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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1227482 |
審判番号 | 不服2008-22603 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-04 |
確定日 | 2010-11-25 |
事件の表示 | 特願2003- 35502「電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 2日出願公開、特開2004-246615〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成15年2月13日の出願であって、平成20年4月11日付けの拒絶理由通知書に対して平成20年6月13日付けで手続補正がされ、平成20年7月31日付けで拒絶査定がなされ、平成20年9月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年10月3日付けで手続補正がされたものである。 第2.平成20年10月3日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年10月3日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容 平成20年10月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成20年6月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明 「 【請求項1】 筐体内に発熱素子を搭載した電子モジュールと、冷却液の液駆動手段と、当該冷却液との熱交換を行なう熱交換器と、当該熱交換器に冷却風を送風するファンとを収納した電子装置であって、 前記電子モジュールは、その内部に当該冷却液の流路が形成された冷却ジャケットを一体に備えており、かつ、前記筐体内に搭載された前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットは、それぞれ、電気的な接続手段と流体的な接続手段とを、同じ方向に備え、前記電子モジュールの前記筐体内への挿入/脱抜の動作のみで電気的な接続/切断と流体的な接続/切断とが時間差を持って完了するよう前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットと前記筐体との間の前記電気的な接続手段と前記流体的な接続手段とのそれぞれの距離が異なることを特徴とする電子装置。」を、 「【請求項1】 筐体内に発熱素子を搭載した電子モジュールと、冷却液の液駆動手段と、当該冷却液との熱交換を行なう熱交換器と、当該熱交換器に冷却風を送風するファンとを収納した電子装置であって、 前記電子モジュールは、その内部に当該冷却液の流路が形成された冷却ジャケットを一体に備えており、かつ、前記筐体内に搭載された前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットは、それぞれ、電気的な接続手段と流体的な接続手段とを、同じ方向に備え、前記電子モジュールの前記筐体内への挿入/脱抜の動作のみで、前記電子モジュールの挿入時は流体的な接続が電気的な接続より先に完了し、前記電子モジュールの脱抜時は電気的な切断が流体的な切断より先に完了するよう、前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットと前記筐体との間の前記電気的な接続手段の距離が、前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットと前記筐体との間の前記流体的な接続手段の距離より長いことを特徴とする電子装置。」に補正するものである。 2.補正の目的 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「電気的な接続/切断と流体的な接続/切断とが時間差を持って完了するよう前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットと前記筐体との間の前記電気的な接続手段と前記流体的な接続手段とのそれぞれの距離が異なること」について、「前記電子モジュールの挿入時は流体的な接続が電気的な接続より先に完了し、前記電子モジュールの脱抜時は電気的な切断が流体的な切断より先に完了するよう、前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットと前記筐体との間の前記電気的な接続手段の距離が、前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットと前記筐体との間の前記流体的な接続手段の距離より長いこと」との限定を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 3.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-70386号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 (a)段落番号【0001】 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は通信機器における密閉筺体の強制冷却構造に関する。」 (b)段落番号【0014】-【0018】 「【0014】 【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の密閉強制冷却構造の通信機器ユニットの一例を示す図である。図2は図1の冷却板の構造を示す図であり、(A)は斜視図,(B),(C)は断面図である。図3は複数の通信機器ユニットのラック実装例を示す斜視図である。図4は密閉強制冷却構造の単体通信装置の斜視図である。図5は冷却板の成型例を説明する図であり、(A)は金型構造を示し、(B)?(E)は成型過程を示す図である。 