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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1227602
審判番号 不服2008-28304  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-06 
確定日 2010-11-22 
事件の表示 特願2002-85415号「三次元構造体の製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年9月30日出願公開、特開2003-276093号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成14年3月26日の出願であって、平成20年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年12月4日付けで明細書及び図面を補正する手続補正がなされたものである。

II.平成20年12月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年12月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、平成19年3月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載、
「【請求項1】
表面をホトレジストで被覆した、エッチング用腐蝕液または電蝕液に溶解しうる、同サイズの角形の金属薄板から成る、多数の三次元構造体形成用金属薄板に、コンピューター設計支援つーる(CAD)と、その光出力手段を用いて造り出される、作成すべき三次元構造体のスライス断面形状(二次元画像)の光を、コンピューターにより二次元走査される出力ビーム光として照射するか、またはプリンターにより黒色画像をプリントした後、全面露光し、順次各ホトレジストで被覆された金属薄板に照射し、ついで、ホトレジストの非硬化部を洗い流し、ついで、腐蝕液に浸すか、電蝕液に浸して通電し、ホトレジストが存在しない部分の金属を溶解除去し、二次元構造体を得て、ついで、これらの各二次元構造体を順次積層し、加圧しつつ、これらの金属が溶融しない程度に加熱し、圧接により一体化するか、または、積層時に、各二次元構造体間に接着剤層または三次元構造体形成用金属より融点の低い金属の層、または加熱により溶融する残存ホトレジスト層を介在させ、加圧、加熱し、赫二次元構造体間を窃合して一体化し、作成すべき三次元形状を得る、三次元構造体の製法及びその製造装置及びその製品。
【請求項2】
請求項1に記載の製法及び製造装置及びその製品において、光照射前の表面をホトレジストで被覆した、エッチング用腐蝕液、または電蝕液で溶解される金属薄板の角形切断板またはベルト状板を、エッチング用の腐蝕液または電蝕液で溶解しないプラスチックフィルム、またはエッチング用の腐蝕液または電蝕液で溶解しない金属板に張り付けた材料を用いることを特徴とした、請求項1に記載の三次元構造体の製法及び製造装置及びその製品。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元構造体形成用の金属薄板または請求項2に記載のフィルムベースに、それらを正確に移動させるための歯車にかかるパーホレーションを設けたものを用いることを特徴とする、請求項1に記載の三次元構造体の製法及び製造装置及びその製品。
【請求項4】
請求項1に記載の製法を用いる場合に生じる、遊離した金属残存部の周囲を、空間を隔てた周囲の金属残存部につなぎ止めるための細線状架橋部を設け、積層一体化後に、該架橋部を加工により除去することを特徴とする、三次元構造体の製法及び製造装置及びその製品
【請求項5】
請求項1の製法で造られた、水平に保持された、二次元構造体積層体を上下から加圧し、加熱する一体化装置において、これらの二次元構造体積層体の上面及び下面に接する加圧板を設け、該上部及び下部の加圧板をそれぞれ上または下に周期的に二次元構造体積層体から引き離す加圧板駆動装置を設け、該上部と下部の加圧板を上下方向に貫通し、先端が該二次元構造体積層体の上面または下面に接触し、加圧板駆動装置とは位相がずれた周期で、先端を二次元構造体積層体から引き離す駆動装置に連なる、二次元構造体加圧棒を設けて成る、該上部及び下部二次元構造体加圧板と、二次元構造体積層体との溶接、及び、該二次元構造体積層体加圧棒と、二次元構造体積層体との溶接を防ぐための機構を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の三次元構造体の製法及び製造装置及びその製品。
【請求項6】
請求項1に記載の三次元構造体形成用金属薄板に、レーザービームまたはウォータージェットを当て、部分的に金属薄板を除去し、二次元構造体を形成し、それらを積層一体化することを特徴とする、請求項1に記載の三次元構造体の製法及び製造装置及びその製品。
【請求項7】
請求項1の製法で造られた三次元構造体中のノズルアレーの出口側の開口を、端に近ずくほどロート状に広げ、隣接口との境界線が、ごく細くなるようにし、ノズルからの吐出溶液が、ノズルを出る際に、隣接溶液同士が相互に接触するようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の三次元連続構造体の製法により得られる製品、及び該製品を用いた製造装置及びその製品。
【請求項8】
一軸方向に多数、平行に並び、各々から、異なる物質を含み、かつ、固形化(硬化)要因が存在し、隣接部が密着する線状溶液を、一方向に吐出する、多数のノズルから成る、ノズルアレーを設け、該ノズルアレーから吐出された線状溶液アレー上に、別の線状溶液アレーを吐出し、積層するノズルアレーを、多段設けた、線状溶液の長軸方向に直交する切断面での二次元構造が、いずれの箇所でも一定になる製品の製法において、請求項1に記載の三次元構造体の製法または製造装置によって造られた、ノズルアレーを用いることを特徴とする、請求項1に記載の三次元構造体の製法を用いた製造装置及びその製品。
【請求項9】
任意の複雑な水平横断面形状をなす、鉛直方向の空洞を有するダイスを形成し、ルツボ内に保持し、単結晶物体作成用の原料溶融液をダイスの空洞内に達するように補充しつつ、結晶種を下端に取り付けた、空洞内に上から入ることのできる引き上げ棒を設け、空洞内と同形の単結晶物体を得る単結晶製造装置において、請求項1の製法により、造られるダイスを用いることを特徴とする、請求項1に記載の三次元連続構造体の製法及び製造装置及びその製品。」を、
「【請求項1】
形成すべき三次元構造体の、水平に保持されたスライス断面体(二次元構造体)を積層し、上下から加圧し、加熱する一体化装置において、該二次元構造体積層体の上面及び下面に接する加圧板を設け、該上部及び下部の加圧板をそれぞれ上または下に周期的に二次元構造体積層体から引き離す加圧板駆動装置を設け、該上部と下部の加圧板を上下方向に貫通し、先端が該二次元構造体積層体の上面または下面に接触し、加圧板駆動装置とは位相がずれた周期で、先端を二次元構造体積層体から引き離す駆動装置に連なる、二次元構造体加圧棒を設けて成る、該上部及び下部二次元構造体加圧板と、二次元構造体積層体との溶接、及び、該二次元構造体積層体加圧棒と、二次元構造体積層体との溶接を防ぐための機構を設けたことを特徴とする、三次元構造体の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置で造られる三次元構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元構造体の製造装置中に、二次元構造体を取り付けた、パーホレーション付プラスチックフィルムを積層し、まず、プラスチックフィルムのみを熱分解させ、気化除去するために該製造装置内を金属は溶解しない温度に加熱し、ついで、金属製二次元構造体を拡散溶接するための高温に加熱し、加圧する、三次元構造体の製法。
【請求項4】
一軸方向に多数、平行に並び、各々から、異なる物質を含み、かつ、固形化(硬化)要因が存在し、隣接部が密着する線状溶液を、一方向に吐出する、多数のノズルから成る、ノズルアレーを設け、該ノズルアレーから吐出された線状溶液アレー上に、別の線状溶液アレーを吐出し、積層するノズルアレーを、多段設けた、線状溶液の長軸方向に直交する切断面での二次元構造が、いずれの箇所でも一定になる製品の製法において、請求項1に記載の三次元構造体の製造装置によって造られた、ノズルアレーを用いることを特徴とする製法により造られる製品。
【請求項5】
任意の複雑な水平横断面形状をなす、鉛直方向の空洞を有するダイスを形成し、ルツボ内に保持し、単結晶物体作成用の原料溶融液をダイスの空洞内に達するように補充しつつ、結晶種を下端に取り付けた、空洞内に上から入ることのできる引き上げ棒を設け、空洞内と同形の単結晶物体を得る単結晶製造装置において、請求項1に記載の製造装置により、造られるダイスを用いることを特徴とする、請求項1に記載の三次元構造体の製造装置を用いて得られる製品。
【請求項6】
ハンドル付水道蛇口につなぐ接続管に連なる枝状連結管につながり、ハンドルに上から水をかける湾曲したハンドル洗浄管を設け、連結管の端を球形化し、それに適合する球形下端を持つ閉鎖ノズルを設け、その前面に貫通孔を開けた溝を設け、溝中に板状弁を入れ、その弁を加圧し、かつ、弁に接しながら上下移動しうる弁加圧体を設け、該弁加圧体を上下移動させるノズルの周囲にはめ込んだ噴水の高さ調節ねじを設けた、請求項1に記載の製造装置を用いて得られた金型を用いて製造される給水栓接続用アダプター。」と補正することを含むものである。(下線は、補正箇所を示すために当審において付したものである。)

