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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1227238
審判番号 不服2010-3807  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-22 
確定日 2010-11-18 
事件の表示 特願2007-281004「定着装置及びその定着装置を具備する画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年2月28日出願公開、特開2008-46663〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
1.手続の経緯・本願発明など

本願は、平成13年12月28日の出願(特願2001-400517号)の分割出願(分割出願日;平成19年10月29日)であって、平成19年11月12日付で自発の手続補正書と上申書が提出され、平成21年3月13日付の分割不適法等を指摘する拒絶理由通知に対し、同年4月1日付で意見書、手続補正書が提出され、同年6月26日付の引用文献1?4から容易と指摘する拒絶理由通知に対し、同年9月7日付で意見書が提出され、同年11月16日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月22日付で拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、平成21年4月1日付で補正された特許請求の範囲・請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
搬送されるシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置において、
回転可能に支持されてヒータで加熱されるローラと、
上記ローラと非回転の固定された定着固定部材に張架されて回動する定着ベルトと、
上記定着ベルトを介して上記定着固定部材に圧接して定着ニップ部を形成してなる加圧ローラと、を備え、
上記定着固定部材は前記定着ニップ部を形成する面が加圧ローラに沿った凹形状に形成され、
前記定着ニップ部の出口には前記ニップ部を形成する面に連続する該定着固定部材の外側に突出する突出部を有することを特徴とする定着装置。」

なお、上記した【請求項1】中の「定着ニップ部の出口には前記ニップ部を形成する面に連続する該定着固定部材の外側に突出する突出部を有する」なる記載の根拠や具体的な意味内容について確認するため、クレームの補正と明細書のサポート記載や意見書、上申書などの関連記載をまとめると下記のとおりである。

1-1.分割出願当初のクレームと明細書の記載など
1-1a.分割出願当初のクレーム
「【請求項1】
搬送するシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置において、回転可能に支持されて発熱する定着ベルト搬送ローラと、上記定着ベルト搬送ローラと非回転の固定された定着固定部材に張架されて回動する定着ベルトと、上記定着ベルトを介し固定部材に保持されてシート材の遠ざかる方向に延伸形状の耐熱弾性部材を加圧して広幅が可能な定着ニップ部を形成する回転可能に保持された加圧ローラと、上記加圧ローラと上記定着ベルトから分離するシート材の巻き付きを防止する曲率以上からなる円弧径を形成する曲率分離部形成手段とからなることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、定着ベルト搬送ローラは、内蔵されて発熱するヒータと、定着ベルトに張力を付与する張力付与手段からなることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定着装置において、定着固定部材は、耐熱弾性部材の定着ニップ部の形成面側を除く他面を固定部材で保持することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の定着装置において、耐熱弾性部材は、発泡構造の発泡構造部材からなることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載の定着装置において、固定部材は、耐熱樹脂の部材からなることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5に記載の定着装置において、定着固定部材は、耐熱弾性部材と固定部材の境界部に形成した逃げ部とからなることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6に記載の定着装置において、耐熱弾性部材は、固定部材から定着ニップ部側に突き出た段差からなることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項7に記載の定着装置において、耐熱弾性部材の固定部材から定着ニップ部側に突き出た段差は、定着ニップ部の形成時に加圧ローラの加圧力で解消する方向に減少することを特徴とする定着装置。」
(【請求項9】?【請求項24】については転記を省略。)

