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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1227489
審判番号 不服2008-27782  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-30 
確定日 2010-11-25 
事件の表示 平成11年特許願第11453号「空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月2日出願公開、特開2000-213764号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年1月20日の出願であって、平成20年9月22日付け(発送日:同年9月30日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年12月1日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年12月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年12月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「吸込口から吹出口に至る風路に設けられ伝熱管を流れる冷媒と室内空気との間で熱交換を行う前面側熱交換器と背面側熱交換器とからなる室内側熱交換器と、前記風路内に空気流を発生させるファンと、前記風路内の前記前面側熱交換器上流にて圧力損失抵抗となる着脱可能な構成の抵抗体とを備え、前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側のみに冷房運転時の冷媒の流れ方向における伝熱管入口を配置するとともに、前記前面側熱交換器の伝熱管は途中複数方向に冷媒を分流する配管とし、前記伝熱管入口から冷媒を分流するまでの伝熱管を前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側に配管し、前記抵抗体を通過しない空気が流入する前記熱交換器部分にて冷媒を分流することを特徴とする空気調和装置。」(下線は当審で付与。以下同様。)

2.補正の目的
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前面側熱交換器の伝熱管」について、「前記前面側熱交換器の伝熱管は途中複数方向に冷媒を分流する配管とし、前記伝熱管入口から冷媒を分流するまでの伝熱管を前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側に配管し、前記抵抗体を通過しない空気が流入する前記熱交換器部分にて冷媒を分流する」と限定したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか。)について以下に検討する。

