• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1227392
審判番号 不服2009-11654  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-25 
確定日 2010-11-17 
事件の表示 特願2006-523250「マルチアンテナ直交周波数分割多重通信システムにおける適応ビット・ローディングのためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日国際公開、WO2005/022681、平成19年 2月 1日国内公表、特表2007-502072〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年8月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2003年8月8日、米国、及び2003年12月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年8月8日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年11月18日付けで手続補正がされ、その後、平成21年3月23日付けで拒絶査定がされた。これに対し、同年6月25日に拒絶査定に対する審判請求がされ、同日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成21年6月25日付けの手続補正について

[補正却下の決定の結論]
平成21年6月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

1 補正後の本願発明
本件補正は、平成20年11月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項27に記載された、

「命令を提供するコンピュータ読取り可能な媒体であって、前記媒体は1以上のプロセッサによって実行される命令を格納し、前記プロセッサは、
直交周波数分割多重シンボルを表わすビットのブロックをコード化されたビットの変数番号を有するグループへパースし、
空間-周波数のサブキャリア変調割当てに従って、直交周波数分割多重サブキャリア上の前記ビットのグループを個々に変調し、シンボル変調されたサブキャリアを生成し、
複数の空間チャネルに亘る後続のRF送信のために前記シンボル変調されたサブキャリアに逆高速フーリエ変換(IFFT)を実行することにより、時間領域波形を生成することを含む動作を実行する、
ことを特徴とするコンピュータ読取り可能な媒体。」(以下、「本願発明」という。)を、

平成21年6月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項19に記載された、

「命令を提供するコンピュータ読取り可能な媒体であって、前記媒体は1以上のプロセッサによって実行される命令を格納し、前記プロセッサは、
直交周波数分割多重シンボルを表わすビットのブロックを可変数のコード化されたビットを有するグループへパースし、
空間-周波数のサブキャリア変調割当てに従って、直交周波数分割多重サブキャリア上の前記ビットのグループを個々に変調し、シンボル変調されたサブキャリアを生成し、
複数の空間チャネルに亘る後続のRF送信のために前記シンボル変調されたサブキャリアに逆高速フーリエ変換(IFFT)を実行することにより、時間領域波形を生成することを含む動作を実行し、
前記パースする実行は、可変サイズのビットのブロックを空間-周波数のビットのグループへパースする空間-周波数パーサによって実行され、各空間-周波数グループは前記直交周波数分割多重シンボルの空間コンポーネントおよび周波数コンポーネントに関連し、前記空間コンポーネントは前記空間チャネルの1つに関連し、前記周波数コンポーネントは前記直交周波数分割多重サブキャリアの1つに関連している、
ことを特徴とするコンピュータ読取り可能な媒体。」(以下、「補正後の発明」という。)

に変更することを含むものである。

下線部は、本願発明に対する補正箇所である。

2 補正の適否

(1)新規事項の有無、補正の目的要件
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、次のア乃至イからなる。

ア 本願発明において誤記であった「コード化されたビットの変数番号」という記載を「可変数のコード化されたビット」へと訂正する。

イ 「プロセッサ」が「パース」を実行する際に、「前記パースする実行は、可変サイズのビットのブロックを空間-周波数のビットのグループへパースする空間-周波数パーサによって実行され、各空間-周波数グループは前記直交周波数分割多重シンボルの空間コンポーネントおよび周波数コンポーネントに関連し、前記空間コンポーネントは前記空間チャネルの1つに関連し、前記周波数コンポーネントは前記直交周波数分割多重サブキャリアの1つに関連している、」と具体的に限定する。

ここで、上記アの補正内容は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)、および第4項第3号(誤記の訂正)の規定に適合している。
また、上記イの補正内容についても、同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)、および第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
本件補正は、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

ア 補正後の発明
上記「1 補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

イ 引用発明
原審の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された国際公開第03/001702号(以下、「引用例」という。)には、「METHOD AND APPARATUS FOR PROCESSING DATA FOR TRANSMISSION IN A MULTI-CHANNEL COMMUNICATION SYSTEM USING SELECTIVE CHANNEL TRANSMISSION」に関して、図面とともに下記の事項が記載されている。(訳文は、上記引用例に対応する特表2004-531980号公報の記載が訳文として概ね適切であるので、この公報から該当部分を抜粋・転記した。なお、段落番号部分については、原文に基づいて付け替えを行った。)

(ア)「[1022] A MIMO system employs multiple (N_(T)) transmit antennas and multiple (N_(R)) receive antennas for data transmission. A MIMO channel formed by the N_(T) transmit and N_(R) receive antennas may be decomposed into N_(C) independent channels, with N_(C) ≦min{N_(T), N_(R)}. Each of the N_(C) independent channels is also referred to as a spatial subchannel of the MIMO channel and corresponds to a dimension. In one common MIMO system implementation, the N_(T) transmit antennas are located at and associated with a single transmitter system, and the N_(R) receive antennas are similarly located at and associated with a single receiver system. A MIMO system may also be effectively formed for a multiple access communication system having a base station that concurrently communicates with a number of terminals. In this case, the base station is equipped with a number of antennas and each terminal may be equipped with one or more antennas.
[1023] An OFDM system effectively partitions the operating frequency band into a number of (N_(F)) frequency subchannels (i.e., frequency bins or subbands). At each time slot, a modulation symbol may be transmitted on each of the N_(F) frequency subchannels. Each time slot corresponds to a particular time interval that may be dependent on the bandwidth of the frequency subchannel. 」(第5頁第1行?第17行)

