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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1227141
審判番号 不服2008-2459  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-05 
確定日 2010-11-15 
事件の表示 特願2002-364494「カジノが設置されたホテルにおける各種提供サービスの管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-199206〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年12月16日の出願であって、平成19年12月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月4日付で手続補正がなされ、平成22年4月2日付けで審尋がなされたものである。なお、この審尋に対して回答はなされていない。

2.平成20年3月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年3月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本願補正発明
平成20年3月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「カジノが設置されたホテル内において、利用者を特定できるハウスカードを発行し、このハウスカードを用いて利用者に提供する各種のサービスを管理する管理システムであって、
前記利用者に対し、その利用者を特定できる情報を記録したハウスカードを発行するハウスカード発行部と、
前記ハウスカード発行部により発行されたハウスカードを読み取るためのカードリーダから取得した、そのハウスカード利用者の情報を管理するとともに、その情報に含まれる利用者のサービス利用額をそのまま記憶して料金清算に備えるハウスカードサーバと、
前記ハウスカードを所有する利用者に、そのハウスカード利用者のカジノ内での利用限度を定めると共に、前記ハウスカードを所有する利用者によって定められるカジノサービス提供部でのサービス利用額についてのデポジット情報を、カードリーダから取得した利用者を識別する情報を用いて管理するカジノデポジット管理サーバと、を有し、
前記カジノデポジット管理サーバは、利用者によるデポジットの引き落としに際しては前記ハウスカードサーバとの間で引き落としに関する処理を行なうことなく、あらかじめ設定されたデポジット利用制限条件に基づいて、その利用者のカジノサービス提供部での利用を制限し、カジノでのデポジットの引き落としが前記前記カジノデポジット管理サーバ内でのみ処理されることを特徴とする、カジノが設置されたホテルにおける各種提供サービスの管理システム。」
と補正された。
「と」を「との間で」に変更する補正事項は、実施的に内容を変更するものでないから、請求項1に係る本件補正は、実質的に、「カジノでのデポジットの引き落としが前記前記カジノデポジット管理サーバ内でのみ処理される」を追加する補正事項であり、当該補正事項は、補正前の請求項1に記載された「引き落としに関する処理」との事項に「カジノでのデポジットの引き落としが前記前記カジノデポジット管理サーバ内でのみ処理される」との限定を付加して、限定的に減縮するものと認められるので、請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第02/97695号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)「リゾート地やレジャー複合施設においてホテルやカジノやショッピングモールといった施設のそれぞれで共通に利用できるような支払い手段を提供する。利用者は、典型的にはホテルの客(1)であり、チェックインの際にクレジットカードを使うなどして所定の金額を予納/デポジットして(S101-S102)ルームキーやカードの形で識別媒体(60)を受け取る(S103)。ホテルのコンピュータは、客レコードを、デポジットされている金額を含めて管理し、客が施設で支払うとき(S104)には、施設の端末からオンライン照会を受けてデポジット残高のチェックと承認を行い、ホテルとその施設との間の決済を行う(S105)。利用条件については、施設に共通の/個別の上限金額や不適用施設や有効期限など、任意の制約が設定されうる。客はホテルをチェックアウトする際には残高分を換金できる(S106)。」(要約の欄)