3.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-49913号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「【産業上の利用分野】本発明は、特に、逆V字状に形成される熱交換器を備え、たとえば室内ユニットを構成する空気調和機に関する。」(段落【0001】)
イ 「【実施例】以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。図1に示すように、空気調和機の室内ユニットが構成される。空気調和機本体であるユニット本体10は、前面パネル11と後板12とから構成される。上記前面パネル11の前面側と、上面側に吸込口13a,13bが開口され、それぞれにグリル14a,14bが嵌め込まれる。
ユニット本体10内には、各吸込口13a,13bに亘って対向する、後述する逆V字状に形成される熱交換器15と、この逆V字状熱交換器15の内部位置、すなわちこの熱交換器に覆われるようにして室内送風機を構成する送風ファンである横流ファン16が配置される。」(段落【0023】、【0024】)
ウ 「熱交換器15は、図2にも示すように、互いに狭小の間隙を存して並設される多数枚の放熱フィン20…と、これら放熱フィン20…を貫通し、かつ拡管手段により嵌着される複数本の熱交換パイプ21…を備える。放熱フィン20…の両側端には、断面L字状に折曲形成される図示しない端板が設けられる。」(段落【0029】)
エ 「放熱フィン20と端板にそれぞれ設けられる取付け用孔に、左右2列に並べた状態で熱交換パイプ21を貫通し拡管してから、最上部の切り込み部22から上方部位を時計回り方向に折り曲げ付勢し、かつこれより下部の切り込み部23…を内側に所定角度づつ多段に折り曲げて、図に示すような形状、すなわち逆V字状の熱交換器15を得る。
このように熱交換器15は、最上部の時計回り方向に折り曲げ付勢された部分である後面側熱交換器15Aと、内側に多段に折り曲げられた部分である前面側熱交換器15Bとからなる。
上記熱交換パイプ21は直状部分が長いU字状に折り返し形成されていて、そのUターン部21aは図において奥側(最左側端)の放熱フィン20から突出し、直状部の開口端21bは手前側(最右側端)の放熱フィン20から突出する。
この熱交換パイプ21の両開口端21b,21bは、再び図1および図2に示すように、後述するUベンドおよびジャンプパイプによって接続される。ここで説明の都合上、前面側熱交換器は15Bは5段に折り曲げられているところから、図の最上段部から最下段部に亘って、順次、符号aないしeを付す。そして、前面側熱交換器15Bの前部吸込み口13a対向側に並べられる列が熱交換空気の導入側、すなわち風上側に相当するので風上列Uと称し、横流ファン16と対向する側に並べられる列が熱交換空気導出側、すなわち風下側に相当するので風下列Dと称する。」(段落【0031】?【0034】)
オ 「冷房運転時に、外部から熱交換器15に冷媒を導入する冷媒導入部24は、前面側熱交換器15Bの2段目部bの風上列Uに設定され、外部から延出される冷媒管Paが同位置の上記熱交換パイプ21下部開口端に接続される。
この熱交換パイプ21上部開口端と最上段部a風上列Uの熱交換パイプ下部開口端とは、Uベンド25aで連通される。すなわちUベンド25aは、最上段部aと2段目部bとの境をなす切り込み部23を、風上列Uに沿って跨ぐ。
最上段部a風上列Uの熱交換パイプ21上部開口端と、後面側熱交換器15A風上列U上部に位置する熱交換パイプ21上部開口端とは、第1のジャンプパイプ26で連通される。この第1のジャンプパイプ26は、前面側熱交換器15Bと後面側熱交換器15Aとの間の切り込み部22を風上列Uに沿って跨ぐ。
この熱交換パイプ21の下部開口端には、分岐部を形成する3方ベンド27の基端部27aが接続される。上記3方ベンド27の一方の分岐端27bは、後面側熱交換器15Aの中間部に位置する風下列Dの熱交換パイプ21上部開口端に接続される。この熱交換パイプ21下部開口端と、下端部熱交換パイプ21の風下列D開口端とは、Uベンド25bで連通される。・・・
・・・上記熱交換パイプ21上部開口端には、外部冷媒管Pbが接続される。この接続部は、冷房運転時における第1の冷媒導出部29となる。このように、上記分岐部である3方ベンド27から各熱交換パイプ21…と、Uベンド25bないし25eおよび第2のジャンプパイプ28を介して冷媒を導き、第1の補助導入部35aから第1の冷媒導出部29に至る第1の分岐流路30が構成される。
