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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24D
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F24D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24D
管理番号 1227009
審判番号 不服2008-27219  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-24 
確定日 2010-11-11 
事件の表示 特願2004-245457号「放冷熱パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成18年3月9日出願公開、特開2006-64222号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年8月25日の出願であって、平成20年9月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月25日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年11月25日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成20年11月25日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前に、
「基材と、該基材の表面に設けられた溝と、該溝内に配置された熱媒流通用の放冷熱管とを備えてなる放冷熱パネルにおいて、
該放冷熱管が樹脂を主体とする材料で構成され、その熱伝導率が1W/mK以上であることを特徴とする放冷熱パネル。」
とあったものを、

「基材と、該基材の表面に設けられた溝と、該溝内に配置された熱媒流通用の放冷熱管とを備えてなる放冷熱パネルにおいて、
該放冷熱管の熱伝導率が1W/mK以上である放冷熱パネルであって、 該放冷熱管の構成材料が、架橋ポリエチレン又はポリブテンに金属及び無機物から選ばれるフィラーを混入させたものであることを特徴とする放冷熱パネル。」と補正(下線は補正箇所を示す。)することを含むものである。
上記補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0027】を根拠として、冷熱管の構成材料を「架橋ポリエチレン又はポリブテンに金属及び無機物から選ばれるフィラーを混入させたもの」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-205135号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 段落【0002】
「【0002】
【従来の技術】
室内を暖房するための装置として、断熱性のパネルボードの表面側に、温水を循環させる放熱路を蛇行状に這わせてヒートパネルを形成し、このヒートパネルをフロアに敷設して床面からの輻射熱及び自然対流熱伝導によって室内を暖房する温水式床暖房装置が知られている。前記放熱路には、ナイロン、架橋ポリエチレン、ポリブテン、超低密度ポリエチレン等の可撓性を有する合成樹脂パイプ(チューブ)が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。また、前記断熱性のパネルボードには、放熱路を嵌め込むためのU字状の溝が設けられており、この溝の開口部にパイプ抜け止め用の突起を設けている。」

イ 段落【0004】
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記放熱路を形成する従来の合成樹脂パイプは、材質として、耐久性、耐熱性、耐食性に重点をおいて選定されており、施工性についての配慮は十分に行われていなかった。例えば、ポリブテンパイプは、放熱路を蛇行させるために円弧状に曲げたときに、その曲げ部分がパネルボードから浮き上がってしまうことがあるため、前述のように、U字状の溝の開口部に抜け止め用の突起を設けてパイプの浮き上がりを防止する必要があった。」

ウ 段落【0006】?段落【0007】
「【0006】
そこで本発明は、耐久性、耐熱性、耐食性を損なうことなく十分な柔軟性を有し、蛇行状に這わせる際の施工性を大幅に向上させることができる床暖房用ポリエチレンパイプを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の床暖房用ポリエチレンパイプは、床暖房装置におけるパイプ敷設用断熱材に形成したパイプ敷設溝内に敷設される床暖房用ポリエチレンパイプであって、密度が930?945[kg/m^(3)]、降伏点応力が15?17[MPa]、破断点伸びが760?820[%]のポリエチレンで形成したことを特徴とし、また、前記ポリエチレンパイプが乳白色半透明であること、あるいは、前記ポリエチレンパイプの少なくとも表面層にカーボンが3?8重量%を含有していることを特徴としている。」

エ 段落【0012】
「【0012】
また、前記ポリエチレンは、引張弾性率が550?650[MPa]、熱伝導率が0.38?0.42[W/mK]、線膨張係数が1.8?2.0[10^(-4)/K]の範囲のものが好適に使用できる。この中で、引張弾性率が大きなものは曲げ難くなり、線膨張係数が大きなものは耐久性に劣るという傾向にある。」