1-1b.分割出願当初の明細書
「【発明の名称】定着装置及びその定着装置を具備する画像形成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びその定着装置を具備する画像形成装置に関し、詳しくは、搬送するシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置及び電子写真法を用いて形成するトナー画像を被転写体に転写した後に定着して画像を形成する複写機、プリンタ、ファクシミリ装置あるいはこれらの複合機等のその定着装置を具備する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の定着装置及びその定着装置を具備する画像形成装置において、電子写真式の複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等では、像担持体の感光体にレーザー光を照射して静電潜像を描き、これを現像ユニットでトナー像として被転写体のシート材に転写し、このシート材をベルトを介し加圧しながら加熱溶融する定着装置を具備する画像形成装置で画像の形成が行なわれている。
図16は従来の定着装置の概略構成図であり、同図において、定着装置110は、未定着画像である被加熱体のトナー(t)のトナー像を担持した被記録媒体のシート材(S)を、定着ローラ111と搬送ローラ112との間に掛け渡され張架された構成となっている無端状の加熱定着用の定着ベルト113を介して、定着ローラ111と加圧ローラ114とのニップ(N)部で加熱加圧して、トナー(t)を加熱溶融することにより未定着画像をシート材(S)に加熱定着させる。
ここで、定着ローラ111は、中心に芯金111aを有し、その外周にニップ巾を十分な広さにするために、柔らかい耐熱性の材料、例えば、発泡シリコンゴム等で構成された断熱性弾性部材を備えている。
【0003】
加熱定着用の定着ベルト113は、図示しない基体と図示しない表層の2層からなり、図示しない基体はニッケル、耐熱性樹脂のポリイミド等、炭素鋼、或いは、ステンレス鋼等により形成された薄肉の無端状のベルトが使用され、図示しない表層には耐熱離型層のフッ素系樹脂やシリコンゴム等が被覆された2層の構成になっている。
加圧ローラ114の構成は、アルミ、ステンレス、若しくは炭素鋼等の芯金114aの表層114cに耐熱性の離型層のフッ素系樹脂やシリコンゴム等を有する2層の構成になっている。ここで、芯金114aを中空に構成し、中に熱源のハロゲンヒータ等を有している場合も有る。
搬送ローラ112の構成は、アルミ、炭素鋼やステンレス鋼等の中空金属円筒の薄肉ローラである。更に、搬送ローラ112の中に加熱手段112bのハロゲンヒータ等を具備している。
【0004】
本来、このような、ベルト113を使用する加熱型の定着装置110は、立ち上がり時間が短く、トナー(t)のベルトオフセット防止効果があって、オイルレス、又は、オイル微量塗布が可能で省資源である。
加圧ローラの弾性体の硬度が加熱ローラの弾性体の硬度よりもJIS-A硬度計で20度?30度大きくなるように設定されている定着装置も公知である(特開2000-338811等の公報を参照)。これによりニップ形状が凸になり転写材の加熱ローラからの剥離角度を大きくすることができ、分離性能が良くなる。
然し、各色のトナーが重なったトナー付着量が多い条件では、ニップ形状の効果で確実に分離するのは困難であった。特に、オイルレスや高線速の厳しい条件では、定着ローラに当接する分離爪等の分離手段が無しで転写材を分離するのは困難である。
【0005】
記録媒体を分離させる定着分離爪を定着ローラ表面と非接触で配置することも公知である(特開平8-166738号等の公報を参照)。
定着ローラと加圧ローラが同構成のためニップ形状はフラットで定着ローラに対する剥離角度が小さいので、分離爪と定着ローラの間隔を精度良く調整する必要がある。又、間隔の調整機構などが必要になるため分離爪の部品点数が増えてコストアップになる。又、かかる方法においても、オイル塗布することなく各紙種に対応する分離性能を確保することは困難であった。
加圧ベルトを介して定着ローラと圧接してニップを形成して定着を行なう固定の加圧用固定部材は、一部がニップ出口分離部において、ベルトを介して定着ローラに食い込んで歪を形成して、かかる歪によるベルトと定着ローラとの間での微小スリップ効果によって分離性の向上を狙う、ベルトは加圧用固定部材にフリーにセットされている、ベルト張力手段はない、フリーベルトニップ方式も公知である(特開平11-133776号等の公報を参照)。
かかる方式でも分離性能が充分でないためか、分離性を補助するため分離手段を設けているから、コストアップの要因となっていた。
【0006】
更に、固定の加熱手段と摺動するフイルムが加熱手段と駆動ローラのみに懸回張設され、駆動ローラの外周にゴム層を設けた定着装置において、フイルムが加熱手段と摺動するためのフイルム駆動負荷を軽減したり、駆動ローラの外周のゴム層により、フイルムの確実の駆動や、別途テンションローラ等を用いずに皺や送りムラの発生を防止することも公知である(特開平3-166579号等の公報を参照)。
かかる方式でも、オイルレスや高線速の厳しい条件では、加熱手段とフイルムを介して加圧する加圧ローラの分離部で転写シートを分離する場合、分離爪等を用いずに転写シートを分離するのは困難である。