(b)「本実施形態に係る多施設決済システムは、例えば、ラスベガスに見られるようなホテル、カジノ、ショッピングモール等の複合型総合レジャー地域若しくは複合型総合レジャー施設で使用される決済システムである。
図1を用いて、本実施形態に係る多施設決済システムを用いた決済方法の全体的な流れを説明する。
ステップ101において、顧客1は、金融機関(店舗又はATM)2で、キャッシュカードによる引き落としや、クレジットカード等によるキャッシングによって、所定額の金銭を取得する。
ステップ102において、顧客1は、例えば、ホテル3のチェックインの際に、用意した所定額の金銭を、当該ホテル3に予納(デポジット)する。ここで、顧客1は、ホテル3において、クレジットカードやデビットカードを利用して、直接、所定額の金銭を予納してもよい。
ステップ103において、ホテル3は、各施設4A乃至4Dで使用可能な多施設共通携帯識別媒体(ルームキー若しくはホテル3独自のホテルカード等)60を発行する。
また、ステップ103において、ホテル3は、顧客1のクレジットカードやデビットカードを、各施設4A乃至4Dで統一決済可能にしてもよい。かかる場合、顧客のクレジットカード又はデビットカードが、上述の多施設共通携帯識別媒体60に該当する。
ステップ104において、顧客1は、ホテル3内の各施設4A乃至4D、又はホテル3と提携関係にあるカジノ、ショッピングモール、遊技施設、免税店等の各施設4A乃至4Dにおいて、サービス提供の対価や物品購入の代金を支払う際に、多施設共通携帯識別媒体60を提示する。
ステップ105において、各施設4A乃至4Dは、当該多施設共通携帯識別媒体の識別情報に基づいて、ホテル3に予納されている予納金の範囲で、当該施設4A乃至4Dにおける使用金額を決済する。
ステップ106において、顧客1は、例えば、ホテル3のチェックアウトの際に、予納金の決裁残金を受ける(残金を受領する)。」(明細書第9頁第11行-第10頁第14行)

(c)「ホテルコンピュータ20は、例えば、ホテル3のカウンタやカウンタの裏側等に設置されている。ホテルコンピュータ20は、複数の施設に設けられた複数の施設端末と通信可能に構成されている管理装置を構成する。ホテルコンピュータ20は、本実施形態に係る多施設決済システム10の決済処理を中心的に行う装置である。
具体的には、ホテルコンピュータ20は、各施設端末40A乃至40Dからの決済要求を受け、決済応答の返信する機能を主たる機能としている。ホテルコンピュータ20は、1台の構成であっても良く、複数台の分散処理構成であっても良く、機能的には、後述する図3に示すような構成を有する。
ホテルコンピュータ20は、図3に示すように、制御部21と、入力部22と、表示部23と、印刷部24と、データベース25と、対施設通信部26と、対金融機関通信部27と、ホテルカードリーダライタ28と、金融機関カードリーダ29とを具備している。
本実施形態において、ホテルカードリーダライタ28が、顧客1に対して携帯識別媒体60を発行する携帯識別媒体発行部を構成する。また、データベース25が、顧客の識別情報と、顧客1によって予納(デポジット)されている金額を示す予納残高と、携帯識別媒体の識別情報とを関連付けて記憶する記憶部を構成する。また、制御部21が、施設端末40から携帯識別媒体の識別情報及び決済金額を含む決済要求を受信した場合、携帯識別媒体の識別情報に関連付けられている予納残高と決済金額とを比較することによって携帯識別媒体60を用いて決済を行うことができるか否かを判定する判定部を構成する。また、対施設通信部26が、判定結果を含む決済応答を施設端末40に送信する決済応答送信部を構成する。また、制御部21が、上述の決済を行うことができると判定した場合、データベース25に記憶されている予納残高を更新する更新部を構成する。また、対施設通信部26が、上述の決済を行うことができると判定した場合、決済金額について施設端末40との間で清算する清算部を構成する。」(明細書第11頁第2行-第12頁第5行)

(d)「施設利用可能残高25a5の情報フィールドには、そのときどきの、多施設決済システム10に含まれる施設4A乃至4Dで利用可能な金額の情報(第1の施設利用可能残高)が格納されている。
また、データベース25は、施設4A乃至4Dごとに利用可能な金額(第2の施設利用可能残高)を記憶していても良い。」(明細書第13頁第25行-第14頁第4行)

(e)「すなわち、ホテルコンピュータ20は、図4に示した顧客特定情報14a1の情報フィールドからホテルカード発行枚数14a6の情報フィールドまでの情報を設定する。
なお、この際、図示しない予約管理用のデータベースからの情報を流用するようにしても良い。
また、施設利用可能残高14a5の情報フィールドについては、予納金情報14a3の情報フィールド及び宿泊費14a4の情報フィールドに設定されている情報から自動演算で設定させるようにしても良い。
ステップ703において、ホテルコンピュータ20は、ホテルカードリーダライタ28を介して1枚のホテルカード60を発行する。」(明細書第21頁第1行-同頁第10行)