【0015】図1の通信機器ユニット10は、電子回路12の電源および各種信号を接続するためのソケット11と、発熱部品や無線回路を搭載したプリント基板22をサポート24を用いて冷却板21に取り付けた後、カバー23をネジ25により蝶着し、且つプリント基板22の電源および各種信号を接続するソケット26とを備える密閉構造の箱型形状のシールドケース20とから構成されている。 【0016】また、この通信機器ユニットを図3に示すようにラックに実装するためラック側には、実装する各種通信機器ユニット10の電子回路のソケット11に対応するコネクタ31,シールドケース内のプリント基板22のソケット26に対応するコネクタ32,冷却板のホースニップル21-a,21-bにそれおぞれ対応する弁付コネクタ33,34を備えたバックボード30が実装されている。 【0017】シールドケース20の一方が開口した底面部には図2(B)に示す冷却板21-1とプリント基板取付ボス21-4が一体成型され、冷却板21に別に成型された両端にホースニップル21-3aおよび21-3bを有する樋状あるいはU字の冷媒流路21-2がろう付け等により溶接されている。 【0018】なお、冷却板21を使用ぜすにシールドケース20の底面部にプリント基板取付ボスを一体成型し、冷媒流路21-5をろう付け等により溶接してもよい。また、冷媒流路は成型する際の型抜きが容易な形状であれば樋状あるいはU字状でなくてもよい。」 (c)段落番号【0024】-【0027】 「【0024】このように構成した通信機器ユニット10を実装するラック40には、図3に示すようにシールドケース20内に密閉実装したプリント基板に搭載した電子部品で発生する熱を吸収した冷媒の温度を熱変換して冷却するための小型熱変換装置50が実装されている。 【0025】プリント基板22を密閉内蔵するシルードケースを搭載した通信機器ユニット10を図3に示すようにラック40に実装すべく、ガイドレール(図示せず)に沿って挿入すると、通信機器ユニット10のソケット11およびソケット26がラック40の内部に設けられたバックボード30のコネクタ31,32と嵌合すると同時に、冷媒流路のホースニップル21-3a,21-3bが弁付コネクタ33,34と嵌合する。 【0026】弁付コネクタ21-3a,21-3bは、冷媒流路のホースニップル21-3a,21-3bが挿入されるときのみ弁付が押し開かれ、挿入後は嵌合部分が密閉される構造となっている。 【0027】弁付コネクタの弁が押し開かれると、ラック40に実装されている小型熱変換装置50から冷却水,硫化水素等の冷媒が一方のホースニップル、例えば21-3aから流入し、シールドケース内に設けた冷媒流路の中を循環し、シールドケース内に発生した熱を吸収し熱変換され、ホースニップル21-3bから小型熱変換装置50へ戻る。シールドケース内の熱を吸収して上昇した冷媒温度は、小型熱変換装置50により熱変換され冷却され、再びホースニップル21-3aからシールドケース内の冷媒流路21-2に流入し、シールドケース内部の発熱を吸収しホースニップル21-2bを介して小型熱変換装置50へ戻る。」 (d)図1を参照すれば、通信機器ユニット10に、冷却板21を有するシールドケース20が固定される構成が記載されている。 (e)図1を参照すれば、ソケット11,26と、ホースニップル21-3a,21-3bとを同じ方向に備える構成が記載されている。 なお、段落0016における、「冷却板のホースニップル21-a,21-b」は、「冷却板のホースニップル21-3a,21-3b」の誤記であることは明らかである。 また、段落0026における、「弁付コネクタ21-3a,21-3b」は、「弁付コネクタ33,34」の誤記であることが明らかである。 したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「通信機器ユニット10をラック40に実装するためにラック40側には、実装する各種通信機器ユニット10の電子回路のソケット11に対応するコネクタ31,シールドケース20内のプリント基板22のソケット26に対応するコネクタ32,冷媒流路21-2が溶接された冷却板21のホースニップル21-3a,21-3bにそれぞれ対応する弁付コネクタ33,34を備えたバックボード30が実装され、 シールドケース20内に密閉実装したプリント基板22に搭載した電子部品で発生する熱を吸収した冷媒の温度を熱変換して冷却するための小型熱変換装置50が実装され、 プリント基板22を密閉内蔵するシルードケース20を搭載した通信機器ユニット10をラック40に実装すべく、ガイドレールに沿って挿入すると、通信機器ユニット10のソケット11,26がラック40の内部に設けられたバックボード30のコネクタ31,32と嵌合すると同時に、コネクタ31,32と同じ方向に設けられた冷媒流路21-2のホースニップル21-3a,21-3bが弁付コネクタ33,34と嵌合し、 弁付コネクタ33,34は、冷媒流路のホースニップル21-3a,21-3bが挿入されるときのみ弁付が押し開かれ、挿入後は嵌合部分が密閉され、 弁付コネクタ33,34の弁が押し開かれると、ラック40に実装されている小型熱変換装置50から冷却水,硫化水素等の冷媒が一方のホースニップル21-3aから流入し、シールドケース内に設けた冷媒流路21-2の中を循環し、シールドケース内に発生した熱を吸収して、ホースニップル21-3bから小型熱変換装置50へ戻り、 シールドケース内の熱を吸収して上昇した冷媒温度は、小型熱変換装置50により熱変換され冷却され、再びホースニップル21-3aからシールドケース内の冷媒流路21-2に流入する構成のラック40。」 4.対比 補正発明と引用発明との比較 引用発明のプリント基板22に搭載された「電子部品」は、冷却板に吸収される熱を発生しているから、補正発明の「発熱素子」に相当する。 引用発明の「冷却水、硫化水素等の冷媒」は、補正発明の「冷却液」に相当する。 引用発明の「冷媒流路21-2」は、補正発明の「流路」に相当する。 引用発明の「小型熱変換装置50」は、冷却水等の冷媒の温度を熱変換して冷却しているから、補正発明の「熱交換器」に相当する。 引用発明の「冷却板21」は、冷媒流路を有し、通信機器ユニット10に固定されているから、補正発明の「冷却ジャケット」に相当する。 引用発明の「ソケット11,26」は、電気的な接続を行っているから、補正発明の「電気的な接続手段」に相当する。 引用発明の「ホースニップル21-3a,21-3b」は、流体的な接続を行っているから、補正発明の「流体的な接続手段」に相当する。 