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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1226978
審判番号 不服2007-34379  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-20 
確定日 2010-11-11 
事件の表示 特願2001-380763「情報記録装置及び方法、情報記録プログラム、記録媒体、ディスク記録媒体、ディスク記録装置及び方法、並びにディスク再生装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 4日出願公開、特開2003-187535〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成13年12月13日の出願であって、平成19年5月9日付け拒絶理由通知に対して、同年7月17日付けで手続補正がされたが、同年11月13日付けで拒絶査定され、これに対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年1月21日付けで明細書について手続補正がされたものである。
その後、平成22年5月24日付けで前置報告書の内容に基づく審尋がされ、同年7月26日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成20年1月21日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成20年1月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前に、
「【請求項1】 コンテンツデータを記録する第1のエリアと、バーストカッティングエリアとを有するディスク記録媒体に、当該ディスク記録媒体固有の属性情報を記録する情報記録装置において、
前記属性情報を含む補助情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号を得る誤り訂正符号化手段と、
前記誤り訂正符号化手段により得られた前記符号を変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された前記符号を前記ディスク記録媒体の前記バーストカッティングエリアに記録する記録手段と
を備えることを特徴とする情報記録装置。
【請求項2】 前記誤り訂正符号化手段は、前記補助情報にRS(24,16,9)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項1記載の情報記録装置。
【請求項3】 前記誤り訂正符号化手段は、前記補助情報にRS(32,16,17)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項1記載の情報記録装置。
【請求項4】 前記誤り訂正符号化手段は、前記補助情報にRS(192,160,33)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項1記載の情報記録装置。
【請求項5】 前記誤り訂正符号化手段は、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化を前記補助情報に施すことを特徴とする請求項1記載の情報記録装置。
【請求項6】 前記誤り訂正符号化手段は、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が3重書きされるような符号化を前記補助情報に施すことを特徴とする請求項5記載の情報記録装置。
【請求項7】 前記誤り訂正符号化手段は、前記補助情報にRS(24,16,9)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項6記載の情報記録装置。
【請求項8】 前記誤り訂正符号化手段は、前記ディスクの前記第1のエリアに記録される前記コンテンツデータに施される誤り訂正符号と同じハミング距離を持つ符号化を前記補助情報に施すことを特徴とする請求項1記載の情報記録装置。
【請求項9】 前記誤り訂正符号化手段は、前記補助情報に行方向の第1の誤り訂正符号化を施し、かつ列方向の第2の誤り訂正符号化を施すことを特徴とする請求項1記載の情報記録装置。
【請求項10】 コンテンツデータを記録する第1のエリアと、バーストカッティングエリアとを有するディスク記録媒体に、当該ディスク記録媒体固有の属性情報を記録する情報記録方法において、
前記属性情報を含む補助情報を生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号を得る誤り訂正符号化工程と、
前記誤り訂正符号化工程により得られた前記符号を変調する変調工程と、
前記変調工程により変調された前記符号を前記ディスク記録媒体の前記バーストカッティングエリアに記録する記録工程と
を備えることを特徴とする情報記録方法。
【請求項11】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(24,16,9)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項12】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(32,16,17)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項13】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(192,160,33)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項14】 前記誤り訂正符号化工程は、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化を前記補助情報に施すことを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項15】 前記誤り訂正符号化工程は、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が3重書きされるような符号化を前記補助情報に施すことを特徴とする請求項14記載の情報記録方法。
【請求項16】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(24,16,9)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項15記載の情報記録方法。
【請求項17】 前記誤り訂正符号化工程は、前記ディスクの前記第1のエリアに記録される前記コンテンツデータに施される誤り訂正符号と同じハミング距離を持つ符号化を前記補助情報に施すことを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項18】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報に行方向の第1の誤り訂正符号化を施し、かつ列方向の第2の誤り訂正符号化を施すことを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項19】 コンテンツデータを記録する第1のエリア及びバーストカッティングエリアを有するディスク媒体の前記バーストカッティングエリアに、ディスク固有の属性情報を含む補助情報を記録する機能をコンピュータに実現させるための情報記録プログラムにおいて、
前記属性情報を含む補助情報を生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号を得る誤り訂正符号化工程と、
前記誤り訂正符号化工程により得られた前記符号を変調する変調工程と、
前記変調工程により変調された前記符号を前記ディスク記録媒体の前記バーストカッティングエリアに記録する記録工程と
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする情報記録プログラム。
【請求項20】 コンテンツデータを記録する第1のエリア及びバーストカッティングエリアを有するディスク媒体の前記バーストカッティングエリアに、ディスク固有の属性情報を含む補助情報を記録するための情報記録プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
前記属性情報を含む補助情報を生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号を得る誤り訂正符号化工程と、
前記誤り訂正符号化工程により得られた前記符号を変調する変調工程と、
前記変調工程により変調された前記符号を前記ディスク記録媒体の前記バーストカッティングエリアに記録する記録工程と
をコンピュータに実行させる情報記録プログラムが記録されたことを特徴とする記録媒体。
【請求項21】 コンテンツデータを記録する第1のエリアと、バーストカッティングエリアとを有するディスク記録媒体において、
前記バーストカッティングエリアには、ディスク固有の属性情報を含む補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号に符号化され、変調された後に記録されていることを特徴とするディスク記録媒体。
【請求項22】 前記補助情報は、RS(24,16,9)を用いた符号化が施されることを特徴とする請求項21記載のディスク記録媒体。
【請求項23】 前記補助情報は、RS(32,16,17)を用いた符号化が施されることを特徴とする請求項21記載のディスク記録媒体。
【請求項24】 前記補助情報は、RS(192,160,33)を用いた符号化が施されることを特徴とする請求項21記載のディスク記録媒体。
【請求項25】 前記補助情報は、前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化が施されることを特徴とする請求項21記載のディスク記録媒体。【請求項26】 前記補助情報は、前記バーストカッティングエリアに前記符号が3重書きされるような符号化が施されることを特徴とする請求項25記載のディスク記録媒体。【請求項27】 前記補助情報は、RS(24,16,9)を用いた符号化が施されることを特徴とする請求項25記載のディスク記録媒体。
【請求項28】 前記補助情報は、前記第1のエリアに記録される前記コンテンツデータに施される誤り訂正符号と同じハミング距離を持つ符号化が施されることを特徴とする請求項21記載のディスク記録媒体。
【請求項29】 前記補助情報は、行方向の第1の誤り訂正符号化が施され、かつ列方向の第2の誤り訂正符号化が施されることを特徴とする請求項21記載のディスク記録媒体。」
とあったところを、