2.補正の適否
ア.審判請求時の補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限られる。そして、特許請求の範囲の減縮は、補正前の請求項と補正後の請求項とが対応したものとなっていることを当然の前提としており、補正前後の請求項に係る発明が一対一の対応関係にあることを必要とするものである(平成17年(行ケ)第10192号参照)。そこで、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係について見てみると、補正前の請求項1ないし4、及び請求項7に対応する補正後の請求項は存在しないことから、本件補正により、補正前の請求項1ないし4及び請求項7は削除されたものと認められる。また、補正後の請求項1は、その記載内容からみて、補正前の請求項5に対応し、以下同様に、補正後の請求項4は補正前の請求項8に、補正後の請求項5は補正前の請求項9に、それぞれ対応するものと認められる。補正後の請求項3は、補正前のどの請求項に対応するのか必ずしも明らかでないが、「二次元構造体」と「三次元構造体」という用語が共通して用いられているところからみて、一応、補正前の請求項6が対応するものとみることができる。補正後の請求項2及び請求項6については、補正前のどの請求項に対応するのか明らかでない。
イ.まず、補正後の請求項1について検討すると、補正後の請求項1は、補正前の請求項5に対応することは、上記ア.で述べたとおりであるが、補正前の請求項5は、補正前の請求項1を引用して記載されているので、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項をすべて含むものである。
しかしながら、補正後の請求項1は、補正前の請求項5が引用する請求項1に記載されていた発明特定事項である「表面をホトレジストで被覆した、エッチング用腐蝕液または電蝕液に溶解しうる、同サイズの角形の金属薄板から成る、多数の三次元構造体形成用金属薄板に、コンピューター設計支援つーる(CAD)と、その光出力手段を用いて造り出される、作成すべき三次元構造体のスライス断面形状(二次元画像)の光を、コンピューターにより二次元走査される出力ビーム光として照射するか、またはプリンターにより黒色画像をプリントした後、全面露光し、順次各ホトレジストで被覆された金属薄板に照射し、ついで、ホトレジストの非硬化部を洗い流し、ついで、腐蝕液に浸すか、電蝕液に浸して通電し、ホトレジストが存在しない部分の金属を溶解除去し、二次元構造体を得て、ついで、これらの各二次元構造体を順次積層し、加圧しつつ、これらの金属が溶融しない程度に加熱し、圧接により一体化するか、または、積層時に、各二次元構造体間に接着剤層または三次元構造体形成用金属より融点の低い金属の層、または加熱により溶融する残存ホトレジスト層を介在させ、加圧、加熱し、赫二次元構造体間を窃合して一体化し、作成すべき三次元形状を得る」との事項を、その発明特定事項に含んでいない。
そうすると、補正後の請求項1に係る補正は、補正前の請求項5に記載されていた発明の発明特定事項の一部を削除することを含むものであり、特許請求の範囲を実質的に拡張するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められない。また、この補正は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものとは認められないし、請求項の削除、あるいは、誤記の訂正のいずれを目的としたものとも認められない。
ウ.次に、補正後の請求項4及び請求項5について検討すると、これらの請求項に係る補正は、上記イ.で述べた補正後の請求項1に係る補正と同様の理由により、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められない。また、この補正は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものとは認められないし、請求項の削除、あるいは、誤記の訂正のいずれを目的としたものとも認められない。
エ.補正後の請求項3に係る補正は、上記イ.で述べた補正後の請求項1に係る補正と同様の理由に加え、さらに、補正前の請求項6に記載されていた発明の発明特定事項である「三次元構造体形成用金属薄板に、レーザービームまたはウォータージェットを当て、部分的に金属薄板を除去し」及び「積層一体化する」との事項を削除したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められない。また、この補正は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものとは認められないし、請求項の削除、あるいは、誤記の訂正のいずれを目的としたものとも認められない。
オ.補正後の請求項2及び請求項6に係る補正について検討すると、補正後の請求項2及び請求項6は、補正前のどの請求項に対応するのか明らかでないが、いずれも補正後の請求項1を引用しているところからみて、補正後の請求項1と同様、補正前の請求項5に対応するものとみることができる。しかし、その場合、補正前の請求項5に複数の補正後の請求項が対応することになり、補正後の請求項2及び請求項6は、補正前の請求項5に係る発明を複数の請求項に分割して新たな請求項としたものということになる。したがって、この補正は、新たな請求項を追加する増項補正であるから、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない。
カ.したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成19年3月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。