(f)「第2に、1が施設4A乃至4Dにおいてサービス提供や物品購入のための対価支払いを行う場合のホテルコンピュータ20及び施設端末40A乃至40Dの動作を、図8のシーケンス図を参照しながら説明する。
ステップ801において、施設4のレジ係が、顧客1が所持しているホテルカード60を施設端末40のホテルカードリーダライタ45に読み取らせる。
ここで、施設4においてサービス提供料金や物品料金などが一律である場合には、施設端末40は、制御部41に記憶されている料金額を決済金額として利用できる。一方、施設4においてサービス提供料金や物品料金などが異なる場合には、レジ係が、入力部42を操作して決済金額を入力する必要がある。
ステップ802において、施設端末40は、ホテルカード60から読み取ったホテル3の識別情報やホテルカード20の識別情報と、制御部41で内部管理している施設4の識別情報と、決済金額の情報とを含む決済要求を形成して、ホテルコンピュータ20に送信する。
ステップ803において、このような決済要求を受信したホテルコンピュータ20は、ホテルカード60に係る、顧客データベース25aに記憶されているレコードに基づいて、当該決済要求に係る決済が可能か否かを判別する。
ここで、当該決済が「不可」であると判断するのは、例えば、以下の通りである。
第1に、顧客データベース25aにおける施設利用可能残高14a5が、今回求められている決済金額より小さい場合である。第2に、決済要求に係るホテルカード60が、顧客データベース25aにおけるホテルカード有効期限25a8を越えているものである場合である。第3に、決済要求を送信した施設4が、顧客データベース25aにおける不適用施設25a9に該当する場合である。第4に、決済要求に係るホテルカード60が、顧客データベース25aに設定されていない場合(すなわち、決済要求に係るホテルカード60を識別するホテルカード識別情報25a7が顧客データベース25a内に存在しない場合)等である。
以上のような決済が「不可」であるという条件に該当せず、決済を実行できる場合には、ステップ804において、ホテルコンピュータ20は、当該決済要求に係る決済内容に応じて、顧客データベース25aの内容を更新し、ステップ805において、施設データベース25bの内容を更新し、ステップ806において、施設端末40に向けて、当該決済要求に対する許可を示す決済応答を返信する。
ステップ804での顧客データベース25aの更新では、施設利用可能残高14a5を今回の決済金額だけ減少させたり、ホテルカード60別の施設利用総額14a10を今回の決済金額だけ増大させたり、施設利用履歴14a11に今回の決済に係る履歴内容を追加したりする。
また、ステップ805での施設データベース25bの更新では、利用者数14b5を1だけ増大させると共に、利用総額14b6を今回の決済金額だけ増大させる。
ステップ807において、許可を示す決済応答が返信された施設端末40は、上述の決済が許可された旨を、例えば、表示部43によって報知し、ステップ808において、ホテルカード60に今回の履歴を書き込んでホテルカード60を排出する。
決済が許可された旨の報知を認識したレジ係は、顧客1に対する館内の立ち入りを認めたり、購入希望物品の引き渡しを行ったりなどする。また、排出されたホテルカード60を顧客1に返却する。」(明細書第22第3行-第24頁第3行)

(g)「ホテルカード60は、ICカードや磁気カードなどの書き込みが可能なものだけでなく、読み取り専用のものであっても良く、決済に係る顧客1を識別できるものであれば任意である。」(明細書第32頁第17行-同頁第19行)

