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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1227603 |
審判番号 | 不服2009-18553 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-10-01 |
確定日 | 2010-11-22 |
事件の表示 | 特願2008- 86258「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月17日出願公開、特開2008-161727〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一.手続の経緯 本願は、平成15年8月4日を出願日とする特願2003-285744号の一部を、平成20年3月28日に新たな特許出願としたものであって、拒絶理由通知に対して平成21年4月6日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年10月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 また、当審において、平成22年4月5日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年6月3日に回答書が提出された。 第二.平成21年10月1日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年10月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項1に係る発明 本件補正により補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。 「 遊技機を統括的に制御する主制御手段(60)と、この主制御手段(60)からの制御指令に基づき演出制御を行う副制御手段(90)と、遊技機の所定箇所に手動操作が可能な操作手段(15)とを備え、この操作手段(15)の操作に基づいて遊技に関与することが可能な遊技機において、 遊技状態が大当り遊技状態でなく且つ前記主制御手段(60)に備えた保留情報記憶手段(63)に保留球が記憶されておらず且つデモンストレーション画像が表示されている状態を含む予め定められた所定状態が成立したことを検出する所定状態検出手段(S11?S17)と、 前記所定状態検出手段(S11?S17)が前記所定状態の成立を検出したことに基づいて動作確認モードを設定する動作確認モード設定手段(S34)と、 前記動作確認モード設定後の所定時間における前記操作手段(15)の動作状態を検出する動作状態検出手段(S37)と、 前記動作確認モードが設定された状態において、前記操作手段(15)が操作されたときの前記動作状態検出手段(S37)の検出結果に基づいて、報知手段(30,15b,55)に所定の報知をさせる報知制御手段(91c)とを備え、 前記主制御手段(60)又は副制御手段(90)は、特定の遊技状態が発生した場合に、前記操作手段(15)の手動操作を有効とし、 前記所定状態検出手段(S11?S17)が前記主制御手段(60)に設けられ、前記動作状態検出手段(S37)と動作確認モード設定手段(S34)と報知制御手段(91c)が前記副制御手段(90)に設けられ、 前記報知手段(30,15b,55)は種々の情報を報知可能であり、前記報知制御手段(91c)は、操作手段(15)の動作が確認された場合に、所定の情報を前記報知手段(30,15b,55)に報知させる制御を行う、 ことを特徴とする遊技機。」 (下線部は補正によって追加又は変更された箇所。) 2.補正要件(目的)の検討 請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「所定状態」について、「デモンストレーション画像が表示されている状態」を付加する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。 3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条の2)の検討 (1)先願発明 原査定の拒絶の理由に引用された、特願2003-153288号(特開2004-350996号)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、ハードウェアが正常に動作するか否かをテストするテスト機能を備えた遊技機に関する。 【0013】<請求項8に係る発明について> 請求項8に係る発明は、サブ制御装置が操作子の操作をメイン制御装置を介することなく検出してテスト運転を行うものである。 ▲1▼ メイン制御装置:大当りおよび外れの判定処理を行う最上位の制御装置を称する。 ▲2▼ サブ制御装置:メイン制御装置から指令信号が与えられる下位の制御装置を称する。例えばパチンコ球が始動口に入賞することに基いて可変遊技を行う構成の遊技機の場 合にはランプ・スピーカ・表示器等の遊技部品を駆動制御する制御装置がサブ制御装置に該当する。・・・ 【0037】センタカバー36の後面には統合基板ケース(図示せず)が固定されている。この統合基板ケース内には、図9に示すように、統合基板60が収納されており、統合基板60にはサブ制御装置61が搭載されている。このサブ制御装置61はCPU62,ROM63,RAM64,VDP65,VROM66,VRAM67,I/O68を有するものであり、ROM63には制御プログラムおよび制御データが記録され、VROM66には表示プログラムおよび表示データが記録されている。尚、サブ制御装置61はモード変更手段・テスト運転手段・通常処理手段・表示制御手段・ランプ制御手段・スピーカ制御手段に相当するものである。 【0038】サブ制御装置61にはメイン制御装置44が電気的に接続されている。このサブ制御装置61はメイン制御装置44から演出コマンドおよび演出データが単方向で送信されるものであり、サブ制御装置61のCPU62はメイン制御装置44からの演出コマンド等に基づいて表示コマンドを設定し、VDP65に出力する。また、統合基板60にはLCD駆動回路69が搭載されており、VDP65は表示コマンドに応じた表示データをVROM66から検出し、LCD駆動回路69を介して図柄表示装置27に表示コマンドに応じた演出内容の動画面および静止画面を表示する。 【0042】左スイッチ73および右スイッチ74は上皿4に固定されたものであり、図9に示すように、サブ制御装置61にハーネスを介して電気的に接続されている。これら左スイッチ73および右スイッチ74は自己復帰形のプッシュスイッチから構成されたものであり、操作力が除去されることに基いてオン状態からオフ状態に自己復帰する。尚、左スイッチ73および右スイッチ74は操作子および別の操作子に相当するものである。 【0043】次に上記構成の作用について説明する。 <特別図柄遊技機能> 遊技者が上皿4内にパチンコ球を投入して発射ハンドル8を時計回り方向へ回動操作すると、遊技盤13内にパチンコ球が発射され、障害釘19に当りながら落下する。このパチンコ球が特別図柄始動口28内に有効に入賞すると、賞球払出装置39から設定個数のパチンコ球が上皿4内に賞品球として払出され、しかも、特別図柄遊技が開始される。この特別図柄遊技は図柄表示装置27にアニメーション画面を表示し、スピーカ6から図柄表示装置27の表示内容に連動して遊技音を出力し、コーナランプ21およびサイドランプ23を図柄表示装置27の表示内容に連動して発光させることで行われるものであり、特別図柄遊技の概略は次の通りである。 【0056】<キャラクタ選択機能> 大当り図柄の確定表示後には、図3に示すように、キャラクタ選択画面が表示される。このキャラクタ選択画面は大当りラウンドの表示内容をキャラクタパターンAおよびキャラクタパターンBのうちから選択するための画面であり、キャラクタ選択画面の表示中に左スイッチ73が操作されたときにはキャラクタパターンAが選択され、直後の大当りラウンド表示がキャラクタパターンAで実行される。また、キャラクタ選択画面の表示中に右スイッチ74が操作されたときにはキャラクタパターンBが選択され、直後の大当りラウンド表示がキャラクタパターンBで実行される。 【0057】キャラクタ選択画面の表示時間は固定的な一定値に設定されており、キャラクタ選択画面の表示中に左スイッチ73および右スイッチ74が操作されなかったときには特定のキャラクタパターンAが強制的に選択され、直後の大当りラウンド表示が特定のキャラクタパターンAで実行される。これら左スイッチ73および右スイッチ74のキャラクタ選択機能は通常機能に相当するものであり、キャラクタ選択画面の表示中だけ有効化される。 【0058】<テスト機能> 左スイッチ73は主電源が投入されることに基いてテスト開始機能が有効化されるものであり、左スイッチ73がテスト開始機能の有効状態でオン操作されたときには、図1に示すように、テスト運転が行われる。このテスト運転はスピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27を予め設定された固定的なテストパターンで駆動するモードであり、スピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27がテストパターンで駆動しているか否かを確認することでスピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27・左スイッチ73のハード的な異常の有無を検出したり、ソフトウェア的な異常の有無を検出できる。