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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1227157
審判番号 不服2007-16815  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-15 
確定日 2010-11-19 
事件の表示 特願2002- 97091「多言語間会話支援システム構成法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月17日出願公開、特開2003-296325〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年3月29日に特許出願したものであって、平成19年5月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月15日に拒絶査定不服審判が請求され、同年7月17日に手続補正がなされたものである。


第2.平成19年7月17日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年7月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の概要
平成19年7月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲が、
「【請求項1】
1段ないし複数段の言語単位選択枝を電子的に表示する手段と、前記言語単位選択枝により選択された1個ないし複数の言語単位を電子的に表示する手段を備えた複数の言語間の会話を支援する多言語間会話支援システムにおいて、
表示に利用する概念を無国籍のデータとして使用目的により分類管理する第1の手段と、
前記電子的に表示するときの表示言語を選択する第2の手段と、
前記概念を前記表示言語で表示するための画像ファイルと音声ファイルのいずれかのファイル群を格納する第3の手段と、
前記ファイル群のファイル名称と格納場所の名称のいずれかあるいは両方が前記概念と前記使用目的と前記表示言語とファイル種別により管理され、前記概念、前記表示言語と前記ファイル種別によりリンクさせ、前記表示する手段に表示させる、
ことを特徴とする多言語間会話支援システム構成法。
【請求項2】
1段ないし複数段の言語単位選択枝を電子的に表示する手段と前記言語単位選択枝により選択された1個ないし複数の言語単位を電子的に表示する手段を備えた複数の言語間の会話を支援する多言語間会話支援システムにおいて、
表示に利用する概念を無国籍のデータとして使用目的により分類管理する第1の手段と、前記電子的に表示するときの表示言語を選択する第2の手段と、
前記概念を前記表示言語で表示するための画像ファイルと音声ファイルの両方のメディア種別のファイル群を格納する第3の手段と、前記ファイル群のファイル名称と格納場所の名称のいずれかあるいは両方が前記概念と前記使用目的と前記表示言語とファイル種別により管理され、前記概念、前記表示言語と前記ファイル種別によりリンクさせ、前記表示する手段に表示させる、
ことを特徴とする多言語間会話支援システム構成法。
【請求項3】
複数の言語間の会話を支援する多言語間会話支援システムにおいて、
表示に利用する概念に関する概念データを国籍に無関係な無国籍データとして分類管理する第1の手段と、
前記概念に対応した表示言語データを格納する第2の手段と、
前記無国籍データと前記表示言語データとをファイル名等によりリンクさせるような制御を行う制御部と
を備えている
ことを特徴とする多言語間会話支援システム。」

であったものを、

「【請求項1】
1段ないし複数段の言語単位選択枝を電子的に表示する手段と、前記言語単位選択枝により選択された1個ないし複数の言語単位を電子的に表示する手段を備えた複数の言語間の会話を支援する多言語間会話支援システムにおいて、
選択肢表示や言語単位表示に利用する言葉の概念を無国籍のデータとして使用目的により分類管理する第1の手段と、
前記電子的に表示する手段に表示するときの表示言語を選択する第2の手段と、
前記言葉の概念を前記表示言語で表示するための画像ファイルと音声ファイルのいずれかのファイル群を格納する第3の手段と、
前記ファイル群のファイル名称と格納場所の名称のいずれかあるいは両方が前記概念と前記使用目的と前記表示言語とファイル種別により管理され、
前記言葉の概念、前記表示言語、及び、前記ファイル種別により、前記第1の手段と前記第3の手段をリンクさせ、
これによって、前記選択された複数の表示言語における概念データを前記第1の手段で管理し、前記複数の表示言語に関わるデータをファイル名称、格納場所の名称により前記第3の手段で管理する
ことを特徴とする多言語間会話支援システム構成法。
【請求項2】
1段ないし複数段の言語単位選択枝を電子的に表示する手段と前記言語単位選択枝により選択された1個ないし複数の言語単位を電子的に表示する手段を備えた複数の言語間の会話を支援する多言語間会話支援システムにおいて、
選択肢表示や言語単位表示に利用する言葉の概念を無国籍のデータとして使用目的により分類管理する第1の手段と、
前記電子的に表示する手段で表示するときの表示言語を選択する第2の手段と、
前記言葉の概念を前記表示言語で表示するための画像ファイルと音声ファイルの両方のメディア種別のファイル群を格納する第3の手段と、
前記ファイル群のファイル名称と格納場所の名称のいずれかあるいは両方が前記概念と前記使用目的と前記表示言語とファイル種別により管理され、前記言葉の概念、前記表示言語、及び前記ファイル種別により、前記第1の手段と前記第3の手段をリンクさせ、
これによって、前記選択された複数の表示言語における概念データを前記第1の手段で管理し、前記複数の表示言語に関わるデータをファイル名称、格納場所の名称により前記第3の手段で管理する
ことを特徴とする多言語間会話支援システム構成法。
【請求項3】
複数の言語間の会話を支援する多言語間会話支援システムにおいて、
選択肢表示や言語単位表示に利用する言葉の概念に関する概念データを国籍に無関係な無国籍データとして分類管理する第1の手段と、
前記言葉の概念に対応した表示言語データを前記複数の言語に対応して格納する第2の手段と、
前記言葉の概念を前記表示言語で表示するファイル群をファイル名称、フォルダ名称で格納するコンテンツファイル群と、
前記無国籍データと前記表示言語データとをファイル名称、フォルダ名称等によりリンクさせる制御を行う制御部と
を備えている
ことを特徴とする多言語間会話支援システム。」

