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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27D
管理番号 1227441
審判番号 不服2009-11592  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-24 
確定日 2010-11-26 
事件の表示 特願2005- 8462「複合板」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月27日出願公開、特開2006-192817〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は,平成17年1月14日の出願であって,平成21年3月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。
また,当審において,平成22年2月23日付けで審査官による前置報告書に基づく審尋がなされたところ,同年5月14日付けで回答書が提出されたものである。

そして,その請求項1に係る発明は,平成20年11月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
少なくとも4枚の単板が順次積層接着され且つその表面に繊維板を配して積層接着一体化されてなる複合板において、最表面側及び最裏面側に位置する単板の繊維方向は複合板の長手方向に略一致するとともに、これら最表面側及び最裏面側の単板間に位置する複数の単板の繊維方向はいずれも複合板の長手方向と直交する方向に略一致しており、且つ、最表面側単板が最裏面側単板より厚く、繊維板と最表面側単板の厚さ合計が複合板の全体厚の50%未満であり、最表面側単板と最裏面側単板との間に位置する複数の単板の合計厚が複合板の全体厚の30?45%の範囲であることを特徴とする複合板。」
(以下,「本願発明」という。)


2.引用刊行物に記載された発明
刊行物1:特開平11-156807号公報
刊行物2:実願昭47-132078号(実開昭49-83373号)のマイクロフィルム
刊行物3:実願平2-120327号(実開平4-77405号)のマイクロフィルム

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された上記刊行物1には,図面とともに,以下の記載がある。
(1a)「裏面側に長手方向に平行な繊維方向をもつ木質単板が配され、この木質単板上に複数枚の木質単板を介して長手方向に平行な繊維方向をもち且つ上記裏面側の木質単板の厚みの2?6倍の厚みを有する木質単板が表面側に配されて積層一体化してなる合板基板の表面に、比重が0.6 ?1.0 で厚さが0.5?3.0mm の木質繊維製板材が接着されていると共に該木質繊維製板材の表面に長手方向に平行な繊維方向をもつ厚さが0.2 ?0.7mm の突板を接着して化粧層が形成され、この化粧層の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装が施されてなる木質化粧板。」(【請求項1】)

(1b)「・・・合板の表面に木質繊維板を貼着して複合板を形成した場合、合板と木質繊維板との収縮率の差や方向性の相違によって化粧板に長手方向に凹状の反りが発生しやすくなる。・・・
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは・・・木質繊維板を用いているにもかかわらず、長手方向の凹状の反りや層間剥離の発生を抑制して良好な寸法安定性を発揮し、且つ強度的にも優れた木質化粧板・・・を提供するにある。」(段落【0004】?【0006】)

(1c)「市場において広く用いられている表面側と裏面側との木質単板の厚みが略等しく且つ該表裏木質繊維板の繊維方向が長手方向に平行な通常の合板の場合、合板の形成後、放置しても伸縮率が略等しいので長手方向に対して凸反りや凹反りも生じないが、この合板の表面に厚さが2.5 ?4mmの通常の中比重木質繊維板を積層接着すると、接着剤の硬化や該中比重木質繊維板の収縮によって中央部から長手方向の両端部に向かって上反りする所謂凹反りが生じる。この凹反りは上記のように厚さが0.5 ?3mmと薄い木質繊維製板材2を積層接着しても軽減されるものゝ発生する。
そのため、本発明においては上記のように合板基板1を構成している複数枚の木質単板において、表裏の木質単板1a、1bの繊維方向を長手方向に向け且つ表面側の木質単板1aの厚みを裏面側の木質単板1bの厚みの2?6倍、好ましくは2.5?4倍程度に形成して表面に積層接着した木質繊維製板材2の収縮等による長手方向の凹反りを抑止しているものである。即ち、上記合板基板1の形成後、この合板基板1を放置しておくと、厚みの大なる表面側(以下、表層という)の木質単板1aが裏面側(以下、裏層という)の木質単板1bよりも長さ方向に大きく伸長し、合板基板1がその長さ方向の中央部から両端に向かって下向きに湾曲して凸反り状態となるものである。そして、この凸反りによって、合板基板1の表面に上記木質繊維製板材2や化粧層3を形成する突板を積層接着したり該化粧層3に塗料を塗布した時の凹反りの発生を押さえ込み、木質化粧板Aを長さ方向に全長に亘って平坦ないしはやゝ凸反り傾向の形状に保持するものである。
・・・さらに、表裏層の木質単板1a、1bの繊維方向が長手方向に直交していると、特に表層の木質単板1aに長さ方向に波打ち状の凹凸が発生して表面に積層接着した木質繊維製板材2を介してその凹凸が化粧層表面にまで現出するので好ましくない。」(段落【0017】?【0019】)

