当てられている。
【0053】例えば、データの書込み方法としてはMSBやLSB等の該当する特定のビットを”0”から”1”に変更することによってビットを立てる。
【0054】そして、DoS攻撃等を受けたサーバが受信した不正なパケットに前記ハッシュ関数を適用して得られたハッシュ値に対応する記憶手段28のアドレスの特定のビットに”1”が立っていれば該当する観測点(回線)で不正なパケットが伝播したことになる。
【0055】すなわち、3つの観測点(回線)を観測する場合であっても記憶手段は1つで済み、1つのアドレスに3個所の観測点(回線)の情報を格納できるので記憶手段の記憶領域の利用効率も向上する。
【0056】この結果、ハッシュ値が示すアドレスのデータを各ビット単位で複数の観測点(回線)に割り当ててビットを立てることにより、パケット内容を記録するパケットログ記録装置の記憶容量を低減することが可能になり、記憶手段の記憶領域の利用効率を向上させることも可能になる。」(第4-5頁、段落0042-0056)

上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
・上記パケットログ記録装置は、ネットワークを伝播するパケットを記録し(摘記事項ア)、上記パケットは、複数の観測点である各回線から入力する(摘記事項エ)ものであり、
・上記パケットログ記録装置は記憶手段28および演算制御手段25,26,27を備え、該演算制御手段25,26,27にはそれぞれ上記複数の回線からのパケットが入力し(摘記事項エ)、
・上記演算制御手段25,26,27は、受信したパケットの中で伝播中に不変である部分を抽出してハッシュ関数を用いてハッシュ値に変換すると共に、前記ハッシュ値を前記記憶手段28のアドレスとみなして、該当するアドレスのそれぞれMSB、LSBから6ビット目、LSB、にビットを立てて前記パケットが伝播したことを記録する(摘記事項エ)が、上記「MSB、LSBから6ビット目、LSB」は回線に対応付けた特定ビットと言え、また、これら特定ビットに立てられたビット“1”の存在は、パケットを受信した回線を記録していると言え、
・上記記憶手段の特定ビットに“1”が立てられていれば、不正パケットが該当する回線を伝播したことになる(摘記事項エ)が、このような記憶手段の検索や不正パケットの検出が演算制御手段25,26,27で行われることは技術常識であり、

結局、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。
「複数の回線に接続されネットワークを伝播するパケットを記録するパケットログ記録装置において、
記憶手段と、
受信したパケットの中で伝播中に不変である部分を抽出してハッシュ関数を用いてハッシュ値に変換すると共に前記ハッシュ値を前記記憶手段のアドレスとみなして、該当するアドレスの前記回線に対応付けた特定ビットにビットを立てて前記パケットを受信した前記回線を記録し、不正なパケットが前記記憶手段に記録されている場合には、前記不正なパケットが伝播した回線を検出する演算制御手段とを備えたパケットログ記録装置。」

b.引用発明2
同じく原査定の拒絶理由に引用された国際公開第02/089426号(以下、「引用例2」という。)には「パケット追跡システム」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

オ.「ここで、図5に示すシステム構成において、管理システム2のパケット追跡の動作を、図6を参照して説明する。
・・・(中略)・・・
要求を受けたIDS3は、追跡対象となる不審なパケットそのものを管理システム2に送信する。管理システム2のパケット受信部22は追跡対象のパケットを受信する(図6におけるS71)。
・・・(中略)・・・
近くにあるパケットプリンティング装置1の数が少ない場合、追跡要求部25は、近くにあるすべてのパケットプリンティング装置1に、生成したハッシュ値を含む検索要求を送信する。近くにあるパケットプリンティング装置1の数が多い場合、追跡要求部25は、最も近くにあるパケットプリンティング装置1から順に、生成したハッシュ値を含む検索要求を送信する。
・・・(中略)・・・
パケットプリンティング装置1cの追跡エージェント部16は、検索要求を受信する(図6におけるS74)。次に、追跡エージェント部16は、キャッシュ部15を参照し、受信したハッシュ値と同じハッシュ値を記憶しているか検索する(図6におけるS75)。そして、受信したハッシュ値と同じハッシュ値を記憶していれば「真」、記憶していなければ「偽」を、管理システム2の追跡要求部25に送信する(図6におけるS76)。」(第9頁第21行-第11頁第7行)

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
・上記パケットプリンティング装置は、「不審なパケットから生成したハッシュ値を含む検索要求」を受信し、該受信したハッシュ値と同じハッシュ値を記憶していれば「真」を管理システム2に送信するが、上記「検索要求」は問い合わせと言えるから、

