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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1226995 |
審判番号 | 不服2008-14267 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-06 |
確定日 | 2010-11-11 |
事件の表示 | 特願2003-387831「無線通信装置、誤り訂正方法、および誤り訂正プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-151299〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件は、平成15年11月18日の特許出願であって、平成19年10月30日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月19日付けで手続補正書が提出され、平成20年1月11日付けで拒絶理由通知がなされ、同年2月21日付けで手続補正書が提出されたが、同年4月18日付けで補正却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して同年6月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月7日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.平成20年7月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年7月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に係る発明 平成20年7月7日付けの手続補正(以下,「本件補正」という)は、本件補正前の平成19年12月19日付け手続補正書により補正された請求項1を、 「受信信号のデータ種別を判別する判別手段と、 前記受信信号の誤り検出を行なう誤り検出手段と、 前記誤り検出手段で誤りが検出され、かつ前記判別手段で判別されたデータ種別が所定の種類のときにのみ、前記受信信号の誤り訂正を行なう訂正手段とを備えた無線通信装置。」 から、 「受信信号のデータ種別を判別する判別手段と、 前記受信信号の誤り検出を行なう誤り検出手段と、 前記誤り検出手段で誤りが検出され、かつ前記判別手段で判別されたデータ種別が誤訂正の弊害が少ない所定の種類のときにのみ、前記受信信号の誤り訂正を行なう訂正手段とを備えた無線通信装置。」 に、変更する補正を含むものである。 上記補正は、補正前の請求項1における「所定の種類」を、「誤訂正の弊害が少ない所定の種類」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定において引用された特開平10-341434号公報(以下、「引用例」という)には、下記の事項が記載されている。 (あ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、画像データと音声データとを同一の通信路を介して送信する画像・音声データ通信方式に関し、特に、通信路で生じた伝送誤りに対して画像データと音声データとに異なる処置を施す画像・音声データ通信システムに関する。」 (い)「【0007】 【発明が解決しようとする課題】ここで、上記のような画像・音声データ通信システムにおいて、通信路10の伝送において伝送誤りが生じてしまった場合には、或る程度までの誤りであれば誤り訂正処理によって画像データや音声データを訂正して出力することができる。しかしながら、例えば電話回線や無線区間を含む通信回線のように誤り発生率が高い低品質な通信回線を通信路10として用いた場合には、伝送誤りを十分に訂正することができなり、出力される画像データや音声データの品質が極端に低下してしまう。 【0008】このような品質低下が生じてしまった場合、音声については人間の感覚によって何とかその内容を判別することも可能ではあるが、画像については誤りによって再生できない領域が画像中の大半を占めるようなことともなって、その内容を判別することが不可能となってしまっていた。」 (う)「【0013】 【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図1には、本実施形態に係る画像・音声データ通信システムを示してある。なお、図5を参照して前述した画像・音声データ通信システムとほぼ同一な機能を奏する部分には同一符号を付して、重複する説明は割愛する。この画像・音声データ通信システムの送信側装置1には、通信制御部5に誤り訂正符号化器6に加えて誤り検出符号化器8が設けられている。また、この画像・音声データ通信システムの受信側装置11には、通信制御部13に誤り訂正復号化器14に加えて誤り検出復号化器18が設けられ、更に、逆離散コサイン変換器17の画像データ出力端に補間器19が設けられている。 