とするものであり、
補正前の請求項1の「・・・よりリンクさせ、前記表示する手段に表示させる、ことを特徴とする」を「・・・より、・・・をリンクさせ、これによって、・・・を前記第1の手段で管理し、・・・を・・・により前記第3の手段で管理することを特徴とする」に代え、補正前の請求項2の「・・・よりリンクさせ、前記表示する手段に表示させる、ことを特徴とする」を「・・・より、・・・をリンクさせ、これによって、・・・を前記第1の手段で管理し、・・・を・・・により前記第3の手段で管理することを特徴とする」に代え、補正前の請求項3に「前記言葉の概念を前記表示言語で表示するファイル群をファイル名称、フォルダ名称で格納するコンテンツファイル群と、」という記載を追加する補正とを含むものである。

2.補正の適否
補正前の請求項1の「・・・よりリンクさせ、前記表示する手段に表示させる、ことを特徴とする」を「・・・より、・・・をリンクさせ、これによって、・・・を前記第1の手段で管理し、・・・を・・・により前記第3の手段で管理することを特徴とする」に代える補正は、「多言語間会話支援システム構成法」という方法の発明において、補正前の、「・・・よりリンクさせ、前記表示する手段に表示させる、」という発明特定事項を削除したものというほかなく、この点において、この補正は補正前の請求項1に記載された発明を特定するための事項を限定するものには該当しない。
同じく、補正前の請求項2の「・・・よりリンクさせ、前記表示する手段に表示させる、ことを特徴とする」を「・・・より、・・・をリンクさせ、これによって、・・・を前記第1の手段で管理し、・・・を・・・により前記第3の手段で管理することを特徴とする」に代える補正は、「多言語間会話支援システム構成法」という方法の発明において、補正前の、「・・・よりリンクさせ、前記表示する手段に表示させる、」という発明特定事項を削除したものというほかなく、この点において、この補正は補正前の請求項2に記載された発明を特定するための事項を限定するものには該当しない。
請求項3において、「前記言葉の概念を前記表示言語で表示するファイル群をファイル名称、フォルダ名称で格納するコンテンツファイル群」という構成を追加する補正は、補正前の請求項3には該構成に対応する「コンテンツファイル群」の記載がないこと、及び補正前の請求項3の発明を特定するための事項である「第1の手段」、「第2の手段」、「制御部」との従属関係が特定されているものでもないことから、この補正によって、新たな請求項3の発明を特定するための事項である「コンテンツファイル群」を追加することとなったというほかない。したがって、この補正は補正前の請求項3に記載された発明を特定するための事項を限定するものには該当しない。

したがって、これらの補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に定める「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものには該当しない。

