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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1227711
審判番号 不服2008-31121  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-09 
確定日 2010-11-24 
事件の表示 特願2004-255006「薄膜トランジスタアレイ基板、それを有する液晶表示パネル及びそれらの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月28日出願公開、特開2005-115348〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年9月2日(パリ条約による優先権主張 2003年10月10日、大韓民国、2003年12月30日、大韓民国)に特許出願したものであって、平成20年4月9日に手続補正がなされたが、同年9月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月9日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、平成21年1月8日に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
(1)本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年1月8日になされた補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものと、ひとまず認められるところ、同補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「 基板上に形成されたゲートラインと、
前記ゲートラインとゲート絶縁膜を間に置いて交差して画素領域を規定するデータラインと、
前記ゲートライン及びデータラインの交差部に形成される薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタのドレイン電極を露出させる保護膜パターンと、前記画素領域を液晶配向が互いに異なる多数個の領域に区分する少なくとも一つの突出部と、
前記薄膜トランジスタと接続されて前記保護パターンと突出部を除いた前記画素領域に形成される画素電極と、
前記少なくとも一つの突出部は前記対角線方向に互いに向き合う第1及び第2突出部と、前記第1及び第2突出部と交差された方向に互いに向き合う第3及び第4突出部と、
前記少なくとも一階の絶縁パターンは前記ゲート絶縁膜と同一物質で同一平面上に形成された第1絶縁パターンと、前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された第2絶縁パターンと、
前記ゲートラインと、前記ゲート絶縁膜と半導体パターンを間に置いて前記ゲートラインと重畳されるストレ-ジ電極と、を含むストレ-ジキャパシタを具備することを特徴とする薄膜トランジスタアレイ基板。」

(2)ア 上記(1)の請求項1の「前記薄膜トランジスタと接続されて前記保護パターンと突出部を除いた前記画素領域に形成される画素電極と、」の記載中の「保護パターン」は、前後の記載から見て「保護膜パターン」の誤記と認められる。

イ 上記(1)の請求項1の「前記少なくとも一つの突出部は前記対角線方向に互いに向き合う第1及び第2突出部と、前記第1及び第2突出部と交差された方向に互いに向き合う第3及び第4突出部と、前記少なくとも一階の絶縁パターンは前記ゲート絶縁膜と同一物質で同一平面上に形成された第1絶縁パターンと、前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された第2絶縁パターンと、」との記載は、「対角線方向」及び「少なくとも一階の絶縁パターン」は、当該記載より前に記載がないこと、また、「前記少なくとも一つの突出部は」を受ける述語が存在しないことから、明確に理解することができないので、本願明細書を参照するに、本願明細書には、次の記載がある。

「 【0025】
前記少なくとも一つの突出部は前記画素領域の対角線方向に形成されたことを特徴とす
る。
【0026】
前記少なくとも一つの突出部は前記対角線方向に互いに向き合う第1及び第2突出部と、前記第1及び第2突出部と交差された方向に互いに向き合う第3及び第4突出部と、を含むことを特徴とする。
【0027】
前記少なくとも一つの突出部は少なくとも一階の絶縁パターンに形成されたことを特徴とする。
【0028】
前記少なくとも一階の絶縁パターンは前記ゲート絶縁膜と同一物質で同一平面上に形成された第1絶縁パターンと、前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された第2絶縁パターンと、を含むことを特徴とする。」、
「 【0070】
突出部85はゲート絶縁パターン90と保護膜パターン98から構成されて、画素領域に対角線方向に互いに向き合う第1及び第2突出部と、前記第1及び第2突出部と交差された方向に互いに向き合う第3及び第4突出部と、を含むこともできる。・・・」、
「 【0084】
引き継いで、フォトレジストパターン71cをマスクで使って保護膜98a及びゲート絶縁膜90aがパターニングされることによって、この後に透明電極パターンが形成される領域を除いた領域にゲート絶縁パターン90及び保護膜パターン98が形成される。これによって、ゲート絶縁パターン90及び保護膜パターン98から構成された突出部85が形成される。・・・」

上記本願明細書の記載に照らすと、請求項1の上記記載は、「前記少なくとも一つの突出部は、前記画素領域の対角線方向に形成され、前記対角線方向に互いに向き合う第1及び第2突出部と、前記第1及び第2突出部と交差された方向に互いに向き合う第3及び第4突出部と、を含むとともに、前記ゲート絶縁膜と同一物質で同一平面上に形成された第1絶縁パターンと、前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された第2絶縁パターンと、を含んで形成され、」との意をいうものと解される。