そして、引用例1の記載において、図4の記載からみて、「顧客特定特定14a1」、「予納金情報14a3」、「宿泊費14a4」、「施設利用残高14a5」等は、「顧客特定特定25a1」、「予納金情報25a3」、「宿泊費25a4」、「施設利用残高25a5」等の誤記であることは明らかである。
そうすると、引用例1には、
『ホテル及びカジノを含む複合型総合レジャー施設において、
「顧客(1)」を識別できる「ホテルカード(60)」を発行し、
「ホテルカード(60)」を用いてサービス提供や物品購入のための支払いを行う多施設決済システムであって、
「顧客(1)」に対し、利用する「顧客(1)」を識別できる識別情報を記録した「ホテルカード(60)」を発行する「ホテルカードリーダライタ(28)」と、
「ホテルカードリーダライタ(28)」により発行された「ホテルカード(60)」を読み取るための「ホテルカードリーダライタ(45)」から取得した「ホテルカード(60)」の識別情報と、決済金額の情報に基づいて、施設を利用する「顧客(1)」の予納金に基づく「施設利用可能残高(25a5)」を決済金額分減少させて利用を管理する「ホテルコンピュータ(20)」であって、
「ホテルカード(60)」を所持する「顧客(1)」に、予納金の情報に基づいてカジノを含む施設での施設利用前の「施設利用可能残高(25a5)」を設定するとともに、
「ホテルカード(60)」を所持する「顧客(1)」毎の「施設利用可能残高(25a5)」を「ホテルカード(60)」から読み取ったホテルカードの識別情報と対応させて管理する「ホテルコンピュータ(20)」と、を有し、
「ホテルコンピュータ(20)」は、「施設利用可能残高(25a5)」がサービス提供毎の決裁金額よりも小さいという条件に基づいて、その顧客の施設での支払いを制限する、
ことを特徴とするホテル及びカジノを含む複合型総合レジャー施設における多施設決済システム。』
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)対比
本願補正発明と引用発明を比較すると、引用発明の「ホテル及びカジノを含む複合型総合レジャー施設」は、本願補正発明の「カジノが設置されたホテル」に相当し、以下同様に、「ホテルカード(60)」は「ハウスカード」に、「サービス提供や物品購入のための支払いを行う多施設決済システム」は「利用者に提供する各種のサービスを管理する管理システム」に、「顧客(1)」は「ハウスカード利用者」に、「ホテルカードリーダライタ(28)」は「ハウスカード発行部」に、「ホテルカードリーダライタ(45)」は「カードリーダ」に、「施設利用可能残高(25a5)がサービス提供毎の決裁金額よりも小さいという条件」は「デポジット利用条件」に、「施設利用前の施設利用可能残高(25a5)」は「利用限度」に、「ホテルカードの識別情報」は「利用者を識別する情報」に、それぞれ相当する。
また、「ハウスカードサーバ」及び「カジノデポジット管理サーバ」、と「ホテルコンピュータ20」とは「利用者の支払いを管理するサーバ」という点で共通している。

してみると、本願補正発明と引用発明は、
「カジノが設置されたホテル内において、利用者を特定できるハウスカードを発行し、このハウスカードを用いて利用者に提供する各種のサービスを管理する管理システムであって、
前記利用者に対し、その利用者を特定できる情報を記録したハウスカードを発行するハウスカード発行部と、
前記ハウスカード発行部により発行されたハウスカードを読み取るためのカードリーダから取得した、そのハウスカード利用者の情報を管理するとともに、その情報に含まれる利用者のサービス利用額を用いて利用者の支払いを管理するサーバと、
前記ハウスカードを所有する利用者に、そのハウスカード利用者のカジノを含む施設内での利用限度を定めると共に、前記ハウスカードを所有する利用者によって定められるカジノを含む施設内でのサービス利用額についてのデポジット情報を、カードリーダから取得した利用者を識別する情報を用いて管理する利用者の支払いを管理するサーバと、を有し、
前記利用者の支払いを管理するサーバは、デポジット利用制限条件に基づいて、その利用者のカジノを含む施設内での利用を制限することを特徴とする、カジノが設置されたホテルにおける各種提供サービスの管理システム。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では、利用者の支払いを管理するサーバを、利用者のサービス利用額をそのまま記憶して料金清算に備えるハウスカードサーバと、カジノサービス提供部でのサービス利用を利用限度に従ってデポジットから引き落として管理するカジノデポジット管理サーバとで構成するとともに、デポジットの引き落としに際しては、ハウスカードサーバとの間で引き落としに関する処理を行なうことなく、カジノデポジット管理サーバ内でのみ処理されるのに対して、引用発明では、利用者の支払いを管理するサーバを、ホテルコンピュータ20単体で構成しており、当該ホテルコンピュータ20で全てのサービス利用を管理しており、カジノでの利用を管理するための別のサーバを設けておらず、複数のサーバ間での処理については何ら記載が無く、また、全ての支払いに対してデポジットに基づく利用制限を行っており、本願のハウスカードサーバのように利用者のサービス利用額をそのまま記憶して料金清算を行っていない点。

