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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消さない。原査定の理由により拒絶すべきものである。 F25B 審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消さない。原査定の理由により拒絶すべきものである。 F25B |
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管理番号 | 1227727 |
審判番号 | 不服2009-24189 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-08 |
確定日 | 2010-11-24 |
事件の表示 | 特願平11-306421号「温度制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月11日出願公開、特開2001-124432号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成11年10月28日 本件出願 平成18年10月26日 手続補正書 平成21年 1月22日 拒絶理由通知 平成21年 4月 6日 意見書、手続補正書 平成21年 5月15日 最後の拒絶理由通知 平成21年 7月24日 意見書、手続補正書 平成21年 8月26日 平成21年7月24日付け手続補正の却下の決 定 平成21年 8月26日 拒絶査定 平成21年12月 8日 本件審判請求 第2 平成21年7月24日付け手続補正の却下の決定の適否 請求人は、審判請求書において、「本発明の要旨は、平成21年7月24日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載したとおり」とした上、本件出願は特許されるべきである旨(請求の理由の【本願が特許されるべき理由】参照。)を主張しており、原審の平成21年7月24日付け手続補正(以下「本件補正」という。)の却下の決定に対して不服を申し立てているので、以下、これについて検討する。 1 本件補正の却下の決定の理由 本件補正の却下の決定の理由は、要するに、以下のとおりである。 本件補正における特許請求の範囲の請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 しかし、本件補正後の請求項1に記載された発明は、平成21年5月15日付け拒絶理由通知で引用した下記の刊行物1に記載された発明、下記の刊行物2に記載された事項及び下記の刊行物3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正後の請求項1に記載された発明は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [引用刊行物] 刊行物1:実願平3-82478号(実開平5-26168号)のCD-ROM 刊行物2:特開平6-307731号公報 刊行物3:特開平9-181432号公報 2 本件補正の適否 (1)本件補正の内容 本件補正は、明細書の特許請求の範囲について補正をするとともに、それに関連して発明の詳細な説明の一部を補正するものであって、本件補正の前後の特許請求の範囲の請求項1について、補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 ア 補正前の請求項1 「【請求項1】シリンジ内に貯留された液体材料を、シリンジ下端に装着した吐出ノズルからワークに定量吐出するにあたり、前記シリンジ内に貯留された液体材料の温度を制御する温度制御装置であって、 前記シリンジ内の液体材料の温度を検知する温度センサと、 一方の面がシリンジ外周面に向けられ、かつ、温度センサの検知結果に基づいてシリンジ内の液体材料を冷却もしくは加熱するペルチェ素子と、 前記ペルチェ素子に取り付けられた放熱手段と、 前記放熱手段を囲繞して冷媒通路を区画するハウジングと、 前記ハウジングに接続された冷媒送給用通路と、 前記ハウジングに接続され、シリンジから十分離れた位置に冷媒を移送する冷媒排出路と、 を具えてなる温度制御装置。」 イ 補正後の請求項1 「【請求項1】シリンジ内に貯留された液体材料を、シリンジ下端に装着した吐出ノズルからワークに定量吐出するにあたり、前記シリンジ内に貯留された液体材料の温度を制御する温度制御装置であって、 前記シリンジ内の液体材料の温度を検知する温度センサと、 一方の面がシリンジ外周面に向けられ、かつ、温度センサの検知結果に基づいてシリンジ内の液体材料を冷却もしくは加熱するペルチェ素子と、 前記ペルチェ素子に取り付けられた放熱手段と、 前記放熱手段を囲繞して冷媒通路を区画するハウジングと、 前記ハウジングに接続された冷媒送給用通路と、 前記ハウジングに接続され、シリンジ周辺で塵埃を舞い上がらせないように、シリンジから十分離れた位置に冷媒を移送する冷媒排出路と、 を具えてなる温度制御装置。」 (2)本件補正の目的 上記請求項1についての補正は、冷媒排出路について、「前記ハウジングに接続され、シリンジから十分離れた位置に冷媒を移送する冷媒排出路」を、願書に最初に添付された、明細書の段落【0010】、【0013】、【0014】及び図面の図1を根拠として、「前記ハウジングに接続され、シリンジ周辺で塵埃を舞い上がらせないように、シリンジから十分離れた位置に冷媒を移送する冷媒排出路」としたものである。 