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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F
管理番号 1226333
審判番号 不服2009-8586  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-21 
確定日 2010-11-04 
事件の表示 特願2003-362866「畳」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日出願公開、特開2005-126982〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年10月23日にされた出願であって、平成21年3月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月21日に審判請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成20年10月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。

「天然又は模造イグサを織った畳表の下方にシートを積層した畳であって、該シートに、芳香族ヒドロキシ化合物、アルカリ金属の炭酸塩、明礬、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、リン酸塩、硫酸亜鉛、酢酸鉛からなるアレルゲン低減化剤群から選ばれた少なくとも1つを固着したものにおいて、該シートは不織布であり、アレルゲン低減化剤の固着量は、シート1m^(2)あたり0.1?1.0gであることを特徴とする畳。」(以下「本願発明」という。)

第2 引用刊行物記載の発明
1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2003-81727号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 芳香族ヒドロキシ化合物、アルカリ金属の炭酸塩、明礬、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1つを有効成分とすることを特徴とするアレルゲン低減化剤。
【請求項2】 上記芳香族ヒドロキシ化合物が、線状高分子の側鎖に下記一般式(1)?(6)に示される少なくとも一つを有する化合物であることを特徴とする請求項1記載のアレルゲン低減化剤。(式省略)
【請求項3】 芳香族ヒドロキシ化合物が、上記一般式(1)?(6)に示される少なくとも一つを含む単量体及び/又は一価のフェノール基を有する単量体を重合又は共重合してなることを特徴とする請求項1記載のアレルゲン低減化剤。
【請求項4】 芳香族ヒドロキシ化合物が、芳香族複素環式ヒドロキシ化合物であることを特徴とする請求項1記載のアレルゲン低減化剤。
【請求項5】 リン酸塩と、硫酸亜鉛及び/又は酢酸鉛を有効成分とすることを特徴とするアレルゲン低減化剤。
【請求項6】 アレルゲンがチリダニ由来であることを特徴とする請求項1?5いずれか1項に記載のアレルゲン低減化剤。」
(1b)「【0030】本発明のアレルゲン低減化剤が対象とするアレルゲンとしては、動物性アレルゲン、、花粉などの植物性アレルゲンが挙げられる。本発明のアレルゲン低減化成分は、これらのアレルゲンの特異抗体との反応を抑えることにより、本剤を使用した場所のアレルゲンを低減化する。特に効果のある動物アレルゲンとしては、ダニ類のアレルゲン(ダニ類、節足動物一蛛形綱-ダニ目の生物で、主に7つの亜目に分かれている。アシナガダニに代表される背気門、カタダニに代表される四気門、ヤマトマダニ、ツバメヒメダニに代表される後気門、イエダニ、スズメサシダニ代表される中気門、クワガタツメダニ、ナミホコリダニに代表される前気門、ケナガコナダニ、コナヒョウヒダニに代表される無気門、イエササラダニ、カザリヒワダニに代表される隠気門等)のいずれの種類でも対象となり得るが、室内塵中、特に寝具類に多く、アレルギー疾患の原因となるチリダニ科、ヒョウヒダニ類に特に効果がある。」
(1c)「【0018】上記芳香族ヒドロキシ化合物が、本発明のアレルゲン低減化剤に配合される量としては、アレルゲン低減化剤としての使用形態にもよるため、特に限定されず、例えばダニの生息する絨毯に散布する場合には、通常1m^(2)あたり上記化合物1mg程度散布されるように配合されていることが好ましい。それ以上の量を使用しても効果が落ちることはないが、使用上、10g程度以上を使用した場合、化合物の析出により処理後の清掃などが必要となることがある。
【0019】本発明のアレルゲン低減化成分としては、アルカリ金属の炭酸塩、明礬、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、また、リン酸塩と、硫酸亜鉛及び/又は酢酸鉛が、アレルゲン低減化剤が使用される対象、場所への着色の心配が少ないという点から好ましく用いられる。
【0020】上記アルカリ金属の炭酸塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのアルカリ金属の炭酸塩が挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウムである。本発明のアレルゲン低減化剤に配合される量としては、アレルゲン低減化剤としての使用形態にもよるため、特に限定されず、例えばダニの生息する絨毯等に散布する場合には、通常1m^(2)あたりアルカリ金属の炭酸塩1mg程度以上散布されるように配合されていることが好ましい。それ以上の量を使用しても効果が落ちることはないが、使用上、10g程度以上を使用した場合、塩の析出により処理後の清掃などが必要となることを考えると大過剰の使用は避けるべきである。
【0021】上記明礬としては、硫酸アルミニウムと、アルカリ金属やタリウム、アンモニウム等の1価イオンの硫酸塩とからなる複塩が挙げられる。・・・本発明のアレルゲン低減化剤に配合される量としては、アレルゲン低減化剤としての使用形態にもよるため、特に限定されず、例えばダニの生息する絨毯等に散布する場合には、通常1m^(2)あたり硫酸アルミニウムカリウム3mg程度散布されるように配合されていることが好ましい。それ以上の量を使用しても効果が落ちることはないが、使用上、10g程度以上を使用した場合、塩の析出により処理後の清掃などが必要となることを考えると大過剰の使用は避けるべきである。 ・・・