(訳文:[1022] MIMOシステムは、データ送信のために多重(N_(T)個の)送信アンテナ及び多重(N_(R)個の)受信アンテナを使用する。N_(T)個の送信アンテナ及びN_(R)個の受信アンテナによって形成されるMIMOチャンネルは、N_(C)≦min{N_(T),N_(R)}を持つ、N_(C)個の独立チャンネルに分解されることができる。N_(C)個の独立チャンネルの各々は、MIMOチャンネルの空間サブチャンネルとも呼ばれ、1つのディメンション(a dimension)に相当する。1つの共通のMIMOシステム実施において、N_(T)個の送信アンテナは、単一の送信機システムに設置されて送信機システムと関連し、N_(R)個の受信アンテナは、同様に、単一の受信機システムに設置されて受信機システムと関連する。MIMOシステムは、多数の端末と並行通信する基地局を有する多元接続通信システムのためにも効果的に形成される。この場合において、基地局は、多数のアンテナを備え、各端末は、1つ以上のアンテナを備えてもよい。
[1023] OFDMシステムは、動作周波数帯域を多数の(N_(F)個の)周波数サブチャンネル(即ち、周波数配置場所又はサブバンド)に効果的に仕切る。各タイムスロットで、変調シンボルは、N_(F)個の各周波数サブチャンネル上を送信されてもよい。各タイムスロットは、周波数サブチャンネルの帯域幅に依存してもよい特定の時間間隔に相当する。)

(イ)「[1026] To more fully utilize the capacity of the transmission channels, channel state information (CSI) descriptive of the link conditions may be determined (typically at the receiver system) and provided to the transmitter system. The transmitter system may then process (e.g., encode, modulate, and weight) data such that the transmitted information bit rate for each transmission channel matches the transmission capacity of the channel. CSI may be categorized as either “full CSI” or “partial CSI”. Full CSI includes sufficient characterization (e.g., the amplitude and phase) across the entire system bandwidth for the propagation path between each transmit-receive antenna pair in a N_(T)×N_(R) MIMO matrix (i.e., the characterization for each transmission channel). Partial CSI may include, for example, the SNRs of the transmission channels. 」(第6頁第3行?第12行)

(訳文:[1026] 送信チャンネルの容量をより完全に利用するために、リンク条件を記述しているチャンネル状態情報(CSI)が決定され(一般に、受信機システムで)、送信機システムへ与えられてもよい。送信機システムは、それから、各送信チャンネルに対する送信された情報ビットレートがチャンネルの送信容量に整合するように、データを処理(例えば、符号化、変調、及び重み付け)してもよい。CSIは、“全CSI”又は“部分CSI”のどちらかに分類されることができる。全CSIは、N_(T)×N_(R )MIMOマトリクス(即ち、各送信チャンネルに対する特徴(characterization))における各送信‐受信アンテナ対の間の伝播通路に対する全システム帯域幅に亘る充分な特徴(例えば、振幅及び位相)を含む。部分CSIは、例えば、送信チャンネルのSNRを含んでもよい。)

(ウ)「Multi-Channel Communication System
[1092] FIG. 3 is a diagram of a MIMO communication system 300 capable of implementing various aspects and embodiments of the invention. System 300 includes a first system 310 (e.g., base station 104 in FIG. 1) in communication with a second system 350 (e.g., terminal 106). System 300 may be operated to employ a combination of antenna, frequency, and temporal diversity to increase spectral efficiency, improve performance, and enhance flexibility.
[1093] At system 310, a data source 312 provides data (i.e., information bits) to a transmit (TX) data processor 314, which (1) encodes the data in accordance with a particular coding scheme, (2) interleaves (i.e., reorders) the encoded data based on a particular interleaving scheme, and (3) maps the interleaved bits into modulation symbols for one or more transmission channels selected for use for data transmission. The encoding increases the reliability of the data transmission. The interleaving provides time diversity for the coded bits, permits the data to be transmitted based on an average SNR for the selected transmission channels, combats fading, and further removes correlation between coded bits used to form each modulation symbol. The interleaving may further provide frequency diversity if the coded bits are transmitted over multiple frequency subchannels. In an aspect, the coding, interleaving, and/or symbol mapping may be performed based on control signals provided by a controller 334.
[1094] A TX channel processor 320 receives and demultiplexes the modulation symbols from TX data processor 314 and provides a stream of modulation symbols for each selected transmission channel, one modulation symbol per time slot. TX channel processor 320 may further precondition the modulation symbols for the selected transmission channels if full CSI is available. 」(第25頁第23行-第26頁第15行)

