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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L |
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管理番号 | 1227362 |
審判番号 | 不服2007-24222 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-09-03 |
確定日 | 2010-11-17 |
事件の表示 | 特願2003-509253「データ転送方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 9日国際公開、WO03/03141、平成17年 9月 2日国内公表、特表2005-526407〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2001年6月28日を国際出願日とする出願であって、原審において平成19年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年9月3日に審判請求がなされたものであり、 当審において、平成22年1月12日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年5月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本件出願の請求項に係る発明は、平成22年5月19日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 コンピュータ装置と、ポータブルなデータ転送装置と、コンピュータ装置の外部に位置する1以上の外部電子装置とを含む複数の電子装置間のデータ転送方法において、 前記コンピュータ装置および前記外部電子装置のそれぞれは無線通信手段を含み、前記データ転送装置は、プロセッサと、1GB以上の記憶容量を有する不揮発性メモリと、無線信号のトランシーバ手段と、前記コンピュータ装置および1以上の外部電子装置のそれぞれとの無線通信を行うための通信プロトコルの検索テーブルとを具備しており、前記データ転送方法は、 (a)前記外部電子装置中の第1の外部電子装置は前記コンピュータ装置へ送信するためのデータを含む無線信号を前記データ転送装置のトランシーバ手段に転送し、 (b)前記データ転送装置のプロセッサは、この第1の外部電子装置から転送されたデータをそのデータ転送装置の前記不揮発性メモリ中のディレクトリに1以上のファイルとして記憶し、 (c)前記コンピュータ装置は前記データ転送装置の不揮発性メモリ中のディレクトリを読取って、そこに記憶されているファイルの一部または全部を選択し、 (d)前記データ転送装置のプロセッサは前記トランシーバ手段を使用して前記選択されたファイルのデータを前記コンピュータ装置へ送信するステップを含み、 さらに、前記ポータブルなデータ転送装置が、前記コンピュータ装置および1以上の外部電子装置の1つとの無線通信のための対応する通信プロトコルを決定するために前記検索テーブルにアクセスするステップを含んでいるデータ転送方法」 3.引用例に記載された発明 当審で通知した拒絶理由に引用した、特開平9-153129号公報(以下、「引用例」という。)には、「画像ライブラリシステム」として、図面とともに以下の記載がある。 イ.「【請求項1】 撮像装置で撮像した画像を、画像ライブラリの画像格納手段に格納し、この画像格納手段に格納された画像を、画像再生装置からの要求に応じてこの画像再生装置へ伝送するように構成されていることを特徴とする画像ライブラリシステム。 【請求項2】 撮像装置と、この撮像装置で撮像した画像を通信ラインを利用して受け取りかつ保持する画像ライブラリと、この画像ライブラリへ画像の送出の要求を行って、この画像ライブラリに保持されている画像を前記通信ラインを利用して受け取りかつ再生する画像再生装置とを有することを特徴とする画像ライブラリシステム。 【請求項3】・・・(中略)・・・ 【請求項4】 撮像装置は、被写体を撮影する撮影手段と、撮影した画像を一時記憶する一時記憶手段と、この一時記憶手段に記憶された画像を読みだす読み出し手段と、読み出した画像を通信ラインへ送り出す送り出し手段とを有し、 画像ライブラリは、通信ラインとの間で信号の授受を行う第1の送受信手段と、撮像装置から伝送された画像を保持する画像保持手段と、この画像保持手段に登録されている画像の一覧を表したメニュー画像を作成するメニュー作成手段と、前記画像保持手段への画像の登録とこの画像保持手段からの画像の送出と前記メニュー画像の送出とを制御する制御手段とを有し、 画像再生装置は、通信ラインとの間で信号の授受を行う第2の送受信手段と、画像ライブラリに対して前記メニュー画像を含む画像の送出を要求する画像要求手段と、画像の送出の要求の際に、すでに受信しているメニュー画像に表された画像の一覧の中から必要な画像を選択する選択手段と、この選択を伴う要求により画像ライブラリから送られてきた画像を再生する画像再生手段と、再生した画像を表示する表示手段とを有することを特徴とする請求項2記載の画像ライブラリシステム。」 (2頁1欄) ロ.「【0026】図3は、撮像装置として電子スチルカメラを用いた場合の本発明の画像ライブラリシステムの第2の実施の形態を示すブロック図である。この図3において、1は電子スチルカメラである。200は画像ライブラリであって、電子スチルカメラ1で撮影した画像を保持する。300は画像再生装置であって、画像ライブラリ200に保持されている画像を再生する。これらは、それぞれ通信ラインとしての公衆電話網4を介して通信を行う。 【0027】電子スチルカメラ1は、図1のものと同じ構成であり、撮影手段11と、一時記憶手段12と、読み出し手段と13、モデム14とを有する。 【0028】画像ライブラリ200は、公衆電話網4との間で信号の授受を行うモデム23と、電子スチルカメラ1から伝送された画像を保持する画像保持手段201と、画像保持手段201に保持された画像の一覧を表したメニュー画像を作成するメニュー作成手段204と、画像の登録および送出とメニュー画像の送出とを制御する制御手段202とを有する。 【0029】画像再生装置300は、公衆電話網4との間で信号の授受を行うモデム34と、画像ライブラリ200に対して画像の送出を要求する画像要求手段301と、画像要求手段301で取得した画像を再生する画像再生手段32と、再生した画像を表示する表示手段33と、画像ライブラリ200より送られてきたメニュー画像から取り出したい画像を選択する選択手段305とを有する。 【0030】以上のように構成された画像ライブラリシステムの動作を説明する。電子スチルカメラ1から画像ライブラリ200への画像の登録は、図1の場合と同様なので、その説明は省略する。 【0031】画像再生装置300からの画像の伝送要求の動作について説明する。画像再生装置300の画像要求手段301によって、画像の伝送要求を、モデム34から公衆電話網4を介して画像ライブラリ200へ伝送する。画像ライブラリ200のモデム23がこの画像再生装置300からの画像の伝送要求を受信すると、制御手段22は、画像の伝送要求であるかどうかを判断する。 【0032】最初の画像伝送要求の場合、制御手段202はメニュー作成手段204にメニュー画像の作成を指示する。メニュー作成手段204は、画像保持手段201に保持された全ての画像を縮小して番号を付けてならべた画像を、メニュー画像として作成する。制御手段202は、メニュー作成手段204で作成したメニュー画像を、モデム23および公衆電話網4を介して画像再生装置300に伝送する。画像再生装置300のモデム34が画像ライブラリ200からのメニュー画像を受信すると、画像要求手段301は受信したメニュー画像を再生手段32に転送する。再生手段32は、受け取ったメニュー画像を再生し、表示手段33に表示する。 【0033】次に、表示手段33に表示されたメニュー画像から、必要な画像を選択し、選択手段305でその画像の番号を入力すると、画像要求手段301はその番号を画像ライブラリ200に伝送する。画像ライブラリ200の制御手段202は、画像再生装置300から受信した番号に該当する画像を画像保持手段201から取り出し、これを画像再生装置300に伝送する。画像再生装置300の画像要求手段301は、受信した画像を再生手段32に転送する。再生手段32は、受け取った画像を再生し、表示手段33に表示する。」 (4頁5?6欄) 上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 まず、上記引用例記載の「画像ライブラリシステム」は、上記イ.、引用例図3からも明らかなように、 「画像再生装置」(画像再生装置300)と、「画像ライブラリ」(画像ライブラリ200)と、「撮像装置」(電子スチルカメラ1)とが「通信ライン」(公衆電話網4)で結ばれたシステムであって、 「画像再生装置」、「画像ライブラリ」、「撮像装置」(電子スチルカメラ1)がいずれも『電子装置』として構成されるのは技術常識ないし自明な事項であって、 上記イ.の【請求項2】の記載によれば、「撮像装置」(電子スチルカメラ1)で撮像した「画像」が「画像ライブラリ」を経由して「画像再生装置」へ送られているから、これら『複数の電子装置間』での『画像転送方法』を開示するものである。 また、上記ロ.、引用例図3からも明らかなように、引用例の「画像再生装置300」および「電子スチルカメラ1」のそれぞれは「モデム34」、「モデム14」を含んでおり、「画像ライブラリ200」は、「制御手段202」と、「画像保持手段201」と、「モデム23」とを具備してなるものである。 そして、画像撮影から再生に至るステップとして、上記イ.、ロ.