【0022】上記ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩の塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミンなどのアミン塩が挙げられ、特に好ましくはナトリウム塩、トリエタノールアミン塩である。本発明のアレルゲン低減化剤に配合される量としては、アレルゲン低減化剤としての使用形態にもよるため、特に限定されず、例えばダニの生息する絨毯等に散布する場合には、通常1m^(2)あたり1mg程度以上散布されるように配合されていることが好ましい。それ以上の量を使用しても効果が落ちることはないが、使用上、10g程度以上を使用した場合、塩の析出により処理後の清掃などが必要となることを考えると大過剰の使用は避けるべきである。
【0023】上記リン酸塩としては、水系溶媒に溶解したときPO_(4)^(3-)イオンを生成する塩類を指し、例えば、実施例に用いたようなリン酸二水素ナトリウム(リン酸一ナトリウム)、リン酸水素二ナトリウム(リン酸二ナトリウム)の他に、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。本発明のアレルゲン低減化剤に配合される量としては、特に限定されず、リン酸緩衝液として0.001M程度以上配合されていることが好ましい。それ以上の量を使用しても効果が落ちることはないが、使用する塩の合計量が10g程度以上を使用した場合、塩の析出により処理後の清掃などが必要となることを考えると大過剰の使用は避けるべきである。
【0024】上記硫酸亜鉛としては、主に水和物(七水和物)あるいは無水物が用いられるが、・・・部分的な水和物であってもよい。・・・本発明のアレルゲン低減化剤に配合される量としては、アレルゲン低減化剤としての使用形態にもよるため、特に限定されず、例えばダニの生息する絨毯に散布する場合には、通常1m^(2)あたり硫酸亜鉛七水和物の重量として0.1mg程度以上散布されるように配合されていることが好ましい。それ以上の量を使用しても効果が落ちることはないが、使用上、10g程度以上を使用した場合、塩の析出により処理後の清掃などが必要となることを考えると大過剰の使用は避けるべきである。
【0025】上記酢酸鉛とは、水和物(三水和物)、あるいは無水物が用いられるが、・・・部分的な水和物であっても良い。・・・本発明のアレルゲン低減化剤に配合される量としては、アレルゲン低減化剤としての使用形態にもよるため、特に限定されず、例えばダニの生息する絨毯に散布する場合には、通常1m^(2)あたり酢酸鉛三水和物で0.03mg程度散布されるように配合されていることが好ましい。それ以上の量を使用しても効果が落ちることはないが、使用上、10g程度以上を使用した場合、塩の析出により処理後の清掃などが必要となることを考えると大過剰の使用は避けるべきである。
【0026】なお、本発明のアレルゲン低減化剤は、アレルゲン低減化成分が少なくとも1つが有効成分として配合されていればよく、2つ以上を組み合わせて使用することも可能である。また、本発明のアレルゲン低減化剤中において、有効成分として上記化合物が複数配合されている場合の配合量としては、使用形態にもよるため、特に限定されず、散布場所1m^(2)あたり上記化合物総量として10g程度以上を使用すると、塩の析出により処理後の清掃などが必要となるため大過剰の使用は避けるべきである。」
(1d)「【0031】本発明のアレルゲン低減化剤が使用される対象、場所としては、生活空間においてアレルゲンの温床となる生活用品等が挙げられる。上記生活用品としては、例えば、畳、絨毯、床(フローリング)・・・等への使用が挙げられる。また、上記使用方法としては、上記生活用品、及び上記生活用品に使用されるマットの中綿、カーペットの繊維及びその他原材料(樹脂・繊維)などにあらかじめ処理することによってもその効果を発揮することができる。・・・」
(1e)「【0034】(実施例1?7)有効成分として重量平均分子量(Mw)8000のポリ-4-ビニルフェノール(アルドリッチ社製)、(Mw)20000のポリ-4-ビニルフェノール(アルドリッチ社製)、(Mw)15000?36000のポリ-L-チロシン(ICNバイオメディカル社製)、溶媒としてエチルアルコール(和光純薬品工業社製;試薬特級)と水を用いてアレルゲン低減化剤を調製した。得られたアレルゲン低減化剤をトリガータイプのスプレー型容器(1回の噴射で約0.8ml噴射)に入れた。上記配合量及び評価結果を表1に示す。
【0035】(実施例8?19)有効成分として炭酸ナトリウム(和光純薬品工業社製;試薬特級)、明礬(和光純薬工業社製 硫酸アルミニウムカリウム;食品添加物)、ラウリル硫酸ナトリウム(和光純薬品工業社製)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン(花王社製)、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム(和光純薬品工業社製)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製)、溶媒として水を用いてアレルゲン低減化剤を調整した。得られたアレルゲン低減化剤をトリガータイプのスプレー型容器(1回の噴射で約0.8ml噴射)に入れた。上記配合量及び評価結果を表1に示す。
【0036】(実施例20?28)有効成分として、硫酸亜鉛七水和物(和光純薬品工業社製)、酢酸鉛(II)二水和物(和光純薬品工業社製)、リン酸塩としてリン酸一ナトリウム2水和物(関東化学社製)及びリン酸二ナトリウム12水和物(和光純薬品工業社製)を精製水に溶解させて濃度を0.01M又は0.001Mに調整したリン酸緩衝液(pH=7.35)を用いてアレルゲン低減化剤を調整した。上記配合量及び評価結果を表1に示す。」
(1f)「【0041】(アレルゲン低減化の評価)上記のように調製したアレルゲン低減化剤を、スプレー型容器で汚染カーペットに一様に4回噴霧した。なお、汚染カーペットは、新品のカーペットに、1m^(2)あたり50μgのダニ抗原(ダニ抗原量は、シントーファイン社製「マイティーチェッカー」を用いて定量)を含む塵ゴミを散布し下面よりバイブレーターで振動させ絨毯内部に塵ゴミをなじませて作成を行った。2時間放置後、掃除機(三洋電機社製「舞姫510」SC-9)に塵ゴミ捕獲用のフィルター(シントーファイン社製;マイティフェルト、ダストフィルター、ダストサンプラー)をセットし、噴霧場所1m^(2)から1分かけて塵ゴミを採取した。採取した塵ゴミを、シントーファイン社製「マイティーチェッカー」のキットに従って、アレルゲン成分を抽出し、アレルゲン量を測定比較した。マイティチェッカーの判定基準は以下のとおり。結果を表1に示す。
++・・・ダニアレルゲンレベル>35μg/1m^(2)+ ・・・ダニアレルゲンレベル 10μg/1m^(2)± ・・・ダニアレルゲンレベル 5μg/1m^(2)- ・・・ダニアレルゲンレべル <1μg/1m^(2)」
(1g)【表1】には、実施例1ないし28は、アレルゲン評価が-又は±であったことが記載されている。