そうすると、本件補正における特許請求の範囲についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。 ア 本件補正発明 本件補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記(1)のイに示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 イ 引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である刊行物1(実願平3-82478号(実開平5-26168号)のCD-ROM)及び刊行物2(特開平6-307731号公報)には、それぞれ以下の事項が記載されている。 なお、下線は当審で付した。 (ア)刊行物1 a 段落【0001】?【0005】 「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、例えばクリームハンダ,接着剤等の材料を収容するためのシリンジ本体と、該シリンジ本体の先端に取り付けられたニードルとを、ホルダーにより包囲するように支持すると共に、該シリンジ及びニードル内の上記材料を一定温度に維持するようにした、温度調節式シリンジに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、このような温度調節式シリンジは、例えば図2に示すように構成されている。即ち、図2において、温度調節式シリンジ1は、例えばクリームハンダ,接着剤等の材料2を収容するように、実質的に中空円筒状に形成されたシリンジ本体3及び、該シリンジ本体3の下端に備えられていて、且つ該シリンジ本体3内に収容された上記材料2を下方に向かって射出するように形成されたニードル4に対して、その周囲を覆うように、形成されたホルダー部5から構成されている。 【0003】 該ホルダー部5は、その内部に、該シリンジ本体3及びニードル4を包囲するように巻回されたヒーター回路6を備えており、該ヒーター回路6は、図示しない適宜の構成の制御回路により、駆動制御されることにより、該シリンジ本体2及びニードル3、そしてその中に収容された上記材料が所定の温度に維持され得るようになっている。 【0004】 これにより、該材料が一定温度に保持され、該材料の粘性が一定に保持され得ることとなり、従って該ニードル3からの該材料の射出量が一定に保持され得るようになっている。 【0005】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、このように構成された温度調節式シリンジ1においては、該シリンジ本体3及びニードル4、そして該シリンジ本体3及びニードル4内に収容された材料が、ホルダー部5の内部に設けられたヒーター回路6によって、加熱制御されることにより、所定温度に保持され得るようになっているため、該ヒーター回路6が、比較的大きな構成であることから、シリンジ1の全体が大型の構成になってしまうと共に、周囲の室温付近またはそれ以下の温度での、所定温度の維持は困難であるという問題があった。」 b 段落【0006】?【0009】 「【0006】 本考案は、以上の点に鑑み、室温またはそれ以下の温度の所定温度に維持され得ると共に、比較的小型に構成され得るようにした、温度調節式シリンジを提供することを目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】 上記目的は、本考案によれば、材料を収容すると共に、下端に該材料を射出するためのニードルを備えたシリンジ本体と、該シリンジ本体の周囲を包囲するように配設された熱伝導性の良好な材料から成るホルダー部と、該ホルダー部に対して密着するように取り付けられた半導体加熱冷却装置と、を含んでいることを特徴とする、温度調節式シリンジにより、達成される。 【0008】 【作用】 上記構成によれば、材料を収容するためのシリンジ本体及びニードルが、熱伝導性の良好な材料から成るホルダー部によって包囲されており、該ホルダー部に対して加熱冷却装置が密着して取り付けられていることから、該加熱冷却装置を適宜に制御することにより、加熱または冷却を行なうこととなり、該ホルダー部を介して、シリンジ本体及びニードルの温度を所定の温度に維持することが可能である。 【0009】 従って、該シリンジ本体及びニードル内の材料が、周囲の室温に関係なく、所定の温度に維持され得ることとなり、而も所定温度に維持するための加熱冷却装置として、半導体加熱冷却装置を使用していることから、該半導体加熱冷却装置自体が小型であることにより、全体が小型化され得ることになる。」 c 段落【0010】?【0013】 「【0010】 【実施例】 以下、図面に示した実施例に基づいて、本考案を詳細に説明する。 第1図は、本考案による温度調節式シリンジの一実施例を示している。 