、引用例図3には、 まず、「電子スチルカメラ1」で撮像された「画像」は、画像を含む信号として「モデム14」、「公衆通信網4」を経由して「画像ライブラリ200」の「モデム23」に転送され、 つぎに、「画像ライブラリ200」の「制御手段202」は、この「電子スチルカメラ1」から転送された「画像」をその「画像ライブラリ200」の「画像保持手段201」に「保持」・「登録」すなわち『記憶』して、 さらに、「画像再生装置300」では、前記「画像ライブラリ200」で作成され、送信されてきた「メニュー画像」を用いて、前記「画像ライブラリ200」の前記「画像保持手段201」に記憶されている画像の一部または全部を「選択」するものであって、 最終的に、前記「選択」された画像が要求として「画像ライブラリ200」へ伝えられ、「画像ライブラリ200」の「制御手段202」の制御の下、「モデム23」を使用して「画像再生装置300」へ送信されてきて、再生されることが開示されている。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「 画像再生装置300と、画像ライブラリ200と、電子スチルカメラ1とを含む複数の電子装置間の画像転送方法において、 前記画像再生装置300および前記電子スチルカメラ1のそれぞれはモデム34,14を含み、前記画像ライブラリ200は、制御手段202と、画像保持手段201と、モデム23とを具備しており、前記画像転送方法は、 (a)前記電子スチルカメラ1は前記画像再生装置300へ送信するための画像を含む信号を前記画像ライブラリ200のモデム23に転送し、 (b)前記画像ライブラリ200の制御手段202は、この電子スチルカメラ1から転送された画像をその画像ライブラリ200の前記画像保持手段201に記憶し、 (c)前記画像再生装置300は前記画像ライブラリ200の前記画像保持手段201に記憶されている画像の一部または全部を選択し、 (d)前記画像ライブラリ200の制御手段202は前記モデム23を使用して前記選択された画像を前記画像再生装置300へ送信するステップを含んでいる画像転送方法」 4.対比・判断 本願発明と上記引用発明を対比すると、 まず、引用発明の「画像」は、引用例図3にもあるように「電子スチルカメラ1」において撮像され、「一時記憶手段12」、「読み出し手段13」、「モデム14」を経由して「画像ライブラリ200」へ送信されているから、「データ」といえるものであるのは明らかである。 また、引用発明の「画像再生装置300」は、本願発明の「コンピュータ装置」と対比すると、少なくとも「装置」である点において一致する。 また、引用発明の「画像ライブラリ200」は、「データ」(画像)を「装置」(画像再生装置)へ送るために中継(転送)しているから、本願発明の「データ転送装置」に相当する。 また、引用発明の「電子スチルカメラ1」は、引用発明の認定においても述べたように「電子装置」であるのは技術常識であり、「装置」(画像再生装置300)の『外部に位置する』ことも引用例図3から明らかであるから、本願発明の「外部電子装置」に相当する。 また、引用発明の「モデム」は、「MODEM」(MOdulator-DEModulator:変調復調装置)のことであるから「通信手段」の一種であり、「変調復調装置」とは通信における「送信」と「受信」の双方に関与する手段であるから、「トランシーバ」(transceiver、送信機 (transmitter) と受信機 (receiver) の組み合わせ、送受信機)ということもできるものであって、「無線」の点を除き、本願発明の「通信手段」、「トランシーバ手段」に相当する。 また、引用発明の「制御手段202」は、制御のための「情報処理装置」(processor:プロセッサ)で構成されるのは技術常識であるから、本願発明の「プロセッサ」に相当する。 また、引用発明の「画像保持手段201」は、「画像」(データ)を保持、すなわち記憶する手段であるから、いわゆる「メモリ」であって、本願発明の「1GB以上の記憶容量を有する不揮発性メモリ」と対比すると、「メモリ」の点で一致する。 また、該「メモリ」に記憶される引用発明の「画像」(データ)は、本願発明の「ファイル」、「ファイルのデータ」と対比すると、「ファイル」も「データ」の一種であるのは技術常識であるから、「データ」の点で一致する。 したがって、両者は以下の点で一致し、また相違している。 (一致点) 「 装置と、データ転送装置と、装置の外部に位置する外部電子装置とを含む複数の電子装置間のデータ転送方法において、 前記装置および前記外部電子装置のそれぞれは通信手段を含み、前記データ転送装置は、プロセッサと、メモリと、トランシーバ手段とを具備しており、前記データ転送方法は、 (a)前記外部電子装置は前記装置へ送信するためのデータを含む信号を前記データ転送装置のトランシーバ手段に転送し、 (b)前記データ転送装置のプロセッサは、この外部電子装置から転送されたデータをそのデータ転送装置の前記メモリに記憶し、 (c)前記装置は前記データ転送装置に記憶されているデータの一部または全部を選択し、 (d)前記データ転送装置のプロセッサは前記トランシーバ手段を使用して前記選択されたデータを前記装置へ送信するステップを含んでいるデータ転送方法」 (相違点1) 「装置」が、本願発明では「コンピュータ装置」であるのに対し、引用発明では「画像再生装置300」である点。 (相違点2) 「データ転送装置」が、本願発明では「ポータブルなデータ転送装置」であるのに対し、引用発明では「画像ライブラリ200」であって、「ポータブル」の限定を欠く点。 (相違点3) 「外部電子装置」が、本願発明では「1以上の外部電子装置」であって複数あるのに対し、引用発明は1つの「電子スチルカメラ1」しか明示しない点、 およびこれに関連して、本願発明では「外部電子装置中の第1の外部電子装置」がデータを送信し、該「第1の外部電子装置」からのデータが記憶されるのに対し、引用発明の「電子スチルカメラ1」では「第1の」と言う要件を欠く点。 (相違点4) 「通信手段」、「トランシーバ手段」に関し、本願発明では「無線通信手段」、「無線信号のトランシーバ手段」であるのに対し、引用発明ではいずれも「モデム」であり、「無線(信号)」の限定を欠く点。 (相違点5) 「メモリ」に関し、本願発明では「1GB以上の記憶容量を有する不揮発性メモリ」であるのに対し、引用発明の「画像保持手段201」は「1GB以上の記憶容量を有する不揮発性」の限定はない点。 (相違点6) 「メモリ」における「データ」(画像)の記憶、選択のステップにおいて、 本願発明では、記憶・選択される「データ」(画像)が「ファイル」であって、 「不揮発性メモリ中のディレクトリに1以上のファイルとして」記憶され、 「不揮発性メモリ中のディレクトリを読取って、そこに記憶されているファイルの一部または全部を選択」するのに対し、 引用発明では単に「画像保持手段201」に記憶され、「画像保持手段201に記憶されている画像の一部または全部を選択」するのみであり、上記相違点5として整理した「不揮発性メモリ」の点を除けば、「ディレクトリに1以上のファイルとして」記憶する、「ディレクトリを読取って、そこに記憶されているファイル」を選択するとの要件がない点。 (相違点7) 「データ転送装置」の構成および動作に関し、本願発明の「データ転送装置」は「前記コンピュータ装置および1以上の外部電子装置のそれぞれとの無線通信を行うための通信プロトコルの検索テーブル」とを具備しており、 「さらに、前記ポータブルなデータ転送装置が、前記コンピュータ装置および1以上の外部電子装置の1つとの無線通信のための対応する通信プロトコルを決定するために前記検索テーブルにアクセスするステップを含んでいる」のに対し、 引用発明の「画像ライブラリ200」はこれらの要件を欠く点。 まず、上記相違点1の「装置」(画像再生装置300)が「コンピュータ装置」である点について検討する。 そもそも引用発明の「画像再生装置300」も、引用例図3には制御手段などの明示こそないが、ユーザがメニュー画像を選択し、画像要求を行い、画像を受信表示するなどの動作を行うものであるから、何らかの制御手段を有するのは明らかであって、上記対比判断においても検討したように、このような制御手段は、プロセッサと呼べるものであるから、装置全体としては「コンピュータ」と同等なものであるが、 引用発明のような「電子スチルカメラ1」(外部電子装置)で撮影した画像を再生するのにPC(パーソナルコンピュータ)のような「コンピュータ装置」を用いることは、例えば当審の拒絶理由にも挙げた特開2001-128113号公報図4左下に「PC等」とあるように、本願出願時点で既に周知の慣用手段でもあったものと認められるから、いずれにせよ相違点1は格別のものではない。 つぎに、相違点2の「ポータブルなデータ転送装置」の点について検討する。 例えば携帯電話機やノートブックパソコンなどのように、もともと技術的なサイズの制約などから固定的に設置されていた装置を、技術の発達につれ小型化して、可搬型の(ポータブルな)ものとして利便性を高めることは、情報通信分野における一般的な技術動向であって、特に例示するまでもなく本願出願時に既に広く行われていた慣用手段と認められるから、「データ転送装置」をポータブルなものとした相違点2も格別のことではない。 ついで、相違点3の「1以上の外部電子装置」の点について検討する。 例えばプロのカメラマンや熱心なアマチュアの写真家であれば、複数台のカメラを所有して使い分けるのは通常のことと考えられ、また、一人一台であっても複数人のカメラ所有者が例えばDPEのようなシステムを共同利用するのも通常のことであるから、引用例記載のシステムを1以上の複数の電子スチルカメラを使用可能なものとすることは、当業者であれば適宜になしうる程度のことに過ぎず、これに伴って具体的な動作ステップの主体、客体となる電子スチルカメラ(外部電子装置)を「第1の外部電子装置」と呼称するのは任意のことであるから、相違点3も格別のことではない。 