オ 段落【0016】
「【0016】
また、前記ポリエチレンパイプ16は、乳白色半透明であるから、施工後の通水試験時等にパイプ内の通水状態を容易に確認することができる。一方、ポリエチレンパイプ16の少なくとも表面層、例えば、表面から0.5?2mmの範囲にカーボンを3?8重量%含有させることにより、放熱効果を向上させることができる。なお、カーボン含有ポリエチレンをポリエチレンパイプ16の表面層に設ける場合は、二色押出等によって前記ポリエチレンの外周にカーボン含有ポリエチレンを積層するようにすればよく、パイプ全体をカーボン含有ポリエチレンとする場合は、あらかじめ所定量のカーボンを含有したポリエチレンを使用してパイプを押出成形すればよい。」

上記記載事項ア及び図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「断熱性のパネルボードと、該断熱性のパネルボードの表面に設けられた溝と、該溝内に配置された温水循環用の合成樹脂パイプとを備えてなるヒートパネルにおいて、
該合成樹脂パイプの構成材料が、架橋ポリエチレン又はポリブテンであるヒートパネル。」(以下「刊行物1に記載された発明」という。)

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-290029号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 段落【0013】?段落【0016】
「【0013】前記低熱伝導樹脂層を構成する材料としては、耐熱性および耐衝撃性に優れた樹脂を用いるとよい。例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、メラミン樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド(PAI)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)等の樹脂を使用することができる。これらのうち耐熱性が150℃以上の樹脂が好ましく使用される。かかる樹脂の典型例としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)およびポリカーボネート(PC)が挙げられる。本発明にとって特に好適な樹脂材料はポリフェニレンサルファイド(PPS)である。
【0014】前記高熱伝導樹脂層は、典型的には樹脂と高熱伝導フィラーとを含有する。高熱伝導樹脂層を構成する樹脂としては、低熱伝導樹脂層の構成材料として例示した前述の樹脂等を用いることができる。低熱伝導樹脂層を構成する樹脂と高熱伝導樹脂層を構成する樹脂とは同一であっても異なってもよい。両層の接合強度を高めやすいという観点からは、両層を構成する樹脂の相溶性が良好であることが好ましく、両層を構成する樹脂が同一であることが特に好ましい。
【0015】高熱伝導樹脂層に含有される高熱伝導フィラーとしては、ガラス、結晶性シリカ、酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド、炭化ケイ素、炭化チタニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタニウム、窒化アルミニウム、ホウ化ジルコニウム、ケイ化モリブデン、グラファイト、ホウ化リン、硫化ベリリウム等から構成された繊維状、粒状等の粉末を使用してもよい。これらの高熱伝導フィラーの2種以上を併用してもよい。これらのうち、ガラスファイバ等のセラミック系ファイバが好ましく使用される。このようなセラミック系ファイバを用いると、容器の軽量化を図りやすく、また、容器の強度を高めやすいからである。
【0016】高熱伝導性樹脂層全体の質量に占める高熱伝導フィラーの含有割合は、例えば5?70質量%の範囲とすることができる。好ましい含有割合は10?50質量%の範囲であり、より好ましい範囲は20?40質量%である。高熱伝導フィラーの含有割合が上記範囲よりも少なすぎると熱伝導性の向上効果が低くなる。一方、高熱伝導フィラーの含有割合が上記範囲よりも多すぎると、高熱伝導性樹脂層の成形性が低下したり、その外観の滑らかさが損なわれたりしやすい。望ましくは、高熱伝導フィラーの含有割合を30質量%程度(例えば25?35質量%)に設定するとよい。」

イ 段落【0018】
「【0018】前記高熱伝導樹脂層の熱伝導率が1.2 W/m・K以上、望ましくは3 W/m・K以上になるように高熱伝導フィラーの種類や含有量等を調節するとよい。これらを適切に調節することにより、3?5W/m・K(より適切な条件では3?10W/m・K)の熱伝導率をもつ高熱伝導樹脂層を得ることも可能である。」

