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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B
管理番号 1227726
審判番号 不服2009-20866  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-29 
確定日 2010-11-24 
事件の表示 特願2000-181281「大口径工作物のELID鏡面研削装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月25日出願公開、特開2001-353648〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本件出願の発明
本件出願は、平成12年6月16日の特許出願であって、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、上記請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項4に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、次のとおりである。

「平板状のワークを水平に回転駆動し、ワーク表面に接触する外周面を有する円筒状の導電性砥石をその軸心を中心に回転駆動し、前記砥石をその軸線に沿って往復動させ、前記砥石の軸線を水平軸に対し所定の角度で保持し、所定の曲率を持つ球面形状又は曲率の変化する曲面形状をワーク表面に形成するように前記砥石の軸線の角度の変更を数値制御し、同時に砥石の外周面を電解ドレッシングする、ことを特徴とする大口径工作物のELID鏡面研削方法。」

第2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-217077号公報(以下「刊行物」という。)の記載内容は以下のとおりである。

1 刊行物記載の事項
刊行物には以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、コンピュータ等の記録媒体として使用されるハードディスク装置に用いられるガラスディスク等の厳しい加工精度が要求されるディスク基板の厚み研削方法とそのための装置に関するものであり、さらに詳しくは、ディスク基板の板厚ばらつきや研削面の微少うねりやビット(掘り起こし)等を防止して加工面品質を向上させることのできる新しいディスク基板の加工方法と加工装置に関するものである。」

「【0007】
【実施例】添付した図面の図1は、この発明の加工装置の基本構成を例示した構成図である。たとえばこの図1に例示したように、この発明のディスク基板の加工装置では、3軸方向(X,Y,Z)の移動機構(図中では省略している)とともに、外周刃砥石(1)およびこれを取付けたスピンドル(2)を含めてその駆動の機構と、ディスク基板(3)を載置した回転テーブル(4)とその駆動機構とを備えている。
【0008】そして、たとえばこの装置において、外周刃砥石(1)と回転テーブル(4)に載置固定したディスク基板(3)とを、3軸方向(X,Y,Z)の移動機構により所定の位置に位置決めし、外周刃砥石(1)およびディスク基板(3)をそれぞれ回転させながら、外周刃砥石(1)によって、ディスク基板(3)に対してサイドカット加工とスパークアウト加工とを順次連続的に行う。
【0009】この時の、研削加工の外周刃砥石(1)の回転方向(A)と、その送り方向(B)並びにディスク基板(3)を回転させる回転テーブル(4)の回転方向(C)を例示したものが図2である。実際には、より好ましくは、たとえば図3に例示したように、外周刃砥石(1)が加工方向(B)に送られるとして、外周刃砥石(1)は、ディスク基板(3)との接触部として、ディスク基板(3)を深さ方向に研削するサイドカット加工部(D_(1))と、サイドカット加工の後に平面研削する寸法出し加工部(D_(2))およびスパークアウト加工部(D_(3))が存在するようにする。外周刃砥石(1)の砥石幅については、一般的には5mm以上とするのが望ましい。」

「【0012】・・・・・・・・(前 略)・・・・・・・・・・・・・。これに対して、この発明の方式による特徴として特に次の三つの点が上げられる。<1>深さ方向の切り込み深さを数μm?数100μm確保しながら加工送り速度を数mm?数m/毎分まであげることが可能でありながらビットの発生がない。<2>研削での形状が意図的に制御できること。最終面品質を仕上げる加工で必要とする形状の生成である。具体的には基本形状としてはフラットであるが、円錐凸形状、円錐凹形状が回転テーブル、または移動テーブルのX軸あるいはY軸を傾き調整によって可能としている。更に、被加工物の両面が加工対象である場合は各々の面毎にその形状を意図的に制御できる。したがって、板厚ばらつきは0μmから数100μmまで自由に設定できる。<3>従来の加工方式では被加工物の大きさが変わった場合、一回あたりの加工数量が直接的に加工生産性として影響を受ける(ワークテーブルの大きさと被加工物の大きさで加工機へのセットできる数量が制約される。)。しかしながら、本発明による加工方式では大きさの違いによる影響は前述の送り速度を可能としているため、加工生産性に大きく影響することはない。」

【図1】 Y軸は、砥石(1)の軸線に平行であること。

2 刊行物記載の発明
刊行物記載の事項を技術常識を考慮しながら本件出願の発明に照らして整理すると刊行物には以下の発明が記載されていると認める。

「ディスク基板(3)を水平に回転駆動し、ディスク基板(3)表面に接触する外周面を有する円筒状の外周刃砥石(1)をその軸心を中心に回転駆動し、前記砥石(1)をその軸線に沿って往復動させ、円錐凸形状、円錐凹形状をディスク基板(3)表面に形成するように前記砥石(1)の軸線に平行なY軸を傾き調整するディスク基板の研削方法。」

