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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B |
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管理番号 | 1227372 |
審判番号 | 不服2008-19206 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-29 |
確定日 | 2010-11-17 |
事件の表示 | 特願2003-520830「ゴルフドライビングマット」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月27日国際公開、WO03/15878、平成16年12月24日国内公表、特表2004-538110〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2002年8月20日(パリ条約による優先権主張2001年8月21日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成19年8月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成20年3月4日付けで手続補正がなされ、その後同年4月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月28日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成20年8月28日付けの手続補正について (2-1)補正の内容 平成20年8月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、その補正内容は、平成20年3月4日付けの手続補正による補正後の特許請求の範囲のうち、請求項1乃至5は変更せず、請求項6乃至13、15、20乃至22を削除し、請求項14、16乃至19、23乃至47を新たな請求項6乃至35とするものである。 (2-2)本件補正の目的 本件補正は、前記(2-1)に記載した通りであり、請求項の削除を目的とするものであるから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定された請求項の削除を目的とするものに該当する。 3.本願発明について 平成20年8月28日付けの手続補正は上記のとおり適法であるので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 しわになることが可能な材料で形成され、使用時にゴルフクラブのヘッドによって打たれるゴルフボールが載置される柔軟部材と、 この柔軟部材の下に配置される粘性材料を含む空洞とを備え、前記粘性材料は、前記ゴルフクラブのヘッドが前記柔軟部材内に打ち込まれるときに、前記ゴルフクラブのヘッドに作用するものであり、 前記ゴルフクラブのヘッドが前記柔軟部材内に打ち込まれるときに、前記柔軟部材は、前記ゴルフクラブのヘッドの前方で、かつ前記ゴルフボールの後方で、山状の突起を形成するように、しわになり、このしわが、前記粘性材料の作用と共に、前記ゴルフクラブのヘッドを減速させることを特徴とするゴルフドライビングマット。」 4.引用刊行物記載の発明 これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前である平成9年7月8日に頒布された「特開平9-173521号公報 」(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。 (a)「【発明の詳細な説明】 【0001】〔産業上の利用分野〕この考案は、人工芝と固定マットの間に軟質マットを敷いたゴルフ練習器である。」 (b)「【0004】〔問題を解決するための手段〕人工芝(1)と固定マット(5)の間に包質物(2)に内容物(3)を入れた軟質マット(4)を設置する。本考案は、以上のような構成よりなるゴルフ練習器である。 【0005】〔作用〕軟質マット(4)を敷くことで、実際にラウンドしているのと同じようにクラブヘッドの軌道を確かめられるゴルフ練習器である。 【0006】〔実用例〕以下、本案の実用例について説明する。人工芝(1)と固定マット(5)の間に包質物(2)に内容物(3)を入れた軟質マット(4)を設置する。なお、包質物(2)はビニール等シート状物質で容易に破けないように強化され、中に内容物(3)を入れられる形状の物質である。