また、上記3方ベンドの他方の分岐端27cは、後面側熱交換器15Aにおける風下列Dの熱交換パイプ21下部開口端に接続される。この熱交換パイプ21上部開口端と、前面側熱交換器15Aの4段目部d風上列Uの熱交換パイプ21上部開口端とは、第3のジャンプパイプ31で連通される。・・・
・・・上記熱交換パイプ21上部開口端には、外部冷媒管Pcが接続される。この接続部は、冷房運転時における第2の冷媒導出部32となる。このように、上記分岐部である3方ベンド27から各熱交換パイプ21…とUベンド25fないし25iおよび第3のジャンプパイプ32を介して冷媒を導き、第2の補助導入部35bから第2の冷媒導出部32に至る第2の分岐流路33が構成される。」(段落【0036】?【0052】)
カ 「このようにして冷媒流路が設定される熱交換器15を備え、たとえば冷房運転を行う。図示しない室外ユニットの圧縮機を駆動して冷凍サイクル運転をなし、室内ユニットの横流ファン16を駆動する。上記圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒は、熱交換器15に導かれる。
熱交換空気は、吸込口13a,13bから導入されて熱交換器15に導かれ、放熱フィン20…相互の隙間を導通し、放熱フィン20…と熱交換パイプ21…に接してから吹出し口18より被空調室に吹出される。
冷媒は外部から熱交換器15に導かれ、熱交換パイプ21…を導通する間に蒸発潜熱を放出し、放熱フィン20…に冷熱を伝導する。これら放熱フィン20…間を熱交換空気が導通して熱交換をなす。熱交換空気は吸熱し、温度低下して熱交換器15から導出され、横流ファン16を介して吹出口18から被空調室へ吹出され、冷房作用をなす。
上記熱交換器15における冷媒の流れをさらに詳述すると、外部から冷媒導入部24に導かれる冷媒は、はじめ前面側熱交換器15Bの2段目部b風上列Uから、この風上列Uに沿って最上段部aへ上昇し、さらに第1のジャンプパイプ26を介して後面側熱交換器15Aの風上列Uに導かれる。
ここから、後面側熱交換器15Aに設けられた分岐部である3方ベンド27に導かれ、第1の分岐流路30と第2の分岐流路33とに分流される。なお、分岐部27の設定部分における熱交換空気の風速が均一であるほど、より均等に冷媒を分流することは当然である。ところが上記前面側熱交換器15Bでは、この長手方向に沿い部分的に風速の強弱があり、ここに分岐部を設定すると、均等に冷媒を分流し難い。
これに対して後面側熱交換器15Aは、上部吸込み口13bからの熱交換空気の流れしか関係しないので、長手方向に沿って風速はほぼ均一であり、したがって上記実施例のように後面側熱交換器15Aに設ければ、冷媒を均等に分流することができる。」(段落【0054】?【0059】)
キ 「さらに、分岐部27から冷媒を分流案内する第1の分岐流路30と、第2の分岐流路33とは、それぞれ風上列Uに沿って導かれる距離と、風下列Dに沿って導かれる距離とがほとんど等しいように設定してある。
すなわち、第1,第2の分岐流路30,33は、互いに風上列Uと風下列Dの割合いがほとんど同一であり、それぞれの分岐流路における熱交換量がほぼ同一となって、熱交換器15全体としての熱交換効率の向上に繋げられる。」(段落【0063】、【0064】)
ク 上記イの「室内送風機を構成する送風ファンである横流ファン16」及び上記カの「熱交換空気は、吸込口13a,13bから導入されて熱交換器15に導かれ、・・・吹出し口18より被空調室に吹出される」によれば、横流ファン16は吸込口13a,13bから吹出し口18に至る導通路に熱交換空気を導通させるものであり、導通路内に熱交換空気流を発生させるものといえる。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「吸込口13a,13bから吹出し口18に至る導通路に設けられ熱交換パイプ21を導通する冷媒と熱交換空気との間で熱交換を行う前面側熱交換器15Bと後面側熱交換器15Aとからなる熱交換器15と、前記導通路内に熱交換空気流を発生させる横流ファン16とを備え、前記前面側熱交換器15Bの2段目部bの風上列Uに冷房運転時の冷媒の流れ方向における冷媒導入部24を配置するとともに、熱交換パイプ21は後面側熱交換器15Aに設けられた3方ベンド27により第1の分岐流路30と第2の分岐流路33とに分流され、前記冷媒導入部24から3方ベンド27までの熱交換パイプ21を前記前面側熱交換器15B風上列U及び後面側熱交換器15A風上列Uに配管し、前記後面側熱交換器15Aにて冷媒を分流する空気調和機本体。」