これらの記載事項によれば、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「芳香族ヒドロキシ化合物、アルカリ金属の炭酸塩、明礬、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、リン酸塩、硫酸亜鉛、又は酢酸鉛からなる群より選ばれた少なくとも1つを有効成分とするアレルゲン低減化剤を使用した生活用品。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2.同、特開2002-138656号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 畳床と畳表との間の全面に亘って健康増進機能性シートが設けられた構成にして、かつ該健康増進機能性シートは、
シート基材と、
該シート基材における前記畳表との対接全面に添装加工された粘着剤とトルマリン(電気石)粉末との混合層とを含む構成を特徴とする畳の構造。」(特許請求の範囲)
(2b)「【0005】本発明は・・・その目的とするところは、トルマリンの特性を応用してマイナスイオンの効果、遠赤外線の効果、更には消臭、抗菌、防ダニ効果等健康増進に様々な効果を発揮する畳を提供することにある。」
(2c)「【0012】図2に示されているように、健康増進機能性シート10は、畳床1の大きさと略等大のシート基材11を含み、該シート基材11はクラフト紙等の上質紙、合成紙、ミラーコート紙、不織布、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、塩化ビニール等の柔軟性、屈撓性に富んだ基材であり、更には布、ウレタン樹脂等の樹脂発泡体のクッション性を有する基材である。
【0013】シート基材11の一方の全面(畳表2との対接面)には、加工により混合層12が添装されている。該混合層12は、粘着剤とトルマリン粉末との混合層であって、・・・」