また、これらの補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするもの)を目的とするもののいずれにも該当しないのは明らかである。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年7月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成19年4月26日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、該請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「複数の言語間の会話を支援する多言語間会話支援システムにおいて、
表示に利用する概念に関する概念データを国籍に無関係な無国籍データとして分類管理する第1の手段と、
前記概念に対応した表示言語データを格納する第2の手段と、
前記無国籍データと前記表示言語データとをファイル名等によりリンクさせるような制御を行う制御部と
を備えている
ことを特徴とする多言語間会話支援システム。」

2.引用例
(1)引用例1
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された山田他「異言語間コミュニケーション支援システムの提案」武蔵工業大学 環境情報学部 情報メディアセンタージャーナル、No.2、p.40-45(2001.04)(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(あ)「株式会社エビデンスの出版事業部門が刊行する書籍「旅の指さし会話帳」シリーズ(株式会社情報センター出版局刊)は絵と文字を指でさすことにより,日本語と異言語間のコミュニケーションを支援するメディアであり,日本の若者たちに人気を得ているが,音声の利用やインターネットおよびモバイルサービスとの組み合わせにより,より広範囲なサービスの提供と効用が期待できる.本論文ではこの「指さし会話帳」をネットワークサービスとして利用できるようにするために,マルチメディアを駆使し,インターネットと次世代携帯電話を組み合わせた異言語間コミュニケーション支援システムを提案する.」(40頁上段)

(い)「3 異言語間コミユニケーション支援システム
3.1考え方
本システムでは,アイコンを中心にした多言語間のコミュニケーションの支援システムを構築する.話者Aはコミュニケーションを行おうとする相手の話者Bに対してモバイル端末を提示し,そのモバイル端末に順次アイコン等を表示しマルチメディアを駆使してコミュニケーションを進展させていく(図2).話者Aは言語Aを理解し,話者Bは言語Bを理解するものとする.
モバイル端末には,原則として言語セットを表示する.言語セットは 1)ある言葉に関連するアイコン,2)言語Aによる文字表記,3)言語Bによる文字表記,4)言語Bの当該語句に対応する言語Aによる発音表記,5)言語Bによる音声 からなる.例えば,言語Aが日本語,言語Bがインドネシア語であり,ある言葉を病院とした場合の言語セットは図3のようになる.図3で赤十字マークが「病院」のアイコンである.音声は図3では表示できないが.音声ファイルもセットになっており,「ルマサキッ」をハイパーリンクにしておき,そのハイパーリンクを選択することにより,音声が発生されるようにしておく.同様に「○○へ行きたい」という表現に対する言語セットとして例えば図4が考えられる.
このような言語セットをモバイル端末に表示する方法は種々考えられる.例えば,ある分野ごとに関連する言語セットをまとめて表示し,その表示画面の中に話者Aが想定した言語セットがあれば,その言語セットを選択してコミュニケーションに活用する方法が考えられる.図5はその一例であり,分野として,「あいさつ」,「移動」,「数字・買い物」などが表示されている.各分野の中はさらにいくつかの分野に分かれ,例えば,「移動」分野の中の「出かける」を選択すると,図5の下半分に関連する言語セットが表示される.ここで,日本人の話者Aはインドネシア人の話者Bに対して.まず「病院」の言語セットを示し,次に「○○へ行きたい」の言語セットを選択し示すことにより,「病院へ行きたい」という意思を相手に伝えることができ,コミュニケーションが成立する.
本システムでは,アイコンがコミュニケーションの中心であり.各言語に共通な理解しやすいアイコンをどうデザインするかが大きな研究課題となる.場合によっては,使用する言語間である言葉に対応する理解されやすいアイコンが異なる可能性もある.その場合は,言語によってアイコンを変える必要も出てくる.この点は今後の研究課題である.」(41頁左欄21行?43頁左欄4行)