(3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-60287号公報(以下「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 段落【0001】?段落【0005】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フィラーを分散した高熱伝導性材料及びその製造方法、この高熱伝導性材料を蓄熱材として用いた床暖房システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属以外の材料は一般的に熱伝導率が低い。従ってこのような金属以外の材料を基材として利用する分野において、基材に高熱伝導性が要求される場合には、基材の材料より熱伝導率の高い粒状フィラーを基材に混合分散させる等の方法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように基材に粒状フィラーを混合分散させる方法では、基材に対して粒状フィラーを体積分率が30%以上になるように添加しないと、熱伝導率を向上させる効果が表れない。従ってフィラーの大量使用によって、基材の重量及び体積が大幅に増加すると共に材料コストが大幅増になり、また基材の基本物性が大きく損なわれる可能性がある、等の問題を有するものであった。
【0004】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、少ないフィラーの添加で効率的に熱伝導率を高めることができる高熱伝導性材料及びその製造方法を提供することを目的とするものであり、またのようにして得られた高熱伝導性材料を用いて暖房を効率的に行なうことができるようにした床暖房システムを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高熱伝導性材料は、金属以外の材料を主材とする基材に、基材より高い熱伝導率を有すると共に大きなアスペクト比を有するフィラーを混合分散させて成ることを特徴とするものである。また請求項2の発明は、上記のフィラーが、フレーク状もしくは繊維状のものであることを特徴とするものである。」

イ 段落【0023】
「【0023】また、このアスペクト比が大きいフィラーは、金属材料、炭素材料、無機材料、有機材料のいずれかからなるものを用いることができる。金属材料や炭素材料のように熱伝導率が高いものを使用すると、少ない量の添加で熱伝導率を向上させる効果を高く得ることができるが、比較的熱伝導率が低くても無機材料や有機材料のように安価な材料の場合には多めに添加することによって、熱伝導率を向上させることができる。いずれの材料の場合でも基材の熱伝導率を大きく向上ささせるためには、このアスペクト比が大きいフィラーの熱伝導率は基材の熱伝導率の3倍以上であることが望ましい(請求項5)。このフィラーの熱伝導率は高ければ高い程よいが、基材の熱伝導率の5000倍程度が実質的な限界である。このようなアスペクト比の大きなフィラーを例示すると、アルミニウムフレーク、アルミニウム繊維、ステンレス箔、ステンレス繊維、グラファイト、カーボンファイバー、アルミナ、マイカ、バーミュキュライトなどである(請求項16)。」

3 対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「断熱性のパネルボード」は本件補正発明の「基材」に相当する。

刊行物1に記載された発明の「温水循環用の合成樹脂パイプ」及び「ヒートパネル」と本件補正発明の「熱媒流通用の放冷熱管」及び「放冷熱パネル」とは、暖房時に用いられる「熱媒流通用の放熱管」及び「放熱パネル」である点で共通する。

刊行物1に記載された発明の「合成樹脂パイプ」と本件補正発明の「放冷熱管」とは、その構成材料が、架橋ポリエチレン又はポリブテンを含む点で共通する。

したがって、両者は、

「基材と、該基材の表面に設けられた溝と、該溝内に配置された熱媒流通用の放熱管とを備えてなる放熱パネルにおいて、
該放熱管の構成材料が、架橋ポリエチレン又はポリブテンを含む放熱パネル。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本件補正発明では、 放熱管の構成材料が、架橋ポリエチレン又はポリブテンに金属及び無機物から選ばれるフィラーを混入させたもので、その熱伝導率が1W/mK以上であるのに対し、
刊行物1に記載された発明では、放熱管の構成材料が、架橋ポリエチレン又はポリブテンである点。

〔相違点2〕
本件補正発明では、放熱管及び放熱パネルが、冷房時に用いる機能も有した「放冷熱管」及び「放冷熱パネル」であるのに対し、
刊行物1に記載された発明では、かかる機能を備えない点。

4 当審の判断
(1)相違点1
本願の出願前に、内部に熱媒を流通させる管として架橋ポリエチレン管やポリブテン管を用いた場合、銅管に比べて、施工性や腐食性で優れるが、放熱性や熱伝達率の点で劣ることは、周知の技術事項(例えば、特開2002-333149号公報(段落【0016】)、特開2004-61060号公報(段落【0003】?段落【0013】)参照。)である。