このテスト運転時には特別図柄遊技機能が有効化されており、テスト運転時にパチンコ球が特別図柄始動口28内に入賞したときにはテスト運転が自動的に終了し、特別図柄遊技が開始される。 【0060】次にメイン制御装置44およびサブ制御装置61の内部処理を図10?図37に基づいて説明する。 <メイン制御装置44の内部処理> メイン制御装置44のCPU45は電源が投入されると、図10のメインプログラムを起 動する。このメインプログラムはステップS1?S3の実行後にステップS4?S8を無限ループ状に繰返すものであり、CPU45はステップS1へ移行すると、割込み禁止を設定することに基づいてタイマ割込みプログラムの起動を禁止する。 【0131】(1)テスト処理 図27のステップS221のテスト処理はサブ制御フラグがテスト処理にセットされている場合に実行されるものであり、サブ制御装置61のCPU62はテスト処理でスピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27を固定的なテストパターンに基づいてテスト運転する。このとき、スピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27がテストパターン通りの態様で駆動しているか否かを使用者が確認することでスピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27のハード的な異常の有無を検出したり、サブ制御装置61のソフトウェア的な異常の有無を検出できる。 【0145】即ち、右スイッチ74が操作されず、パチンコ球が特別図柄始動口28内に入賞しないまま、テスト時間が上限値に達したときにはサブ制御装置61がテスト運転をプログラムに従って自動的に終了させる。このテスト運転中には左スイッチ73の操作状態が検出されず、左スイッチ73のテスト開始機能はテスト運転の実行によってソフトウェア的に無効化される。テストモードは左スッチ73の操作に基いてテスト運転を行うことが可能な状態を称するものであり、電源投入からテスト運転または特別図柄遊技が開始されるまで有効化される。 【0220】上記第1?第2実施例においては、電源投入からテスト運転または特別図柄遊技が開始されるまで無制限にテストモードを有効化したが、これに限定されるものではなく、例えばテストモードの有効時間に上限値を設定し、電源投入から有効時間が経過したときにはテストモードを無効化しても良い。この構成の場合、電源投入から有効時間が経過した後には左スイッチ73を操作してもテスト運転が実行されないので、特別図柄遊技中および大当り遊技中に左スイッチ73が操作されることに基いてテスト運転が実行されることがなくなる。・・・ 摘記した上記の記載や図面等によれば、先願明細書には以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。 「 メイン制御装置44と、このメイン制御装置44からの演出コマンド等に基づいて表示コマンドを設定し、VDP65に出力するサブ制御装置61と、 上皿4に左スイッチ73および右スイッチ74とを備え、キャラクタ選択画面の表示中に左スイッチ73が操作されたときにはキャラクタパターンAが選択され、直後の大当りラウンド表示がキャラクタパターンAで実行される遊技機において、 電源が投入されることに基いてテストモードが有効化され、 前記電源の投入から有効時間が経過したときには無効化される前記テストモードで前記左スイッチ73がオン操作されたときには、該左スイッチ73のハード的な異常の有無を検出できるテスト運転が行われ、 前記テスト運転は、スピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27を予め設定された固定的なテストパターンで駆動するものであり、 前記左スイッチ73および右スイッチ74は、前記サブ制御装置61に電気的に接続されており、大当り図柄の確定表示後、前記キャラクタ選択画面の表示中だけ前記左スイッチ73および右スイッチ74のキャラクタ選択機能が有効化され、 前記メイン制御装置44のCPU45は電源が投入されると、メインプログラムを起動し、前記サブ制御装置61はモード変更手段・テスト運転手段・通常処理手段・表示制御手段・ランプ制御手段・スピーカ制御手段に相当するものであり、 特別図柄遊技においては、前記図柄表示装置27にアニメーション画面を表示し、前記スピーカ6から図柄表示装置27の表示内容に連動して遊技音を出力し、前記コーナランプ21および前記サイドランプ23を図柄表示装置27の表示内容に連動して発光させる遊技機。」 (2)先願発明と本願補正発明との対比 先願発明の「メイン制御装置44」は、本願補正発明の「主制御手段(60)」に相当し、以下同様に、 「演出コマンド等」は「制御指令」に、 「表示コマンドを設定し、VDP65に出力する」は「演出制御を行う」に、 「サブ制御装置61」は「副制御手段(90)」に、 「上皿4」は「遊技機の所定箇所」に、 「左スイッチ73」は「手動操作が可能な操作手段(15)」に、 「テストモード」は「動作確認モード」に、 「スピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27」は「報知手段(30,15b,55)」に、 「大当り図柄の確定表示」は「特定の遊技状態が発生した場合」に、各々相当する。 さらに、先願明細書の記載等からみて、以下のことがいえる。 a.先願発明の「メイン制御装置44」が遊技機を統括的に制御するものであることは、先願明細書の段落【0013】に「メイン制御装置:大当りおよび外れの判定処理を行う最上位の制御装置を称する。」と記載されていること等から明らかである。 b.先願発明は「キャラクタ選択画面の表示中に左スイッチ73が操作されたときにはキャラクタパターンAが選択され、直後の大当りラウンド表示がキャラクタパターンAで実行される」ものであり、大当りラウンド表示のキャラクタパターンを選択できることは、本願補正発明の「遊技に関与することが可能」であることにほかならないから、先願発明の遊技機も、左スイッチ73の操作に基づいて遊技に関与することが可能な遊技機であるといえる。 c.先願発明は「電源が投入されることに基いてテストモードが有効化」されるから、先願発明が、電源が投入されたことを検出する手段を備えていることは明らかである。 そして、先願発明における電源が投入されたことは、本願補正発明の「予め定められた所定状態が成立したこと」に相当するから、先願発明は本願補正発明の「予め定められた所定状態が成立したことを検出する所定状態検出手段(S11?S17)」に相当する手段を備えているといえる。 なお、本願補正発明の「予め定められた所定状態」は「遊技状態が大当り遊技状態でなく且つ前記主制御手段(60)に備えた保留情報記憶手段(63)に保留球が記憶されておらず且つデモンストレーション画像が表示されている状態を含む」ものであるが、そういう状態以外を含まないものではないので、該所定状態は予め定められていればどのような状態であってもよいものと認められる。 さらに、「予め定められた所定状態」を「遊技状態が大当り遊技状態でなく且つ前記主制御手段(60)に備えた保留情報記憶手段(63)に保留球が記憶されておらず且つデモンストレーション画像が表示されている状態」としてみても、電源が投入されたときは、大当り遊技状態ではなく且つ保留球は記憶されておらず且つデモンストレーション画像が表示されるのが普通であり、先願の図1からも電源投入とテスト表示との間にデモ表示の状態があることが見てとれるから、上記の相当関係は崩れない。 また、先願発明において「テストモードが有効化」されることは、本願補正発明において「動作確認モードを設定する」ことに相当するから、先願発明は本願補正発明の「前記所定状態検出手段(S11?S17)が前記所定状態の成立を検出したことに基づいて動作確認モードを設定する動作確認モード設定手段(S34)」に相当する手段を備えるものであるといえる。 d.先願発明の「テストモード」は電源が投入されることに基いて有効化され、その投入から有効時間が経過したときには無効化されるのであるから、先願発明は、テストモードの有効化後の有効時間内において、左スイッチ73のハード的な異常の有無を検出できるものと認められる。 そうしてみると、先願発明は本願補正発明の「動作確認モード設定後の所定時間における前記操作手段(15)の動作状態を検出する動作状態検出手段(S37)」に相当する手段を備えるものといえる。 e.先願発明の「テスト運転」はテストモードが有効化された状態、すなわち、本願補正発明の「動作確認モードが設定された状態」に相当する状態において、左スイッチ73がオン操作されたとき行われ、該左スイッチ73のハード的な異常が無ければスピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27が予め設定された固定的なテストパターンで駆動され、異常があればスピーカ6等が駆動されないものと認められる。 そして、そのスピーカ6等は本願補正発明の「報知手段(30,15b,55)」に相当し、先願発明においてスピーカ6等が予め設定された固定的なテストパターンで駆動されるかされないかにより左スイッチ73のハード的な異常の有無が分かるのであるから、先願発明は本願補正発明の「前記動作確認モードが設定された状態において、前記操作手段(15)が操作されたときの前記動作状態検出手段(S37)の検出結果に基づいて、報知手段(30,15b,55)に所定の報知をさせる報知制御手段(91c)」に相当する手段を備えるものといえる。 f.先願発明の「左スイッチ73および右スイッチ74」は、大当り図柄の確定表示後、前記キャラクタ選択画面の表示中だけキャラクタ選択機能が有効化されており、それらはサブ制御装置61に電気的に接続されているのであるから、サブ制御装置61が大当り図柄の確定表示後、前記キャラクタ選択画面の表示中の場合に、左スイッチ73および右スイッチ74の操作を有効としているということができる。 