【0011】 温度調節式シリンジ10は、例えばクリームハンダ,接着剤等の材料11を収容するように、実質的に中空円筒状に形成されたシリンジ本体12と、該シリンジ本体12の下端に備えられていて、且つ該シリンジ本体12内に収容された上記材料11を下方に向かって射出するように形成されたニードル13と、該シリンジ本体12及びニードル13に対して、その周囲を覆うように形成された、熱伝導性の良好な材料、例えばアルミニウムから成るホルダー部14と、該ホルダー部14の側面に対して、一側が取り付け板15を介して密着するように取り付けられた加熱冷却装置17と、該加熱冷却装置17の他側に対して、同様に取り付け板16を介して密着するように取り付けられた放熱装置18とから構成されている。 【0012】 該加熱冷却装置16は、例えばペルチェ効果を利用した熱伝冷却法による半導体加熱冷却装置であって、比較的小型に構成されており、ホルダー部14の温度をホルダー部14内に埋め込まれたセンサー20により検出することにより、該ホルダー部14の温度に基づいて、図示しない温度制御装置により駆動制御され、該ホルダー部14の加熱または冷却を行なうようになっている。その際、放熱装置18のファン19を回転させておくことにより、放熱装置18の放熱または除湿を行うようになっている。 【0013】 本考案による温度調節式シリンジ10は、以上のように構成されており、シリンジ本体12内に、クリームハンダ,接着剤等の材料11を入れておき、ホルダー部14に設けられたセンサーにより、該シリンジ本体12、そして該シリンジ本体12内の材料11の温度を間接的に検出することにより、温度制御装置が、前以て設定された所定温度と比較して、適宜に加熱冷却装置16を駆動制御することにより、加熱または冷却を行ない、これによって熱伝導性の良好であるホルダー部14を介して、シリンジ本体12及び内部の材料を所定温度に維持することができる。」 d 段落【0004】(上記a)には、従来の技術として、「材料が一定温度に保持され、該材料の粘性が一定に保持され得ることとなり、従って該ニードル3からの該材料の射出量が一定に保持され得る」と記載されているところ、図1に示されたものも、「シリンジ本体及び内部の材料を所定温度に維持する」(段落【0013】:上記c)ものであるから、ニードルからの材料の射出量を一定に保持するものであることは、明らかである。 上記aないしcに摘示した事項並びに上記dで認定した事項をふまえると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「シリンジ本体内に収容されたクリームハンダ、接着剤等の材料を、シリンジ本体内の先端に取り付けられたニードルから一定量射出するにあたり、前記シリンジ本体内に収容された材料の温度を制御する温度調整式シリンジであって、 シリンジ本体内の材料の温度を間接的に検知するセンサと、 シリンジ本体の周囲を覆うように形成されたホルダー部の側面に対して、一側が取り付け板を介して密着するように取り付けられ、かつ、センサの検知結果に基づいてシリンジ本体内の材料を冷却もしくは加熱する半導体加熱冷却装置と、 前記半導体加熱冷却装置の他側に対して、取り付け板を介して密着するように取り付けられた放熱装置と、 放熱装置の放熱を行うためのファンと、 を具えてなる温度調整式シリンジ。」 (イ)刊行物2 a 段落【0001】?【0003】 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は冷暖房用の空調装置、特に車両用に適した空調装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来冷房装置は冷媒としてフロンを使用するものが主流をなしているが、最近フロンはオゾン層を破壊するものとして地球環境保護の見地から使用禁止となり、これに代るものとしてニューフロンが使用されるようになったが、これもいづれ使用禁止とすることが決定されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】従って大気汚染のない新しい冷媒を使用する冷房装置か、全く冷媒を使用しない新しいシステムの開発が急務となっている。」 b 段落【0008】?【0011】 「【0008】 【実施例】次に本発明を図面について説明する。図1は本発明空調装置の第1実施例の全体を示す概要図で、エアクリーナ1を通して取り入れた外気は圧縮機2で数気圧に圧縮され、ボルテックスチューブ3に供給される。ボルテックスチューブ3は一端部(図の左端部)外周に接線方向に向けられた噴射ノズル4を有し、ノズル4を通してボルテックスチューブ3内に噴射された圧縮空気は高速度で旋回しながらボルテックスチューブ3の他端(図の右端)に向って進み、その間に外周部に高温空気5が、中心部に低温空気6が分離される。高温空気5はボルテックスチューブ3の右端に接続された高温空気管8に流出し、低温空気6はボルテックスチューブ3の右端部に設けた反射板7に衝突して反転し、ボルテックスチューブ3の左端に接続された低温空気管9より流出する。 【0009】高温空気管8と低温空気管9は導管12に合流接続され、導管12を通して電子温度制御ユニット13に連通する。高温空気管8の途中から高温空気排出管8′が分岐し、その分岐点に切換弁10を設ける。又低温空気管9の途中から低温空気排出管9′が分岐し、その分岐点に切換弁11を設ける。 【0010】電子温度制御ユニット13は中心部にP型半導体とN型半導体を交互に配列金属接合した吸加熱素子14で囲まれた温調空気通路15(図2参照)と、吸加熱素子14から外方に突出する放熱板16が長手方向に延在する放熱空気通路17とで構成され、温調空気通路15は導管12と主空気ダクト18を介して接続され、放熱空気通路17は導管12と副空気ダクト19を介して接続される。