(1d)「〔実施例2〕図3(イ)に示すように、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが0.8mm の木質単板1bを裏層板とし、この木質単板1b上に繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた厚さが2.5mm の木質単板1cと、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが2.1mm の木質単板1dと、繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた厚さが2.5mm の木質単板1cと、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが1.9mm の木質単板1aと、気乾比重が0.74で厚さが2.7mm の木質繊維板からなる木質繊維製板材2とを順次、尿素-メラミン樹脂接着剤を介して積層し、ホットプレスによって120 ℃で7分間、加熱加圧して合板基板1と木質繊維製板材2が積層接着してなる複合板A1を得た。この複合板A1の裏層の木質単板1bを約0.2mm サンディングし、3日間自然養生したが、長手方向の中央部においてから両端に向かって下向きに緩やかに湾曲した凸反り状態を維持していた。なお、上記全ての木質単板及び木質繊維製板材は幅950mm 、長さ1850mmに形成されている。
この複合板A1の木質繊維製板材2の表面にウレタンシーラーを平方尺当たり、固形分で5g、スポンジロールコータで塗布し、尿素-メラミン樹脂接着剤を塗布した後、0.3mm 厚さの未乾燥のナラ材突板3を載置してホットプレスで130 ℃、1分間、加熱加圧することにより木質繊維製板材2の表面に突板3を接着し、3日間放置、養生した。次いで、該複合板A1の四方端面に常法により雌雄の実加工を施すと共に上記突板3の表面に着色液材を擦り込むようにして塗布し、紫外線硬化型塗料によって下塗り、上塗りの2回のクリアー塗装4を施したのち硬化させることにより図3(ロ)に示すように木質化粧板Aを得た。この木質化粧板Aは、その長手方向の中央部における矢高が略フラットないしは15mm程度の良好な凸反り形状を有していた。」(段落【0032】?【0033】)

(1e)「以上のように本発明の請求項1に係る木質化粧板によれば、複数枚の木質単板を積層接着してなる合板基板において、長手方向に平行な繊維方向をもつ表層の木質単板の厚みを裏層の木質単板の厚みの2?6倍としているので、長さ方向の中央部から両端に向かって下向きに湾曲した所謂、凸反り形状の合板基板に形成することができ、この合板基板の表面に貼着した木質繊維製板材や該木質繊維製板材表面に貼着した突板、さらには突板表面に塗布した塗料層によって合板基板の表面側が長さ方向に収縮して合板基板を凹反りさせようとするが、この収縮作用を上記合板基板の凸反りによって相殺して木質化粧板を全長に亘って平坦ないしはやゝ凸反り傾向の形状を保持させることができ、従って、釘着等による施工性が容易に且つ正確に行えると共に段差などが生じていない優れた外観を呈する床構造を形成することができる。」(段落【0041】)

