ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60N |
---|---|
管理番号 | 1226282 |
審判番号 | 不服2008-30592 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-12-03 |
確定日 | 2010-11-04 |
事件の表示 | 平成10年特許願第364024号「フロアマット」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月 4日出願公開、特開2000-185586号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願の発明 本願は、平成10年12月22日の特許出願であって、平成20年10月24日付けで拒絶査定がなされ、この査定を不服として、同年12月 3日付けで本件審判請求がなされるとともに同年12月22日付けで手続補正(前置補正)がなされた。 一方、当審においても平成22年 6月17日付けで拒絶理由を通知し、これに対して、応答期間内である平成22年 8月20日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたところである。 そして、この出願の請求項1,2に係る発明は、上記平成22年 8月20日に提出された手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 主として繊維から構成され、再生ポリエステル繊維を含む、一方の表面層を構成する表面材と、再生ポリエステル繊維を80mass%以上と融着繊維を含むニードルパンチ不織布を、シャーリング及び融着繊維のみを融着させただけの、他方の表面層を構成する裏材とを含むフロアマットであり、フロアマットを構成する繊維の質量比率がフロアマット全体の75mass%以上、かつフロアマット構成繊維の50mass%以上が再生ポリエステルからなり、しかも前記裏材の露出表面近傍に存在する繊維の3分の1以上が、繊維の端部が露出表面近傍に位置するような状態にあることを特徴とするフロアマット。」 2.引用例とその記載事項 平成22年 6月17日付け拒絶理由通知で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3028700号公報(以下「引用例1」という。)には、「自動車用の泥拭きマット」に関し、図面とともに以下の事項(ア)?(キ)が記載または示されている。 (ア)「【0001】 【考案の属する技術分野】 本考案は、自動車のフロアカーペット上にオプション品として敷設する泥拭きマットに関し、フロアカーペット上で滑らずしかも防水性である自動車用の泥拭きマットに関する。」 (イ)「【0006】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本考案に係る泥拭きマット1は、図2に示すように、基本的に、目付400?1500g/m^(2)の立毛カーペット材2と、該カーペット材の下側に位置する熱可塑性樹脂シート3と、繊維の部分溶融によって表面を粗面化した裏面のニードルパンチ不織布4とで構成する。立毛カーペット材2としては、ニードルパンチの立毛カーペットまたは公知のタフトカーペットのいずれを使用してもよい。 【0007】 ニードルパンチの立毛カーペット材2は、好ましくは2?60デニールの合成および/または天然繊維を約1?5mmの厚さに定めたラップから製造する。立毛カーペット材2に用いる合成および/または天然繊維は、ポリエステル,ポリプロピレン,アクリル,ナイロンなどの合成繊維、羊毛,木綿などの天然繊維,アセテートなどの化学繊維またはこれらを混綿した繊維のいずれでもよく、耐久性とコストの点からポリエステルが好ましい。」 (ウ)「【0011】 また、裏面のニードルパンチ不織布4は、一般に3?15デニールであるポリエステル,ポリプロピレン,アクリル,ナイロンなどの合成繊維からなり、これに天然繊維や化学繊維を一部混綿してもよく、例えば目付200?300g/m^(2)のポリエステルフェルトが好ましい。この原料繊維は、一部が反毛(回収再生綿)であってもよい。ニードルパンチ不織布4には、 スパンボンド不織布,織物地または編物地である基布6を介在させてもよく、基布6としては目付50?100g/m^(2)のスパンボンド不織布が好ましい。 【0012】 不織布4の表面7は、マット1の滑り止めのために、500?1200℃で短時間加熱して表面繊維を部分的に溶融する。この加熱手段としては、ガス毛焼き機による直炎,遠赤外線加熱機などを用いる。部分溶融の際に、表面7の繊維の収縮も含めて一様である必要はないが、少なくとも表面7の繊維の一部を図4に示すように塊状化させ、マット1の滑り止め効果を大きくすることを要する。」 (エ)「【0017】 【実施例】 次に、本考案を実施例に基づいて説明する。 実施例1 図2に示す泥拭きマット1を製造するため、立毛カーペット材2として、ポリエステル繊維100重量%からなるカードラップを用いる。このラップ全体を通常のロッキングニードルでニードルパンチングして、目付500g/m^(2)のフェルトを得る。次に公知のフォークニードルを用い、このラップを所定の針密度でパンチングしてパイルを立毛させる。 【0018】 次に、立毛カーペット材2の裏面全体に、バッキングとしてアクリルラテックスをコーティングし、150℃で3分間加熱処理して乾燥する。