無端状の定着ベルトの外側に配置されて無端状の定着ベルトの外周部に当接する外側ローラと、無端状の定着ベルトの内側に配置されて外側ローラに無端状の定着ベルトを介して圧接する加熱装置と、無端状の定着ベルトの内側に配置されて外側ローラに無端状の定着ベルトを介して圧接して加熱装置に対して転写シートの搬送方向側に配置された内側ローラを備えたベルト式定着装置において、内側ローラの外側ローラに対する押圧力を加熱装置の外側ローラに対する押圧力よりも大きく設定して加熱装置と定着ベルトの磨耗を減少することも公知である(特開平9-292788号等の公報を参照)。
同様に、オイルレスや高線速の厳しい条件では、内側ローラと転写シートを介して加圧する外側ローラの分離部で転写シートを分離する場合、分離爪等を用いずに転写シートを分離するのは困難である。
【0007】
従来の定着装置及びその定着装置を具備する画像形成装置は、定着部材と加圧部材の圧接により形成されるニップを通過することで、転写材のシート上の未定着トナー画像は加熱および加圧により定着される被加熱体のトナーはニップ内で溶融されているため、被加熱体であるトナーが粘着剤となり転写材が定着部材と分離せずに巻き付いてしまう、所謂、巻き付きの防止のために、定着部材の表層は離型性の良いフッ素樹脂等の材料で構成されている。
例えば、画像形成装置のフルカラー複写機等では、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の4色の被加熱体であるトナーを溶融状態で混色する必要があり、十分に混色するために被加熱体であるトナーを定着ニップ部内で完全に溶融するので、転写材の巻き付きが、更に、発生していた。
通常は、離型剤としてシリコンオイルを塗布することで離型性を確保している。
分離手段としては、定着部材の軸方向に複数の分離爪がバネなどの弾性体によって軽く定着部材表面に当接するように設置されている。
【0008】
転写材は分離爪で分離され、分離ガイドに沿って搬出される。分離爪を接触させることで分離は確実になるが、定着部材の磨耗、傷付きや、爪で掻き取られたトナーやオイルが転写材に汚れとして付着するなどして画像品質が低下していた。
一方、オイルレス定着では、(1)転写紙へのオイルの付着による汚れがなくなる、(2)オイル補給がなくなりメンテナンスフリーになる、(3)オイル塗布部材がなくなりコストダウンになる、という利点がある。
然し、オイルレス定着では巻き付きという課題に関してオイル塗布と比較するとマージンが狭くなり、より厳しくなっていた。
又、ベルト定着特有の課題として、定着ニップ内で発生する速度変動によって起こる、定着ニップ部内で被加熱体である未定着トナーがシートの転写用紙上に溶融定着する前に、トナーの微小な位置ズレが発生して起きる異常画像の画像乱れが発生していた。
この画像乱れ発生の原因は、ベルトのスリップや、ローラ間の圧接による弾性変形等によって起こる速度変動によるトナーの位置ズレである。
ベルトを使用する加熱型の定着装置は、立ち上がり時間が短く、被加熱体であるトナーのベルトオフセット防止効果があって、オイルレス、叉は、オイル微量塗布が可能であるが、巻き付きという課題に関してオイル塗布と比較するとマージンが狭くなりより厳しく、分離手段の分離爪や分離ガイド板等を使用すれば、分離は確実になるが、定着部材の磨耗、傷付きで耐久性が低下して、分離爪で掻き取られたトナーやオイルが転写材に汚れとして付着するなど画像品質も低下していた。
【0009】
更には、高速カラー定着に使用される定着装置及びその定着装置を具備する画像形成装置の主要課題は、分離時、記録紙のシート材が定着ベルトに巻き付くことである。
高速化では定着可能なニップ幅を維持するため、ローラ径が大きくなって曲率分離が困難となる。
又、記録紙のシート材は定着ベルトに沿って搬送されるので、高線速になるほど、記録紙が定着ベルトから分離する時間的余裕度がなくなり、より巻き付き易くなっていた。
従って、従来の定着装置及びその定着装置を具備する画像形成装置は、巻き付き防止の分離手段の分離爪や分離ガイド板等を使用すれば巻き付きの防止は確実になるが磨耗や傷付きで耐久性が低下して、分離爪で掻き取られたトナーやオイルが転写材に汚れとして付着するなど画像品質も低下して、巻き付き防止のために定着速度も低速で、定着ニップ内で発生する速度変動によって起こる定着ニップ部内で被加熱体であるトナーがシート材の記録用紙上に溶融定着する前に、被加熱体であるトナーの微小な位置ズレが発生して起きる異常画像の画像乱れが発生して形成される画像品質が低下すると言う不具合が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の定着装置及びその定着装置を具備する画像形成装置は、巻き付き防止の分離手段の分離爪や分離ガイド板等を使用すれば巻き付きの防止は確実になるが磨耗や傷付きで耐久性が低下して、分離爪で掻き取られたトナーやオイルがシート材の記録用紙に汚れとして付着するなど画像品質も低下して、巻き付き防止のために定着速度も低速で、定着ニップ部内で発生する速度変動によって起こる定着ニップ部内で被加熱体であるトナーがシート材の記録用紙上に溶融定着する前に、被加熱体であるトナーの微小な位置ズレが発生して起きる異常画像の画像乱れが発生して形成される画像品質が低下すると言う問題が発生していた。