(訳文: 多重チャンネル通信システム
[1092] 図3は、本発明の種々の観点及び実施形態を実施することが可能なMIMO通信システム300の図である。システム300は、第2のシステム350(例えば、端末106)と通信する第1のシステム310(例えば、図1における基地局104)を含む。システム300は、アンテナ、周波数、及びスペクトル効率を増加させ、性能を向上させ、且つ柔軟性を高めるための時間ダイバーシティの組合せを使用するために動作させられてもよい。
[1093] システム310で、データ源312は、データ(即ち、情報ビット)を送信(TX)データプロセッサ314へ与え、そしてそれは、(1)特定の符号化方式に従ってデータを符号化し、(2)特定のインタリーブ方式に基づいて符号化されたデータをインタリーブ(即ち、再整理)し、且つ(3)インタリーブされたビットをデータ送信に使用するために選択された1つ以上の送信チャンネルに対する変調シンボルに写像する。符号化は、データ送信の信頼性を増加させる。インタリーブは、符号化されたビットに時間ダイバーシティを与え、選択された送信チャンネルに対する平均のSNRに基づいてデータを送信させ、フェージングを抑制(combat)し、且つ、更に、各変調シンボルを形成するために使用される符号化されたビットの間の相互関係を除去する。インタリーブは、更に、符号化されたビットが多重周波数サブチャンネルを介して送信されるならば、周波数ダイバーシティを与えることができる。ある観点において、符号化、インタリーブ、及び/又はシンボル写像は、コントローラー334によって与えられる制御信号に基づいて行われることができる。
[1094] TXチャンネルプロセッサ320は、TXデータプロセッサ314からの変調シンボルを受信して多重解除し(demultiplex)、且つタイムスロット当り1つの変調シンボルの割合で、各選択された送信チャンネルに変調シンボルのストリームを与える。TXチャンネルプロセッサ320は、更に、全CSIが利用可能であるならば、選択された送信チャンネルに対して変調シンボルを前調整してもよい。)

(エ)「[1102] Symbol mapping element 416 can be designed to group sets of unpunctured bits to form non-binary symbols, and to map each non-binary symbol into a point in a signal constellation corresponding to the modulation scheme selected for use for the selected transmission channels. The modulation scheme may be QPSK, M-PSK, M-QAM, or some other scheme. Each mapped signal point corresponds to a modulation symbol.
[1103] The encoding, interleaving, puncturing, and symbol mapping at transmitter system 310a can be performed based on numerous schemes. One specific scheme is described in the aforementioned U.S. patent application Ser. No. 09/776,075.
[1104] The number of information bits that may be transmitted for each modulation symbol for a particular level of performance (e.g., 1% PER) is dependent on the received SNR. Thus, the coding and modulation scheme for the selected transmission channels may be determined based on the characteristics of the channels (e.g., the channel gains, received SNRs, or some other information). The channel interleaving may also be adjusted based on the coding control signal.
[1105] Table 1 lists various combinations of coding rate and modulation scheme that may be used for a number of received SNR ranges. The supported bit rate for each transmission channel may be achieved using any one of a number of possible combinations of coding rate and modulation scheme. For example, one information bit per modulation symbol may be achieved by using (1) a coding rate of 1/2 and QPSK modulation, (2) a coding rate of 1/3 and 8-PSK modulation, (3) a coding rate of 1/4 and 16-QAM, or some other combination of coding rate and modulation scheme. In Table 1, QPSK, 16-QAM, and 64-QAM are used for the listed SNR ranges. Other modulation schemes such as 8-PSK, 32-QAM, 128-QAM, and so on, may also be used and are within the scope of the invention.

」(第28頁第8行-第29頁表欄)

(訳文:[1102] シンボル写像要素418は、非2進シンボルを形成するためにパンクチャされてないビットの組を分類し、且つ選択された送信チャンネルに使用するために選択された変調方式に相当する信号集合体における点に各非2進シンボルを写像するために設計されることができる。変調方式は、QPSK、M‐PSK、M‐QAM、又は若干の他の方式でもよい。
各写像された信号点は、変調シンボルに相当する。
[1103] 送信機システム310aでの符号化、インタリーブ、パンクチャ、及びシンボル写像は、非常に多くの方式に基づいて行われることができる。1つの特定の方式は、前述の米国特許出願番号第09/776075号に記載されている。
[1104] 特定レベルの性能(例えば、1%PER)で各変調シンボルに対して送信されてもよい情報ビットの数は、受信SNRに依存する。こうして、選択された送信チャンネルに対する符号化及び変調方式は、チャンネルの特性(例えば、チャンネル利得、受信SNR、又は若干の他の情報)に基づいて決定されてもよい。チャンネルインタリーブも、符号化制御信号に基づいて調節されてもよい。
[1105] 表1は、多数の受信SNR範囲で使用されてもよい符号化レート及び変調方式の種々の組合せをリストアップする。各送信チャンネルに対するサポートされたビットレートは、符号化レート及び変調方式の多数の可能な組合せの任意の1つを使用して実現されてもよい。例えば、変調シンボル当り1つの情報ビットは、(1)1/2の符号化レート及びQPSK変調、(2)1/3の符号化レート及び8‐PSK変調、(3)1/4の符号化レート及び16‐QAM、又は符号化レート及び変調方式の若干の他の組合せ、を使用することによって実現されてもよい。表1において、QPSK、16‐QAM、64‐QAMは、リストアップされたSNR範囲で使用される。8‐PSK、32‐QAM、128‐QAM、等のような他の変調方式も、使用されてもよく、それは、本発明の範囲の中にある。