得た難燃性ラテックス層5は乾量で120g/m^(2)である。 【0019】 一方、裏面のニードルパンチ不織布4は、通常のロッキングニードルを用いて、15デニールのポリエステル繊維のカードラップを所定の針密度でニードルパンチングしてフェルト化する。得た不織布4は、目付250g/m^(2)であり、基布6として目付50g/m^(2)のポリエステル・スパンボンド不織布を介在させる。ついで、不織布4の表面7をガス毛焼き機による直炎で表面繊維を部分的に溶融する。この部分溶融により、表面7の繊維の一部が図4に示すように塊状化し、マット1の滑り止め効果が大きくなる。 【0020】 マット中間に位置する熱可塑性樹脂シート3は、重さ250g/m^(2)の薄いポリエチレンである。熱可塑性樹脂シート3を立毛カーペット材2とニードルパンチ不織布4との間に挟み、得た積層体全体を加熱・加圧処理し、全体を一体化させてマット1を形成する。 【0021】 得た泥拭きマット1は、適宜の寸法に裁断してから、周囲をミシンでオーバーロックする。マット1を自動車10のフロアカーペット11の上に敷設すると、下側のニードルパンチ不織布4の表面7を粗面化していることにより、フロアカーペット11上で踏圧で移動したりずれたりせず、該マットは熱可塑性樹脂シート3の介在で防水性に富んでいる。また、マット1は、廃棄処分の際に焼却しても有毒ガスが殆ど発生しない。」 (オ)「【0026】 実施例3 泥拭きマットを製造するため、立毛カーペット材2として、通常のポリエステル繊維80重量%,難燃性ポリエステル繊維10重量%,低融点ポリエステル繊維10重量%からなるカードラップを用い、目付600g/m^(2)のフェルトを得る。このフェルトは、公知のフォークニードルを用いてパンチングしてパイルを立毛させ、さらに適宜の温度で加熱処理して構成繊維を結合する。 【0027】 裏面のニードルパンチ不織布4および熱可塑性樹脂シート3は、実施例1と同一の素材である。熱可塑性樹脂シート3は、立毛カーペット材2とニードルパンチ不織布4との間に挟み、得た積層体全体を加熱・加圧処理し、全体を一体化してマットを形成する。 【0028】 得た泥拭きマットは、適宜の寸法に裁断してから、周囲をミシンでオーバーロックする。このマットは、下側のニードルパンチ不織布4の表面の粗面化により、フロアカーペット11上で踏圧で移動したりずれたりせず、該マットは熱可塑性樹脂シート3の介在で防水性に富んでいる。」 (カ)「【0029】 【考案の効果】 本考案の泥拭きマットは、自動車のフロアカーペットの上に敷設する際に、マット裏側の粗面化により、フロアカーペット上で踏圧でマットが移動したりずれたりせず、フロアカーペット表面が濡れていても安全である。しかも、本考案のマットは、熱可塑性樹脂シートの中間介在により、全体に通気性が無くて防水性に富んでいるから、マット上に水をこぼしたり雨天の日でもマット表面から水が浸入せず、フロアカーペットを濡らすことがなくていっそう安全である。 【0030】 本考案のマットでは、表側の立毛カーペット材が感触性が良好であり、該立毛カーペット材と裏面のニードルパンチ不織布との組合わせでクッション性にも富んでいる。本考案のマットは、全体に熱融着しているので洗濯可能であり、汚れた際には自動車から取り出して水洗いすればよい。 【0031】 本考案のマットは、主として立毛カーペット材とニードルパンチ不織布で構成され、PVCやゴムのように生産の際および自動車の廃棄で焼却処分される際に有毒ガスを殆ど発生せず、焼却しても公害源とならない。本考案のマットは、オーバーロックなどのミシン縫製の際に破れることが殆どなく、裁断や縫製が容易であるから製造時間などの点で有利であり、生産コストも全体として相当に安価である。」 (キ)図2からは、「一方の表面層を構成する立毛カーペット材2と、ニードルパンチ不織布4からなる他方の表面層を構成する裏面とを含む泥拭きマット1」が看取できる。 これらの記載からみて、上記引用例1には、 「主として繊維から構成され、ポリエステル繊維を含む、一方の表面層を構成する立毛カーペット材2と、ポリエステル繊維からなるニードルパンチ不織布4を、粗面化した、他方の表面層を構成する裏面とを含む泥拭きマット1であり、前記裏面のニードルパンチ不織布4は、ポリエステル繊維のカードラップを所定の針密度でニードルパンチしてフェルト化し、前記裏面の表面7の表面繊維を部分的に溶融して、表面7の繊維の一部を塊状化して粗面化した泥拭きマット1」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「立毛カーペット材2」、「ニードルパンチ不織布4」、「裏面」、「泥拭きマット1」は、本願発明の「表面材」、「ニードルパンチ不織布」、「裏材」、「フロアマット」にそれぞれ相当し、また、引用発明の「裏面のニードルパンチ不織布4は、ポリエステル繊維のカードラップを所定の針密度でニードルパンチしてフェルト化」したことにより、本願発明の「裏材の露出表面近傍に存在する繊維の3分の1以上が、繊維の端部が露出表面近傍に位置するような状態にある」ことは、表面繊維(すなわち「繊維の端部」)を粗面化することからみて明らかである。 そして、本願発明の「ニードルパンチ不織布を、シャーリング及び融着繊維のみを融着させただけの」ものと、引用発明の「ニードルパンチ不織布4を、粗面化した」こととは、「ニードルパンチ不織布を、処理した」ものである限りにおいて一致する。 