そこで本発明の課題は、このような問題点を解決するものである。即ち、塗布剤や分離爪等を使用することなく耐久性が優れシート材の巻き付きの発生を確実に防止して定着速度も高速で、コールドオフセットや定着性の低下を発生させることなく、定着ニップ内の速度変動も抑制される低コストで小型の定着装置と、塗布剤や分離爪等を使用することなく耐久性が優れシート材の巻き付きの発生を確実に防止して定着ニップ内の速度変動による異常画像の画像乱れの発生を防止して低コストで高品質の高速カラー画像の形成も可能な定着装置を具備する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の本発明は、搬送するシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置において、回転可能に支持されて発熱する定着ベルト搬送ローラと、定着ベルト搬送ローラと非回転の固定された定着固定部材に張架されて回動する定着ベルトと、上記定着ベルトを介し固定部材に保持されてシート材の遠ざかる方向に延伸形状の耐熱弾性部材を加圧して広幅が可能な定着ニップ部を形成する回転可能に保持された加圧ローラと、上記加圧ローラと上記定着ベルトから分離するシート材の巻き付きを防止する曲率以上からなる円弧径を形成する曲率分離部形成手段とから定着装置であることを最も主要な特徴とする。
請求項2の本発明は、請求項1に記載の定着装置において、定着ベルト搬送ローラは、内蔵されて発熱するヒータと、定着ベルトに張力を付与する張力付与手段からなる定着装置であることを主要な特徴とする。
請求項3の本発明は、請求項1又は2に記載の定着装置において、定着固定部材は、耐熱弾性部材の定着ニップ部の形成面側を除く他面を固定部材で保持する定着装置であることを主要な特徴とする。
【0012】
請求項4の本発明は、請求項1、2又は3に記載の定着装置において、耐熱弾性部材は、発泡構造の発泡構造部材からなる定着装置であることを主要な特徴とする。
請求項5の本発明は、請求項1、2、3又は4に記載の定着装置において、固定部材は、耐熱樹脂の部材からなる定着装置であることを主要な特徴とする。
請求項6の本発明は、請求項1、2、3、4又は5に記載の定着装置において、定着固定部材は、耐熱弾性部材と固定部材の境界部に形成した逃げ部とからる定着装置であることを主要な特徴とする。
請求項7の本発明は、請求項1、2、3、4、5又は6に記載の定着装置において、耐熱弾性部材は、固定部材から定着ニップ部側に突き出た段差からなる定着装置であることを主要な特徴とする。
請求項8の本発明は、請求項7に記載の定着装置において、耐熱弾性部材の固定部材から定着ニップ部側に突き出た段差は、定着ニップ部の形成時に加圧ローラの加圧力で解消する方向に減少する定着装置であることを主要な特徴とする。
請求項9の本発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8に記載の定着装置において、定着固定部材は、定着ベルトの内周面との接触を低摩擦化する低摩擦化手段からなる定着装置であることを主要な特徴とする。
【0013】
・・・
【0042】
図4又は図5において、上記定着装置0における定着固定部材2の耐熱弾性部材2aは、固定部材2bの固定部材2b1、又は、固定部材2b2から定着ニップ部(N)側に突き出た段差(G)からなる。
定着固定部材2を構成する固定部材2bの固定部材2b1、又は、固定部材2b2は、耐熱弾性部材2aの定着ニップ部(N)側の面を除く他の三面を保持し、定着ニップ部(N)の入り口部は未定着画像を有するシート材(S)が定着ベルト3に接触して擦れることなく円滑に搬送されるように、定着ベルト3を案内する作用をなす形状を成し、定着ニップ部(N)では耐熱弾性部材2aが固定部材2b1、又は、固定部材2b2に対して突き出す位置関係の段差(G)を設ける形状をなし、定着ニップ部(N)の出口においてはシート材(S)が容易に定着ベルト3から分離可能な形状、即ち、定着ニップ部(N)の出口部の曲率(1/r)を大きくして、曲率分離によるセルフ(Self)分離の可能な形状の曲率分離部形成手段5の上記円弧形状部5aを設ける形状をなしているから、巻き付きの発生を防止する効果に加えて、簡易な構成の定着固定部材2により低コスト化した定着装置0を提供することができるようになった。
【0043】
定着固定部材2の耐熱弾性部材2aの固定部材2bから定着ニップ部(N)側に突き出た段差(G)は、定着ニップ部(N)の形成時に加圧ローラ4の加圧力で解消する方向に減少するようになっている(図1と図2を参照)。
上記定着装置0における定着固定部材2を形成する耐熱弾性部材2aと固定部材2bの固定部材2b1、又は、固定部材2b2の境界部には逃げ部2cが設けてある。これは、耐熱弾性部材2aが加圧ローラ4の加圧によって圧縮された際に、横方向へ変更歪部が生じる。この耐熱弾性部材2aの変更歪部が、逃げ部2cにより、固定部材2b1、又は、固定部材2b2との境界部で定着ニップ部(N)面より外方向にはみ出さないようになっている。
従って、上記定着装置0は、記録紙の巻き付き等の防止を図ると共に、シート材(S)の安定した搬送が円滑に行なわれ、その結果、シート材(S)の皺、速度変動による画像の乱れが生じることがない。」(【0044】以降は転記を省略。)