又、内容物(3)はクッション材であり(イ)液体物質・(ロ)気体物質・(ハ)ゲル状物質・(ニ)スポンジ、ゴム等の柔らかい物質・(ホ)コイルバネ・(ヘ)板バネ等が考えられる。但し、(ハ)ゲル状物質・(ニ)スポンジ、ゴム等の柔らかい物質・(ホ)コイルバネ・(ヘ)板バネ等は包質物(2)に入れず直接設置する場合もある。 【0007】〔発明の効果〕本案は、以上のような構成である。軟質マット(4)を敷くことで、正しいクラブヘッドの軌道と、ダフリのクラブヘッドの軌道の違いがボール飛行軌道(図4)にあらわれ、きわめて、良い、忠告となり、正しいクラブヘッドの軌道の習得練習となる。又、アイアンの場合も軟質マットを敷くことにより、ヘッドが軟質マットを押し、地面に入り込む感覚(図5)を自然に習得できるようになる。なお、初心者に多い事だが、大ダフリによるクラブの損失を防いだり身体(手首、肘、肩等)への衝撃の軽減にもなる。」 (c)【図2】及び【図4】から、包質物2の上部部分の上に人工芝1が敷かれ、包質物2の上部部分の下に内容物3が位置する状態でゴルフ練習器が使用されると読み取ることができる。 (d)【0007】の記載を勘案すると、【図5】から、アイアンヘッドによる人工芝及び軟質マットへの打ち込みの際に、人工芝及び軟質マットがへこむことを読み取ることができる。 上記引用刊行物の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「人工芝(1)と固定マット(5)の間に包質物(2)に内容物(3)を入れた軟質マット(4)を設置したゴルフ練習器において、軟質マット(4)は、ビニール等シート状物質で容易に破けないように強化され、中に内容物(3)を入れられる形状の物質である包質物(2)と、クッション材でありゲル状物質からなる内容物(3)とで構成されており、包質物2の上部部分の上に人工芝1が敷かれ、包質物2の上部部分の下に内容物3が位置する状態でゴルフ練習器が使用されることにより、アイアンヘッドによる打ち込みの際に人工芝及び軟質マットがへこみ、またアイアンヘッドが軟質マットを押し、地面に入り込む感覚を自然に習得できるようになる、ゴルフ練習器。」 5.対比 本願発明を、引用発明と比較する。 引用発明における「アイアンヘッド」は、本願発明における「ゴルフクラブのヘッド」に相当する。 引用発明における「人工芝(1)」は、「包質物(2)の上部部分」に敷かれた状態で使用されるものであり、使用時に「人工芝(1)」及び「包質物(2)の上部部分」の上にアイアンヘッドにより打たれるゴルフボールが載置されることは明らかである。そして、「アイアンヘッドによる打ち込みの際に、人工芝及び軟質マットがへこ」むことから、人工芝(1)及び包質物(2)の上部部分が柔らかい部材であることも明らかであるので、引用発明における「人工芝(1)」と「包質物(2)の上部部分」は、本願発明における「使用時にゴルフクラブのヘッドによって打たれるゴルフボールが載置される柔軟部材」に相当する。 引用発明における「ゲル状物質からなる内容物(3)」は、中に内容物(3)を入れられる形状の物質である包質物(2)の中に入れられており、包質物(2)の上部部分の下に内容物(3)が位置する状態で使用されるものであり、かつ包質物(2)とともに軟質マット(4)を構成し、アイアンヘッドにより押されて前記ヘッドを通じてゴルフクラブ使用者に地面に入り込む感覚を与えることから、本願発明における「この柔軟部材の下に配置され」「前記ゴルフクラブのヘッドが前記柔軟部材内に打ち込まれるときに、前記ゴルフクラブのヘッドに作用する」「粘性材料」に相当する。 引用発明における「包質物(2)」は、中に内容物(3)を入れられる形状の物質であることから、本願発明における「粘性材料を含む空洞」「を備え」ていることは明らかといえる。 引用発明における「人工芝及び軟質マットがへこむ」ことは、「人工芝及び軟質マットがへこむ」ことによって、そのへこむ場所の境界部分に必ずしわが生じるといえること、及び、軟質マット(4)が包質物(2)の上部部分を含む包質物(2)と内容物(3)とで構成されていることから、本願発明における「柔軟部材」が「しわにな」ること及び「しわになることが可能な材料で形成され」ていることに相当する。 引用発明における「ゴルフ練習器」は、ゴルフ練習器にボールを載置してゴルフクラブによりボールを打つ練習に使用するものであるから、本願発明における「ゴルフドライビングマット」に相当する。 