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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C25D |
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管理番号 | 1227003 |
審判番号 | 不服2008-23669 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-16 |
確定日 | 2010-11-11 |
事件の表示 | 特願2002-230953「マイナスイオン発生体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開、特開2004- 68104〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成14年8月8日の出願であって、その請求項1から6に係る発明は、平成22年5月17日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1から6に記載されたとおりのものであって、請求項1に記載された発明は次のとおりのものであると認める。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】アルミニウム又はその合金から形成された母材を、硫酸浴、シュウ酸浴、リン酸浴又はこれらの二つ若しくは三つの混合浴中に硝酸銀又は硫酸銀を添加すると共に、ジルコニウム塩を添加した電解液中にて電解処理し、これによって前記母材の表面に陽極酸化被膜を形成すると共に、銀及びジルコニウムを前記陽極酸化被膜に析出させることを特徴とするマイナスイオン発生体の製造方法。」 2.引用文献の記載事項 (1)当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された、特開2002-47596号公報(以下、「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。 a:「【特許請求の範囲】【請求項1】 アルミニウム又はその合金から形成された母材を、硫酸浴、シュウ酸浴又はこれらの混合浴中に金属の硝酸塩として硝酸銀及び硝酸銅のいずれか一つ又は二つ、或いは金属の硫酸塩としての硫酸銀及び硫酸銅のいずれか一つ又は二つを添加した電解液中にて、交直重畳、マイナス波を流すPR又はマイナス波を流すパルス波の電流を加えて電解処理し、これによって前記母材の表面に陽極酸化被膜を形成すると同時に、添加した硝酸塩又は硫酸塩の金属をこの陽極酸化被膜に析出させることを特徴とするアルミニウム又はその合金の表面処理方法。」 b:「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、アルミニウム又はその合金の表面に表面処理を行う表面処理方法に関する。」 c:「【0006】本発明の目的は、簡単な表面処理でもって母材に抗菌性、脱臭性、熱伝導性、導電性等を持たせることができるアルミニウム又はその合金の表面処理方法を提供することである。本発明の他の目的は、簡単な表面処理でもって、粒子状樹脂被膜を有する母材に抗菌性、脱臭性、熱伝導性、導電性等を持たせることができるアルミニウム又はその合金の表面処理方法を提供することである。」 d:「【0011】本発明に従えば、まず、アルミニウム又はその合金から形成された母材の少なくとも一部、即ちその一部又は全体に粒子状樹脂被膜を形成し、その後に粒子状樹脂被膜を形成した母材を電解処理する。電解処理の電解液として硫酸浴、シュウ酸浴又はこれらの混合浴中に硝酸塩としての硝酸銀及び硝酸銅のいずれか一つ又は二つ、又は硫酸塩としての硫酸銀及び硫酸銅のいずれか一つ又は二つを添加したものを用い、この電解液中に交直重畳、マイナス波を流すPR又はマイナス波を流すパルス波の電流を加えて電解処理する。このように電解処理することによって、電解液は粒子状樹脂被膜の微細な空隙を通して母材の表面に作用し、この母材表面に陽極酸化被膜を形成することができるとともに、添加した硝酸塩又は硫酸塩の金属を析出させることができる。例えば、硝酸銀(又は硫酸銀)を用いた場合に銀を、硝酸銅(又は硫酸銅)を用いた場合に銅を、また硝酸銀及び硝酸銅(又は硫酸銀及び硫酸銅)を用いた場合に銀及び銅を析出させることができ る。 【0012】このような表面処理を施した母材では、母材の表面に形成された陽極酸化被膜に銀(又は銅、銀及び銅)が析出しているので、母材の抗菌性、脱臭性、熱伝導性、導電性が高められる。また、本発明では、前記母材の片面に前記粒子状樹脂被膜としてのフッ素樹脂被膜を形成し、この母材を上記電解液中で電解処理することによって、前記フッ素樹脂被膜を通して前記母材の片面に陽極酸化被膜を形成すると同時に、この陽極酸化被膜に添加した硝酸塩又は硫酸塩の金属を析出させるととともに、前記母材の他面に陽極酸化被膜を形成すると同時に、この陽極酸化被膜に添加した硝酸塩又は硫酸塩の金属を析出させることを特徴とする。」 