1-1c.分割出願当初の【請求項1】に関する明細書のサポート記載など

上記摘示のとおり第11段落に【請求項1】を説明する記載があるものの、クレームと同一の表現で反復しているだけなので、【請求項1】の具体的な意味内容の確認に資するものでは無い。
なお、第42?43段落には、「定着固定部材」の「突き出た」部分のある定着装置が具体的に説明されている。

1-2.平成19年11月12日付自発補正後のクレームと明細書の記載など
1-2a.平成19年11月12日付自発補正後のクレーム
「【請求項1】
搬送されるシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置において、
回転可能に支持されてヒータで加熱されるローラと、
上記ローラと非回転の固定された定着固定部材に張架されて回動する定着ベルトと、
上記定着ベルトを介して上記定着固定部材に圧接して定着ニップ部を形成してなる加圧ローラと、を備え、
上記定着固定部材は前記定着ニップ部を形成する面が加圧ローラに沿った凹形状に形成され、
前記定着ニップ部の出口には前記ニップ部を形成する面に連続する該定着固定部材の外側に突出する突出部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
搬送されるシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置において、
回転可能に支持されてヒータで加熱されるローラと、
上記ローラと非回転の固定された定着固定部材に張架されて回動する定着ベルトと、
上記定着ベルトを介して上記定着固定部材に圧接して定着ニップ部を形成してなる加圧ローラと、
上記ローラを介して上記定着ベルトに張力を付与する張力付与手段と、
上記定着ベルトの内周面と接触する上記定着固定部材の表面に設けられた低摩擦化手段と、を備え、
上記定着固定部材が上記加圧ローラと圧接する面は加圧ローラに沿った凹形状に形成されており、
上記定着固定部材の上記定着ニップ部の出口部分が該定着固定部材の外側に突出する円弧形状に形成されており、
上記定着固定部材は、上記出口部分から延在し、該定着固定部材の外側に突出する曲面部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
搬送されるシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置において、
回転可能に支持されてヒータで加熱されるローラと、
上記ローラと非回転の固定された定着固定部材に張架されて回動する定着ベルトと、
上記定着ベルトを介して上記定着固定部材に圧接して定着ニップ部を形成してなる加圧ローラと、
上記ローラを介して上記定着ベルトに張力を付与する張力付与手段と、
上記定着ベルトの内周面と接触する上記定着固定部材の表面に設けられた低摩擦化手段と、を備え、
上記定着固定部材の上記加圧ローラ側がS字状に形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
搬送されるシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置において、
回転可能に支持されてヒータで加熱されるローラと、
上記ローラと非回転の固定された定着固定部材に張架されて回動する定着ベルトと、
上記定着ベルトを介して上記定着固定部材に圧接して定着ニップ部を形成してなる加圧ローラと、
上記ローラを介して上記定着ベルトに張力を付与する張力付与手段と、
上記定着ベルトの内周面と接触する上記定着固定部材の表面に設けられた低摩擦化手段と、を備え、
上記定着固定部材が上記加圧ローラと圧接する面は加圧ローラに沿った凹形状に形成されており、
上記定着固定部材の上記定着ニップ部の出口部分が該定着固定部材の外側に突出する円弧形状に形成されており、
上記定着固定部材は、上記出口部分から延在し、該定着固定部材の外側に突出する円弧形状部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
上記ローラの中心軸は上記定着ニップ部の中心に対して該定着ニップ部の入口側にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
上記加圧ローラを駆動する駆動手段と備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。」

1-2b.平成19年11月12日付自発補正後の明細書
全ての請求項が書き換えられたのに伴い、各請求項を反復説明する第11段落も新【請求項1】を復唱する表現に書き換えられた。また、第13?28段落、第30?35段落が削除された。
出願人は、同日付の上申書で「分割出願の特許請求の範囲は、定着固定部材の形状を明確にした請求項を追加したものである。」と説明している。

1-2c.平成19年11月12日付自発補正後の【請求項1】に関する明細書のサポート記載など

・平成19年11月12日付上申書には以下の記載がある。
「【上申の内容】
[1]原出願からの変更箇所の明示及び説明
(A)原出願からの変更箇所の説明
分割出願の特許請求の範囲は、定着固定部材の形状を明確にした請求項を追加したものである。・・・新請求項1中の記載「前記定着ニップ部の出口には前記ニップ部を形成する面に連続する該定着固定部材の外側に突出する突出部を有する」は、原出願の段落0020中の「定着ニップ部(N)の出口には、定着ベルト3を介して、定着固定部材2の耐熱弾性部材2aを保持する固定部材2bのシート材(S)の分離部に、シート材(S)が定着ベルト3に巻き付くことなく分離可能な曲率分離部形成手段5の円弧形状部5aが形成された分離工程を有する。」、及び図1、図2、図4?11に根拠を有する。」

1-3.平成21年4月1日付補正後のクレームと明細書の記載など
1-3a.平成21年4月1日付補正後のクレーム

先の自発補正クレームの【請求項2】?【請求項4】は、拒絶理由通知で、当初明細書に記載の範囲内のものでないし意味が不明確である等の指摘を受けたので削除され、後続のクレームが繰り上がって、以下のとおりとなった。
なお、【請求項1】は、先の自発補正クレームのものと同じである。

「【請求項1】
搬送されるシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置において、
回転可能に支持されてヒータで加熱されるローラと、
上記ローラと非回転の固定された定着固定部材に張架されて回動する定着ベルトと、
上記定着ベルトを介して上記定着固定部材に圧接して定着ニップ部を形成してなる加圧ローラと、を備え、
上記定着固定部材は前記定着ニップ部を形成する面が加圧ローラに沿った凹形状に形成され、
前記定着ニップ部の出口には前記ニップ部を形成する面に連続する該定着固定部材の外側に突出する突出部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
上記ローラの中心軸は上記定着ニップ部の中心に対して該定着ニップ部の入口側にあることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
上記加圧ローラを駆動する駆動手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。」