そうしてみると、先願発明の「サブ制御装置61」は、本願補正発明の「特定の遊技状態が発生した場合に、前記操作手段(15)の手動操作を有効と」するに相当する機能を有するものといえる。 g.先願発明においては、電源が投入されるとメイン制御装置44のCPU45がメインプログラムを起動するのであるから、メイン制御装置44に電源が投入されたことを検出する手段が設けられていることは明らかである。 そして、先願発明における電源が投入されたことは、本願補正発明の「予め定められた所定状態が成立したこと」に相当するから、先願発明は本願補正発明の「前記所定状態検出手段(S11?S17)が前記主制御手段(60)に設けられ」に相当する構成を有するものといえる。 また、先願発明の「サブ制御装置61」は、「モード変更手段・テスト運転手段・通常処理手段・表示制御手段・ランプ制御手段・スピーカ制御手段に相当するもの」であるとともに、左スイッチ73および右スイッチ74は、サブ制御装置61に電気的に接続されているのであるから、先願発明が本願補正発明の「前記動作状態検出手段(S37)と動作確認モード設定手段(S34)と報知制御手段(91c)が前記副制御手段(90)に設けられ」に相当する構成を備えることも明らかである。 h.先願発明は、「特別図柄遊技においては、前記図柄表示装置27にアニメーション画面を表示し、前記スピーカ6から図柄表示装置27の表示内容に連動して遊技音を出力し、前記コーナランプ21および前記サイドランプ23を図柄表示装置27の表示内容に連動して発光させる」のであるから、先願発明の「スピーカ6・コーナランプ21・サイドランプ23・図柄表示装置27」(本願補正発明の「報知手段(30,15b,55)」に相当)も、種々の情報を報知可能であるということができる。 また、先願発明は上記b.で述べたように、「キャラクタ選択画面の表示中に左スイッチ73が操作されたときにはキャラクタパターンAが選択され、直後の大当りラウンド表示がキャラクタパターンAで実行される」ものであって、その「大当りラウンド表示がキャラクタパターンAで実行される」ことは、本願補正発明の「所定の情報を前記報知手段(30,15b,55)に報知させる制御を行う」ことに相当するといえるから、先願発明は本願補正発明の「前記報知制御手段(91c)は、操作手段(15)の動作が確認された場合に、所定の情報を前記報知手段(30,15b,55)に報知させる制御を行う」に相当する構成を有するものということができる。 以上を総合すると、先願明細書には実質的に本願補正発明と同一のものが記載されているといえる。 なお、請求人は「 本発明は、構成(C)の「動作確認モード設定手段」を設けることで、電源投入直後だけでなく、電源投入後から営業終了までの間、遊技機において所定状態が成立して動作確認モードが設定されると、操作手段の動作状態を検査することができ、特定の遊技状態が発生した場合以外では有効化されない操作手段の動作状態を、遊技者の遊技を阻害することなく確実に且つ正確に検出できる。先願出願1の発明では、本発明が奏する効果を期待できない。従って、本発明と先願出願1の発明には、実質的に明確な差異がある。」(審判請求書第4頁下段?第5頁上段)と主張しているが、本願補正発明も、明細書の段落【0075】に表示指令フラグが電源投入時にリセットされる旨記載され、同段落【0077】に表示指令フラグは表示処理を1回だけ実行するように設けてある旨記載され、同段落【0079】に「ホールの従業員がそのメッセージを見て、ガラス扉6を開けて、大入賞口手段25内の特定入賞領域25bに遊技球を入賞させる。」と記載されていることからみて、表示処理及び従業員による特定入賞領域25bへの遊技球入賞は、電源投入後の限られた期間においてのみ実行されるものと認められる。 また、電源投入直後だけでなく、電源投入後から営業終了までの間、動作確認を可能とすることについては、明細書の段落【0104】に「 9〕操作ボタン15の動作状態を確認するための専用の動作確認用表示器を別途設け、この動作確認用表示器に、「操作ボタン:正常」、イメージ画像(マーク)等を表示するようにしてもよい。この場合には、操作ボタン15の使用が有効化されていない場合でも、強制的に有効化させることで、遊技者でも操作ボタン15の動作確認が可能になる。」と記載されているものの、「専用の動作確認用表示器」や「操作ボタン15の使用を強制的に有効化する手段」が必要なので、本願補正発明が、電源投入直後だけでなく、電源投入後から営業終了までの間、動作確認が可能である根拠にはならない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、その出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願2003-153288号(特開2004-350996号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、両発明の発明者が同一ではなく、また両出願の出願人がその出願の時において同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第三.