引用発明の「ソケット11,26」及び「ホースニップル21-3a,21-3b」は、勘合する側の同じ方向に設けられているので、補正発明の「電気的な接続手段」及び「流体的な接続手段」と、接続のために嵌合する側の同じ方向に設けられる点で共通している。 引用発明の「通信機器ユニット10」は、ラック40に実装すべく、ガイドレールに沿って挿入することにより、電気的な接続、及び流体的な接続を行うので、補正発明の「電子モジュール」と、筐体内への挿入の動作のみで電気的な接続及び流体的な接続が完了する点で共通している。 引用発明の小型熱変換装置50と通信機器ユニット10とを備える「ラック40」は、補正発明の「電子装置」に相当する。 したがって、補正発明と引用発明の一致点・相違点は以下のとおりである。 [一致点] 筐体内に発熱素子を搭載した電子モジュールと、冷却液との熱交換を行なう熱交換器とを収納した電子装置であって、 前記電子モジュールは、その内部に当該冷却液の流路が形成された冷却ジャケットを一体に備えており、かつ、前記筐体内に搭載された前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットは、それぞれ、電気的な接続手段と流体的な接続手段とを、同じ方向に備え、前記電子モジュールの前記筐体内への挿入の動作で電気的な接続及び流体的な接続が完了する電子装置。 [相違点1] 補正発明では、冷却液の液駆動手段と、熱交換器に冷却風を送風するファンとを備えているのに対し、引用発明では、小型熱変換装置を備える記載があるにとどまり、液駆動手段及びファンを備える特段の記載がない点。 [相違点2] 補正発明では、「脱抜の動作」で電気的な切断及び流体的な切断を完了するのに対し、引用発明では、脱抜の動作に関して切断を完了する特段の記載がない点。 [相違点3] 補正発明では、「電子モジュールの挿入時は流体的な接続が電気的な接続より先に完了し、電子モジュールの脱抜時は電気的な切断が流体的な切断より先に完了するよう、前記電子モジュール及びそれと一体の冷却ジャケットと筐体との間の電気的な接続手段の距離が、前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットと前記筐体との間の前記流体的な接続手段の距離より長い」のに対し、引用発明では、通信機器ユニットをラックに挿入して電気的及び流体的な接続をする構成ではあるものの、接続及び切断の順序については記載されていない点。 5.相違点の検討 (相違点1について) 電子装置の冷却装置において、熱交換機に附随して、ファン及び冷媒用のポンプを備えることは周知技術(特開平7-86778号公報段落0004-0005【従来技術】の記載参照)である。 したがって、引用発明のラックにおいても、小型熱変換装置に附随して、ファン及び冷媒用のポンプを設ける構成とすることは当業者が容易に想到するものである。 (相違点2について) 冷却機構を備えた電子機器において、バルブの働きにより、接続しているときは冷却媒体が流れ、接続していないときにはバルブが閉じることによりキャビネットをラックから常に挿脱できる機能を有することは周知技術(特開2002-374086号公報段落0017-0018の記載参照)である。また、引用発明において、弁付コネクタ33,34は、冷媒流路のホースニップル21-3a,21-3bが挿入されるときのみ弁付が押し開かれる構成であることから、引用発明においても、脱抜の動作に関して切断を完了する構成とすることは当業者が容易に想到するものである。 (相違点3について) 発熱する回路素子に電源を投入する際に、投入前に冷却手段を確保し、また、電源を切った後に冷却手段を停止すること、また、冷却手段が確保されなければ発熱部品が稼働しないように冷却水の接続手段と電気的コネクタの接続手段との接続順序を規制することも周知技術(特開昭60-51418号公報第1頁右下欄3-16行の記載、特開平6-163112号公報段落0007-0009の記載参照)である。 したがって、引用発明においても、接続時には先に冷却手段が確保されるために、弁付コネクタ側の接続が先に完了するように、ソケット側の距離よりも短い構成とすることは当業者が容易に想到するものである。 また、補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 6.まとめ したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成20年10月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年6月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2.3.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.で検討した補正発明から「電子モジュールの挿入時は流体的な接続が電気的な接続より先に完了し、前記電子モジュールの脱抜時は電気的な切断が流体的な切断より先に完了するよう、前記電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットと筐体との間の前記電気的な接続手段の距離が、前記電子モジュール及びそれと一体の冷却ジャケットと前記筐体との間の前記流体的な接続手段の距離より長いこと」の限定事項である接続及び切断の完了する順序、電子モジュール及びそれと一体の前記冷却ジャケットと筐体との間の電気的及び流体的な接続手段の距離の限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の限定を付加したものに相当する補正発明が、前記第2.5.に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-21 |
結審通知日 | 2010-09-28 |
審決日 | 2010-10-12 |
出願番号 | 特願2003-35502(P2003-35502) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 安島 智也 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
鈴木 重幸 安久 司郎 |
発明の名称 | 電子装置 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |