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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1227086
審判番号 不服2009-16633  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-08 
確定日 2010-11-11 
事件の表示 特願2003-99552号「真空断熱材及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月4日出願公開、特開2004-308691号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年4月2日の出願であって、平成21年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年9月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成21年1月23日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「コア材及びガス吸着剤をガスバリアー性フィルムよりなる袋体に収納しその内部を減圧、密封した真空断熱材において、前記袋体収納前のコア材が、平均繊維径3?5μmの無機繊維に、該繊維に対しバインダーとしてO.5?1.5重量%のフェノール樹脂を塗布し、熱プレスして形成した成形体又は該成形体を2枚以上積層したものであることを特徴とする真空断熱材。」
なお、請求項1に記載された「カスバリアー性フィルム」は、本願明細書の記載からみて、「ガスバリアー性フィルム」の明らかな誤記であると認められるので、本願発明を上記のように認定した。

3.引用例の記載事項
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-108186号公報(以下、「引用例1」という。)には、「真空断熱材」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「またウレタンフォームにて形成された芯材を用いたものでは、無機繊維を有機バインダで硬化させた断熱マットを用いたものに比べて断熱性能が劣るという問題点がある。たとえば、これらの材料を板状に形成して10Paの真空中に置き、その高温面を80℃、低温面を20℃としたときには、無機繊維を有機バインダで硬化させた断熱マットとしての、ロックウールにフェノール樹脂を含浸させて圧縮硬化させたものの熱伝導率は、λ=0.004W/m・Kにしかならないのに対し、ウレタンフォームにて形成された芯材としての、連通ウレタンフォームの熱伝導率は、λ=0.008W/m・Kにも達する。
一方、有機バインダーを使用しない無機繊維をアルミ箔ラミネート樹脂フィルムに入れることは、繊維がかさばるため、非常な困難を伴う。そこで本発明は、このような問題点を解決して、安価で、しかも断熱性能にすぐれた真空断熱材を簡便に得ることを目的とする。」(段落【0005】、【0006】)
イ.「【課題を解決するための手段】この目的を達成するため本発明は、無機繊維と有機バインダとが所定の圧力で圧縮されて硬化された構成の断熱マットと、ガス吸着材とが、金属箔がラミネートされた樹脂フィルムで外包され、かつ前記金属箔がラミネートされた樹脂フィルムの内部が真空化されているようにしたものである。
このような構成の真空断熱材は、その用途を100℃以下程度の温度に限定すれば、無機繊維と有機バインダとが所定の圧力で圧縮されて硬化された構成の断熱マットを高温で加熱して、その有機バインダを加熱分解および排出させなくても、従来のウレタンフォームを芯材とした真空断熱材に比べてすぐれた断熱性能を確保することができる。すなわち、このように有機バインダの加熱分解処理が行われず、したがって有機バインダを含有することで、この有機バインダからのアウトガスが発生する可能性がある真空断熱材であっても、上述のようにその用途を100℃以下の温度に限定すれば、発生するアウトガスの量を少なく抑えることができ、このためゲッター材や吸着剤などのガス吸着材でアウトガスを十分かつ確実に吸着することができる。したがって、長期にわたって所要の真空度を維持することができる。そして、このように高温での加熱分解処理を行わずに真空断熱材を形成できるため、断熱マットを金属箔がラミネートされた樹脂フィルムで外包した構成の真空断熱材とすることができ、したがって安価な構成とすることができる。」(段落【0007】、【0008】)
ウ.「断熱マット11は、以下のようにして形成されている。すなわち、図2に示すようにガラス繊維やロックウールなどの無機繊維製のマット17にフェノール樹脂などの有機バインダを含浸させ、これをプレス加工して圧密し、かつバインダを硬化させることで、図示のような所定の厚みの断熱マット11が形成されている。この断熱マット11には、凹部12も形成しておく。