(3)以上によれば、本願発明は、次のとおりのものと認められる。

「基板上に形成されたゲートラインと、
前記ゲートラインとゲート絶縁膜を間に置いて交差して画素領域を規定するデータラインと、
前記ゲートライン及びデータラインの交差部に形成される薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタのドレイン電極を露出させる保護膜パターンと、前記画素領域を液晶配向が互いに異なる多数個の領域に区分する少なくとも一つの突出部と、
前記薄膜トランジスタと接続されて前記保護膜パターンと突出部を除いた前記画素領域に形成される画素電極と、
前記少なくとも一つの突出部は、前記画素領域の対角線方向に形成され、前記対角線方向に互いに向き合う第1及び第2突出部と、前記第1及び第2突出部と交差された方向に互いに向き合う第3及び第4突出部と、を含むとともに、前記ゲート絶縁膜と同一物質で同一平面上に形成された第1絶縁パターンと、前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された第2絶縁パターンと、を含んで形成され、
前記ゲートラインと、前記ゲート絶縁膜と半導体パターンを間に置いて前記ゲートラインと重畳されるストレージ電極と、を含むストレージキャパシタを具備することを特徴とする薄膜トランジスタアレイ基板。」

3 刊行物の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-51298号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。以下同じ。)。

ア 「【請求項1】複数の画素毎に薄膜トランジスタがスイッチング素子として形成されたアクティブマトリクス型の液晶表示装置において、
前記薄膜トランジスタのソース電極の一部領域以外の前記薄膜トランジスタ上に形成された絶縁性の保護膜と、
前記保護膜と同一の材料からなり、液晶の配向制御用に画素領域内に形成された突起部と、
前記突起部の形成領域外の前記画素領域内に形成され、前記ソース電極の前記一部領域に直接接続された画素電極とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】請求項1記載の液晶表示装置において、
前記突起部は、前記画素領域内で当該突起部により分断された複数の前記画素電極を電気的に接続するための導通部を有していることを特徴とする液晶表示装置。」