本件補正前の請求項1に係る発明について 1.本件補正前の請求項1に係る発明 平成21年10月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年4月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 遊技機を統括的に制御する主制御手段(60)と、この主制御手段(60)からの制御指令に基づき演出制御を行う副制御手段(90)と、遊技機の所定箇所に手動操作が可能な操作手段(15)とを備え、この操作手段(15)の操作に基づいて遊技に関与することが可能な遊技機において、 遊技状態が大当り遊技状態でなく且つ前記主制御手段(60)に備えた保留情報記憶手段(63)に保留球が記憶されていない条件を含む予め定められた所定状態が成立したことを検出する所定状態検出手段(S11?S17)と、 前記所定状態検出手段(S11?S17)が前記所定状態の成立を検出したことに基づいて動作確認モードを設定する動作確認モード設定手段(S34)と、 前記操作手段(15)の前記動作確認モード設定後の所定時間における動作状態を検出する動作状態検出手段(S37)と、 前記動作確認モードが設定された状態において、前記操作手段(15)が操作されたときの前記動作状態検出手段(S37)の検出結果に基づいて、報知手段(30,15b,55)に所定の報知をさせる報知制御手段(91c)とを備え、 前記主制御手段(60)又は副制御手段(90)は、特定の遊技状態が発生した場合に、前記操作手段(15)の手動操作を有効とし、 前記所定状態検出手段(S11?S17)が前記主制御手段(60)に設けられ、前記動作状態検出手段(S37)と動作確認モード設定手段(S34)と報知制御手段(91c)が前記副制御手段(90)に設けられ、 前記報知手段(30,15b,55)は種々の情報を報知可能であり、前記報知制御手段(91c)は、操作手段(15)の動作が確認された場合に、所定の情報を前記報知手段(30,15b,55)に報知させる制御を行う、 ことを特徴とする遊技機。」 2.特許法第29条の2の検討 (1)先願発明 原査定の拒絶の理由に引用された先願明細書及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。 (2)先願発明と本願発明との対比及び判断 本願発明は、実質的には前記「第二」で検討した本願補正発明から、「所定状態」について、その限定事項である「デモンストレーション画像が表示されている状態」という構成を省いたものといえる。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、当該構成要件の一部に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(2)」に記載したとおり、先願発明と同一であることから、前記他の構成要件が省かれている本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、先願発明と同一であるといえる。 (3)まとめ 以上のとおり、本願発明は、その出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願2003-153288号(特開2004-350996号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、両発明の発明者が同一ではなく、また両出願の出願人がその出願の時において同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 第四.むすび 本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2及び3)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-24 |
結審通知日 | 2010-09-27 |
審決日 | 2010-10-12 |
出願番号 | 特願2008-86258(P2008-86258) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順、安久 司郎 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
澤田 真治 吉村 尚 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 岡村 俊雄 |