図1に示される外包材14は、たとえば高密度ポリエチレンフィルムのような樹脂フィルム18にアルミ箔のような金属箔19がラミネートされたものによって形成されており、樹脂フィルム18が断熱マット11側すなわち真空側に配されて上述の熱融着に供されるとともに、金属箔19が大気側に配された状態で使用される。」(段落【0010】、【0011】)
エ.「そして、上述のように圧密されかつ硬化されただけで、硬化した有機バインダを含有したままの状態の断熱マット11が、その凹部12に収容されたガス吸着材13とともに外包材14の中に入れられ、この外包材14の内部が真空排気されたうえで、熱融着部15によって真空封止される。このような真空断熱材であると、その用途を100℃以下程度の温度に限定すれば、従来のウレタンフォームを芯材とした真空断熱材よりも性能の高いすぐれた断熱性能を確保することができる。すなわち、断熱マット11は有機バインダを含有したままであり、加熱処理による有機バインダの分解ガス化と排出とは行われていないが、100℃以下程度の用途であれば、有機バインダから発生するアウトガスの量を少なく抑えることができ、これをガス吸着材13により十分かつ確実に吸着して、外包材14の内部を長期にわたり所要の真空状態に維持することができる。」(段落【0013】)
オ.「【発明の効果】以上のように本発明によると、無機繊維と有機バインダとが所定の圧力で圧縮されて硬化された構成の断熱マットと、ガス吸着材とが、金属箔がラミネートされた樹脂フィルムで外包され、かつ前記金属箔がラミネートされた樹脂フィルムの内部が真空化されているようにしたため、100℃以下程度の用途であれば、加熱処理による有機バインダの分解ガス化と排出とを行わなくても、有機バインダから発生するアウトガスの量を少なく抑えることができ、これをガス吸着材により十分かつ確実に吸着して、外包材の内部を長期にわたり所要の真空状態に維持することができ、したがって従来のウレタンフォームを芯材とした真空断熱材よりも性能の高いすぐれた断熱性能を確保することができる。また、このように高温での加熱分解処理を行わずに真空断熱材を形成できるため、従来のような金属製の断熱壁を用いなくても、上記のように樹脂フィルムに金属箔がラミネートされただけの簡易な構造の外包材を用いることができ、したがって安価な構成とすることができる。」(段落【0015】)

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「断熱マット11及びガス吸着材13をアルミ箔のような金属箔19がラミネートされた樹脂フィルム18よりなる外包材14の中に入れその内部を真空排気し、熱融着部15によって真空封止された真空断熱材において、前記外包材14に入れる前の断熱マット11が、無機繊維に、該繊維に対しバインダーとしてフェノール樹脂を含浸させ、プレス加工して圧密し、かつバインダーを硬化させることで形成した成形体である真空断熱材。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-336691号公報(以下、「引用例2」という。)には、「真空断熱材」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
カ.「【発明が解決しようとする課題】真空断熱材の応用展開を推進するには、断熱性能の向上や生産性の向上を図ると共に、真空断熱材に可撓性を付与することは、重要な課題である。」(段落【0006】)
キ.「本発明の請求項1に記載の真空断熱材は、平均直径が1μm以上5μm以下の無機繊維からなるシート状成形体を少なくとも2層以上積層してなる芯材を、ガスバリア性フィルムで覆い、その内部を減圧し、密封した真空断熱材において、圧縮成型により、前記真空断熱材の厚み方向に垂直な側面部に少なくとも一本以上の溝を形成してなることを特徴とするものである。」(段落【0028】)
ク.「芯材は、厚さ5mmのシート状の無機繊維成形体を3枚積層して構成し、前記芯材を130℃で1時間乾燥後、ガスバリア性フィルムからなる袋体の外被材中に挿入し、内部を減圧し、開口部をヒートシールにより密封することにより形成した。」(段落【0049】)
ケ.「また、図1には図示していないが、必要に応じて活性炭,ゼオライト,ドーソナイト,ハイドロタルサイト,塩化カルシウム,塩化リチウム,塩化マグネシウムや酸化カルシウム等の金属酸化物、及び水酸化マグネシウムや水酸化カルシウム等の金属水酸化物等の化合物をガス吸着剤として使用することもできる。」(段落【0062】)
コ.「無機繊維のシート状成形体の構成材料は、特に限定するものではなく、グラスウール,セラミックファイバー,ロックウール等、平均繊維径や嵩密度等の所定の諸物性を満たす無機繊維であれば何等問題ない。また、単一素材に限定するものでもなく、シート体を形成するために有機あるいは無機バインダーを用いても良い。」(段落【0063】)