すると、本願発明と、引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> しわになることが可能な材料で形成され、使用時にゴルフクラブのヘッドによって打たれるゴルフボールが載置される柔軟部材と、 この柔軟部材の下に配置される粘性材料を含む空洞とを備え、前記粘性材料は、前記ゴルフクラブのヘッドが前記柔軟部材内に打ち込まれるときに、前記ゴルフクラブのヘッドに作用するものであり、 前記ゴルフクラブのヘッドが前記柔軟部材内に打ち込まれるときに、前記柔軟部材は、しわになる、 ゴルフドライビングマット。 一方で、両者は、次の相違点で一応相違する。 <相違点> 本願発明では、ゴルフクラブのヘッドが前記柔軟部材内に打ち込まれるときにできる柔軟部材のしわが、「前記ゴルフクラブのヘッドの前方で、かつ前記ゴルフボールの後方で、山状の突起を形成する」形状のものであり、かつ「前記粘性材料の作用と共に、前記ゴルフクラブのヘッドを減速させる」構成を備えているのに対し、引用発明では、アイアンヘッドによる打ち込みの際に人工芝(1)及び包質物(2)の上部部分にしわができるが、そのしわの形状が上記形状であること及びしわがどのようにアイアンヘッドに作用するかの明記がない点。 6.当審の判断 上記相違点について検討する。 ゴルフドライビングマットにおいて、ゴルフクラブヘッドをゴルフドライビングマットに打ち込むか否か及び打ち込む場合のその打ち込む位置は、ゴルフドライビングマット使用者のゴルフの技量により決まることである。よって、ゴルフクラブヘッドをゴルフドライビングマットに打ち込む位置がゴルフボールからかなり離れた位置である場合は、ゴルフボールとゴルフクラブヘッドの打撃面との間に、ゴルフクラブヘッドによりゴルフボール方向に押し出されたゴルフドライビングマットの表面に近い可動部分が押されて山状の突起のようなしわが形成されることは、明記が無くても明らかなことである。また、前記の場合には、ゴルフクラブヘッドによりゴルフボール方向に押し出されたゴルフドライビングマットの表面に近い可動部分がゴルフクラブヘッドに対し抵抗物となるから、前記山状の突起のようなしわがゴルフクラブヘッドを減速させることも、明記が無くても明らかなことである。そして、引用発明では、ゴルフクラブヘッドによりゴルフボール方向に押し出されたゴルフドライビングマットの表面に近い可動部分は、人工芝(1)及び軟質マット(4)の包質物(2)の上部部分とゲル状物質からなる内容物(3)であるから、前記ゴルフクラブヘッドをゴルフドライビングマットに打ち込む位置がゴルフボールからかなり離れた位置である場合に、引用発明においても包質物(2)の上部部分とゲル状物質からなる内容物(3)が、ゴルフクラブのヘッドの前方で、かつゴルフボールの後方で、山状の突起を形成するように、しわになり、このしわが、ゲル状物質の作用と共に、ゴルフクラブのヘッドを減速させる構成を備えていることとなる。よって、上記相違点は、その使用方法によって生じるものに過ぎず、上記相違点が本願発明が対象とする「物(ゴルフドライビングマット)」の構造上の相違点であるということができないから、引用発明と本願発明とは相違しない。 なお、引用発明における包質物(2)の上部部分が、審判請求人の主張のように容易に破けないように強化されたビニール等のシート状物質であるから山状の突起を形成するようなしわができないということがあったとしても、ビニール等のシート状物質は薄くなれば表面平行方向の力により山状の突起を形成するようになることは、一般に知られていることから、包質物(2)の上部部分であるの容易に破けないように強化されたビニール等のシート状物質を、容易に破けない程度の範囲で厚みを変化させて山状の突起を形成するようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎず、その作用効果も当業者が予測しうる範囲のものである。 7.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 または、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-06-18 |
結審通知日 | 2010-06-22 |
審決日 | 2010-07-05 |
出願番号 | 特願2003-520830(P2003-520830) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63B)
P 1 8・ 113- Z (A63B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中澤 真吾 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
伊藤 幸仙 森林 克郎 |
発明の名称 | ゴルフドライビングマット |
代理人 | 千且 和也 |
代理人 | 右田 登志男 |