イ 「【0021】
【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態による液晶表示装置及びその製造方法を図1乃至図5を用いて説明する。まず、本実施の形態による液晶表示装置の概略の構成を図1及乃至図3を用いて説明する。図1は本実施の形態による液晶表示装置のアレイ基板を液晶層側から見た基板面を示している。図1に示すように、ガラス基板1上に図中上下方向に延びる複数のデータ線(図では1本のみ表示している)11が形成されている。またガラス基板1上には、図中左右方向に延びる複数のゲート線3が形成されている。これらデータ線11とゲート線3とで画定される領域に画素が形成される。そして、各データ線11とゲート線3との交差位置近傍にTFTが形成されている。TFTのゲート電極4はゲート線3から引き出されて形成されている。TFTのドレイン電極17は、データ線11から引き出されて、その端部がゲート電極4上方に形成されたチャネル保護膜5上の一端辺側に位置するように形成されている。
【0022】一方、ソース電極19はチャネル保護膜5上の他端辺側に位置してドレイン電極17に対向して形成されている。図示は省略しているが、ゲート電極4上にはゲート絶縁膜が形成され、その上にチャネルを構成する動作半導体層が形成されている。画素領域内にはソース電極19に直接接続されたITO等の透明電極からなる画素電極13が形成されている。また画素領域内には横断面中央部が凸状の細長い丘状の絶縁性の突起15が形成されている。突起15は画素領域内で頂角が90°の三角波状に蛇行して形成されている。従って、図1に示すように1画素内で方向が異なる少なくとも4つの傾斜面t1、t2、t3、t4が形成され、これにより負の誘電異方性を有する液晶分子の配向状態を異ならせた4分割配向のMVAモードによる液晶の配向制御を実現できるようになっている。
【0023】ここで、画素電極13は突起15の形成領域には形成されていない。突起15の三角波状の各辺部には、辺部を一部削除した導通部18が設けられている。導通部18にも透明電極材が形成されており、これにより画素領域内で突起15により分断された複数の画素電極13が電気的に接続されている。
【0024】さらに図2を用いて、本実施の形態による液晶表示装置の構造を説明する。図2は、図1のA-A線で切断したTFTを含む領域の液晶表示装置の断面を示している。透明ガラス基板1上に例えば厚さ150nmのAl(アルミニウム)及び厚さ50nmのTi(チタン)をこの順に積層したゲート電極4が形成されている。ゲート電極4の幅は例えば8μm程度に形成されている。ゲート電極4上及びガラス基板1上の全面には、例えば厚さ300nmのシリコン窒化膜(SiN)からなるゲート絶縁膜23が形成されている。ゲート電極4上のゲート絶縁膜23の上方には動作半導体層として機能する厚さ30nm程度のアモルファスシリコン(a-Si)層6が形成されている。
【0025】ゲート電極4上のアモルファスシリコン層6上にはチャネルストッパとして機能する、例えば厚さ100nm程度のSiNからなるチャネル保護膜5が形成されている。ゲート電極4上の動作半導体層の両側のアモルファスシリコン層6上には、オーミックコンタクト層であるn+a-Si層(厚さ30nm程度)及び、その上にTi(厚さ約50nm)/Al(厚さ約150nm)/Ti(厚さ約50nm)をこの順に積層したドレイン電極17、データ線11、及びソース電極19が形成されている。ドレイン電極17及びソース電極19の端部は、チャネル保護膜5上に乗り上げて対向して形成されている。
【0026】図2中に示すソース電極19の幅aは約5μmであり、チャネル保護膜5上のドレイン電極17とソース電極19との端部間の幅bは約3.5μmである。また、ドレイン電極17の幅cは約3μmであり、データ線11の幅dは約10μmである。
【0027】TFTのソース電極19(一部領域を除く)、ドレイン電極17、及びデータ線11上には、これらを覆う保護膜34が形成されている。保護膜34は厚さ約1.5μmの絶縁性のノボラック樹脂系のレジストで形成されている。また、保護膜34と同一の材料で形成され、横断面中央部が凸状の細長い丘状の突起15が形成されている。突起15は図1に示したように画素領域内で頂角がほぼ90°の三角波状に蛇行するように形成されており、1画素内で方向が異なる4つの傾斜面を有している。突起15の幅eは約5μmであり高さは約1.5μmである。なお、図2に示した突起15は、突起形状を強調するため断面形状の縦横比は実際より縦方向を強調して表示している。
【0028】また、例えばITOからなる画素電極13が厚さ約70nmに成膜されてソース電極19の一部領域に直接接続されている。画素電極13は、表示領域内の突起15上には形成されていない。図中では画素電極13が突起15側壁下方に接触しているように表示しているが、画素電極13端部が突起15側壁部に接触しないように形成してももちろんよい。図2には示されていないが、突起15の各辺部に設けられた導通部18上にも画素電極材が形成されており、画素領域内で突起15により分断される複数の画素電極13は電気的に接続されている。以上が、本実施の形態における負の誘電異方性を有する液晶分子の配向状態を異ならせた4分割配向のMVAモードを実現できる液晶表示装置のアレイ基板の概略構成である。」

ウ 「【0036】次に、図5(a)に示すように、例えば絶縁性を有する熱硬化性樹脂であるノボラック樹脂系のレジスト33を全面に厚さ約1.5μm程度形成する。次いで、レジスト33をパターニングして、200°C程度でアニールを行い硬化させることによりTFTのソース電極19(一部領域を除く)、ドレイン電極17、及びデータ線11を覆う保護膜34を形成すると共に、同時に横断面中央部が凸状の細長い丘状の突起15を形成する(図5(b)参照)。突起15は画素領域内で頂角がほぼ90°の三角波状に蛇行するように形成し、1画素内で方向が異なる4つの傾斜面を形成する。突起15の幅は約5μmであり高さは約1.5μmである。」

エ 図2から、ソース電極19の一部領域は保護膜34に覆われずに露出し、露出した部分に画素電極13が接続されていること、及び突起15は保護膜34と同一平面上に形成されていることがみてとれる。

オ 上記イの「TFTのソース電極19(一部領域を除く)、ドレイン電極17、及びデータ線11上には、これらを覆う保護膜34が形成されている。」(【0027】)との記載を踏まえて、図1及び図2をみると、画素電極13は保護膜34上には形成されていないことが理解できる。