1-3b.平成21年4月1日付補正後の明細書の記載

請求項が書き換えられたのに伴い、各請求項を反復説明する第11段落も新【請求項1】を復唱する表現に書き換えられた。

1-3c.平成21年4月1日付補正後の【請求項1】と明細書のサポート記載など
・同日付意見書には以下の記載がある。
「今回同時に提出した手続補正書においては、補正前請求項2-4を削除いたしました。このように、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないと指摘された請求項3を削除いたしましたので、特許請求の範囲の補正は、出願当初の明細書に記載された事項の範囲内で行ったものであります。
・・・上述の通り、特許請求の範囲の補正は、出願当初の明細書に記載された事項の範囲内で行ったものでありますので、本願は適法な分割出願として出願日の遡及が認められるべきものであると思料いたします。従って、補正後請求項1-4は引用例1(特開2003-195671号公報、原出願の公開公報:当審注)と同一の発明ではなく、引用例1から容易になしえたとの認定は当たらないものと考えます。
また、請求項2-4を削除したことで、特許法第36条第6項第2号の拒絶理由は解消したものと思料いたします。」

1-4.【図5】と第42?43段落の記載について

明細書の第11段落などクレームを説明する箇所は、補正の度にクレームを同じ表現で反復するだけの内容に書き換えられているし、明細書の中段部分も補正で大幅に削除されているので、【請求項1】中の「定着ニップ部の出口には前記ニップ部を形成する面に連続する該定着固定部材の外側に突出する突出部を有する」の具体的な意味内容の解釈に当たり確実に参酌できるのは、出願当初から補正されておらず実施例と説明されている【図1】、【図2】、【図4】?【図11】等の各図面であり、特に、「定着固定部材」の「突き出た」部分について記載されている第42?43段落の記載と対応する【図5】などであるから、該図面と該段落を下記に転記する。

「【0042】
図4又は図5において、上記定着装置0における定着固定部材2の耐熱弾性部材2aは、固定部材2bの固定部材2b1、又は、固定部材2b2から定着ニップ部(N)側に突き出た段差(G)からなる。
定着固定部材2を構成する固定部材2bの固定部材2b1、又は、固定部材2b2は、耐熱弾性部材2aの定着ニップ部(N)側の面を除く他の三面を保持し、定着ニップ部(N)の入り口部は未定着画像を有するシート材(S)が定着ベルト3に接触して擦れることなく円滑に搬送されるように、定着ベルト3を案内する作用をなす形状を成し、定着ニップ部(N)では耐熱弾性部材2aが固定部材2b1、又は、固定部材2b2に対して突き出す位置関係の段差(G)を設ける形状をなし、定着ニップ部(N)の出口においてはシート材(S)が容易に定着ベルト3から分離可能な形状、即ち、定着ニップ部(N)の出口部の曲率(1/r)を大きくして、曲率分離によるセルフ(Self)分離の可能な形状の曲率分離部形成手段5の上記円弧形状部5aを設ける形状をなしているから、巻き付きの発生を防止する効果に加えて、簡易な構成の定着固定部材2により低コスト化した定着装置0を提供することができるようになった。
【0043】
・・・上記定着装置0における定着固定部材2を形成する耐熱弾性部材2aと固定部材2bの固定部材2b1、又は、固定部材2b2の境界部には逃げ部2cが設けてある。これは、耐熱弾性部材2aが加圧ローラ4の加圧によって圧縮された際に、横方向へ変更歪部が生じる。この耐熱弾性部材2aの変更歪部が、逃げ部2cにより、固定部材2b1、又は、固定部材2b2との境界部で定着ニップ部(N)面より外方向にはみ出さないようになっている。
従って、上記定着装置0は、記録紙の巻き付き等の防止を図ると共に、シート材(S)の安定した搬送が円滑に行なわれ、その結果、シート材(S)の皺、速度変動による画像の乱れが生じることがない。」

1-5.【図5】の実施形態の検討など

【請求項1】に係る本願発明の実施例とされる【図5】の実施形態を明細書第42?43段落の記載と併せて慎重に検討すると、【請求項1】でいう「定着ニップ部の出口には前記ニップ部を形成する面に連続する該定着固定部材の外側に突出する突出部を有する」定着装置の実施態様の一つが、【図5】の『コ字状囲み形の「定着固定部材」の囲みの中から定着ニップ部方向に突き出した「耐熱弾性部材」が存在している』定着装置であることは明確である。

2.引用刊行物記載の発明
2-1.刊行物1
・これに対して、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開平10-20691号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

《1a》
「【特許請求の範囲】
【請求項9】 回転可能な加圧ロール(7)と、この加圧ロール(7)に圧接して加圧ロール(7)と共に転動し、熱源(4)にて加熱されるエンドレスベルト(2)と、前記エンドレスベルト(2)の内側に配設されて、前記エンドレスベルト(2)を前記加圧ロール(7)に押圧させ、前記エンドレスベルト(2)と前記加圧ロール(7)との間に接触ニップ域を形成する押圧部材(3)とを具備し、前記接触ニップ域に記録シート(5)を通過させることにより、未定着トナー像を記録シート(5)上に加熱・加圧定着させる定着装置において、前記加圧ロール(7)とエンドレスベルト(2)との接触ニップ域の加圧ロール(7)軸方向延長線上の少なくとも一方に、エンドレスベルト(2)の端縁の寄りが規制されるベルト寄りガイド(6)を設けたことを特徴とする定着装置。」