そうすると両者は、 「主として繊維から構成され、ポリエステル繊維を含む、一方の表面層を構成する表面材と、ポリエステル繊維を含むニードルパンチ不織布を、処理した、他方の表面層を構成する裏材とを含むフロアマットであり、前記裏材の露出表面近傍に存在する繊維の3分の1以上が、繊維の端部が露出表面近傍に位置するような状態にあるフロアマット」 の点で一致し、以下の各点で相違するものと認められる。 <相違点1> フロアマットの表面材が、本願発明では、「再生ポリエステル繊維を含む」ものであるのに対して、引用発明では、ポリエステル繊維を含むものの、それ以上の言及がない点。 <相違点2> フロアマットの他方の表面層を構成する裏材が、本願発明では、「再生ポリエステル繊維を80mass%以上と融着繊維を含むニードルパンチ不織布を、シャーリング及び融着繊維のみを融着させただけ」のものであるのに対して、引用発明では、「ポリエステル繊維からなる、ニードルパンチ不織布を粗面化した」ものの、それ以上の言及がない点。 <相違点3> 本願発明では、「フロアマットを構成する繊維の質量比率がフロアマット全体の75mass%以上、かつフロアマット構成繊維の50mass%以上が再生ポリエステルからな」るのに対して、引用発明では、質量比率が明確でなく、再生ポリエステルに関する言及がない点。 4.相違点の検討・当審の判断 <相違点1>について カーペット用の繊維として、再生ポリエステルを利用することは、平成22年 6月17日付け拒絶理由通知における引用例3の特開平6-220716号公報にて例示されるように本願出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という)であることから、フロアマットの表面材が「再生ポリエステル繊維を含む」ものとすることに格別の困難性はない。 <相違点2>について カーペット等において、通常(高融点)のポリエステル繊維と低融点ポリエステル繊維(融着繊維)を配合した不織布をニードルパンチ工法を経てシャーリング処理し、熱処理して低融点繊維(融着繊維)のみを溶融させることにより、ラテックスを不要として軽量化を図ることは、本願出願前において周知の技術(以下「周知技術2」という。)である(必要があれば、特開平9-49159号公報の請求項1、段落【0006】、特開平10-245760号公報の段落【0022】、【0038】、特開平10-273860号公報の段落【0008】、【0035】を参照のこと)。また、上記周知例において、高融点のポリエステル繊維の配合を80重量%以上としたものも開示されている(上記特開平9-49159号公報の段落【0006】、上記特開平10-245760号公報の段落【0022】を参照のこと)。 そして、上記<相違点1>において述べたように、カーペット用の繊維として、再生ポリエステルを利用することは、本願出願前に周知の技術である上に、上記引用例1の段落【0011】には、ニードルパンチ不織布の原料繊維の一部が反毛(回収され、わた状にほぐして再生利用される繊維)であってもよいと記載されている。さらに、再生ポリエステル繊維は、あえて低融点ポリエステル繊維のみを選別して再生しない限り、通常(高融点)のポリエステル繊維と同等の融点を有するものであるから、引用発明の「他方の表面層を構成する裏材であるニードルパンチ不織布」に周知技術2を適用する際に、通常(高融点)のポリエステル繊維に代えて、「再生ポリエステル繊維」を採用して、「再生ポリエステル繊維を80mass%以上と融着繊維を含むニードルパンチ不織布を、シャーリング及び融着繊維のみを融着させただけ」のものとすることは、引用発明、上記周知技術1,2がいずれもフロアマットやカーペット用の繊維に関するものであることから、当業者が容易に想到し得たものである。 <相違点3>について 上記引用例1の実施例3には、泥拭きマットを構成する繊維の質量比率が泥拭きマットの全体の75重量%以上のもの(繊維:樹脂シート=850:250)が開示されており、この程度の比率とすることに格別の困難性はない。 そして、上記<相違点1>において述べたように、カーペット用の繊維として、再生ポリエステルを利用することは、本願出願前に周知の技術であり、環境のために再生ポリエステルの重量比率を大きくしようとすることは自明の課題であることから、引用発明のポリエステル繊維として、再生ポリエステル繊維を採用し、本願発明でいう相違点3の重量比率とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 上記相違点1?3を併せ備える本願発明の作用効果について検討してみても、引用発明、上記周知技術1,2から予測されるものであって、格別のものとはいえない。 5.むすび したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び上記周知技術1,2にに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-06 |
結審通知日 | 2010-09-07 |
審決日 | 2010-09-21 |
出願番号 | 特願平10-364024 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B60N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨江 耕太郎 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
植前 津子 藤井 昇 |
発明の名称 | フロアマット |