また、上記カの「分岐部27の設定部分における熱交換空気の風速が均一であるほど、より均等に冷媒を分流することは当然である。・・・前面側熱交換器15Bでは、この長手方向に沿い部分的に風速の強弱があり、ここに分岐部を設定すると、均等に冷媒を分流し難い。・・・後面側熱交換器15Aは、上部吸込み口13bからの熱交換空気の流れしか関係しないので、長手方向に沿って風速はほぼ均一であり、・・・後面側熱交換器15Aに設ければ、冷媒を均等に分流することができる」との記載から、引用例には次の事項が記載されていると認められる。

「熱交換パイプの分岐部27における熱交換空気の風速が均一であるほど、より均等に冷媒を分流することができ、分岐部27を風速がほぼ均一な部分に設ければ、冷媒を均等に分流することができること。」

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、後者の「吸込口13a,13b」は、前者の「吸込口」に相当し、同様に、「吹出し口18」は「吹出口」に、「導通路」は「風路」に、「熱交換パイプ21」は「伝熱管」に、「導通する」は「流れる」に、「熱交換空気」は「室内空気」に、「前面側熱交換器15B」は「前面側熱交換器」に、「後面側熱交換器15A」は「背面側熱交換器」に、「熱交換器15」は「室内側熱交換器」に、「熱交換空気流」は「空気流」に、「横流ファン16」は「ファン」に、「冷媒導入部24」は「伝熱管入口」に、「空気調和機本体」は「空気調和装置」にそれぞれ相当する。
そして、後者において「前記前面側熱交換器15Bの2段目部bの風上列Uに冷房運転時の冷媒の流れ方向における冷媒導入部24を配置する」ことは、前者の「前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側のみに冷房運転時の冷媒の流れ方向における伝熱管入口を配置する」ことと、「前面側熱交換器風上側に冷房運転時の冷媒の流れ方向における伝熱管入口を配置」することで共通する。
また、熱交換パイプ21は前面側熱交換器15Bから後面側熱交換器15Aまで連通するものであるから、後者の「熱交換パイプ21は後面側熱交換器15Aに設けられた3方ベンド27により第1の分岐流路30と第2の分岐流路33とに分流され、前記冷媒導入部24から3方ベンド27までの熱交換パイプ21を前記前面側熱交換器15B風上列U及び後面側熱交換器15A風上列Uに配管し、前記後面側熱交換器15Aにて冷媒を分流する」ことは、前者の「前記前面側熱交換器の伝熱管は途中複数方向に冷媒を分流する配管とし、前記伝熱管入口から冷媒を分流するまでの伝熱管を前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側に配管し、前記抵抗体を通過しない空気が流入する前記熱交換器部分にて冷媒を分流する」ことと、「伝熱管は途中複数方向に冷媒を分流する配管」である点で共通する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「吸込口から吹出口に至る風路に設けられ伝熱管を流れる冷媒と室内空気との間で熱交換を行う前面側熱交換器と背面側熱交換器とからなる室内側熱交換器と、前記風路内に空気流を発生させるファンとを備え、前記前面側熱交換器風上側に冷房運転時の冷媒の流れ方向における伝熱管入口を配置するとともに、伝熱管は途中複数方向に冷媒を分流する配管である空気調和装置。」

そして、両者は次の点で相違する。(対応する引用発明の用語を( )内に示す。)
(相違点1)
本願補正発明は、風路内の前面側熱交換器上流にて圧力損失抵抗となる着脱可能な構成の抵抗体を備えており、前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側のみに冷房運転時の冷媒の流れ方向における伝熱管入口を配置するのに対し、引用発明は、抵抗体を備えておらず、前面側熱交換器(前面側熱交換器15B)の2段目部bの風上列Uに冷房運転時の冷媒の流れ方向における伝熱管入口(冷媒導入部24)を配置する点。

(相違点2)
伝熱管の冷媒を分流する配管について、本願補正発明は、前面側熱交換器の伝熱管は途中複数方向に冷媒を分流する配管とし、前記伝熱管入口から冷媒を分流するまでの伝熱管を前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側に配管し、前記抵抗体を通過しない空気が流入する前記熱交換器部分にて冷媒を分流するのに対し、引用発明は伝熱管(熱交換パイプ21)は背面側熱交換器(後面側熱交換器15A)に設けられた3方ベンド27により第1の分岐流路30と第2の分岐流路33とに分流され、伝熱管入口(冷媒導入部24)から3方ベンド27までの伝熱管(熱交換パイプ21)を前面側熱交換器風上側(前面側熱交換器15B風上列U)及び背面側熱交換器風上側(後面側熱交換器15A風上列U)に配管し、背面側熱交換器(前記後面側熱交換器15A)にて冷媒を分流する点。