以上の記載事項(1a)?(1e)から見て,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

「裏面側に長手方向に平行な繊維方向をもつ木質単板が配され,この木質単板上に複数枚の木質単板を介して長手方向に平行な繊維方向をもち且つ上記裏面側の木質単板の厚みの2?6倍の厚みを有する木質単板が表面側に配されて積層一体化してなる合板基板の表面に,木質繊維製板材が接着された複合板に,該木質繊維製板材の表面に長手方向に平行な繊維方向をもつ突板を接着して化粧層が形成され,この化粧層の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装が施されてなる木質化粧板。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された上記刊行物2には,図面とともに,以下の記載がある。
(2a)「2枚あるいはそれ以上の芯板用単板1a,1b・・・を、それらの繊維方向が同一になるように貼り合わせて芯板用合板2を形成し、この芯板用合板2の両面にそれぞれ表単板3,裏単板4をそれらの繊維方向が芯板用合板2の繊維方向と直交するように貼り合わせてなる合板。」(実用新案登録請求の範囲の欄)

(3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された上記刊行物3には,図面とともに,以下の記載がある。
(3a)「第1図(a)及び(b)は本考案の防音床材用合板(以下、単に「合板」とする。)の層構成を示す斜視図であり、第1図(a)は5層構成の例・・・を示す。
図中、符号(1)は本考案の合板である。・・・本考案の合板(1)は、第3層目の単板を第1層目の単板の繊維方向と異なる角度で積層せしめたものであり、その角度は45?90度とすることが防音性能を高める上で好ましい(実施例1参照)。」(明細書5頁1?13行)

(3b)第1図(a)には,第1層目と第5層目の単板の繊維方向が同方向で,その間に積層された第2?4層目の単板の繊維方向はいずれも第1層目及び第5層目の単板の繊維方向に対して略直交する方向となっている合板が開示されている。

3.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「木質単板」が,本願発明の「単板」に相当し,以下同様に,「木質繊維製板材」が「繊維板」に相当する。
また,刊行物1記載の発明の複合板は,裏面側の木質単板上に複数枚の木質単板を介して更に表面側に配される木質単板が積層一体化されたものであり,本願発明の複合板と「少なくとも4枚の単板が順次積層接着され」たものである点で一致している。
さらに,刊行物1記載の発明は,表面側の木質単板が「裏面側の木質単板の厚みの2?6倍の厚みを有する」から,本願発明と「最表面側単板が最裏面側単板より厚」い点で一致している。

よって,両者は,
「少なくとも4枚の単板が順次積層接着され且つその表面に繊維板を配して積層接着一体化されてなる積層板において、最表面側及び最裏面側に位置する単板の繊維方向は複合板の長手方向に略一致しており、且つ、最表面側単板が最裏面側単板より厚い複合板。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

(相違点1)
最表面側及び最裏面側の単板間に位置する複数の単板の繊維方向について,本願発明は,いずれも複合板の長手方向と直交する方向に略一致しているのに対し,刊行物1記載の発明は,特に限定していないものの,実施例では,長手方向のものと長手方向と直交する方向のものを交互に積層している点。

(相違点2)
本願発明は,繊維板と最表面側単板の厚さ合計が複合板の全体厚の50%未満であり、最表面側単板と最裏面側単板との間に位置する複数の単板の合計厚が複合板の全体厚の30?45%の範囲であるのに対し,刊行物1記載の発明は,このような数値限定がなされていない点。