上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「管理システム2から問い合わせのあった不審なパケットのハッシュ値が記憶手段に記録されている場合には、該不審なパケットを受信したことを管理システム2に送信するパケットプリンティング装置。」

c.周知技術
例えば、特開平11-341035号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項カ.およびキ.が記載されており、また、特開2002-247061号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項ク.が記載されている。

カ.「【0009】
【発明の実施の形態】本発明の集線装置(HUB)は、各ポートから受信したデータを基に各ポート毎のネットワーク使用率を算出し、予め設定されているネットワーク許容率をパラメータ値として比較し、ネットワーク負荷が高いポートをアラーム表示して通知することにより、最適なネットワークの構成を容易化するようにしたものである。」(第3頁、段落0009)

キ.「【0026】アラーム発生回路13は、データ比較部11から受けたポート番号に対応するLED14を点灯する。」(第4頁、段落0026)

ク.「【0012】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】本発明実施の形態のネットワーク端末は、正常動作時には物理的接続形態(トポロジー)が閉ループを含まないような接続形態となされるネットワーク用の端末機器であり、例えばパーソナルコンピュータや各種AV機器などを挙げることができる。なお、本実施の形態のネットワーク端末としてパーソナルコンピュータを例に挙げた場合、本発明は、ネットワークに接続されるインターフェイスボード部分に適用可能であり、特に、ネットワークとして以下のIEEE1394ネットワークを例に挙げた場合、IEEE1394インターフェイスボードに適用できる。
【0014】本実施の形態のネットワーク端末には、IEEE1394のネットワークへの物理的接続形態(トポロジー)の異常をユーザ(ネットワーク接続を行う作業者)に認識させるための表示手段の一例として、図1に示すように、ネットワークケーブル接続口T1,T2,T3の近傍に、誤接続表示用の表示器L1,L2,L3が配設されている。なお、図1は、本実施の形態のネットワーク端末のネットワークケーブル接続口T1,T2,T3近傍の部分のみを、当該接続口側から見た状態で拡大して示すものであり、ネットワーク端末の筐体形状については様々なものが考えられるためその筐体の図示は省略している。また、接続口の数や表示器の数は一例であり、さらに多くても、逆に少なくてもよい。接続口の数と表示器の数は一致することが望ましいが、接続口毎の接続状態を後述するように表示器に点灯表示により表すことができるのであれば、必ずしもそれらの数が一致していなくてもよい。
【0015】上記誤接続表示用の表示器L1,L2,L3は、例えば発光ダイオード(LED)からなるランプであり、それぞれ対応するネットワークケーブル接続口T1,T2,T3にケーブルが接続され、その接続口への接続状態が例えば後述するような閉ループを構成する誤接続状態となった場合に、例えば赤色のような目立つ色で点灯或いは点滅するように駆動制御されるものである。すなわち、本実施の形態のネットワーク端末は、後述するようにして閉ループとなる誤接続状態を検出した時に、これら表示器L1,L2,L3を例えば赤色に点灯や点滅駆動させることで、ネットワークの接続を行っている作業者に、誤接続状態が発生したことを認識させる。なお、上記表示器と同じLED、又は別のLEDにより、例えば緑色や黄色や橙色の点灯若しくは点滅を行わせることで、上記誤接続状態表示とは別に、電源投入(POWER ON)やデータの送受信中など、機器の別の状態を表すようにしてもよい。この場合、表示器が様々な状態を表すことから、より一層作業者がこの表示器に注目しながら作業することになり、その結果、誤接続の早期発見が可能となる。また、上記表示器による表示と同時に、例えば機器前面に配置されている機器の操作パネルなどに表示することも、トポロジー異常の早期発見には好都合である。
【0016】また、上記表示器L1,L2,L3は、当該表示器L1,L2,L3の注目のされ易さの観点から、上述のようにネットワーク接続時の作業個所であるネットワークケーブル接続口T1,T2,T3の近くに設置されるが、さらに、より作業者の視界に入りやすい方向として、ネットワーク端末の装置筐体の各面のうち上記ケーブル接続口T1,T2,T3と概略同一面に設置されることが望ましい。
【0017】さらに、本実施の形態のネットワーク端末では、上記ネットワークケーブル接続口T1,T2,T3にケーブルが接続されたとき、その接続状態が前記閉ループのような誤接続状態であることの検出を、後述するように人間の動作時間に比べて比較的短時間に行うようになされている。このため本実施の形態によれば、ネットワーク接続口にケーブルを接続する作業を行っているユーザ(作業者)はその誤接続を直ちに認識できることになる。すなわち、本実施の形態のネットワーク端末によれば、誤接続用の表示器L1,L2,L3が上述したようにネットワークケーブル接続口T1,T2,T3の近傍、すなわちネットワーク接続口にケーブルを接続する作業を行っている作業者の良く見える位置に配置されると共に、上記誤接続を短時間に検出して表示器に表すようになされているため、当該作業者は、自分のケーブル接続行為と誤接続表示ランプにより示されるトポロジー異常表示とを結びつけて考えることができ、容易にトポロジー異常を発見することができ、したがって誤接続を防ぐことが可能となっている。」(第3-4頁、段落0012-0017)