本件補正後
「 【請求項1】 コンテンツデータを記録する第1のエリアと、バーストカッティングエリアとを有するディスク記録媒体に、当該ディスク記録媒体固有の属性情報を記録する情報記録装置において、
前記属性情報を含む補助情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号を得、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化を前記補助情報に施す誤り訂正符号化手段と、
前記誤り訂正符号化手段により得られた前記符号を変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された前記符号を前記ディスク記録媒体の前記バーストカッティングエリアに記録する記録手段と
を備えることを特徴とする情報記録装置。
【請求項2】 前記誤り訂正符号化手段は、前記補助情報にRS(24,16,9)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項1記載の情報記録装置。
【請求項3】 前記誤り訂正符号化手段は、前記補助情報にRS(32,16,17)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項1記載の情報記録装置。
【請求項4】 前記誤り訂正符号化手段は、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が3重書きされるような符号化を前記補助情報に施すことを特徴とする請求項1記載の情報記録装置。
【請求項5】 コンテンツデータを記録する第1のエリアと、バーストカッティングエリアとを有するディスク記録媒体に、当該ディスク記録媒体固有の属性情報を記録する情報記録方法において、
前記属性情報を含む補助情報を生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号を得、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化を前記補助情報に施す誤り訂正符号化工程と、
前記誤り訂正符号化工程により得られた前記符号を変調する変調工程と、
前記変調工程により変調された前記符号を前記ディスク記録媒体の前記バーストカッティングエリアに記録する記録工程と
を備えることを特徴とする情報記録方法。
【請求項6】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(24,16,9)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項5記載の情報記録方法。
【請求項7】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(32,16,17)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項5記載の情報記録方法。
【請求項8】 前記誤り訂正符号化工程は、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が3重書きされるような符号化を前記補助情報に施すことを特徴とする請求項5記載の情報記録方法。
【請求項9】 コンテンツデータを記録する第1のエリア及びバーストカッティングエリアを有するディスク媒体の前記バーストカッティングエリアに、ディスク固有の属性情報を含む補助情報を記録する機能をコンピュータに実現させるための情報記録プログラムにおいて、
前記属性情報を含む補助情報を生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号を得、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化を前記補助情報に施す誤り訂正符号化工程と、
前記誤り訂正符号化工程により得られた前記符号を変調する変調工程と、
前記変調工程により変調された前記符号を前記ディスク記録媒体の前記バーストカッティングエリアに記録する記録工程と
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする情報記録プログラム。
【請求項10】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(24,16,9)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項9記載の情報記録プログラム。 【請求項11】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(32,16,17)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項9記載の情報記録プログラム。 【請求項12】 コンテンツデータを記録する第1のエリア及びバーストカッティングエリアを有するディスク媒体の前記バーストカッティングエリアに、ディスク固有の属性情報を含む補助情報を記録するための情報記録プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
前記属性情報を含む補助情報を生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号を得、前記ディスクの前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化を前記補助情報に施す誤り訂正符号化工程と、
前記誤り訂正符号化工程により得られた前記符号を変調する変調工程と、
前記変調工程により変調された前記符号を前記ディスク記録媒体の前記バーストカッティングエリアに記録する記録工程と
をコンピュータに実行させる情報記録プログラムが記録されたことを特徴とする記録媒体。
【請求項13】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(24,16,9)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項12記載の記録媒体。 【請求項14】 前記誤り訂正符号化工程は、前記補助情報にRS(32,16,17)を用いた符号化を施すことを特徴とする請求項12記載の記録媒体。 【請求項15】 コンテンツデータを記録する第1のエリアと、バーストカッティングエリアとを有するディスク記録媒体において、
前記バーストカッティングエリアには、ディスク固有の属性情報を含む補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号に符号化され、変調された後に記録されており、
前記補助情報は、前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化が施されることを特徴とするディスク記録媒体。
【請求項16】 前記補助情報は、RS(24,16,9)を用いた符号化が施される
ことを特徴とする請求項15記載のディスク記録媒体。
【請求項17】 前記補助情報は、RS(32,16,17)を用いた符号化が施され
ることを特徴とする請求項15記載のディスク記録媒体。
【請求項18】 前記補助情報は、前記バーストカッティングエリアに前記符号が3重書きされるような符号化が施されることを特徴とする請求項15記載のディスク記録媒体。」
とするものである。