(相違点3)
本願発明は複合板であるのに対し,刊行物1記載の発明は,複合板に化粧層が積層され,さらに合成樹脂塗装が施された木質化粧板である点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
合板を形成するに際し,最表面側及び最裏面側の単板間の複数の単板の繊維方向を,いずれも最表面側及び最裏面側の単板の繊維方向と直交する方向に略一致させて積層することは,例えば刊行物2記載の発明及び刊行物3記載の発明のように周知の技術であり,この点を刊行物1記載の発明に適用することは,当業者が容易になし得たことである。
一方,請求人は回答書において,「このような引用文献1記載の発明において、基板1としてクロス合板以外の単板積層体を使用することは当該発明の趣旨から外れ、当業者には全く想定し得ないことである。」,「基板が持つ各単板の繊維方向の関係が該基板の反りに対して大きな影響を与え得ることは当業者にとって周知の事項であるから、引用文献1記載の発明において、クロス合板以外のものを基板として使用することは、この発明が提案する解決手段の有意義性を損ない、あるいは疑わせることになるものであって、重大な阻害事由があると言うべきである。」等主張している。しかし,刊行物1記載の発明は,表裏の木質単板1a、1bの繊維方向を長手方向に向け且つ表面側の木質単板1aの厚みを裏面側の木質単板1bの厚みの2?6倍、好ましくは2.5?4倍程度に形成して表面に積層接着した合板基板1をその長さ方向の中央部から両端に向かって下向きに湾曲して凸反り状態として、合板基板1の表面に上記木質繊維製板材2や化粧層3を形成する突板を積層接着したり該化粧層3に塗料を塗布した時の凹反りの発生を押さえ込み、木質化粧板Aを長さ方向に全長に亘って平坦ないしはやゝ凸反り傾向の形状に保持するものである(上記「2.(1c)」参照)から,最表面側及び最裏面側の単板間の複数の単板を,いわゆるクロス合板のみに限定したものであるとは認められず,刊行物2及び3記載の発明のような,最表面側及び最裏面側の単板間の複数の単板の繊維方向を,いずれも最表面側及び最裏面側の単板の繊維方向と直交する方向に略一致させて積層する周知の技術を刊行物1記載の発明に適用することに,阻害事由があるとは言えない。

(相違点2について)
刊行物1記載の発明は,その課題として「合板の表面に木質繊維板を貼着して複合板を形成した場合、合板と木質繊維板との収縮率の差や方向性の相違によって化粧板に長手方向に凹状の反りが発生しやすくなる。」(上記「2.(1b)」参照)と記載されていることから理解できるように,合板を構成する単板の繊維の方向性や木質繊維板との収縮率の差からくる反りの発生を抑制することを目的として,単板の繊維方向や厚さを試行錯誤して規定し,全体の反りを低減させているものである。
一方,刊行物1にはプレス後の各単板の厚さが示されていないので単純比較はできないが,刊行物1記載の発明の実施例2において,最表面側及び最裏面側の単板間の複数の単板の繊維方向が本願発明と異なるものの,木質繊維製板材2と木質単板1aの厚さ合計が複合板A1全体厚の約37%となっており,本願発明の「繊維板と最表面側単板の厚さ合計が複合板の全体厚の50%未満」となっている。
また,刊行物1記載の発明の木質単板1cおよび1dの合計厚は全体厚の約57%であるが,仮に最表面側及び最裏面側の単板間の複数の単板の繊維方向をすべて同一方向とした場合,反りの発生がより大きくなることは明らかであり,その場合,単板の繊維方向や厚さを試行錯誤して規定し,全体の反りを低減させている刊行物1記載の発明の技術思想を勘案して,最表面側及び最裏面側の単板や繊維板の厚さの比率を大きくして,その反りと拮抗させるようにすることは当業者であれば当然に考慮する事項である。
したがって,刊行物1記載の発明に相違点1についての検討で示した周知の技術を適用して,最表面側及び最裏面側の単板間の複数の単板の繊維方向をいずれも積層板の長手方向と直交する方向に略一致させるに際し,合板を構成する単板の繊維の方向性や木質繊維板との収縮率の差からくる反りの発生を抑制することを目的として,繊維板と最表面側単板の厚さ合計及び最表面側単板と最裏面側単板との間に位置する複数の単板の合計厚の複合板の全体厚に対する割合を本願発明のように規定することは,当業者が通常の設計能力を発揮して適宜なし得たことにすぎない。

(相違点3について)
複合材にさらに化粧層や合成樹脂塗装を設けるか否かは,使用目的等に応じて当業者が適宜決定する事項にすぎず,刊行物1記載の発明における木質化粧板において,化粧層や合成樹脂塗装を設けない複合板とすることは,当業者が容易になし得たことである。

そして,本願発明の効果は,刊行物1記載の発明及び周知の技術から予測することができる程度のことである

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-18 
結審通知日 2010-09-07 
審決日 2010-09-21 
出願番号 特願2005-8462(P2005-8462)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B27D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
草野 顕子
発明の名称 複合板  
代理人 ▲桑▼原 史生  

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