《1b》
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真方式を利用した画像形成装置において未定着トナー像を加熱・加圧定着する定着装置に係り、特に、加熱若しくは加圧用の定着ロールに対してエンドレスベルトを圧接配置したベルトニップ方式の定着装置の改良に関する。」

《1c》
「【0010】また、エンドレスベルト2としては、樹脂、金属等どのような材質のものでも適用してよく、このエンドレスベルト2の配設の仕方としては、張架ロール等に掛け渡すようにしても差し支えないが、エンドレスベルト2からの放熱を最小限に抑えるという観点からすれば、接触ニップ域以外に接触する部材を極力なくすようにすることが好ましい。」

《1d》
「【0015】また、本発明の適用対象は加熱ロール1とエンドレスベルト2との組合せに限られるものではなく、加圧ロール7とエンドレスベルト2とを組み合わせるようにしてもよい。すなわち、本発明の他の態様としては、図1(c)に示すように、回転可能な加圧ロール7と、この加圧ロール7に圧接して加圧ロール7と共に転動し、熱源4にて加熱されるエンドレスベルト2と、前記エンドレスベルト2の内側に配設されて、前記エンドレスベルト2を前記加圧ロール7に押圧させ、前記エンドレスベルト2と前記加圧ロール7との間に接触ニップ域を形成する押圧部材3とを具備し、前記接触ニップ域に記録シート5を通過させることにより、未定着トナー像を記録シート5上に加熱・加圧定着させる定着装置において、前記加圧ロール7とエンドレスベルト2との接触ニップ域の加圧ロール7軸方向延長線上の少なくとも一方に、エンドレスベルト2の端縁の寄りが規制されるベルト寄りガイド6(図1(b)で示すものに相当)を設けたものが挙げられる。この態様の定着装置についても、図1(a)(b)で示す定着装置に対して施した各種工夫を施せることは勿論である。」

《1e》
「【0036】◎実施の形態4図13は本発明が適用された定着装置の実施の形態4を示す。本実施の形態に係る定着装置は、実施の形態1?3と異なり、回転駆動される加圧ロール80と、この加圧ロール80に圧接して追従回転するエンドレスベルト30と、このエンドレスベルト30の内側に配設されて、前記エンドレスベルト30を前記加圧ロール80に押圧させ、前記エンドレスベルト30と前記加圧ロール80との間に接触ニップ域を形成する押圧部材50と、前記エンドレスベルト30を加熱するヒータ81とを備えている。
【0037】本実施の形態において、加圧ロール80は表面が剛体のハードロール構成であり、その接触ニップ域の軸方向両側にリング状のベルト寄りガイド60(実施の形態1と同様の構成)が設けられている。また、押圧部材50は、固定台56上の凹部57に弾性体59を収容したものであり、弾性体59の弾性変形で加圧ロール80とエンドレスベルト30との接触ニップ域を形成するものである。更に、エンドレスベルト30内には実施の形態1と同様なベルト走行ガイド40が配設され、エンドレスベルト30の形状を保持しながらエンドレスベルト30の走行を安定させるようになっている。更にまた、本実施の形態において、ヒータ81としては板状ヒータが用いられ、前記押圧部材50の固定台56の凹部57の底に収容され、弾性体59を介してエンドレスベルト30を加熱するようになっている。
【0038】本実施の形態においても、エンドレスベルト30はベルト寄りガイド60にて確実に寄り規制される。尚、本実施の形態においても、押圧部材50の構成、ヒータ81の構成などについて適宜設計変更し得ることは勿論である。」

《1f》
この発明に係る定着装置の概要を示す、図1(c)として、

《1g》
この発明の定着装置の実施の形態4を示す、図13として、

・実施の形態4を中心に、上記の事項をまとめると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)
「回転駆動される加圧ロール80と、
この加圧ロール80に圧接して加圧ロール80と共に転動し、ニップ域のヒータ81にて加熱されるエンドレスベルト30と、
前記エンドレスベルト30の内側に配設されて、前記エンドレスベルト30を前記加圧ロール80に押圧させ、前記エンドレスベルト30と前記加圧ロール80との間に接触ニップ域を形成する押圧部材50とを具備し、
前記接触ニップ域に記録シート5を通過させることにより、未定着トナー像を記録シート5上に加熱・加圧定着させる定着装置において、
前記押圧部材50は、前記接触ニップ域を形成する面が加圧ロール80に沿った凹形状に形成され、前記接触ニップ域出口で前記接触ニップ域を形成する面に連続する前記押圧部材50の外側に突出する突出部である弾性体59を有する定着装置。」