(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-187084号公報(以下、「引用例3」という。)には、「真空断熱パネル」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
コ.「本発明のまた別の目的は、高い断熱能を提供し、同時に高度の融通性と高いシステム保全性を兼備する、極低温設備用断熱パネルを提供することである。」(2ページ右下欄18行?3ページ左上欄1行)
サ.「こうした目的を実現するべく、本発明は、少くとも1つのプラスチック層と少くとも1つの金属層とを互いに積層して成るフィルムから構成される密封された真空フィルム包囲体を備え、該包囲体の密封部がプラスチック対プラスチック接触点において形成されそして該包囲体が吸着剤と10ミクロンを越えない繊維径を有する圧縮ガラス繊維の成形体を包納しそして該繊維がバインダにより互いに保持されて平滑な表面を形成することを特徴とする断熱パネルを提供する。」(3ページ左上欄3?12行)
シ.「包囲体により包被される成形体は圧縮ガラス繊維から成る。ガラス繊維は、例えばジョーンズ-マンビル或いはオウエンス-コアニング社からファイバガラスマットとして入手しうる。ガラス繊維の繊維は10ミクロン直径を越えない、好ましくは約5ミクロン直径を越えない。こうすれば、万一繊維が成形体から突出ても、細径の繊維は自身が包囲体を突刺し従って断熱パネルの断熱能を損わせる程に十分の強度を呈さない。」(3ページ左下欄20行?右下欄8行)
ス.「成形体のガラス繊維の個々繊維は、成形体の5?30重量%、好ましくは10?20重量%をしめるバインダにより互いに保持される。好ましくは、バインダはフェノール型バインダである。バインダは、成形体に平滑な表面を与える役目をすると共に、個々の繊維を然るべく合着状態に保持する役目もなす。これは、繊維が包囲体を穿孔して飛び出したり或いは包囲体の縁辺シールに侵入する可能性を減じ、以って本発明の真空パネルの保全性を向上する。」(4ページ左上欄4?13行)
セ.「本発明の真空パネルは、包囲体内部に、好ましくはガラス繊維成形体に付着させて、より好ましくはパネルの低温側となるべき側面においてガラス繊維成形体に付着せしめた状態で、吸着剤を収納する。吸着剤は、包囲体を通して浸透する恐れのある気体や蒸気を吸着する作用を為し、以って包囲体内の真空が過度に落ちるのを防止する。」(4ページ右上欄16行?左下欄2行)
ソ.上記シの「ガラス繊維の繊維は10ミクロン直径を越えない、好ましくは約5ミクロン直径を越えない。こうすれば、万一繊維が成形体から突出ても、細径の繊維は自身が包囲体を突刺し従って断熱パネルの断熱能を損わせる程に十分の強度を呈さない。」との記載からみて、直径が約5ミクロンを超えないような細径のガラス繊維は、包囲体を突刺するほどの強度をもっていないこと理解できる。つまり、ガラス繊維が包囲体を突刺すると、包囲体内の真空度が低下し、断熱性能の低下につながってしまうが、ガラス繊維の直径を5ミクロンよりも小さくすれば、強度が小さいので、ガラス繊維が包囲体を突刺することはないということが理解できる。

(4)引用例4
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-145239号公報(以下、「引用例4」という。)には、「真空断熱材」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
タ.「図1は、本発明の一実施の形態を示す真空断熱材の基本構成を示す断面図である。図1においては、Aは本発明の真空断熱材である。1はガス遮断性を重視したラミネートフィルムで、少なくとも1つのプラスチック層2と1つの金属箔3とを交互に積層させたものからなり、充填材4を被覆しラミネートフィルム1の同縁5をシールして内部を真空に減圧させたものである。
充填材4としては、グラスウールとバインダーを混合させたものである。グラスウールにバインダーを混合させる目的は、グラスウールに強度を与えると共にグラスウールの使用量を少なくしてコストダウンすること、また減圧前後の圧縮による厚み寸法変化を最小限にすることにより作業性の向上をはかるためである。」(段落【0010】、【0011】)
チ.「充填材4に有機系バインダーであるアクリルバインダーを混合させ固め成形させるとすると、有機系バインダーが発生させるガスが真空断熱材内部の真空度を低下させ断熱性能が低下してしまう。このためバインダーの使用量はできるだけ少なく抑えたいが、少なすぎると、充填材4の減圧前後の厚み寸法変化が大きくなり、作業性の向上をはかることはできない。よって、有機系バインダーであるアクリルバインダーの場合、混合比は0.5wt%?5wt%間の値で、望ましくは1wt%?3wt%、一番最適な値は2wt%である。」(段落【0013】)