(2)同じく、特開平7-311383号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

「【請求項1】 対向表面側に透明な電極を有した2枚の基板が液晶層を挟んで上下に貼り合わされ、これら両電極の対向部で形成された表示画素がマトリクス状に配置されてなる液晶表示装置において、
前記電極の少なくとも一方の前記表示画素の周縁または/および領域内には前記液晶層との接触表面を部分的に隆起または陥没させることにより形成された配向制御傾斜部が設けられ、該配向制御傾斜部により液晶の配向を制御したことを特徴とする液晶表示装置。」、
「【0043】(第8の実施例) 図15にセルの断面構造を示す。液晶層(120)を挟んで上下に貼り合わされた2枚の透明な基板(100,110)上にはITOの透明電極(101,111)が設けられている。下側の透明電極(101)の下部には、表示画素部の大部分に形成された配向制御断層(102L)、及び、配向制御断層(102L)上の表示画素部の対角線に沿って形成された第2の配向制御断層(105)が設けられている。・・・第2の配向制御断層(105)は透明電極(111)を一部隆起させ、配向制御傾斜部(106L,106R,106U,106D)が形成されている(図16参照)。
・・・
【0045】 図16に表示画素部の平面図を示す。表示画素の周縁部に配向制御傾斜部(104)の帯状領域があり、内部には表示画素の対角線に沿って形成された配向制御傾斜部(106L,106R,106U,106D)のX字型の領域がある。このように4つに分割された各ゾーン(U,D,L,R)では、液晶ダイレクターは同じ初期垂直配向状態から、4つのそれぞれの方向へ傾けられ、太矢印で表される平均的配向ベクトルの平面射影は4方向を向いている。
【0046】 このようなセル構造により、例えば紙面の左方向からの視認については、ゾーン(L)の階調が正面からの視認より黒に近づくとともに、ゾーン(R)の階調が白に近づくために、ゾーン(L,R)の平均調と上下ゾーン(U,D)の合成光が正面からの視認に近づく。他の方角からの視認についても同様の平均化作用があるので全ての方角について視角依存性が低減される。」

(3)同じく、特開平11-242225号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、以下の記載がある。

「【0017】
【課題を解決するための手段】図9は、本発明の原理を説明する図である。図9に示すように、本発明によれば、従来の垂直配向膜を使用し、液晶材料としてネガ型液晶を封入したVA方式において、電圧を印加した時に、液晶が斜めに配向される配向方向が、1画素内において、複数の方向になるように規制するドメイン規制手段を設ける。ドメイン規制手段は2枚の基板の少なくとも一方に設ける。また、ドメイン規制手段として機能するものとしては各種あるが、少なくとも1つのドメイン規制手段は、斜面を有するものである。なお断面が長方形で基板に対して略垂直に立ち上がる面も斜面に含まれるものとする。図9では、ドメイン規制手段として、上側基板の電極12を1画素内でスリットを有する電極とし、下側基板の電極13の上には突起20を設けている。」(14頁?15頁)、
「【0168】図139は、第35実施例のパネルのTFT基板を製作する工程を示す図である。(1)に示すように、ガラス基板17上にゲート電極31をパターンニングする。次に、SiNx層40、アモルファスシリコン(α-Si)層72、SiNx層65を順に形成する。更に、(2)に示すように、SiNx層65をチャンネル保護膜の部分のみを残してα-Si層72までエッチングする。更に、n+α-Si層と、データバスライン、ソース41、ドレイン42に相当するTi/Al/Ti層を形成し、パターンニングにてデータバスライン、ソース41、ドレイン42に相当する部分のみを残すようにエッチングする。(4)のように、最終保護膜43に相当するSiNx層を形成後、絶縁に必要な部分及び突起に相当する部分43B、40Bを残してガラス基板17の表面までエッチングする。この時、同時にソース電極41と画素電極とのコンタクトホールも形成する。この際、ソース電極41がエッチングストッパになる。更に、ITO電極層を形成してパターンニングし、画素電極13を形成する。従って、突起の高さはSiNx層40と最終保護膜43の和となる。」(36頁)

4 引用発明
(1)前記3(1)アによれば、引用刊行物1には、「複数の画素毎に薄膜トランジスタがスイッチング素子として形成されたアクティブマトリクス型の液晶表示装置において、前記薄膜トランジスタのソース電極の一部領域以外の前記薄膜トランジスタ上に形成された絶縁性の保護膜と、前記保護膜と同一の材料からなり、液晶の配向制御用に画素領域内に形成された突起部と、前記突起部の形成領域外の前記画素領域内に形成され、前記ソース電極の前記一部領域に直接接続された画素電極とを有し、前記突起部は、前記画素領域内で当該突起部により分断された複数の前記画素電極を電気的に接続するための導通部を有している液晶表示装置。」の発明が記載されているものと認められる。