2-2.刊行物2
・原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された特開昭61-110178号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
《2a》
「3.発明の詳細な説明
(産業上の利用分野)
本発明は一般にゼログラフィ式複写装置に関し、更に詳細には、加熱された定着部材との直接接触によって粒状の可塑性トナーを熱圧的に定着する装置に関する。」(第3頁右上欄第1?6行)

《2b》
「・・・第3図に示す定着装置57は比較的薄い定着ベルト構造体80を備えており、該ベルト構造体は、好ましくは、非回転性マンドレルを横切って引っ張るのに十分な剛度のある金属材料で作った基体部材82(第3図)を備えている。・・・上記基体部材の外面は、好ましくはシリコーンゴムからなる順応性層84で被覆されている。」(第7頁左上欄第11?20行)、

《2c》
「第3図に示す他の実施例の定着装置99は定着ベルト構造体80を備えている。上記ベルト構造体は、定着マンドレル102と薄壁の回転可能に支持された管加熱器104との回りに掛け渡されており、上記加熱器は上記ベルトを昇温させるための内部エネルギー源106を有す。上記ベルトの面と圧力ロール110との間にニップ108が形成されている。・・・圧力ロールを回転させると上記ベルトが上記マンドレルの回りで移動させられ、該ベルトの加熱された部分が上記ニップに入ってトナー像を定着する。」(第7頁右下欄第11行?第8頁左上欄第5行)

・上記の記載事項から、刊行物2には、下記のことが記載されていると認められる。

「画像形成装置のトナー像定着装置で、定着ベルトを、定着ベルト用加熱器を兼ねた加熱管ロールと定着マンドレル固定部材との間で掛け渡して、ニップで圧接する駆動圧力ロールで動かすこと」

3.対比

・本願発明と刊行物1発明とを対比すると、
刊行物1発明の
「記録シート5」、
「未定着トナー像」、
「エンドレスベルト30」、
「加圧ロール80」、
「ニップ域のヒータ81」、
「押圧部材50」、
「接触ニップ域」、
「押圧部材50の外側に突出する突出部の弾性体59」
「未定着トナー像を記録シート上に加熱・加圧定着させる定着装置」
は、それぞれ、
本願発明の
「シート材」、
「(シート材上の)被加熱体」、
「定着ベルト」、
「加圧ローラ」、
「ヒータ」、
「非回転の固定された定着固定部材」、
「定着ニップ部」、
「定着固定部材の外側に突出する突出部」
「搬送されるシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置」
に相当する。

そして、刊行物1発明の定着装置において、「押圧部材50は、接触ニップ域を形成する面が加圧ロール80に沿った凹形状に形成され」ているから、本願発明でいう「定着固定部材は定着ニップ部を形成する面が加圧ローラに沿った凹形状に形成され」ている形にあるといえるし、接触ニップ域出口で「押圧部材50の外側に突出する突出部の弾性体59」は、接触ニップ域を辿り出て行くエンドレスベルト30の動きを妨げないように「接触ニップ域を形成する面にほぼ連続している」ことが図13や動作説明から明らかであるから、本願発明でいう「定着固定部材の外側に突出する突出部は定着ニップ部を形成する面に連続する」形にあるといえる。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「搬送されるシート材上の被加熱体を加熱して定着する定着装置において、
ヒータと、
定着ベルトと、
非回転の固定された定着固定部材と、
定着ベルトを介して定着固定部材に圧接して定着ニップ部を形成してなる加圧ローラと、を備え、
定着固定部材は定着ニップ部を形成する面が加圧ローラに沿った凹形状に形成され、
定着ニップ部の出口には定着ニップ部を形成する面に連続する定着固定部材の外側に突出する突出部を有する
定着装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]:定着ベルトに関して、本願発明では、「回転可能に支持されてヒータで加熱されるローラ」と「定着固定部材」とで張架されているのに対し、刊行物1発明においては、そのような特定がなく、定着ベルトが定着ニップ部のヒータで直接加熱される点。

4.判断
4-1.[相違点]についての検討
刊行物1発明においては、定着ベルトは張架されていないものの、刊行物1には、「エンドレスベルト2の配設の仕方としては、張架ロール等に掛け渡すようにしても差し支えない」(上記摘記事項《1c》参照)と記載されているとおり、定着ベルトを張架するか、それとも、張架しないかは、当業者が任意に選択できる事項である。
そして、定着ベルトを張架する際に、回転ローラと定着固定部材とで張架するとともに、ヒータでローラを加熱して、そのローラで定着ベルトを加熱する構成を採用し、ニップ部のヒータを省略することは、刊行物2に示されている様にこの分野で良く知られた技術である。
したがって、刊行物1発明の定着装置に、刊行物2に示される定着ベルト張架方式や加熱方式を導入して本願発明を構成することは、当業者が適宜為し得たことであるし、その作用効果も特段のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、
本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-09 
結審通知日 2010-09-14 
審決日 2010-10-04 
出願番号 特願2007-281004(P2007-281004)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伏見 隆夫
柏崎 康司
発明の名称 定着装置及びその定着装置を具備する画像形成装置  
代理人 鈴木 均  
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