例えば上記周知例1,2に開示されているように、複数の接続口を有するネットワーク端末において、「複数の各接続口に各々対応して設けられた複数の表示器から構成された表示手段を設けること」(以下、「周知技術1」という。)、および、「異常を検知した接続口に対応する表示器を点灯、若しくは、点滅させて前記異常を検知した接続口であることを示すこと」(以下、「周知技術2」という。)は、いずれも通信ネットワークの技術分野における周知技術である。

(4)対比・判断
補正後の発明と引用発明1とを対比すると、
・補正後の発明の「ネットワークケーブルの接続口」と引用発明1の「回線」とは、いずれも、パケットを受信する「受信点」である点で共通しており、
・補正後の発明の演算制御手段は、不正パケットを受信した接続口を表示する際には該不正パケットを受信した接続口を検出しているのは当然であるから、両発明の演算制御手段は、「不正パケットが記憶手段に記録されている場合」に、「パケットを受信した受信点を検出する」点で共通しており、
両者は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「受信点を複数有しネットワークを伝播するパケットを記録するパケットログ記録装置において、
記憶手段と、
受信したパケットの中で伝播中に不変である部分を抽出してハッシュ関数を用いてハッシュ値に変換すると共に前記ハッシュ値を前記記憶手段のアドレスとみなして、該当するアドレスの前記受信点に対応付けた特定ビットにビットを立てて前記パケットを受信した前記受信点を記録し、不正なパケットが前記記憶手段に記録されている場合には、前記不正なパケットを受信した受信点を検出する演算制御手段とを備えたパケットログ記録装置。」

(相違点1)
「受信点を複数有し」ている点に関し、補正後の発明は「ネットワークケーブルの接続口を複数有し」ているのに対し、引用発明1は「複数の回線に接続され」ている点。
(相違点2)
補正後の発明は「複数の前記接続口に各々対応して設けられた複数の表示器から構成される表示手段」を備えるのに対し、引用発明1はこのような構成を備えていない点。
(相違点3)
補正後の発明は「該当するアドレスの特定ビットにビットを立てて前記パケットが伝播したことを記録」し、接続口に対応付けた特定ビットに対するビット立てを、上記該当するアドレスと「同一の」アドレスに行うのに対し、引用発明1はこのような構成を備えていない点。
(相違点4)
「特定ビット」に記録する構成に関し、補正後の発明は「接続口に」対応付けた特定ビットに「前記接続口」を記録するのに対し、引用発明1は「回線に」対応付けた特定ビットに「前記回線」を記録する点。
(相違点5)
補正後の発明の「不正なパケット」が「問い合わせのあった不正なパケット」であるのに対し、引用発明1の「不正なパケット」にはそのような限定が無い点。
(相違点6)
「不正なパケットが前記記憶手段に記録されている場合」に関し、補正後の発明では演算制御手段が「前記不正なパケットを受信した接続口に対応する前記表示器を点灯、若しくは、点滅させて前記不正なパケットを受信した接続口であることを示す」のに対し、引用発明1では演算制御手段が「前記不正なパケットが伝播した回線を検出する」ものの、検出後の動作が不明である点。