(う)「3.2 システムの構造
(1)言語セットの構造
本システムの基本となる言語セットはリレーショナルデータベースの考えにもとづき構成する.言語セットの構造の例を表1-表6に示す.表1はアイコンテーブルであり,単語IDフィールド,アイコンフィールドと説明フィールドからなる.単語IDは単語を一意に識別するための識別コードである.アイコンフィールドには,汎用アイコンの画像ファイルを格納する.表2は日本語テーブルであり,単語IDフィールド,文字フィールド,音声フィールド,固有アイコンフィールド,日本語よみフィールド,インドネシア語よみフィールド,中国語よみフィールドなどと続く.文字フィールドにはその単語の日本語による文字を格納し,音声フィールドには,その単語の音声ファイルを格納する.固有アイコンフィールドには,汎用アイコンとは別に,日本語文化圏でより理解されやすいアイコンがある場合にそのアイコンの画像ファイルを格納する.日本語よみフイールドには日本語でのよみを格納する.インドネシア語よみフィールドにはインドネシア語でのよみを格納する.表3はインドネシア語テーブルであり,日本語テーブルと同様のテーブル構成とする.
同様に,中国語テーブル,韓国語テーブルおよびベトナム語テーブルを作成する.
表4に主分野テーブルの構造を示す.主分野IDフイールドと日本語分野名フィールド,インドネシア語分野名フィールド等からなる,
表5に分野フィールドの構造を示す.これは,主分野をさらに細かい分野に分類したものである.
表6に単語別分野テーブルの構造を示す.この例では,単語ID=101の単語が分野ID=0201と,分野ID=0405の二つの分野に関連することを示す.
(2)システム構成
図6に本システムのシステム構成法を示す.基本的には,モバイル端末,携帯電話網とインターネットおよびサーバからなる.携帯電話網としてNTTDoCoMoの次世代携帯電話を基本に考えるが,現行のiモード端末とiモード用携帯電話網も対象とする.その場合は,表示画面が小さいことから,アイコン等の表示を簡略化する必要がある.
(3)プログラム構成
図7にサーバのプログラム構成法を示す.概略,OS部,データベース部,WWW制御部からなり,WWWの技術を使って,モバイル端末との間でマルチメディアの表示制御を行う部分である.アプリケーション部は,本システムの固有のサービスをデータベースと連携しながら行う部分である.
図8にアプリケーション部の構成図を示す.」(43頁左欄5行?44頁右欄13行)

(え)「3.3 システム機能
a)図8のデータベース更新制御では,言語セットとなるデータベースを日本語,インドネシア語,中国語,韓国語,ベトナム語について作成し,必要に応じて修正・追加をインターネット経由でパソコンから行う.
b)図8の会員管理では,本システムで提供する異言語間コミュニケーション支援サービスを有料制会員サービスとして提供するための会員登録や削除あるいは会費収納管理等をインターネット経由でパソコンで行う.会員登録等はモバイル端末からもできるようにする.
c)図8の分野別表示制御では,図6のシステム構成法で,モバイル端末から携帯電話網およびインターネット経由で本システムで提供する異言語間コミュニケーション支援サービス用サーバにアクセスした会員に,メニューで分野別表示を選択した場合に,3.1項で示したような言語セットの表示制御を行う.
d)単語検索表示制御では,c)と同様な会員からのアクセスに対して,例えば日本語の単語で検索しインドネシア語の言語セットを表示する.」(44頁右欄14行?45頁左欄11行)


引用例1の上記記載(あ)?(え)及び図面の記載から、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「アイコンを中心にした多言語間のコミュニケーションの支援システムであって、
モバイル端末、携帯電話網とインターネットおよびサーバとからなり、
ある言葉に関連するアイコン、言語Aによる文字表記、言語Bによる文字表記、言語Bの当該語句に対応する言語Aによる発音表記、言語Bによる音声からなる言語セットをモバイル端末に表示するものにおいて、
言語セットは、リレーショナルデータベースの考えにもとづき構成され、単語IDフィールド、アイコンフィールドと説明フィールドからなるアイコンテーブルと、単語IDフィールド、文字フィールド、音声フィールド、固有アイコンフィールド、日本語よみフィールド、インドネシア語よみフィールド、中国語よみフィールドなどからなる日本語テーブルと、インドネシア語テーブルと、中国語テーブルと、韓国語テーブルと、ベトナム語テーブルと、主分野テーブルと、分野フィールドと、単語別分野テーブルとからなり、
上記アイコンフィールドには,汎用アイコンの画像ファイルを格納し、上記音声フィールドには,その単語の音声ファイルを格納し、上記固有アイコンフィールドには、汎用アイコンとは別に,日本語文化圏でより理解されやすいアイコンがある場合にそのアイコンの画像ファイルを格納し、
サーバのアプリケーション部は、モバイル端末から携帯電話網およびインターネット経由で本システムで提供する異言語問コミュニケーション支援サービス用サーバにアクセスした会員に,メニューで分野別表示を選択した場合に言語セットの表示制御を行う分野別表示制御の構成と、会員からのアクセスに対して,例えば日本語の単語で検索しインドネシア語の言語セットを表示する単語検索表示制御の構成を備える異言語間コミュニケーション支援システム。」