ツ.「前述のごとく、無機系バインダーは、浸透性が悪いため充填材4の中心部分のグラスウールには浸透しにくく、また有機系バインダーは、発生させるガスのために真空断熱材内部の真空度を低下させ、経時劣化により断熱性能が低下してしまうという問題がある。このため無機系バインダーと有機系バインダーの両方を使用し、グラスウールを固め成形する。充填材4の中心部分のグラスウールに対しては、浸透性のよい有機系バインダーであるアクリルバインダーを使い、充填材4の外側部分にはガスを発生しない無機系バインダのアルミナゾル又はシリカゾルを使用する。その使用割合は、アクリルバインダーを1wt%とし、アルミナゾル又はシリカゾルを3wt%とするのが、最も最適の比率であるが、これらのバインダーの総量が0.5wt%?10wtあれば良い。」(段落【0014】)

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能又は作用等からみて、後者の「断熱マット11」は前者の「コア材」に相当し、以下同様に、「ガス吸着材13」は「ガス吸着剤」に、「アルミ箔のような金属箔19がラミネートされた樹脂フィルム18」は「ガスバリアー性フィルム」に、「外包材14」は「袋体」に、「外包材14の中に入れ」は「袋体に収納し」に、「真空排気し」は「減圧」に、「熱融着部15によって真空封止された」は「密封した」に、「外包材14に入れる前」は「袋体収納前」に、それぞれ相当する。また、本願発明における「塗布」という用語は、本願明細書の「塗布方法としては、無機繊維の製造時に周囲よりスプレーにより塗布する方法、含浸法等がある。」(段落【0023】)との記載からみて、「含浸」を含むことは明らかであるから、引用発明の「フェノール樹脂を含浸させ」は本願発明の「フェノール樹脂を塗布し」に相当する。
また、引用発明の「プレス加工して圧密し、かつバインダーを硬化させることで形成した成形体」は、「プレスして形成した形成体」である限りにおいて、本願発明の「熱プレスして形成した形成体」に相当するから、結局、引用発明の「プレス加工して圧密し、かつバインダーを硬化させることで形成した成形体」と本願発明の「熱プレスして形成した形成体又は該成形体を2枚以上積層したもの」とは、「プレスして形成した形成体又は該成形体を2枚以上積層したもの」である点で一致する。
したがって、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致し、
[一致点]
「コア材及びガス吸着剤をガスバリアー性フィルムよりなる袋体に収納しその内部を減圧、密封した真空断熱材において、前記袋体収納前のコア材が、無機繊維に、該繊維に対しバインダーとしてフェノール樹脂を塗布し、プレスして形成した成形体又は該成形体を2枚以上積層したものである真空断熱材。」

そして、次の点で相違する。
[相違点]
相違点1:本願発明は、「熱プレス」して成形体を形成するのに対して、引用発明は、プレス加工して圧密し、かつバインダーを硬化させることで成形体を形成する点。
相違点2:本願発明の無機繊維は、「平均繊維径3?5μm」であるのに対して、引用発明の無機繊維は、どのくらいの径か明らかでない点。
相違点3: 本願発明は、無機繊維に対しバインダーとして「O.5?1.5重量%」のフェノール樹脂を塗布するのに対して、引用発明は、無機繊維に対しバインダーとしてどのくらいの量のフェノール樹脂を含浸(塗布)するのか明らかでない点。

5.判断
次に上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明は、繊維に対しバインダーとしてフェノール樹脂を含浸させ、プレス加工して圧密し、かつバインダーを硬化させることで成形体を形成するものである。そして、フェノール樹脂は熱硬化性樹脂であるから、フェノール樹脂を硬化させるためには、何らかの手段で加熱することが必要であることは技術常識である。
そうすると、引用発明において、「プレス加工して圧密し、かつバインダーを硬化させること」を「熱プレス」によって行うようにすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
したがって、上記相違点1に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
コア材及びガス吸着剤をガスバリアー性フィルムよりなる袋体に収納しその内部を減圧、密封した真空断熱材であって、コア材が無機繊維に有機バインダーを塗布して形成した形成体である真空断熱材において、無機繊維として、平均繊維径3?5μm程度のものを採用することは、例えば引用例2(上記キの「平均直径が1μm以上5μm以下の無機繊維」との記載参照)及び引用例3(上記シの「繊維は10ミクロン直径を越えない、好ましくは約5ミクロン直径を越えない。」との記載参照)などに示されるように、従来周知の事項であったということができる。しかも、引用例3には、5μmを超えないような細径の無機繊維は、袋体を突刺するほどの強度を有していないということが記載されている(上記ソ参照)。そして、真空断熱材において、仮に袋体が無機繊維によって突刺されるようなことがあれば、真空度の低下を招き、断熱性能を損なうことは明らかである。