)

(オ)「[1114] FIG. 4D is a block diagram of a MIMO transmitter system 310d, which also utilizes OFDM and is capable of processing data in accordance with yet another embodiment of the invention. In this embodiment, the transmission channels for each frequency subchannel may be independently processed. Within a TX data processor 314d, the information bits to be transmitted are demultiplexed by a demultiplexer 428 into a number of (up to N_(F)) frequency subchannel data streams, one stream for each of the frequency subchannels to be used for data transmission. Each frequency subchannel data stream is provided to a respective frequency subchannel data processor 430.
[1115] Each data processor 430 processes data for a respective frequency subchannel of] the OFDM system. Each data processor 430 may be implemented similar to TX data processor 314a shown in FIG. 4A, TX data processor 314b shown in FIG. 4B, or with some other design. In one embodiment, data processor 430 demultiplexes the frequency subchannel data stream into a number of data substreams, one data substream for each spatial subchannel selected for use for the frequency subchannel. Each data substream is then encoded, interleaved, and symbol mapped to generate modulation symbols for the data substream. The coding and modulation for each frequency subchannel data stream or each data substream may be adjusted based on the coding and modulation control signals. Each data processor 430 thus provides up to N_(C) modulation symbol streams for up to N_(C) spatial subchannels selected for use for the frequency subchannel.
[1116] For a MIMO system utilizing OFDM, the modulation symbols may be transmitted on multiple frequency subchannels and from multiple transmit antennas. Within a MIMO processor 320d, the up to N_(C) modulation symbol streams from each data processor 430 are provided to a respective spatial processor 432, which processes the received modulation symbols based on the channel control and/or the available CSI. Each spatial processor 432 may simply implement a demultiplexer (such as that shown in FIG. 4A) if full-CSI processing is not performed, or may implement a MIMO processor followed by a demultiplexer (such as that shown in FIG. 4B) if full-CSI processing is performed. For a MIMO system utilizing OFDM, the full-CSI processing (i.e., preconditioning) may be performed for each frequency subchannel.
[1117] Each subchannel spatial processor 432 demultiplexes the up to N_(C) modulation symbols for each time slot into up to N_(T) modulation symbols for the transmit antennas selected for use for that frequency subchannel. For each transmit antenna, a combiner 434 receives the modulation symbols for up to N_(F) frequency subchannels selected for use for that transmit antenna, combines the symbols for each time slot into a modulation symbol vector V, and provides the modulation symbol vector to the next processing stage (i.e., a respective modulator 322).
[1118] TX channel processor 320d thus receives and processes the modulation symbols to provide up to N_(T) modulation symbol vectors, V_(1) through V_(Nt) , one modulation symbol vector for each transmit antenna selected for use for data transmission. Each modulation symbol vector V covers a single time slot, and each element of the modulation symbol vector V is associated with a specific frequency subchannel having a unique subcarrier on which the modulation symbol is conveyed.
[1119] FIG. 4D also shows an embodiment of modulator 322 for OFDM. The modulation symbol vectors V_(1) through V_(Nt) from TX channel processor 320d are provided to modulators 322a through 322t , respectively. In the embodiment shown in FIG. 4D, each modulator 322 includes an inverse Fast Fourier Transform (IFFT) 440, a cyclic prefix generator 442, and an upconverter 444.
[1120] IFFT 440 converts each received modulation symbol vector into its time-domain representation (which is referred to as an OFDM symbol) using IFFT. IFFT 440 can be designed to perform the IFFT on any number of frequency subchannels (e.g., 8, 16, 32, ... ,N_(F)). In an embodiment, for each modulation symbol vector converted to an OFDM symbol, cyclic prefix generator 442 repeats a portion of the time-domain representation of the OFDM symbol to form a “transmission symbol” for a specific transmit antenna. The cyclic prefix insures that the transmission symbol retains its orthogonal properties in the presence of multipath delay spread, thereby improving performance against deleterious path effects. The implementation of IFFT 440 and cyclic prefix generator 442 is known in the art and not described in detail herein.
[1121] The time-domain representations from each cyclic prefix generator 442 (i.e., the transmission symbols for each antenna) are then processed (e.g., converted into an analog signal, modulated, amplified, and filtered) by upconverter 444 to generate a modulated signal, which is then transmitted from a respective antenna 324. 」(第31頁第28行-第33頁第23行)