以下に、上記各相違点につき検討する。
(相違点1)について
ネットワークケーブルによる接続は、各種機器をネットワーク回線に接続する際に普通に用いられている接続手段に過ぎず、また、引用発明1のパケットログ記録装置のようにネットワークの複数の回線に接続させる場合には、複数のネットワークケーブルを用いて複数の接続口から接続することは当業者であれば適宜採用し得る構成であるから、引用発明1のパケットログ記録装置が複数の回線に接続される構成として、補正後の発明のように「ネットワークケーブルの接続口を複数有し」た構成を採用することは当業者が適宜なし得たものと認められる。
(相違点2)について
上記「(2)引用発明および周知技術」の項中の「c.周知技術」の項に周知技術1として記したように、複数の接続口を有するネットワーク端末において、「複数の各接続口に各々対応して設けられた複数の表示器から構成された表示手段を設けること」は通信ネットワークの技術分野における周知技術であるが、ここで引用発明1のパケットログ記録装置はネットワークに接続される装置であるからネットワーク端末と言い得るものであり、また、上記「(相違点1)について」で検討したように、引用発明1のパケットログ記録装置に複数の接続口を設けることは当業者が適宜なし得たものであることを勘案すれば、引用発明1に上記周知技術1を付加して、「複数の前記接続口に各々対応して設けられた複数の表示器から構成される表示手段」を設けることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(相違点3)について
「該当するアドレスの特定ビットにビットを立てて前記パケットが伝播したことを記録する」構成は、引用例1に従来例として記載されているパケットログ記録装置9,10,11に既に採用されていた従来構成であり(摘記事項イ、ウ)、引用発明1のパケットログ記録装置にも上記従来構成を単に付加することにより、補正後の発明のように、「該当するアドレスの特定ビットにビットを立てて前記パケットが伝播したことを記録」することは当業者が必要に応じて適宜なし得ることに過ぎず、また、このとき、受信したパケットが同じものである以上そのハッシュ値も同じであるから、上記「該当するアドレス」は、受信点に対応付けた特定ビットにビットを立てて前記パケットを受信した前記受信点を記録するアドレスと「同一の」アドレスとなるのは当然のことである。
そして、上記「(相違点1)について」で検討したように、引用発明1のパケットログ記録装置に複数の接続口を設けることは当業者が適宜なし得たものであることを勘案すれば、引用発明1のパケットログ記録装置を、「該当するアドレスの特定ビットにビットを立てて前記パケットが伝播したことを記録」し、接続口に対応付けた特定ビットに対するビット立てを、上記該当するアドレスと「同一の」アドレスに行うように構成することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(相違点4)について
上記「(相違点1)について」で検討したように、複数の回線に接続させる場合には、複数のネットワークケーブルを用いて複数の接続口から接続することは当業者であれば適宜採用し得る構成であるから、引用発明1のように、「回線に」対応付けた特定ビットに「前記回線」を記録することに替え、補正後の発明のように、「接続口に」対応付けた特定ビットに「前記接続口」を記録するよう構成することは当業者が適宜なし得るものと認められる。
(相違点5)について
引用発明2のパケットプリンティング装置は、不審なパケットの問い合わせに応じてその検出を行っているが、引用発明2のパケットプリンティング装置も、ネットワークを伝播するパケットのログ記録からそのような検出を行うものであってパケットログ記録装置と言い得るものであるから、引用発明1の「不正なパケット」を「問い合わせのあった不正なパケット」に限定して、補正後の発明のように「問い合わせのあった不正なパケット」とすることは引用発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(相違点6)について
上記「(2)引用発明および周知技術」の項中の「c.周知技術」の項に周知技術2として記したように、複数の接続口を有するネットワーク端末において、「異常を検知した接続口に対応する表示器を点灯、若しくは、点滅させて前記異常を検知した接続口であることを示すこと」は、通信ネットワークの技術分野における周知技術である。
そして、「(相違点1)について」で検討したように、引用発明1のような複数の回線に接続したネットワーク端末に複数の接続口を設けることは当業者が適宜なし得たものであり、また、「不正なパケットが前記記憶手段に記録されている場合」とは異常を検知した場合に他ならないことに鑑みれば、引用発明1の演算制御手段の「不正なパケットが前記記憶手段に記録されている場合」の動作として、補正後の発明の演算制御手段のように「前記不正なパケットを受信した接続口に対応する前記表示器を点灯、若しくは、点滅させて前記不正なパケットを受信した接続口であることを示す」ようにすることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、補正後の発明の作用・効果も引用発明1,2および周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年10月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明および周知技術
引用発明および周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明および周知技術」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明1とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明1,2および周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2の記載および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-08 
結審通知日 2010-09-09 
審決日 2010-09-22 
出願番号 特願2003-401129(P2003-401129)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 玉木 宏治  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 新川 圭二
高野 洋
発明の名称 パケットログ記録装置  

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