2.本件補正の適否について
上記本件補正は、特許請求の範囲について、
(1)本件補正前の請求項19、20を引用する新たな請求項を、それぞれ2つ追加する
(2)本件補正前の請求項1、10、19、20、21に記載されていた発明特定事項である「補助情報」について、「前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化が施される」点を付加して減縮する
(3)本願補正前の請求項4、5、7ないし9、13、14、16ないし18、24、25、27ないし29を削除し、請求項の項番を整理する
ものである。
そこで、本件補正について検討すると、上記(1)は、請求項数を増加する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。
したがって、上記(1)は、特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。
そして、上記(1)は、特許法第17条の2第4項第3号に規定された誤記の訂正でも、第4号に規定された明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。

3.補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.独立特許要件の検討
上記1.?3.で検討したとおり、本件補正は却下されるべきものであるが、仮に、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の請求項15に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下に検討する。

(1)本願補正発明について
本願補正発明は、本件補正における請求項15に記載されたとおりの
「 【請求項15】 コンテンツデータを記録する第1のエリアと、バーストカッティングエリアとを有するディスク記録媒体において、
前記バーストカッティングエリアには、ディスク固有の属性情報を含む補助情報から、少なくともハミング距離9以上の符号に符号化され、変調された後に記録されており、
前記補助情報は、前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化が施されることを特徴とするディスク記録媒体。」
であると認める。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開第01/06502号(2001年1月25日公開、以下「引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審により付加したものである。)

(a)
「この要望に対して、光記録媒体に対する識別情報としては、例えば再生専用型光記録媒体のピット部に、バーコードを重ね書きした追記領域(Burst CuttingArea、以下「BCA」という)を設け、光記録媒体製造時にBCA領域に光記録媒体毎に異なる識別情報(ID)、必要に応じて暗号鍵や復号鍵を記録する技術が一般的に適用されている。」(第1頁第11?15行)

(b)
「 本発明は、記録型光ディスクに対して、安定的にBCAを記録する方法及びBCAパターンを形成した光ディスクの提供を目的とする。
この課題を解決するために、本発明の光記録媒体は、情報信号を記録できる主情報領域と、前記情報信号とは種類の異なる副情報を記録する副情報領域とを基板の一主面方向に分割して備えた媒体であって、前記主情報領域における前記情報信号を記録する情報層は前記副情報領域にも備え、前記副情報領域の前記情報層に、前記情報層の形状を変化させることなく、光学的に前記媒体を識別する媒体識別情報を記録したことを特徴とする。」(第4頁第2?10行)