(訳文:[1114] 図4Dは、MIMO送信機システム310dのブロック図であり、そしてそのシステムも、本発明の更にもう1つの実施形態に従ってOFDMを利用し、データを処理することが可能である。この実施形態において、各周波数サブチャンネルに対する送信チャネルは、独立に処理されてもよい。TXデータプロセッサ314dの中において、送信されるための情報ビットは、データ送信に使用されるための周波数サブチャンネルの各々当り1つのストリームの割合で、デマルチプレクサ428によって多数(N_(F)個まで)の周波数サブチャンネルデータストリームに多重解除される。各周波数サブチャンネルデータストリームは、それぞれの周波数サブチャンネルデータプロセッサ430へ与えられる。
[1115] 各データプロセッサ430は、OFDMシステムのそれぞれの周波数サブチャンネルに関するデータを処理する。各データプロセッサ430は、図4Aに示されるTXデータプロセッサ314a、図4Bに示されるTXデータプロセッサ314b、又は若干の他の設計のものと同様に実施されてもよい。1つの実施形態において、データプロセッサ430は、周波数サブチャンネルに使用するために選択された各空間サブチャンネル当り1つのデータストリームの割合で、周波数サブチャンネルデータストリームを多数のデータサブストリームに多重解除する。各データサブストリームは、それから、符号化され、インタリーブされ、且つデータサブストリームに対する変調シンボルを発生させるためにシンボル写像される。各周波数サブチャンネルデータストリーム又は各データサブストリームに対する符号化及び変調は、符号化及び変調制御信号に基づいて調節されてもよい。各データプロセッサ430は、こうして、N_(C)個までの変調シンボルストリームを、周波数サブチャンネルに使用するために選択されたN_(C)個までの空間サブチャンネルに与える。
[1116] OFDMを利用するMIMOシステムについて、変調シンボルは、多重周波数サブチャンネル上を、且つ多重送信アンテナから送信されることができる。MIMOプロセッサ320dの中において、各データプロセッサ430からのN_(C)個までの変調シンボルストリームは、それぞれの空間プロセッサ432へ与えられ、そしてその空間プロセッサは、チャンネル制御及び/又は利用可能なCSIに基づいて受信された変調シンボルを処理する。各空間プロセッサ432は、全CSI処理が行われないならば、(図4Aに示されるもののような)デマルチプレクサを簡単に実装してもよく、又は全CSI処理が行われるならば、(図4Bに示されるもののような)デマルチプレクサが後に続くMIMOプロセッサを実装してもよい。OFDMを利用するMIMOシステムについて、全CSI処理(即ち、前調整)は、各周波数サブチャンネルに対して行われることができる。
[1117] 各サブチャンネル空間プロセッサ432は、各タイムスロットに対してN_(C)個までの変調シンボルを、その周波数サブチャンネルに使用するために選択された送信アンテナに対してN_(T)個までの変調シンボルに多重解除する。各送信アンテナについて、結合器434は、その送信アンテナに使用するために選択されたN_(F)個までの周波数サブチャンネルに関する変調シンボルを受信し、各タイムスロットに対するシンボルを変調シンボルベクトルVに結合させ、且つ変調シンボルベクトルを次の処理ステージ(即ち、それぞれの変調器322)へ与える。
[1118] TXチャンネルプロセッサ320dは、こうして、データ送信に使用するために選択された各送信アンテナ当り1つの変調シンボルベクトルの割合で、N_(T)個までの変調シンボルベクトルV_(1)乃至V_(Nt)を与えるために、変調シンボルを受信し、且つ処理する。各変調シンボルベクトルVは、単一のタイムスロットを扱い、且つ変調シンボルベクトルVの各要素は、その上を変調シンボルが伝達される独特のサブキャリアを有する特定の周波数サブチャンネルと関連させられる。
[1119] 図4Dは、OFDMのための変調器322の実施形態も示す。TXチャンネルプロセッサ320dからの変調シンボルベクトルV_(1)乃至V_(Nt)は、それぞれ、変調器322a乃至322tへ与えられる。図4Dに示される実施形態において、各変調器322は、逆高速フーリエ変換(IFFT)440、巡回接頭文字列発生器(cyclic prefix generator)442、及びアップコンバータ444を含む。
[1120] IFFT440は、各受信された変調シンボルベクトルを、IFFTを使用するその時間領域表示(time-domain representation)(そしてそれは、OFDMシンボルと呼ばれる)に変換する。IFFT440は、任意の数の周波数サブチャンネル(例えば、8、16、32、…、N_(F))上でIFFTを行うために設計されることができる。実施形態において、OFDMシンボルへ変換された各変調シンボルベクトルについて、巡回接頭文字列(cyclic prefix )発生器442は、特定の送信アンテナに対する“送信シンボル”を形成するためにOFDMシンボルの時間領域表示の部分を反復する。巡回接頭文字列は、送信シンボルが、マルチパス遅延拡散の存在において、その直交特性を保持することを保証し、これによって、有害な通路効果に対抗して性能を向上させる。IFFT440及び巡回接頭文字列発生器442の実施は、技術的に周知であり、この中には詳細に説明しない。
[1121] 各巡回接頭文字列発生器442からの時間領域表示(即ち、各アンテナに対する送信シンボル)は、それから、変調された信号を発生させるためにアップコンバータ444によって処理され(例えば、アナログ信号に変換され、変調され、増幅され、且つ濾波され)、そしてその変調された信号は、それから、それぞれのアンテナ324から送信される。)

(カ)「[1125] FIG. 4C shows an embodiment wherein the data for each transmit antenna may be coded and modulated independently based on a coding and modulation scheme selected for that transmit antenna. Analogously, FIG. 4D shows an embodiment wherein the data for each frequency subchannel may be coded and modulated independently based on a coding and modulation scheme selected for that frequency subchannel. In general, all available transmission channels (e.g., all spatial subchannels of all frequency subchannels) may be segregated into any number of groups, and each group may include any number and type of transmission channels. For example, each group may include spatial subchannels, frequency subchannels, or subchannels in both domains. 」(第34頁第26行-第35頁第3行)