そうすると、引用発明において、上記周知技術を適用し、無機繊維の平均繊維径を3?5μmとすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

(3)相違点3について
引用例4には、有機バインダーは、発生させるガスのために真空断熱材内部の真空度を低下させ、経時劣化により断熱性能が低下してしまうという問題があり、この問題を解決するには、有機バインダーの使用量をできるだけ少なく抑える必要があること、そのために、バインダーの使用量として、無機繊維に対し0.5?5wt%のバインダーを使用するのが望ましい旨記載されている(上記チ及びツ参照)。
そして、引用発明と引用例4に記載された発明とは、どちらも真空断熱材に関する点で属する技術分野が共通し、断熱性能の低下を抑える点で課題が共通する。
そうすると、引用発明において、断熱性能の低下を抑えるために、引用例4に記載された発明に倣って、有機バインダーの使用量をできるだけ少なく抑えるようにすることは、当業者が容易に想到できたことであり、その際に、有機バインダーが発生させるガスの量を考慮し、具体的な数値範囲として0.5?1.5重量%の数値範囲を選択することは、実験等を通じて当業者が適宜なし得ることであり設計的事項にすぎないというべきである。
したがって、上記相違点3に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明、引用例2ないし引用例4に記載された発明、及び上記周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用例2ないし引用例4に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の中で「本願発明は、要すればコア材とガス吸着剤をガスバリア性フィルムの袋体に収納して袋体の内部を減圧,密封した形態の真空断熱材において、前記コア材に平均径3?5μmの無機繊維を用いると共にその繊維に極く微量(0.5?1.5重量%)のフェノール樹脂をバインダーとして塗布し、これを熱プレスにかけた成形体を用いることに特徴を有するものです。
この結果、プレス成形とすると硬くなりがちな無機繊維の表面層の樹脂量(バインダーを低くすることができ、袋に入れてからの減圧時間にかかる原因である固体層を少なくし、かつ、所定量の無機繊維の厚みを薄くできハンドリングが容易になるという、本願発明固有の効果が得られるものでありますが、かかる構成,効果については、各原審引例1?7(当審注:「原審引例1?4」は本審決における「引用例1?4」である。)には、何らの記載も示唆も認められません。」(「4.まとめ」の項参照)と主張する。
しかしながら、引用例4には、有機バインダーがガスを発生させることから、断熱性能の低下を防ぐには、有機バインダーの使用量をできるだけ低く抑えることが望ましいということが記載又は示唆されており、この記載又は示唆に従って引用発明に引用例4記載の発明を適用し、引用発明におけるバインダーの量を少なくすることは当業者が容易に想到できたことであることは、上記「(3)相違点3について」の項で述べたとおりである。また、引用例1には「有機バインダーを使用しない無機繊維をアルミ箔ラミネート樹脂フィルムに入れることは、繊維がかさばるため、非常な困難を伴う。」(上記ア参照)と記載されていることからも明らかなように、無機繊維に有機バインダーを含浸させてプレス成形することにより、所定量の無機繊維の厚みを薄くでき、ハンドリングが容易になることは明らかである。また、「バインダは、成形体に平滑な表面を与える役目をすると共に、個々の繊維を然るべく合着状態に保持する役目もなす。」(引用例3の上記ス参照)ものであるから、バインダーを少なくすれば、減圧時間を短縮することができることは当業者にとって自明の事項である。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2ないし引用例4に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、本願発明が特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-13 
結審通知日 2010-09-14 
審決日 2010-09-28 
出願番号 特願2003-99552(P2003-99552)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 刈間 宏信  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 山岸 利治
大山 健
発明の名称 真空断熱材及びその製造方法  
代理人 樋口 盛之助  
代理人 原 慎一郎  
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