5.相違点の判断
(相違点1について)
空気調和機において、空気清浄フィルターのような圧力損失抵抗となる着脱可能な構成の抵抗体を前面側熱交換器の風上側の上方の空間に配置することは周知技術(特開平9-14684号公報(空気清浄用フィルタ16)、特開平7-145993号公報(空気清浄集塵手段23)、特開平5-126355号公報(空気清浄フィルター13)、特開平3-160229号公報(空気清浄フィルター8))であり、また、引用発明は伝熱管入口を、前面側熱交換器(前面側熱交換器15B)の2段目部bの風上列U、すなわち、前面側熱交換器の風上側の上方に配置するものであるところ、空気清浄フィルターのような抵抗体を配置するものにおいて、その抵抗体は上記のように前面側熱交換器の風上側の上方の空間に配置されることが普通であって、かつ、冷媒の流れ方向における伝熱管入口を抵抗体を通過した空気が流入する前面側熱交換器風上側に配置することも特別な配置ではない(前記特開平5-126355号公報(空気清浄フィルター13と冷媒供給の分岐管4の配置を参照。)、前記特開平3-160229号公報(空気清浄フィルター8と冷媒パイプ14の配置を参照。)以上、相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことと言わざるをえない。

(相違点2について)
熱交換器の伝熱管は、熱交換効率の向上を考慮して配管されるものであり、分岐部を設けることも効率を考慮してなされることである。また、引用例の記載事項キのとおり分岐部のある伝熱管は分流後の流路について熱交換量を同一とするように配管すべきものである。そして、引用例の記載事項(熱交換パイプの分岐部27における熱交換空気の風速が均一であるほど、より均等に冷媒を分流することができ、分岐部27を風速がほぼ均一な部分に設ければ、冷媒を均等に分流することができること。)によれば、伝熱管の分岐部は、風速の強弱のない部分に配置することが求められるものであるから、圧力損失抵抗となる着脱可能な構成の抵抗体を設けるものにおいては、伝熱管の分岐部を抵抗体により風速が変化する恐れのある部分を避けて配置することも当然考慮すべき事項である。
してみると、引用発明の伝熱管入口(冷媒導入部24)から3方ベンド27までの伝熱管(熱交換パイプ21)を前面側熱交換器風上側(前面側熱交換器15B風上列U)及び背面側熱交換器風上側(後面側熱交換器15A風上列U)に配管して、後面側熱交換器で冷媒を分流するものに代えて、前面側熱交換器で冷媒を分流するものとして、相違点2に係る発明特定事項である、前面側熱交換器の伝熱管は途中複数方向に冷媒を分流する配管とし、前記伝熱管入口から冷媒を分流するまでの伝熱管を前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側に配管し、前記抵抗体を通過しない空気が流入する前記熱交換器部分にて冷媒を分流することは、当業者が引用例の記載事項及び熱交換効率を考慮して容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明、引用例に記載の事項及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものでもない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例に記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成20年6月12日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「吸込口から吹出口に至る風路に設けられ伝熱管を流れる冷媒と室内空気との間で熱交換を行う前面側熱交換器と背面側熱交換器とからなる室内側熱交換器と、前記風路内に空気流を発生させるファンと、前記風路内の前記前面側熱交換器上流にて圧力損失抵抗となる着脱可能な構成の抵抗体とを備え、前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側のみに冷房運転時の冷媒の流れ方向における伝熱管入口を配置したことを特徴とする空気調和装置。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 3.」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の「前面側熱交換器の伝熱管」についての限定事項である「前記前面側熱交換器の伝熱管は途中複数方向に冷媒を分流する配管とし、前記伝熱管入口から冷媒を分流するまでの伝熱管を前記抵抗体を通過した空気が流入する前記前面側熱交換器風上側に配管し、前記抵抗体を通過しない空気が流入する前記熱交換器部分にて冷媒を分流する」を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 5.」に記載したとおり、引用発明、引用例に記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用例に記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例に記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-24 
結審通知日 2010-09-28 
審決日 2010-10-12 
出願番号 特願平11-11453
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
P 1 8・ 575- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 礒部 賢鈴木 敏史  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長崎 洋一
豊島 唯
発明の名称 空気調和装置  
代理人 高橋 省吾  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 村上 加奈子  

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