(訳文:[1125] 図4Cは、各送信アンテナに対するデータがその送信アンテナのために選択された符号化及び変調方式に基づいて独立に符号化され、且つ変調されてもよい実施形態を示す。類似して、図4Dは、各周波数サブチャンネルに対するデータがその周波数サブチャンネルのために選択された符号化及び変調方式に基づいて独立に符号化され、且つ変調されてもよい、実施形態を示す。一般に、全ての利用可能な送信チャンネル(例えば、全ての周波数サブチャンネルの全ての空間サブチャンネル)は、任意の数のグループに分離されてもよく、且つ各グループは、任意の数及び型の送信チャンネルを含んでもよい。例えば、各グループは、空間サブチャンネル、周波数サブチャンネル、又は両方の領域におけるサブチャンネルを含んでもよい。)

(キ)「[1166] The elements of the transmitter and receiver systems may be implemented with one or more digital signal processors (DSP), application specific integrated circuits (ASIC), processors, microprocessors, controllers, microcontrollers, field programmable gate arrays (FPGA), programmable logic devices, other electronic units, or any combination thereof. Some of the functions and processing described herein may also be implemented with software executed on a processor. Certain aspects of the invention may also be implemented with a combination of software and hardware. For example, computations to determine the threshold α and to select transmission channels may be performed based on program codes executed on a processor (controller 334 or 362 in FIG.3). 」(第46頁第27行-第47頁第3行)

(訳文:[1166] 送信機及び受信機システムの要素は、1つ以上のディジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途集積回路(ASIC)、プロセッサ、マイクロプロセッサ、コントローラー、マイクロコントローラ、現場プログラム可能ゲートアレー(FPGA)、プログラム可能論理装置、他の電子ユニット、又はそれらの任意の組合せ、を用いて実施されてもよい。この中で説明した若干の機能及び処理も、プロセッサ上で実行されるソフトウェアを用いて実施されてもよい。本発明の明白な観点も、ソフトウェア及びハードウェアの組合せを用いて実施されてもよい。例えば、閾値αを決定するための、及び送信チャンネルを選択するための計算は、プロセッサ(図3におけるコントローラー334又は362)上で実行されるプログラム符号に基づいて行われてもよい。)

ここで、上記摘記事項(オ)の第[1114]-[1115]段落には、「・・the information bits to be transmitted are demultiplexed by a demultiplexer 428 into a number of (up to N_(F)) frequency subchannel data streams, one stream for each of the frequency subchannels to be used for data transmission.・・(略)・・data processor 430 demultiplexes the frequency subchannel data stream into a number of data substreams, one data substream for each spatial subchannel selected for use for the frequency subchannel.・・(略)・・The coding and modulation for each frequency subchannel data stream or each data substream may be adjusted based on the coding and modulation control signals.(・・送信されるための情報ビットは、データ送信に使用されるための周波数サブチャンネルの各々当り1つのストリームの割合で、デマルチプレクサ428によって多数(N_(F)個まで)の周波数サブチャンネルデータストリームに多重解除される。・・(略)・・データプロセッサ430は、周波数サブチャンネルに使用するために選択された各空間サブチャンネル当り1つのデータストリームの割合で、周波数サブチャンネルデータストリームを多数のデータサブストリームに多重解除する。・・略・・各周波数サブチャンネルデータストリーム又は各データサブストリームに対する符号化及び変調は、符号化及び変調制御信号に基づいて調節されてもよい。)」と記載されていることから、「送信されるための情報ビット」は、「周波数サブチャンネル」の数の「データストリーム」に多重解除され、さらに「空間サブチャンネル」の数の「データサブストリーム」に多重解除され、所定の符号化及び変調方式が割り当てられるものである。

摘記事項(イ)及び(エ)に示されるように、受信側のチャンネル状態である受信SNR(Signal-to-Noise-plus-interference Ratios(信号対雑音・干渉比))に応じて適切な符号化レート及び変調方式の組合せが用いられるものであって、
摘記事項(オ)の第[1115]段落に「The coding and modulation for each frequency subchannel data stream or each data substream may be adjusted based on the coding and modulation control signals.(各周波数サブチャンネルデータストリーム又は各データサブストリームに対する符号化及び変調は、符号化及び変調制御信号に基づいて調節されてもよい。)」と記載されていること、
摘記事項(カ)に「FIG. 4D shows an embodiment wherein the data for each frequency subchannel may be coded and modulated independently based on a coding and modulation scheme selected for that frequency subchannel. In general, all available transmission channels (e.g., all spatial subchannels of all frequency subchannels) may be segregated into any number of groups, and each group may include any number and type of transmission channels.(図4Dは、各周波数サブチャンネルに対するデータがその周波数サブチャンネルのために選択された符号化及び変調方式に基づいて独立に符号化され、且つ変調されてもよい、実施形態を示す。一般に、全ての利用可能な送信チャンネル(例えば、全ての周波数サブチャンネルの全ての空間サブチャンネル)は、任意の数のグループに分離されてもよく、且つ各グループは、任意の数及び型の送信チャンネルを含んでもよい。)」と記載されていることから、
上記引用例のシステムでは、「周波数サブチャンネルデータストリーム」又は「データサブストリーム」毎に適切な符号化レート及び変調方式の割当てが行われ、各「データストリーム」又は「データサブストリーム」は、「周波数サブチャンネル」のために、選択された符号化及び変調方式に基づいて独立に符号化され、変調されているものである。

したがって、上記引用例の摘記事項(ア)乃至(キ)及び図面(FIG.3(図3)・FIG.4D(図4D))に記載されたMIMO communication system(MIMO通信システム)を参酌すると、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「プロセッサ上で実行されるソフトウェアを有し、前記プロセッサは、
送信されるための情報ビットを選択された変調方式に基づいて独立に変調するためのデータサブストリームへと多重解除し、
空間サブチャンネルおよび周波数サブチャンネル毎に多重解除されたデータサブストリームを、選択された変調方式に基づいて独立に変調し、データサブストリームに対する変調シンボルを発生し、
複数のアンテナからの送信のために前記データサブストリームに対する変調シンボルに逆高速フーリエ変換(IFFT)を実行することにより、時間領域表示に変換する動作を実行し、
前記多重解除する実行は、送信されるための情報ビットを空間サブチャンネルおよび周波数サブチャンネル毎に多重解除されたデータサブストリームにすることで実行され、各空間サブチャンネルおよび周波数サブチャンネル毎に多重解除されたデータサブストリームは送信アンテナおよび周波数サブチャンネルに関連し、前記送信アンテナは、空間チャネルの1つに関連し、前記周波数サブチャンネルは直交周波数分割多重サブキャリアの1つに関連している、
ソフトウェア。」

ウ 対比
(ア)補正後の発明と引用発明とを対比する。

a 補正後の発明の「命令を提供するコンピュータ読み取り可能な媒体」は、媒体上に記録されたコンピュータプログラムのことであるから、引用発明の「ソフトウエア」とは、コンピュータプログラム関連物である点で一致している。また、技術常識を勘案すると、「ソフトウェア」は1以上のプロセッサによって実行される命令を格納しているものである。

b 上記引用例の摘記事項(オ)の第[1114]段落の記載および技術常識を勘案すると、引用発明の「送信されるための情報ビット」は、OFDMシンボルを表す送信データ系列であり、デマルチプレクサ428によって多重解除される際に、OFDMシンボルに応じた所要のビット数にブロック化されるから、補正後の発明の「直交周波数分割多重シンボルを表わすビットのブロック」と実質的に一致する。

c 引用発明の「選択された変調方式に基づいて独立に変調するためのデータサブストリーム」と、補正後の発明の「可変数のコード化されたビットを有するグループ」とは、所定の変調方式により個別に変調されるデータである点で一致している。

d 引用発明の「多重解除」と、補正後の発明の「パース」とは、データ分割している点で一致している。

e 技術常識及び実質的な技術的内容を参酌すると、引用発明の「空間サブチャンネルおよび周波数サブチャンネル毎に多重解除されたデータサブストリームを、選択された変調方式に基づいて独立に変調」することと、補正後の発明の「空間-周波数のサブキャリア変調割当てに従って、直交周波数分割多重サブキャリア上の前記ビットのグループを個々に変調」することは、実質的に同じことである。

f 上記引用例の摘記事項(ア)及び(オ)の第[1115]段落の記載からみて、データサブストリームは、サブキャリア上のデータのことであるから、引用発明の「データサブストリームに対する変調シンボル」を「発生」することは、補正後の発明の「シンボル変調されたサブキャリア」を「生成」することと実質的に同じである。

g 上記引用例の摘記事項(オ)の第[1121]、[1125]段落、及び図4Dの記載、並びに技術常識を参酌すると、引用発明の「複数のアンテナ」は、複数の空間サブチャネルを構成しているものであるから、補正後の発明の「複数の空間チャネルに亘る」送信である点で実質的に一致する。
また、同摘記事項(オ)の第[1120]-[1121]段落、及び図4Dの記載からみて、引用発明の「アンテナからの送信」は、「逆高速フーリエ変換」された「時間領域」における信号が「変換器322」によってアンテナから無線による送信が可能な信号に処理された後に、送信が行われることであるから、補正後の発明の「後続のRF送信」と、実質的に一致する。

h 引用発明の「時間領域表示に変換」することは、逆フーリエ変換の結果、「周波数領域」の信号が「時間領域」の信号へ変換されて出力されることであるから、補正後の発明の「時間領域波形を生成」することと実質的に同じである。

i 引用発明の「送信されるための情報ビット」は、上記 b と同様な理由から、補正後の発明の「ビットのブロック」と実質的に一致する。

j 引用発明の「空間サブチャンネルおよび周波数サブチャンネル毎に多重解除されたデータサブストリーム」は、補正後の発明の「空間-周波数のビットのグループ」、「空間-周波数グループ」と、それぞれ実質的に一致する。

k 引用発明では、複数の送信アンテナを用いて複数の空間チャネルを生成しているのであるから、引用発明の「送信アンテナ」は、直交周波数多重シンボルの空間コンポーネントであるといえる。

l 引用発明では、複数の搬送波を構成する周波数サブチャンネルを用いて、複数のOFDMサブキャリアを生成するのであるから、引用発明の「周波数サブチャンネル」は、直交周波数多重シンボルの周波数コンポーネントであるといえる。