【0014】送信側装置1の誤り訂正符号化器6は、量子化器3から出力された情報源符号化音声データに対してのみBCH(16,8)等で誤り訂正符号化し、ハフマン符号化器4から出力された情報源符号化画像データに対しては誤り訂正符号化を行わない。この情報源符号化画像データに対しては誤り検出符号化器8で誤り検出符号化を行っており、具体的には、通信制御部5で図2に示すような通信フレーム化を行う際に、当該通信フレームに含まれる情報源符号化画像データをCRC(Cyclick Redunduncy Check)を用いて誤り検出符号化している。すなわち、誤り検出符号化器8は、情報源符号化画像データと誤り訂正符号化された情報源符号化音声データとが含まれた通信フレームに、例えば、ITU-Tに準拠した一般的な生成多項式(X^(16)+X^(12)+X^(5)+1)を適用して、当該通信フレームに16ビットの誤り検出符号(CRC)を付加する処理を行う。 【0015】一方、受信側装置11の誤り訂正復号化器14は、復調器12から得られた情報源符号化音声データに対してのみその誤り訂正符号(BCH)を用いて誤り訂正復号化し、復調器12から得られた情報源符号化画像データに対してはこのような誤り訂正復号化を行わない。この情報源符号化画像データに対しては誤り検出復号化器18で誤り検出復号化を行っており、具体的には、通信制御部13で図2に示す通信フレームを分解する際に、当該通信フレームをCRCを用いて誤り検出復号化することにより、その情報源符号化画像データの誤り検出を行っている。」 (え)「【0026】また、本発明は、画像データと音声データとを送信する機能と画像データと音声データとを受信する機能とを兼備した複数の送受信装置によって、画像・音声データ通信システムを構成する場合にも勿論適用することができる。また、本発明は、有線、無線を問わず種々な伝送路を用いた動画像データ伝送システムに適用可能であるが、特に、無線区間を含むような低品質の伝送路を用いたシステムに適用して大きな効果が得られる。」 (お)引用例には「通信システム」に関する発明の実施例が記載されているが、特に上記(え)に「無線区間を含むような低品質の伝送路を用いたシステムに適用して大きな効果が得られる」と記載されていることから、引用例には「無線通信システム」に適用して大きな効果が得られるものが記載されているといえる。 よって、上記(あ)乃至(お)及び図1乃至図2の記載から、引用例には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「受信した信号を復調し得られた情報源符号化音声データを誤り訂正復号化器へ出力するとともに情報源符号化画像データを誤り検出復号化器へ出力する復調器と、 前記情報源符号化音声データに対してのみBCH符号を用いた誤り訂正を行う誤り訂正復号化器を備えた無線通信システム。」 (3)対比 (3-1)本件補正発明と引用発明1との対応関係について (ア)引用発明の「受信した信号」、「BCH符号を用いた誤り訂正処理を行う」、「無線通信システム」は、本件補正発明の「受信信号」、「誤り訂正を行なう」、「無線通信装置」に相当する。 (イ)引用発明では、BCH符号を用いて誤り訂正を行うが、このBCH符号の復号の際にはシンドロームを計算して誤り検出を行い、その誤り検出の結果に基づいて誤り訂正を行うことは自明な技術事項である。 してみると、引用例のBCH符号の復号には誤り検出を行なうことは明示的に記載されていないが、引用発明の「誤り訂正復号化器」も「受信信号の誤り検出を行なう誤り検出手段」を備えているといえ、そして、誤りが検出され、かつ音声データのみ誤り訂正しているといえるので、引用発明と本件補正発明は、「前記受信信号の誤り検出を行なう誤り検出手段と、前記誤り検出手段で誤りが検出され、かつデータ種別が所定の種類のときにのみ、前記受信信号の誤り訂正を行なう訂正手段」を備えている点で共通している。 (3-2)本件補正発明と引用発明の一致点について 上記の対応関係から、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致する。 「受信信号の誤り検出を行なう誤り検出手段と、 前記誤り検出手段で誤りが検出され、かつデータ種別が所定の種類のときにのみ、前記受信信号の誤り訂正を行なう訂正手段を備えた無線通信装置。」 (3-3)本件補正発明と引用発明の相違点について 本件補正発明と引用発明とは、下記の点で相違する。 (相違点A) 本件補正発明は、「受信信号のデータ種別を判別する判別手段」を備えているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。 (相違点B) 本件補正発明は、誤り訂正を行うデータ種別について、「前記判別手段で判別されたデータ種別が誤訂正の弊害が少ない所定の種類のときにのみ」としているのに対し、引用発明は「情報源符号化音声データ」としている点。 (4)当審の判断 (4-1)相違点Aについて 無線通信装置において、受信されたデータの種別(音声や動画等)をデータ種別のコードで判別する判別手段を備え、判別結果に応じて受信したデータの処理を行うことは、例えば、特開平11-196037号公報に記載されているように周知技術である。 