(4)当審の判断
(相違点1について)
引用例1の摘記事項(c)には、「ホテルコンピュータ20は、1台の構成であっても良く、複数台の分散処理構成であっても良く、機能的には、後述する図3に示すような構成を有する。」と記載されていることから、「ホテルコンピュータ(20)」が提供する機能を複数の装置で分散処理することが示唆されており、また上記摘記事項(a)及び(b)からみて、利用施設毎に支払いを管理することが記載されており、また、ホテル等において、利用額を蓄積して後から清算することは周知事項であり(例えば、特開平11-227369号公報の段落【0014】、【0037】、【0038】等参照。)、カジノの施設において、予め預けた金額から利用した金額を引き落とすことにより、預けた金額以上の利用を制限することは周知事項であり(例えば、特開平7-88253号公報の段落【0004】、【0011】等参照。)、また、どの施設サービスの利用に利用制限を加えるかは設計的事項であるので、引用発明において、利用者の支払いを管理するサーバを、カジノ以外の施設の利用のための、利用者のサービス利用額をそのまま記憶して料金清算に備えるハウスカードサーバと、カジノの施設の利用のための、サービス利用を利用限度に従ってデポジットから引き落として管理するカジノデポジット管理サーバとで構成し、デポジットの引き落としに際しては、ハウスカードサーバとの間で引き落としに関する処理を行なうことなく、カジノデポジット管理サーバでのみ処理するようにして、カジノ以外の施設の利用には制限を加えず、カジノの施設には利用の制限を加えるようにすることは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成20年3月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年9月21日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「カジノが設置されたホテル内において、利用者を特定できるハウスカードを発行し、このハウスカードを用いて利用者に提供する各種のサービスを管理する管理システムであって、
前記利用者に対し、その利用者を特定できる情報を記録したハウスカードを発行するハウスカード発行部と、
前記ハウスカード発行部により発行されたハウスカードを読み取るためのカードリーダから取得した、そのハウスカード利用者の情報を管理するとともに、その情報に含まれる利用者のサービス利用額をそのまま記憶して料金清算に備えるハウスカードサーバと、
前記ハウスカードを所有する利用者に、そのハウスカード利用者のカジノ内での利用限度を定めると共に、前記ハウスカードを所有する利用者によって定められるカジノサービス提供部でのサービス利用額についてのデポジット情報を、カードリーダから取得した利用者を識別する情報を用いて管理するカジノデポジット管理サーバと、を有し、
前記カジノデポジット管理サーバは、利用者によるデポジットの引き落としに際しては前記ハウスカードサーバと引き落としに関する処理を行なうことなく、あらかじめ設定されたデポジット利用制限条件に基づいて、その利用者のカジノサービス提供部での利用を制限する、ことを特徴とする、カジノが設置されたホテルにおける各種提供サービスの管理システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「引き落としに関する処理」の限定事項である「カジノでのデポジットの引き落としが前記前記カジノデポジット管理サーバ内でのみ処理される」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-03 
結審通知日 2010-09-09 
審決日 2010-09-22 
出願番号 特願2002-364494(P2002-364494)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 須田 勝巳
松田 直也
発明の名称 カジノが設置されたホテルにおける各種提供サービスの管理システム  
代理人 水野 浩司  

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