3.同、登録実用新案第3023678号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】 畳表と床との間に、ポリプロピレン繊維の不織布を配設し、前記ポリプロピレン繊維には、銀イオンを含有する粒径50μm以下の溶解性ガラスを30重量%以下の割合で練り込んであることを特徴とする畳。」
(3b)「【0003】本考案は・・・その目的とするところは、だにや黴の発生を防止すると共に、異臭の発生を防ぎ、更に、抗菌機能を有した新規な畳を提供することにある。」

第3 対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「アレルゲン低減化剤を使用した生活用品」と、本願発明の「天然又は模造イグサを織った畳表の下方に、アレルゲン低減化剤群から選ばれた少なくとも1つを固着したシートを積層した畳」とは、「アレルゲン低減化剤を使用した生活用品」で共通するから、両者は、
「芳香族ヒドロキシ化合物、アルカリ金属の炭酸塩、明礬、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、リン酸塩、硫酸亜鉛、酢酸鉛からなるアレルゲン低減化剤群から選ばれた少なくとも1つを使用した生活用品。」
の点で一致し、下記の点で相違している。
〈相違点〉
本願発明は、生活用品が、天然又は模造イグサを織った畳表の下方に、アレルゲン低減化剤を固着した不織布シートを積層することにより、アレルゲン低減化剤を使用した「畳」であり、アレルゲン低減化剤の固着量は、シート1m^(2)あたり0.1?1.0gであるのに対し、刊行物1記載の発明は、生活用品が畳に限定されておらず、生活用品として「畳」が例示されているものの、「畳」に使用した実施例は記載されておらず、アレルゲン低減化剤をどのようにして畳に使用するのか、使用量はどの程度か不明である点。

上記相違点について検討する。
刊行物1には、アレルゲン低減化剤を使用する生活用品として「畳」が示されており、畳は、畳床と畳表を有し、畳表は通常天然又は模造イグサを織ったもので形成されるから、刊行物1記載の発明の生活用品として示される畳も、畳床と、天然又は模造イグサを織った畳表とを有しているといえる。
そして、刊行物1記載の発明のアレルゲン低減剤は、主にダニアレルゲンレベルを低減することを目的とするものであり、アレルゲン低減剤を原材料(樹脂・繊維)にあらかじめ処理して使用してもよいことが記載されている(記載事項(1d)参照)。
一方、畳に防ダニ機能を持たせるために、畳床と畳表との間(本願発明の「畳表の下方」に相当する。)に、防ダニ機能を有する物質を付着させた不織布シートを積層することは、刊行物2、3に記載されているように、本願出願前周知の技術である。
そうすると、刊行物1記載の発明において、生活用品としての畳にアレルゲン低減化剤を使用すること、その際、上記周知技術を適用して、畳表の下方にアレルゲン低減化剤を固着した不織布シートを設けることは当業者が容易に想到しうることである。

また、アレルゲン低減化剤の固着量について検討すると、刊行物1には、固着量は使用形態に応じて決定すること、及び、絨毯に散布する場合では、いずれのアレルゲン低減剤についても、1m^(2)あたり0.1mg(0.0001g)?10gの範囲とすることが記載されている(記載事項(1c)参照)。
そして、使用形態に応じてその使用量を考慮することは、当業者にとって常識であって、刊行物1記載の発明に刊行物2、3記載の周知技術を適用して、畳表の下方の不織布シートにアレルゲン低減化剤を固着させた畳とするに際して、畳床や畳表の種類、不織布シートの材質や厚み、アレルゲン低減剤の種類、効能の持続期間等に応じて、効果が奏されるアレルゲン低減化剤の固着量の最適な範囲を実験等によって求めることは当業者が容易になしうることであり、固着量を、シート1m^(2)あたり0.1?1.0gと設定することは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

そして、本願発明の効果は、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度であって格別なものということはできない。
したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-17 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-08 
出願番号 特願2003-362866(P2003-362866)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
土屋 真理子
発明の名称 畳  
代理人 永田 久喜  

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