(c)
「 図3は、図2に示した相変化型光ディスクの上面図である。同図に示すように光ディスク1には、主情報記録領域31と副情報記録領域32とが存在する。主情報とはユーザーが光学的記録再生装置において記録・再生または消去する情報のことであり、副情報とはディスク毎に異なるID(識別情報)、暗号鍵、復号鍵等のことであり、光ディスク製造時に記録されるものである。以下、本発明の実施例では、副情報記録としてBCA記録をもとに説明を行う。」(第12頁第1?7行)

(d)
「(実施例4)
まず、図15(a)を用いて、データの変調方法を詳細に述べる。まず、記録すべきデータはリードソロモン方式エラー訂正コード(ECC)付加部715において、データ716に対してECC717が付加される。第16図(a)は、188バイトのデータ716の全てに対して、リードソロモンの演算を行い、16バイトのECC717を付加したデータ構成を示す。第16図(b)は12バイトのデータ716aを記録する場合のデータ構成を示す。ECC717a部のデータ量は16バイトで、データが188バイトの場合のECC部とデータサイズは変わらない。
本発明のECC演算は、データが12バイトの場合、通常のようにデータ716aの12バイトに対して演算するのではなく、第17図の(b)に示すようにRS_(1)の最後の行から実体として存在しないRS_(2)からRS_(n)の3番目の行までの166バイトに0を入れた188バイトの仮想的なデータ構成716bを作成し、エラー訂正の演算を行ない、ECC717bを演算する。」(第26頁第23行?第27頁第12行)

(e)
「(PE-RZ変調)
ECCコードが入ったデータ716は、DVD-R,DVD-RWのようなDVD-ROMと同じグルーブ記録を行うタイプの記録型のメディアにBCAを記録する場合は、ROMディスクと区別させるためのPE-RZ変調部720の逆コード変換部721で、データの1,0が反転させられ、RZ変調部722,PE変調部723でPE-RZ変調される。」(第27頁第24行?第28頁第4行)

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「主情報記録領域と副情報記録領域とを備えた光ディスクであって、
副情報記録領域には、ディスク毎に異なるID(識別情報)、暗号鍵、復号鍵等の副情報が、リードソロモン方式エラー訂正コード(ECC)付加部により符号化され、PE-RZ変調され記録されている
光ディスク。」

(3)対比・判断
そこで、本願補正発明を、引用発明と比較する。

引用発明における「主情報記録領域」は、本願補正発明における「コンテンツデータを記録する第1のエリア」に相当し、引用発明の「副情報記録領域」も「BCA」であるから、本願補正発明の「バーストカッティングエリア」に相当することは明らかである。

引用発明の「ディスク毎に異なるID(識別情報)、暗号鍵、復号鍵等の副情報」は、本願補正発明の「ディスク固有の属性情報を含む補助情報」に相当する。
そして、引用発明の「副情報」が「リードソロモン方式エラー訂正コード(ECC)付加部により符号化され」「PE-RZ変調され記録され」る点は、本願補正発明の「補助情報から」「符号に符号化され」「変調された後に記録される」点で共通する。

引用発明の「光ディスク」は、本願補正発明の「ディスク記録媒体」に相当する。

すると、本願補正発明と、以下の点で一致する。
(一致点)
コンテンツデータを記録する第1のエリアと、バーストカッティングエリアとを有するディスク記録媒体において、
前記バーストカッティングエリアには、ディスク固有の属性情報を含む補助情報から符号に符号化され、変調された後に記録されるディスク記録媒体。

一方で、以下の点で相違する。
(相違点)
ア.本願補正発明は、「補助情報」から「少なくともハミング距離9以上の符号」に符号化されて記録されているのに対し、引用発明では、副情報の符号のハミング距離について特定されていない点。
イ.本願補正発明は、「補助情報」が「前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化が施される」と特定されているのに対し、引用発明では、特定されていない点。

(4)判断
(相違点)ア.について
誤り訂正符号として、データ数に対して大きなハミング距離を持った符号、いわゆるロングディスタンスコード(LDC)は、周知技術(例えば、国際公開第00/07300号の「(248,216,33)Reed-Solomon(RS)error correction code」や、「(62,30,33)Reed-Solomon(RS)error codewords」に関する記載を参照されたい)であり、また、特開2001-135021号公報の、特に段落【0021】?【0027】を参照すると、「識別情報あるいは個別ID」(本願補正発明の「補助情報」に相当する)を「(24,16,9)リード・ソロモン符号」により符号化する点も記載されており、引用発明の副情報を「少なくともハミング距離9以上の符号」に符号化することは、当業者が容易に想到できるものである。