e:「【0060】【発明の効果】本発明の請求項1の表面処理方法によれば、アルミニウム又はその合金から形成された母材の表面に陽極酸化被膜を形成すると同時に、その陽極酸化被膜に添加した硝酸塩又は硫酸塩の金属を析出させることができ、一度の電解処理でもって陽極酸化被膜の形成及び金属の析出を行うことができ、これにによって、電解処理工程の簡略化及び短縮化を図り、また母材の表面処理に要するコストの低減を図ることができる。そして、このような表面処理を施した母材では、その表面の陽極酸化被膜に銀(又は銅、銀及び銅)が析出しているので、抗菌性、脱臭性、熱伝導性、導電性が高められる。」 上記の各記載を参照すると、引用例1には、 「アルミニウム又はその合金から形成された母材を、硫酸浴、シュウ酸浴又はこれらの混合浴中に金属の硝酸塩として硝酸銀及び硝酸銅のいずれか一つ又は二つ、或いは金属の硫酸塩としての硫酸銀及び硫酸銅のいずれか一つ又は二つを添加した電解液中にて電解処理し、これによって前記母材の表面に陽極酸化被膜を形成すると同時に、添加した硝酸塩又は硫酸塩の金属をこの陽極酸化被膜に析出させることを特徴とするアルミニウム又はその合金の表面処理方法。」が記載されている。(以下、「引用発明」という。) 3.対比 引用発明の「硫酸浴、シュウ酸浴又はこれらの混合浴」は本願発明の「硫酸浴、シュウ酸浴、リン酸浴又はこれらの二つ若しくは三つの混合浴」に相当し、また、引用発明では、「金属の硝酸塩として硝酸銀及び硝酸銅のいずれか一つ又は二つ、或いは金属の硫酸塩としての硫酸銀及び硫酸銅のいずれか一つ又は二つを添加した電解液中にて電解処理」しており、本願発明では「硝酸銀又は硫酸銀を添加すると共に、ジルコニウム塩を添加した電解液中にて電解処理」している点と対比すると、両者は「硝酸銀又は硫酸銀を添加すると共に、他の金属塩を添加した電解液中にて電解処理」している点で一致している。 以上の点を考慮して、本願発明と引用発明とを対比すると、 両者は、「アルミニウム又はその合金から形成された母材を、硫酸浴、シュウ酸浴、リン酸浴又はこれらの二つ若しくは三つの混合浴中に硝酸銀又は硫酸銀を添加すると共に、他の金属塩を添加した電解液中にて電解処理し、これによって前記母材の表面に陽極酸化被膜を形成すると共に、銀及び上記他の金属を前記陽極酸化被膜に析出させる方法。」である点で一致し、下記の点で相違している。 相違点1:本願発明では、電解液にジルコニウム塩を添加してジルコニウムを陽極酸化被膜に析出させているのに対し、引用発明では、電解液に硫酸銅、すなわち銅塩を添加して銅を陽極酸化被膜に析出させている点。 相違点2:本願発明は、マイナスイオン発生体の製造方法であるのに対し、引用発明は、アルミニウム又はその合金の表面処理方法である点。 4.当審の判断 (1)相違点1について 本願発明では、ジルコニウムを析出させているが、引用例1の記載事項dにも記載されているように、電解処理によって電解液中に添加した硝酸塩又は硫酸塩の金属を析出させることができるものであり、析出させる金属として、種々のものが析出可能であることは当審の拒絶理由通知で示した特開昭53-64630号公報に記載されているし、電解液にジルコニウム塩を添加してジルコニウムを析出させることも、例えば、特開昭53-57143号公報や特開2000-273656号公報に記載されているように周知の事項である。 よって、本願発明の相違点1にかかる構成とすることは当業者が容易になし得ることにすぎない。 (2)相違点2について 本願発明は、マイナスイオン発生体の製造方法の発明ではあるが、発明の技術的な特定事項は実質的にはアルミニウムまたはアルミニウム合金に陽極酸化被膜を形成し特定の金属を析出させるものであって、アルミニウム又はその合金の表面処理の方法ともいうべきものである。 そして、本願発明でいうところのマイナスイオンとは如何なるものであり、どのような機序によって発生するかは必ずしも明らかではないが、本願明細書の記載によれば、析出した金属がマイナスイオン発生金属(本願発明の場合、ジルコニウム)であるとマイナスイオンが発生するというものである。 してみれば、本願発明でいうところのマイナスイオン発生金属であるジルコニウムを析出させたアルミニウム又はアルミニウム合金は相違点1の項で示したように当業者が容易になし得るものであるから、そのように表面処理されたアルミニウムまたはアルミニウム合金は、本願発明と同様の機能を有するものと認められる。 よって、本願発明でいうところのマイナスイオン発生金属であるジルコニウムを析出させる処理を含む表面処理方法を、マイナスイオン発生体の製造方法と称することに何ら困難性は認められない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-13 |
結審通知日 | 2010-09-14 |
審決日 | 2010-09-28 |
出願番号 | 特願2002-230953(P2002-230953) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C25D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 敬士、真々田 忠博 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
加藤 浩一 筑波 茂樹 |
発明の名称 | マイナスイオン発生体の製造方法 |
代理人 | 岸本 忠昭 |