(2)前記3(1)イないしオによれば、上記(1)の発明の実施の形態は、以下の各構成を具備するものであることが認められる。

ア ガラス基板1上に複数のデータ線11及び複数のゲート線3が形成され、これらデータ線11とゲート線3とで画定される領域に画素が形成され、各データ線11とゲート線3との交差位置近傍にTFTが形成され、TFTのゲート電極4はゲート線3から引き出されて形成され、TFTのドレイン電極17は、データ線11から引き出されて形成されている。

イ ゲート電極4上及びガラス基板1上の全面にはゲート絶縁膜23が形成され、その上にチャネルを構成する動作半導体層として機能するアモルファスシリコン(a-Si)層6が形成され、ゲート電極4上の動作半導体層の両側のアモルファスシリコン層6上には、ドレイン電極17、データ線11、及びソース電極19が形成され、TFTのソース電極19(一部領域を除く)、ドレイン電極17、及びデータ線11上には、これらを覆う保護膜34が形成されており、保護膜34に覆われずに露出したソース電極19の領域に画素電極13が接続されている。

ウ 突起15は、保護膜34と同一の材料で保護膜34と同一平面上に画素領域内で頂角がほぼ90°の三角波状に蛇行するように形成されて1画素内で方向が異なる4つの傾斜面を有し、突起15の三角波状の各辺部には辺部を一部削除した導通部18が設けられ、導通部18上にも画素電極が形成されて画素領域内で突起15により分断される複数の画素電極13は電気的に接続されており、4分割配向のMVAモードを実現できるものである。

エ 画素電極13は保護膜34上には形成されていない。

(3)以上によれば、引用刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「ガラス基板上に複数のデータ線及び複数のゲート線が形成され、これらデータ線とゲート線と画定される領域に画素が形成され、各データ線とゲート線との交差位置近傍に薄膜トランジスタが形成され、複数の画素毎に薄膜トランジスタがスイッチング素子として形成されたアクティブマトリクス型の液晶表示装置において、前記薄膜トランジスタのソース電極の一部領域以外の前記薄膜トランジスタ上に形成された絶縁性の保護膜と、前記保護膜と同一の材料からなり、液晶の配向制御用に画素領域内に形成された突起部と、前記突起部の形成領域外の前記画素領域内に形成され、前記ソース電極の前記一部領域に直接接続された画素電極とを有し、前記突起部は、前記画素領域内で当該突起部により分断された複数の前記画素電極を電気的に接続するための導通部を有している液晶表示装置であって、前記ゲート電極上及び前記ガラス基板上の全面にゲート絶縁膜が形成され、その上にチャネルを構成する動作半導体層として機能するアモルファスシリコン層が形成され、ゲート電極上の動作半導体層の両側のアモルファスシリコン層上には、前記データ線並びに前記薄膜トランジスタのソース電極及びドレイン電極が形成され、前記ソース電極(一部領域を除く)、ドレイン電極及びデータ線上には、これらを覆う前記保護膜が形成され、該保護膜に覆われずに露出したソース電極の領域に前記画素電極が接続され、該画素電極は前記保護膜上には形成されておらず、前記突起部は、保護膜と同一の材料で保護膜と同一平面上に画素領域内で頂角がほぼ90°の三角波状に蛇行するように形成されて1画素内で方向が異なる4つの傾斜面を有し、三角波状の各辺部に辺部を一部削除した導通部が設けられ、該導通部上にも前記画素電極が形成されて前記画素領域内で突起により分断される複数の画素電極は電気的に接続されており、4分割配向のMVAモードを実現できる液晶表示装置。」(以下「引用発明」という。)

5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ガラス基板」及び「ゲート線」は、本願発明の「基板」及び「ゲート」に相当し、引用発明は、本願発明の「基板上に形成されたゲートライン」との事項を備える。