(2)引用例2
また、原査定の拒絶理由で引用された特開平10-11343号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(お)「【0041】[第1の実施得形態]UNIX(商標)やWindows95(商標)等のファイル管理システムでは、256バイトまでの長さのファイル名でファイル管理が行える。本実施形態では、このようなファイル管理システムに適用可能なデータ管理装置を説明する。
【0042】図1は第1の実施形態による画像データ管理装置の構成を示すブロック図である。図において、1はCPUでありROM2或はRAM3に格納された制御プログラムを実行することにより、各種の制御を実現する。2はROMであり、当該画像データ管理装置の電源投入時においてCPU1が実行するブートプログラムや、各種データを格納する。3はRAMであり、後述のフローチャートで説明する各種制御プログラムをロードして格納する。また、RAM3はCPU1が各種の制御を実行するに際しての作業領域を提供する。4は外部記憶部であり、複数の画像データファイルや、制御プログラムを格納する。
【0043】5は入力部であり、当該画像データ管理装置に対する各種指示の入力を行う。入力部5は、例えばキーボードやポインティングデバイス等で構成される。6はディスプレイであり、CPU1の制御によって各種の表示を行う。7はスキャナであり、原稿画像を光学的に読み取って、得られた画像データを画像データ管理装置に提供する。8はバスであり、上述の各構成を相互に接続する。
【0044】図2は、第1の実施形態における画像データファイルのファイル名のフォーマットを示す図である。本第1の実施形態では、ファイル名に付加する検索用のキーワードをキーワード群から選択し、そのキーワードを接続して1つのファイル名を作成する場合を説明する。なお、説明を簡単にするために、本第1の実施形態では、1つのファイル名に付加するキーワードは3つとする。
【0045】このキーワードは、図中の11、12、13で示す第1?第3カラムのフィールドに格納される。第0カラム10は、システム内部で生成する文字列であり、各画像データファイルにユニークな文字列である。このユニークな文字列によって、唯一の画像データファイルを特定することが可能である。また、14は、第0カラム10?第3カラム13に格納された文字列によって形成された、実際のファイル名を示している。
【0046】なお、これら実際のファイル名14は、外部記憶部4のディレクトリ領域に格納され、その実体となる画像データファイルと関連付けられている。このようなディレクトリ領域については周知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。」(6頁10欄40行?7頁11欄35行)

(か)「【0057】また、以上のようなファイル名で蓄積された画像データファイルの検索では、ファイル名の中に検索時に必要なキーワードが挿入されているため、ファイル名の文字列操作だけでキーワード検索を行うことが可能となる。また、キーワードを「_」によって接続しているので、ファイル名からキーワードを取出す処理も簡単に行える。これにより、容易且つ高速なキーワード検索が実現される。」(8頁13欄27?34行)