(相違点)イ.について
誤り訂正能力を向上させる手法として多重書きをする点も周知技術にすぎず、また、例えば特開平4-114318号公報には、「光ディスクの種別及びSFPを読むための情報」(本願補正発明の「補助情報」に相当する)が「1周に3組記録されている」点が記載されており、引用発明の副情報に「前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされるような符号化」を施し、副情報を多重書きすることは、当業者が容易に想到できるものである。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は、引用例及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

なお、請求人は、審判請求書並びに回答書において、本願補正発明は
「単にハミング距離の大きな誤り訂正符号化を行うのでは、符号化回路、書込み装置、復号回路に多大な演算量及び書込み動作などの負担をかけることになります。このため、本願発明では、得られるエラー率及びコストとの兼ね合いで最適なハミング距離があることを考慮し、適切なハミング距離を9以上にする点と、バーストカッティングエリア(BCA)に多重書き記録する点とを有機的に結合することにより、所望のBCAエラー率を実現しています。」と主張しているので、この点について検討する。

まず、最適なハミング距離として、ハミング距離を9以上にする点について検討する。
本願発明の詳細な説明の段落【0116】?【0127】、並びに【図9】等を参照すると、「前記DVR-RWはカートリッジ内に収納することが考えられるが、カートリッジによる防塵にて、ゴミの光ディスクへの付着面積率は0.1%(1.0E-3)以下になる。」「BCAデータは記録密度も緩いので、S/Nなどの面からはエラーにほとんど影響を与えない。ゴミによるエラーが支配的であると考えてここでは生のビットエラー率を1.0E-3(ゴミ面積率)とする。」という前提で、「RS(24,16,9)」、すなわちハミング距離が9の符号に符号化したディスクID情報を1重書きした時に、訂正後のBCAエラー率が、所望の「ディスクをのべ100年程度再生し続けた内に、ディスク1枚のエラーが発生することに相当する」1.0E-06であることが記載されている。
しかしながら、本願補正発明は、媒体を「カートリッジ内に収納する」点も、ディスクID情報を「RS(24,16,9)を用いて符号化」する点も特定されていない。
そして、誤り訂正能力は、「ハミング距離」だけでなく、データ数との関係でも変わることは明らか(例えば、本願発明の詳細な説明の段落【0142】並びに【図17】を参照すると、「ハミング距離9以上の符号」である「RS(192,176,17)」ではBCAエラー率が1.0E-6より悪い点が記載されている)である。
すると、本願補正発明において、「ハミング距離」と「BCAエラー率」との関連は、ハミング距離を大きくして誤り訂正能力を向上させるという周知の事項以上のものは認められず、「ハミング距離を9以上にする」点についても格別の効果は認められない。

次に、「適切なハミング距離を9以上にする点」と、「バーストカッティングエリア(BCA)に多重書き記録する点」とを有機的に結合する点について検討する。
本願発明の詳細な説明の段落【0116】?【0127】、並びに【図9】等を参照すると、RS(24,16,9)、すなわち「ハミング距離を9以上の符号」に符号化したディスクID情報を1重書きした時には、訂正後のBCAエラー率は、所望のエラー率(1.0E-06)を達成しており、「ハミング距離」と「多重書き」とが有機的に結合して、効果を奏しているとは認められない。
そして、本願補正発明においても多重書きの回数は特段限定されておらず、また、発明の詳細な説明を参照しても、ハミング距離を大きくすることによる誤り訂正能力の向上と、多重書きによる誤り訂正能力の向上という周知の事項を組み合わせることにより、誤り訂正能力が向上するという自明の効果が記載されているのみで、それらを組み合わせることによる、顕著あるいは異質な効果について特に記載されているとは認められない。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成20年1月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし29に係る発明は、平成19年7月17日付け手続補正により補正された請求項1ないし29に記載されたとおりのものであるところ、請求項21に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「第2 〔理 由〕1.」に本件補正前の請求項21に記載されたとおりである。

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 〔理 由〕4.(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 〔理 由〕4.(3)および(4)」で検討した本願補正発明の「補助情報」について、「前記バーストカッティングエリアに前記符号が多重書きされる符号化が施される」限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 〔理 由〕4.(3)および(4)」に記載したとおり、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、に記載された発明であるから、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項21に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-03 
結審通知日 2010-09-07 
審決日 2010-09-28 
出願番号 特願2001-380763(P2001-380763)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 572- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松尾 淳一堀 洋介  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
関谷 隆一
発明の名称 情報記録装置及び方法、情報記録プログラム、記録媒体、ディスク記録媒体、ディスク記録装置及び方法、並びにディスク再生装置及び方法  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  

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