第3 対比
本件出願の発明と刊行物記載の発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物記載の発明の「ディスク基板(3)」は、本件出願の発明の「平板状のワーク」に相当することが明らかである。
また、刊行物記載の発明の「外周刃砥石(1)」は、「円筒状の砥石」であるという限りで、本件出願の発明の「導電性砥石」と共通している。
また、刊行物記載の発明において、砥石の軸線に平行なY軸を傾き調整するということは、結局のところ砥石の軸線を水平軸に対し所定の角度に調整するということであり、そのためには砥石の軸線を水平軸に対し所定の角度に変更したり、その角度を保持することが当然必要となる。
そうしてみると、刊行物記載の発明において、「円錐凸形状、円錐凹形状を平板状のワーク表面に形成するように砥石の軸線に平行なY軸を傾き調整する」ことは、「砥石の軸線を水平軸に対し所定の角度で保持し、所定の面形状をワーク表面に形成するように前記砥石の軸線の角度の変更を制御する」という限りで、本件出願の発明において、「砥石の軸線を水平軸に対し所定の角度で保持し、所定の曲率を持つ球面形状又は曲率の変化する曲面形状をワーク表面に形成するように前記砥石の軸線の角度の変更を数値制御」することと共通している。

したがって、本件出願の発明と刊行物記載の発明とは、以下の点で一致している。
「平板状のワークを水平に回転駆動し、ワーク表面に接触する外周面を有する円筒状の砥石をその軸心を中心に回転駆動し、前記砥石をその軸線に沿って往復動させ、前記砥石の軸線を水平軸に対し所定の角度で保持し、所定の面形状をワーク表面に形成するように前記砥石の軸線の角度の変更を制御するワークの研削方法。」

そして、本件出願の発明と刊行物記載の発明とは、以下の2点で相違している。

1 相違点1
本件出願の発明では、「所定の曲率を持つ球面形状又は曲率の変化する曲面形状をワーク表面に形成するように砥石の軸線の角度の変更を数値制御」しているのに対して、刊行物記載の発明では、「円錐凸形状、円錐凹形状をワーク表面に形成するように砥石の軸線に平行なY軸を傾き調整」している点。

2 相違点2
本件出願の発明は、砥石が、「導電性砥石」であって、「砥石の外周面を電解ドレッシングする大口径工作物のELID鏡面研削方法」であるのに対して、刊行物記載の発明は、そのような研削方法ではない点。

第4 相違点についての検討
1 相違点1について
研削加工において、所定の曲率を持つ球面形状又は曲率の変化する曲面形状をワーク表面に形成することは、例えば、当審の審尋で引用文献2としてあげられた特開2000-24898号公報の段落0027?0030、図4、同じく引用文献5としてあげられた特開平10-6199号公報の段落0035、図1?3に示されているように従来周知であり、刊行物記載の発明において、砥石の軸線の角度を連続的に変更するように制御するなどして、所定の曲率を持つ球面形状又は曲率の変化する曲面形状をワーク表面に形成することに格別の困難性はない。
また、研削に限らず機械加工技術一般において、可動部材の位置や角度の変更を数値制御により行うことは、特に例示するまでもない周知手段であり、砥石の軸線の角度の変更を数値制御により行うことは必要に応じて適宜なし得る事項である。

2 相違点2について
研削加工において、砥石を導電性砥石とし、その外周面を電解ドレッシングすることは、例えば、上記審尋で引用文献3としてあげられた特開平4-210364号公報の第3ページ左下欄第6?16行、前審の平成21年1月21日付拒絶理由通知書で引用文献3としてあげられた特開平11-320359号公報の段落0013に示されているように従来周知であり、この従来周知の事項を刊行物記載の発明に適用して、砥石を導電性砥石とし、その外周面を電解ドレッシングするように構成することに格別の困難性はない。そして、このように構成することによってELID鏡面研削が可能となる。
また、ワークを大口径工作物とすることは必要に応じて適宜なし得る事項にすぎない。

3 本件出願の発明の効果について
本件出願の発明の採用する構成によってもたらされる効果も、刊行物記載の発明及び上記従来周知の各事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

第5 むすび
したがって、本件出願の発明は、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-29 
結審通知日 2010-09-30 
審決日 2010-10-13 
出願番号 特願2000-181281(P2000-181281)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 卓行  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 遠藤 秀明
紀本 孝
発明の名称 大口径工作物のELID鏡面研削装置及び方法  
代理人 堀田 実  

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