刊行物1には、ポリブテンパイプに替えて、熱伝導率が0.38?0.42[W/mK]のポリエチレンパイプを床暖房に用い、さらに当該ポリエチレンパイプの放熱効果を向上させるさせるために、カーボンを3?8重量%含有させること(前記2の(1)オ)、が開示されている。

刊行物2には、樹脂に、無機物から構成された繊維状、粒状等のなる高熱伝導フィラーを、例えば5?70質量%の範囲、好ましくは10?50質量%の範囲、より好ましい範囲は20?40質量%含有させることで、熱伝導率を1.2 W/m・K以上、望ましくは3 W/m・K以上、より適切な条件では3?10W/m・Kの熱伝導率を得ること(前記2の(2)ア及びイ)、が開示されている。

刊行物3には、金属以外の材料を主材とする基材の熱伝導率を向上させるために、無機材料や炭素材料からなるフィラーの他に、金属材料からなるフィラーも分散混合できること(前記2の(3)イ)、が開示されている。

そうしてみると、刊行物1に記載された発明の架橋ポリエチレン又はポリブテンからなる放熱管が熱伝達率の点で劣ることは、前記周知の技術事項であり、熱伝達率を向上させるために、放熱管の架橋ポリエチレン又はポリブテンに、刊行物1ないし3に開示された「金属及び無機物から選ばれるフィラーを混入させ」るという手段を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、「その熱伝導率が1W/mK以上である」についても、刊行物1に、熱伝導率が0.38?0.42[W/mK]のポリエチレンパイプの放熱効果をより向上させることが示唆され、刊行物2に、樹脂に高熱伝導フィラーを含有させて熱伝導率を1.2 W/m・K以上にすることが示されるように、1W/mK以上という値も格別とはいえないことから、当業者が容易に為し得たことである。

(2)相違点2
本願の出願前に、熱媒体流通管に冷温水を流通させた冷暖房パネルを用いて冷暖房することは、周知の技術事項(例えば、特開2000-283480号公報(段落【0001】?段落【0002】)、特開平3-102120号公報(第2頁右上欄)参照。)である。

そうしてみると、刊行物1に記載された発明の熱媒流通用の放熱管及び放熱パネルを、冷房時にも用いる「放冷熱管」及び「放冷熱パネル」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本件補正発明の奏する効果は、刊行物1ないし3に記載されたもの及び前記周知の技術事項から、当業者が予測できる範囲内のものである。

請求人は、架橋ポリエチレン及びポリブテンに金属や無機物のフィラーを混入させると可撓性が低下してしまい、放熱路として架橋ポリエチレン及びポリブテンを用いる意義が無くなるから、技術的阻害要因となる旨、回答書で主張するが、 床暖房装置に用いられる管の材料は、施工性の他、熱伝達率、耐久性、腐食性等の様々な観点の優劣を考慮して選択されるものであるので、上記主張が直ちに阻害要因となるとはいえない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1ないし3に記載された発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1ないし3の記載事項及び刊行物1に記載された発明は、前記「第2〔理由〕2(1)ないし(3)」に記載したとおりである。

3 対比及び当審の判断
本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本件補正発明において、放冷熱管の構成材料について、「架橋ポリエチレン又はポリブテンに金属及び無機物から選ばれるフィラーを混入させたもの」としていた限定を、「樹脂を主体とする材料」と上位概念化したものである。

そうしてみると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに相当する本件補正発明が、前記「第2〔理由〕3及び4」に記載したとおり、刊行物1ないし3に記載された発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物1ないし3に記載された発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1ないし3に記載された発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-01 
結審通知日 2010-09-07 
審決日 2010-09-27 
出願番号 特願2004-245457(P2004-245457)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24D)
P 1 8・ 572- Z (F24D)
P 1 8・ 575- Z (F24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 中川 真一
冨岡 和人
発明の名称 放冷熱パネル  
代理人 重野 剛  

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