(3)引用例3
また、原査定の拒絶理由で引用された特開2001-290683号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(き)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ファイル名やディレクトリ名は、ファイルを検索する際の利便性を考慮し、ファイル内のデータの特徴を反映した名称であることが望ましく、データの特徴がファイル名に反映されていれば、ファイルの利用者は、ファイル名を参照するだけで所望のファイルを検索することが可能である。また、データの特徴がディレクトリ名に反映されていれば、ファイルの利用者は、複数のファイルを特徴の違いによって分類して取り扱うことができる。
【0006】しかし、上述したシステムや電子カメラによって自動的に生成されるファイル名(ディレクトリ名を含む)は、「固定の文字列+通し番号」の形式に限定されているため、ファイルの検索や分類には適しておらず、ファイルの利用者は、このようなファイル名を検索や分類に適した所望のファイル名に変更したい場合、全てのファイルを順次再生して各々のファイル内のデータの特徴を抽出しなければならず、大変手間の掛かる操作を強いられる。
【0007】そこで、請求項1ないし請求項6に記載の発明は、ファイルを取り扱う際の操作が簡単に行えるファイル管理装置を提供することを目的とする。また、請求項7に記載の発明は、ファイルを取り扱う際の操作が簡単に行えるファイル管理プログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のファイル管理装置は、ファイル名の構造を定義する構造情報を任意に設定できる構造情報設定手段と、ファイルとして格納すべきデータを取得するデータ取得手段と、前記構造情報設定手段で設定された構造情報に応じて、前記データ取得手段で取得されるデータ毎に、ファイル名を構成する情報を取得し、該情報を用いてファイル名を生成する名称生成手段と、前記データ取得手段で取得されるデータを格納し、該データを前記名称生成手段で生成されたファイル名に基づいて管理する管理手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】すなわち、請求項1に記載の発明では、構造情報が一旦設定されてしまえば、ファイル名の形式は複数のファイルで共通するが、各々のファイル個別のファイル名を生成することができる。そのため、操作者は、予め、構造情報を設定しておけば、新たに生成されたファイルを保存する際に、ファイル名を入力する必要がない。
【0010】請求項2に記載のファイル管理装置は、請求項1に記載のファイル管理装置において、前記データ取得手段は、予めファイル名が付与された格納済データと、該データに付随する付随情報とを取得し、前記名称生成手段は、前記構造情報設定手段で設定された構造情報に応じて、前記データ取得手段で取得されるデータ毎に、前記付随情報からファイル名を構成する情報を取得し、該情報を用いて新たなファイル名を生成することを特徴とする。
【0011】すなわち、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様に、構造情報が一旦設定されてしまえば、ファイル名の形式は複数のファイルで共通するが、各々のファイル独自のファイル名を生成することができる。そのため、操作者は、予め、構造情報を設定しておけば、既存のファイルのファイル名を変更する際に、ファイル名を入力する必要がない。
【0012】ところで、構造情報設定手段によって設定される構造情報は、ファイル名を構成する情報の形態、種類、配列などを示す情報であるため、請求項1に記載の発明および請求項2に記載の発明は、予め決められた固定の形式のファイル名しか生成できなかった従来の技術と異なり、構造情報の内容次第で、様々な形式のファイル名を生成することができる。
【0013】また、請求項1に記載の発明および請求項2に記載の発明では、ファイル名を構成する情報は1つに限定されず複数であっても良く、これらの複数の情報の配置は構造情報によって定義できるため、複数の情報が所定の順序に配置されたファイル名を生成することができる。さらに、請求項1に記載の発明および請求項2に記載の発明では、ディレクトリ名を含むファイル名を生成することもできる。また、請求項1に記載の発明および請求項2に記載の発明では、ディレクトリ毎に異なる形式のファイル名を生成しても良い。」(3頁3欄18行?4欄44行)

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「異言語間コミュニケーション支援システム」は、多言語間のコミュニケーションの支援システムであり、コミュニケーション支援として、複数の話者間の会話の支援を前提としているといえるから、本願発明の「複数の言語間の会話を支援する多言語間会話支援システム」に相当する。
引用発明の「単語IDフィールド、アイコンフィールドと説明フィールドからなるアイコンテーブル」は、表示に利用する概念に関する概念データといえる「アイコンフィールド」の「汎用アイコン」(例.病院のアイコン)、「説明フィールド」の「説明」(例.病院)を、国籍に無関係な無国籍データであることが明らかな「単語ID」(例.101)で分類管理しているといえるから、本願発明の「表示に利用する概念に関する概念データを国籍に無関係な無国籍データとして分類管理する第1の手段」に相当する。
引用発明の「単語IDフィールド、文字フィールド、音声フィールド、固有アイコンフィールド、日本語よみフィールド、インドネシア語よみフィールド、中国語よみフィールドなどからなる日本語テーブルと、インドネシア語テーブルと、中国語テーブルと、韓国語テーブルと、ベトナム語テーブル」は、それぞれのテーブルに、単語IDに対応して、文字、音声、固有アイコン、日本語読み、インドネシア語読み等の「表示言語データ」を格納しているといえるから、本願発明の「前記概念に対応した表示言語データを格納する第2の手段」に相当する。
引用発明は、そのサーバのアプリケーション部に、分野別表示制御の構成、単語検索表示制御の構成を備えているから、「制御部」を備えるといえる。
してみると、本願発明と引用発明とには、以下の一致点、相違点がある。