そして、引用発明も複数種別のデータを受信するとともに、受信されたデータの種別に応じて異なる処理を行う発明であるから、引用発明において上記周知技術を採用して受信されたデータの種別を判別する判別手段を備えることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (4-2)相違点Bについて 引用例には、上記(い)に、 「無線区間を含む通信回線のように誤り発生率が高い低品質な通信回線を通信路10として用いた場合には、伝送誤りを十分に訂正することができなり、出力される画像データや音声データの品質が極端に低下してしまう。 【0008】このような品質低下が生じてしまった場合、音声については人間の感覚によって何とかその内容を判別することも可能ではあるが、画像については誤りによって再生できない領域が画像中の大半を占めるようなことともなって、その内容を判別することが不可能となってしまっていた。」 と記載されているように、誤り発生率が高い低品質な通信回線の場合に伝送誤りを十分に訂正することができないが、音声については人間の感覚で何とか判別できるのに対して、画像については人間の感覚でも判別できないことが開示されている。 また、伝送誤り率が悪化したり、回線状態が悪化すると、誤り訂正処理の訂正能力を超えてしまい、誤訂正が発生して復号した音声や画像が劣化することは、特開平2-299324号公報、特開平6-120908号公報、特開平7-264077号公報に記載されているように周知な技術事項である。 引用例の上記(い)の記載、及び上記の周知な技術事項を考慮すれば、引用例に記載された「伝送誤りを十分に訂正することができな」くなることには誤訂正が発生してしまうことが含まれるが、誤訂正が発生したことが含まれるとしても、音声データのように人間の感覚で何とか判別できるようなデータに対しては誤り訂正を行うことが示唆されていると認められ、また、誤訂正が発生したとしても人間の感覚で何とか判別できるようなデータを音声データ以外の種別のデータに拡張することは、当業者にとって格別な困難性を有するものとは認められない。 してみると、引用発明の誤り訂正を行うデータ種別を「前記判別手段で判別されたデータ種別が誤訂正の弊害が少ない所定の種類のときにのみ」とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (4-3)本件補正発明の作用効果について また、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 (5)むすび よって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本件発明 平成20年7月7日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成19年12月19日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、次のとおりのものである。 「受信信号のデータ種別を判別する判別手段と、 前記受信信号の誤り検出を行なう誤り検出手段と、 前記誤り検出手段で誤りが検出され、かつ前記判別手段で判別されたデータ種別が所定の種類のときにのみ、前記受信信号の誤り訂正を行なう訂正手段とを備えた無線通信装置。」 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本件発明は、上記2.で検討した本件補正発明における「所定の種類」を、「誤訂正の弊害が少ない所定の種類」に限定する点を省いたものである。 そうすると、本件発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本件補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件発明は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶され るべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-01 |
結審通知日 | 2010-09-07 |
審決日 | 2010-09-27 |
出願番号 | 特願2003-387831(P2003-387831) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 稲葉 崇、丹治 彰 |
特許庁審判長 |
田口 英雄 |
特許庁審判官 |
飯田 清司 池田 聡史 |
発明の名称 | 無線通信装置、誤り訂正方法、および誤り訂正プログラム |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 森田 俊雄 |
代理人 | 仲村 義平 |
代理人 | 荒川 伸夫 |
代理人 | 堀井 豊 |
代理人 | 酒井 將行 |
代理人 | 佐々木 眞人 |