ついで、相違点4の「無線通信手段」、「無線信号のトランシーバ手段」の点について検討する。 相違点2の判断において触れたように、装置を可搬型の(ポータブルな)ものとした場合に、通信装置のモデムのような「通信手段」、「トランシーバ手段」が、有線に替えて「無線通信手段」、「無線信号のトランシーバ手段」となるのは、携帯電話機がそうであるように必然的なことであって、例えば当審の拒絶理由にも挙げた上記特開2001-128113号公報(図1)、特開2000-350174号公報【0017】にも示唆があることである。 したがって、相違点4も格別のことではない。 ついで、相違点5の「1GB以上の記憶容量を有する不揮発性メモリ」の点について検討する。 メモリの記憶容量をどの程度とするかは、当業者が必要に応じて定め得る設計的事項であって「1GB以上の記憶容量」とするのは任意なことに過ぎず、電源を遮断しても記憶内容が維持されるという「不揮発性」の点に関しても、いわゆるEEPROMや磁気ディスク装置(HDD,ハードディスク)あるいは記録型光学メディア(DVD-RAM等)のように周知のものであるから、当業者であれば適宜に採用可能なものであって、「メモリ」を「1GB以上の記憶容量を有する不揮発性メモリ」とする相違点5も格別のものではない。 ついで、相違点6の、記憶・選択される「データ」(画像)が「ファイル」であって、「ディレクトリに1以上のファイルとして」記憶する、「ディレクトリを読取って、そこに記憶されているファイル」を選択する点について検討する。 多数のデータをメモリに記憶する際に、1つ1つのデータを「ファイル」の単位となし、複数の「ファイル」をまとめて「ディレクトリ」(フォルダ)を構成して取り扱いの便を図る、いわゆるファイルシステムを構成することは、情報通信の分野においては例えば初期のDOS(Disk Operating System)の時代から採用されている周知慣用の技術であって、当審の拒絶理由にも挙げた特開平11-143760号公報にも記載のあることである。 したがって、「データ」(画像)を「ディレクトリに1以上のファイルとして」記憶し、「ディレクトリを読取って、そこに記憶されているファイル」を選択する相違点6も格別のことではない。 なお、このようなファイルシステムを不揮発性メモリ上に構築することも、上記相違点5の判断で検討したようにメモリとしての不揮発性メモリが周知のものであって、例えば磁気ディスク装置(HDD,ハードディスク)にデータをファイルとして記録することが、本願出願前既に通常のことであったものと認められるから格別のことではない。 最後に、相違点7の「通信プロトコルの検索テーブル」に関して検討する。 一般に通信ネットワークに於いて、通信相手により異なる通信プロトコルを使用するために、通信プロトコルのテーブルを予め用意しておき、通信時にこのテーブルにアクセスして使用する通信プロトコルを選択・決定することは、話し相手の国籍に応じて使用言語を選択するが如く、通常のことであって、例えば、特開2001-86563号公報(図1,2、【0024】?【0039】)、特開2000-227842号公報(図2,3、【0010】?【0012】)、特開2000-71576号公報(図3,4、【0020】?【0032】)にあるように周知の慣用手段である。 このような周知技術を引用発明に適用するに何ら阻害要因はなく、引用発明の「データ転送装置」である「画像ライブラリ200」に「前記コンピュータ装置および1以上の外部電子装置のそれぞれとの無線通信を行うための通信プロトコルの検索テーブル」を設け、「データ転送装置が、前記コンピュータ装置および1以上の外部電子装置の1つとの無線通信のための対応する通信プロトコルを決定するために前記検索テーブルにアクセスする」ようになすのは、当業者であれば容易になし得たことと認められる。 したがって、相違点7も格別のものではない。 そして、本願発明の効果も上記引用発明および周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであり、当審の拒絶理由通知に対する意見書における審判請求人の主張も、これらの認定を覆すものではない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-06-16 |
結審通知日 | 2010-06-22 |
審決日 | 2010-07-06 |
出願番号 | 特願2003-509253(P2003-509253) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 羽岡 さやか |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
高野 洋 新川 圭二 |
発明の名称 | データ転送方法および装置 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 橋本 良郎 |