(2)引用発明の「データ線」及び「ゲート絶縁膜」は、本願発明の「データライン」及び「ゲート絶縁膜」に相当する。
そして、引用発明は、「データ線とゲート線と画定される領域に画素が形成され」るものであって、「前記ゲート電極上及び前記ガラス基板上の全面にゲート絶縁膜が形成」され、その上に「前記データ線」が形成されるものであるから、引用発明は、本願発明の「ゲートラインとゲート絶縁膜を間に置いて交差して画素領域を規定するデータライン」との事項を備える。

(3)引用発明は、「各データ線とゲート線との交差位置近傍に薄膜トランジスタが形成され」たものであるから、本願発明の「前記ゲートライン及びデータラインの交差部に形成される薄膜トランジスタ」との事項を備える。

(4)引用発明の「保護膜」は、本願発明の「保護膜パターン」に相当する。
そして、引用発明の「保護膜」は、薄膜トランジスタのソース電極の一部領域を除いて覆うものであり、ソース電極の一部領域を露出させるものであるから、「前記薄膜トランジスタの電極を露出させる保護膜パターン」である点において、本願発明の「前記薄膜トランジスタのドレイン電極を露出させる保護膜パターン」と一致する。

(5)引用発明の「突起部」は、本願発明の「突出部」に相当する。
そして、引用発明の「突起部」は、「1画素内で方向が異なる4つの傾斜面」を有するものであって、引用発明は、「4分割配向のMVAモードを実現できる」ものであるから、、本願発明の「前記画素領域を液晶配向が互いに異なる多数個の領域に区分する少なくとも一つの突出部」との事項を備える。
また、引用発明の「突起部」は、「絶縁性の保護膜」と「同一の材料で保護膜と同一平面上に」形成されたものであるから、「前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された絶縁パターン」を含んで形成される「突出部」である点において、本願発明の「前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された第2絶縁パターンと、を含んで形成され」る「突出部」と一致する。

(6)引用発明の「画素電極」は、本願発明の「画素電極」に相当する。
そして、引用発明の「画素電極」は、「前記ソース電極の前記一部領域に直接接続された」ものであって、「前記突起部の形成領域外の前記画素領域内」に形成され、「前記保護膜上には形成されて」いないものであるから、引用発明は、本願発明の「前記薄膜トランジスタと接続されて前記保護膜パターンと突出部を除いた前記画素領域に形成される画素電極」との事項を備える。

(7)引用発明の「『複数のデータ線及び複数のゲート線が形成され、』『各データ線とゲート線との交差位置近傍に薄膜トランジスタが形成され』た『ガラス基板』」は、本願発明の「薄膜トランジスタアレイ基板」に相当する。

(8)以上によれば、両者は、
「基板上に形成されたゲートラインと、
前記ゲートラインとゲート絶縁膜を間に置いて交差して画素領域を規定するデータラインと、
前記ゲートライン及びデータラインの交差部に形成される薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの電極を露出させる保護膜パターンと、前記画素領域を液晶配向が互いに異なる多数個の領域に区分する少なくとも一つの突出部と、
前記薄膜トランジスタと接続されて前記保護膜パターンと突出部を除いた前記画素領域に形成される画素電極と、
前記少なくとも一つの突出部は前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された絶縁パターンを含んで形成される薄膜トランジスタアレイ基板。」
である点で一致し、以下のアないしエの点で相違するものと認められる。

ア 「保護膜パターン」が、本願発明では「ドレイン電極」を露出させるのに対して、引用発明では「ソース電極」を露出させる点(以下「相違点1」という。)。

イ 「突出部」が、本願発明では、「前記画素領域の対角線方向に形成され、前記対角線方向に互いに向き合う第1及び第2突出部と、前記第1及び第2突出部と交差された方向に互いに向き合う第3及び第4突出部と、を含む」のに対して、引用発明では、「頂角がほぼ90°の三角波状に蛇行するように形成されて1画素内で方向が異なる4つの傾斜面を有」するものである点(以下「相違点2」という。)。

ウ 「突出部」が、本願発明では、「前記ゲート絶縁膜と同一物質で同一平面上に形成された第1絶縁パターンと、前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された第2絶縁パターンと、を含んで形成され」るのに対して、引用発明では、「前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された絶縁パターンを含んで形成され」るものであるが、「前記ゲート絶縁膜と同一物質で同一平面上に形成された第1絶縁パターン」を含まない点(以下「相違点3」という。)。