(イ)したがって、上記a?lを勘案すると、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また相違している。

(一致点)
「命令を提供するコンピュータプログラム関連物であって、前記コンピュータプログラム関連物は1以上のプロセッサによって実行される命令を格納し、前記プロセッサは、
直交周波数分割多重シンボルを表わすビットのブロックを所定の変調方式により個別に変調されるデータへと分割し、
空間-周波数のサブキャリア変調割当てに従って、直交周波数分割多重サブキャリア上の前記データを個々に変調し、シンボル変調されたサブキャリアを生成し、
複数の空間チャネルに亘る後続のRF送信のために前記シンボル変調されたサブキャリアに逆高速フーリエ変換(IFFT)を実行することにより、時間領域波形を生成し、
前記データ分割する実行は、ビットのブロックを空間-周波数グループへデータ分割することで実行され、各空間-周波数グループは前記直交周波数分割多重シンボルの空間コンポーネントおよび周波数コンポーネントに関連し、前記空間コンポーネントは前記空間チャネルの1つに関連し、前記周波数コンポーネントは前記直交周波数分割多重サブキャリアの1つに関連している、
コンピュータプログラム関連物。」

(相違点1)
ソフトウエアに関し、補正後の発明では「命令を提供するコンピュータ読取り可能な媒体」であるのに対し、引用発明では、「ソフトウェア」の構成を有するものの、媒体に係る構成を有しない点。

(相違点2)
所定の変調方式により個別に変調されるデータに関し、補正後の発明では「可変数のコード化されたビットを有するグループ」であり、データ分割前のビットのブロックも「可変サイズ」であるのに対し、引用発明では、この構成要素を有していない点。

(相違点3)
データ分割に関し、補正後の発明では「空間-周波数パーサによって」実行されているのに対し、引用発明では、この構成要素を有していない点。

エ 当審の判断
(ア)上記相違点1について検討する。
ソフトウェアを、命令を提供するコンピュータ読取り可能な媒体からなるように構成することは、一般的に広く行われている周知な事項であるから、設計変更に該当するものであり、当業者であれば容易になし得る程度のことにすぎない。

(イ)上記相違点2について検討する。
引用例では、補正後の発明と同様に、チャネルの状況に応じてサブキャリア変調割当てを行う機能を有している。すると、データ分割前のビットのブロックも、データ分割後の個別に変調されるデータも、上記摘記事項(エ)の表の符号化(コード化)されたビットに見られるように、当然、受信SNRに応じて数が変化しているものであるから、上記データを可変サイズとすることについては、何ら技術的な困難性を有しないものである。また、データ分割後の各データをグループとして扱うことも、必要に応じてなされるべき事項にすぎない。
したがって、「可変数のコード化されたビットを有するグループ」、「可変サイズ」のビットのブロックを設けることについては、当業者であれば容易になし得る程度のことにすぎない。

(ウ)上記相違点3について検討する。
引用発明においても、補正後の発明と同じように、送信データ系列を各サブキャリアに分割し、チャネルの状況に応じてサブキャリア変調割当てを行う機能を有しているから、上記相違点2を除いて、パーサの機能と実質的に同じ機能が実現されているものである。すると、プロセッサによって、上記機能を実現させるための機能を「パーサ」として設けたことについては、設計変更に該当するものであり、当業者であれば容易になし得る程度のことにすぎない。

したがって、上記補正後の発明は上記引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

また、補正後の発明が奏する効果についても、いずれも上記引用発明から当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものではない。

3 結語
以上のとおり、補正後の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。

したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成21年6月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年11月18日付けの手続補正により補正された明細書および図面の記載からみて、上記「第2 平成21年6月25日付けの手続補正について」の「1 補正後の本願発明」の項中で、「本願発明」として記載したとおりである。

2 引用発明
これに対して、原審の拒絶理由に引用された引用例および引用発明は、上記「第2 平成21年6月25日付けの手続補正について」の「2 補正の適否」の「(2)独立特許要件」の項中で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 平成21年6月25日付けの手続補正について」の「2 補正の適否」の「(1)新規事項の有無、補正の目的要件」項中で検討したように、補正後の発明から、本件補正に係る構成の限定を省いたものであるから、本願発明の発明特定事項をすべて含み、審判請求時の手続補正によってさらに構成を限定した補正後の発明が、上記「第2 平成21年6月25日付けの手続補正について」の「2 補正の適否」の「(2)独立特許要件」の項中で検討したように、上記引用例に記載された上記引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項を省いた本願発明も実質的に同様の理由により、上記引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-16 
結審通知日 2010-06-21 
審決日 2010-07-05 
出願番号 特願2006-523250(P2006-523250)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04J)
P 1 8・ 121- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富澤 哲生高野 洋福田 正悟  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 萩原 義則
猪瀬 隆広
発明の名称 マルチアンテナ直交周波数分割多重通信システムにおける適応ビット・ローディングのためのシステムおよび方法  
代理人 本城 雅則  
代理人 本城 吉子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