2.拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概ね「請求項1?9に係る発明のカテゴリーが不明である」から、「この出願は、特許請求の範囲の記載が」「特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」というものである。

3.当審の判断
特許法は、第68条で「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。」と規定し、第2条第3項では、発明の実施を「物の発明」と「方法の発明」と「物を生産する方法の発明」に区分して定義しているので、カテゴリーの不明確な発明に特許を付与することは、権利の及ぶ範囲が不明確になり適切でない。
本願の特許請求の範囲の記載をみると、その請求項1には、「…三次元構造体の製法及びその製造装置及びその製品。」と記載されており、特許を受けようとする発明の属するカテゴリー(物の発明、方法の発明、物を生産する方法の発明)が不明確であるため、発明が不明確である。
また、本願の請求項2ないし6には、「…三次元構造体の製法及び製造装置及びその製品。」と記載され、請求項7には「…三次元連続構造体の製法により得られる製品、及び該製品を用いた製造装置及びその製品。」と記載され、請求項8には「…三次元構造体の製法を用いた製造装置及びその製品。」と記載され、請求項9には「…三次元連続構造体の製法及び製造装置及びその製品。」と記載されており、請求項1と同様、特許を受けようとする発明の属するカテゴリーが不明確であるため、発明が不明確である。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が不明確である。

4.むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許法第49条第4号の規定に該当するから、特許法第49条の規定によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-23 
結審通知日 2010-08-31 
審決日 2010-09-13 
出願番号 特願2002-85415(P2002-85415)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (B29C)
P 1 8・ 572- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 能宏  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 川上 溢喜
藤村 聖子
発明の名称 三次元構造体の製造装置  

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