エ 本願発明は、「前記ゲートラインと、前記ゲート絶縁膜と半導体パターンを間に置いて前記ゲートラインと重畳されるストレージ電極と、を含むストレージキャパシタを具備する」のに対して、引用発明は、ストレージキャパシタを具備するのかどうか不明である点(以下「相違点4」という。)。

6 判断
(1)相違点1について
液晶表示装置において、薄膜トランジスタのドレイン電極に画素電極を接続することは、本願優先日において周知の技術である(例えば、特開平10-68971号公報の【0004】、図7及び図8を参照。)から、引用発明において、ドレイン電極に画素電極を接続すべく、保護膜パターンがドレイン電極を露出させるようにして、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が設計上適宜なし得る程度のことである。

(2)相違点2について
ア 前記3(2)によれば、引用刊行物2には、表示画素の対角線に沿って液晶層との接触表面を部分的に隆起させることにより形成された配向制御傾斜部(106L,106R,106U,106D)を設けて画素領域を4つのゾーンに分割するX字型の領域を形成する技術が記載されているものと認められる。

イ しかるところ、引用発明も、「4分割配向」である点で上記アの技術と共通するものであるから、引用発明において、4分割配向を実現できる突出部の構成として、上記アの技術を適用し、画素領域の対角線に沿って配置するものとすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

ウ ここで、引用発明の「突起部」が、「当該突起部により分断された複数の前記画素電極を電気的に接続するための導通部を有している」ものであることに照らせば、上記イのとおり、表示画素の対角線に沿って配置する際にも連通部を形成することは、当業者が当然考慮すべき事項であり、該連通部を対角線の交差部付近に形成することも、連通部の形成位置として、当業者がまず想起し得る程度のことというべきである。
そして、これにより、相違点2に係る本願発明の「対角線方向に互いに向き合う第1及び第2突出部と、前記第1及び第2突出部と交差された方向に互いに向き合う第3及び第4突出部」との構成に至るものと認められる。
してみると、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、刊行物2記載の技術に基づいて当業者が容易になし得たものというべきである。

(3)相違点3について
ア 上記3(3)によれば、引用刊行物3には、電圧を印加した時に液晶が斜めに配向される配向方向が、1画素内において複数の方向になるように規制する、斜面を有する突起であるドメイン規制手段を設ける技術が記載されるとともに、該突起の具体的な構成として、ゲート電極31をパターンニングした後に形成されるSiNx層40と最終保護膜43に相当するSiNx層を、突起に相当する部分43B、40Bを残してエッチングして突起を形成することが記載されているものと認められる。

イ ここで、上記アのSiNx層40及び最終保護膜43は、それぞれ、引用発明における「ゲート絶縁膜」及び「保護膜」に対応するものと認められるところ、引用発明の「突起部」は、液晶の配向方向を規制する、斜面を有する突起である点で、上記アの突起と共通するものであるから、引用発明において、上記アの刊行物3記載の技術を適用して、「ゲート絶縁膜」及び「保護膜」を、突起部に相当する部分を残してエッチングして突起部を形成することは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。
そして、これにより、相違点3に係る本願発明の「前記ゲート絶縁膜と同一物質で同一平面上に形成された第1絶縁パターンと、前記保護膜パターンと同一物質で同一平面上に形成された第2絶縁パターンと、を含んで形成され」との構成に至るものと認められる。
してみると、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、刊行物3記載の技術に基づいて当業者が容易になし得たものというべきである。

(4)相違点4について
液晶表示装置のアクティブマトリクス基板において、ゲート絶縁膜と半導体パターンを間に置いてゲートラインと重畳されるストレージ電極とを含むストレージキャパシタを設けることは、本願優先日において周知の技術である(例えば、前記特開平10-68971号公報の【0009】及び図12を参照。)から、引用発明において、上記周知のストレージキャパシタを設けて、相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が設計上適宜なし得る程度のことである。

(5)小括
以上の検討によれば、本願発明は、引用発明、引用刊行物2ないし引用刊行物3に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用刊行物2ないし引用刊行物3に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-29 
結審通知日 2010-06-30 
審決日 2010-07-13 
出願番号 特願2004-255006(P2004-255006)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥田 雄介  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 田部 元史
右田 昌士
発明の名称 薄膜トランジスタアレイ基板、それを有する液晶表示パネル及びそれらの製造方法  
代理人 越智 隆夫  
代理人 朝日 伸光  
代理人 臼井 伸一  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 岡部 正夫  
代理人 岡部 讓  

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