(一致点)
「複数の言語間の会話を支援する多言語間会話支援システムにおいて、表示に利用する概念に関する概念データを国籍に無関係な無国籍データとして分類管理する第1の手段と、前記概念に対応した表示言語データを格納する第2の手段と、制御部とを備えていることを特徴とする多言語間会話支援システム」である点。

(相違点)
本願発明の「制御部」は、「前記無国籍データと前記表示言語データとをファイル名等によりリンクさせるような制御を行う」のに対して、引用発明はそのような構成としていない点。

4.判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用発明は、コミュニケーションを支援するために、概念データである「アイコン」から、リレーショナルデータベースの考えに基づき、アイコンテーブルと日本語テーブル、インドネシア語テーブルなどを用いて、ある言葉に関連するアイコン、言語Aによる文字表記、言語Bによる文字表記、言語Bの当該語句に対応する言語Aによる発音表記、言語Bによる音声からなる言語セットをモバイル端末に表示するものである。
そして、引用発明は、「上記アイコンフィールドには,汎用アイコンの画像ファイルを格納し、上記音声フィールドには,その単語の音声ファイルを格納し、上記固有アイコンフィールドには、汎用アイコンとは別に,日本語文化圏でより理解されやすいアイコンがある場合にそのアイコンの画像ファイルを格納し」ているものであるから、上記「アイコン」のデータは、汎用アイコンの画像ファイルとして、「言語Bによる音声」のデータは、その単語の音声ファイルとして、取り扱われているといえる。
画像ファイルの画像データ、音声ファイルの音声データ、テキストファイルの文字データをリンクさせている「ハイパーテキスト」技術は、マルチメディア端末等に情報を表示する技術分野において、周知な技術事項である。
そうすると、引用発明もマルチメディア情報を扱う端末を利用するものであるから、言語セットをモバイル端末に表示することに、上記周知な画像ファイルの画像データ、音声ファイルの音声データ、テキストファイルの文字データをリンクさせている「ハイパーテキスト」技術を採用することは、当業者が格別困難無くなし得たものである。
また、画像ファイルのファイル名、フォルダー名を、その画像の内容に応じて複数のキーワードをシステム的に付与すること、該付与することにより検索等に資することは、上記引用例2,3に記載されていることである。
画像から関連するファイルをリンク付けする場合、その画像のファイル名が画像の内容を表しているか確認して、そのファイル名で検索して、関連するファイルをリンク付けすることは普通に行われていることである。
そうすると、該上記引用例2,3に記載されている技術事項を、引用発明に適用すると、言語セットをモバイル端末に表示するために各ファイルには、概念データを表す単語ID等がキーワードとしてファイル名に付与されることは明らかであり、制御部に、同一の単語ID等がキーワードとして付与された各ファイルをリンクさせる制御をさせる等することは、当業者が困難無くなし得ることである。
なお、引用発明も概念データ(単語ID)を中間言語とした周知な「中間言語方式」の1つといえ、その効果は予測可能である。(例えば、社団法人電子情報通信学会、ニューメディア技術シリーズ 機械翻訳、第1版、オーム社、1989年7月20日、p.9-12参照。特に、図1・4の「トランスファ方式ではn(n-1)対必要であるが,中間言語は2nでよい.」参照。)。
してみると、上記各事項を引用発明に適用し、その「制御部」を「前記無国籍データと前記表示言語データとをファイル名等によりリンクさせるような制御を行う」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2、3及び周知の技術事項から、当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものであるとはいえない。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1?3に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-21 
結審通知日 2010-09-22 
審決日 2010-10-06 
出願番号 特願2002-97091(P2002-97091)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 真木 健彦
長島 孝志
発明の名称 多言語間会話支援システム構成法  
代理人 池田 憲保  

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