又温調空気通路15の下流側には絞りタイプの流量調整弁20が設けられ更にその下流には通風ダクト21を介してベンチレーター22が設けられる。放熱空気通路17の下流端には大気に連通する排気管23を設ける。 【0011】吸加熱素子14は電気回路24により直流電源25に接続される。電気回路24は二つの切換スイッチ26を有し、これ等の切換スイッチ26,26は連動して吸加熱素子14を流れる電流の方向を切換える。」 c 段落【0012】?【0015】 「【0012】本発明の第1実施例の空調装置は以上のように構成され次のように作動する。先ずエアクリーナ1を通して取り入れた清浄な空気は圧縮機2で数気圧に圧縮され、ノズル4を通してボルテックスチューブ3内に内周壁に沿って接線方向に噴射される。ボルテックスチューブ3内に噴射された圧縮空気は高速度で旋回しながら図1の右側端壁に向って進行する間に外周部の高温空気5と中心部の低温空気6に分離され、高温空気5は高温空気管8に流出し、低温空気6は反射板7に衝突して反転し、低温空気管9に流出する。 【0013】ここで本装置を冷房装置として使用する場合は切換弁10を高温空気排出管8′側に切換え高温空気を大気に放出し、切換弁11は低温空気排出管9′を遮断するようにセットし、低温空気を導管12を通して電子温度制御ユニット13に導く。ボルテックスチューブ3から取り出された低温空気は常温より約数度低くなっている。このとき電子温度制御ユニット13の吸加熱素子14に供給される電流が吸加熱素子14の温調空気通路15側が低温に放熱板16側が高温になる方向に流れるように切換スイッチ26,26をセットする。 【0014】低温空気は導管12より主空気ダクト18を通して温調空気通路15に導かれると共に副空気ダクト19を通して放熱空気通路17に導かれる。温調空気通路15に導かれた低温空気はこのとき低温になっている吸加熱素子14により更に冷却される。放熱空気通路17に導かれた低温空気は放熱板16を冷却しその冷却作用で吸加熱素子14の温調空気通路15側の温度を更に下げる効果を与える。こうして温調空気通路15を通過する間に低温空気は更に約10度前後温度が下がる。温調空気通路15を通して更に冷却された空気は流量調整弁20により風量を調節されベンチレーター22から室内に放出される。室内の温度は流量調整弁20により風量を調節することによって調節される。 【0015】次に本装置を暖房装置として使用する場合は切換弁10を高温空気排出管8′を遮断するようにセットし、切換弁11を低温空気排出管9′側に切換えると共に、切換えスイッチ26を切換えて電子温度制御ユニット13の吸加熱素子14に温調空気通路15側が高温に放熱板16側が低温になるように電流が流れるようにする。このように切換弁10,11、切換スイッチ26をセットすることによりボルテックスチューブ3より流出した低温空気は低温空気排出管9′より大気に放出され、高温空気は高温空気管8より導管12を通り電子温度制御ユニット13に送られ、大部分は温調空気通路15を通って温度を更に高められ流量調整弁20、通風ダクト21を通ってベンチレーター22より大気に放出される。高温空気の一部は放熱空気通路17を通りこのとき低温になっている放熱板16を加熱し吸加熱素子14の温調空気通路15側の温度を相対的に高める効果がある。」 d 段落【0016】?【0022】 「【0016】図3は本発明空調装置の第2実施例の電子温度制御ユニット13の部分のみを示す概要図である。第2実施例の装置は第1実施例の装置では温調空気の風量が不足する場合に使用される。導管12には図1に示すものと全く同様の方法でボルテックスチューブにより作られた低温空気又は高温空気が供給される。温調空気通路15はこの実施例では入口側が大気に開放され、温調空気通路15はブロワ27により直接大気より空気を取り入れるようになっている。 【0017】温調空気通路15はP型半導体とN型半導体を交互に配列金属接合した吸加熱素子14で囲まれ(図4参照)、吸熱素子14の外方に長手方向に延在する放熱板16が突出し、各放熱板16の間には長手方向に延びる放熱空気通路17が形成される。温調空気通路15を包囲する吸加熱素子14の内側には好ましくは熱良導体から成る伝熱部材28を設ける。伝熱部材は一例として図4に示す如く多数の金属片を格子状に組立てたものとしてもよい。吸加熱素子14は図1と同様の回路24により直流電源25に接続され切換スイッチ26,26の操作により正逆いづれかの方向に電流が流れる。 【0018】本実施例では導管12は主としてダクト19を介して放熱空気通路17に接続され、導管12を通して供給される低温空気又は高温空気の一部は遮断弁30を有するダクト29を通して温調空気通路15に供給することもできる。温調空気通路はダクト21を経てベンチレータ22に接続され、放熱空気通路17の下流側は排気管23を通して大気に連通する。 【0019】以上の装置を冷房装置として使用する場合は図1に示すボルテックスチューブより導管12に低温空気が供給されるようになし、吸加熱素子14に供給される電流は吸加熱素子14の温調空気通路15側が低温に放熱板16側が高温になる方向に流れるように切換スイッチ26,26をセットする。又通常ダクト29の遮断弁30は導管12と温調空気通路15の連通を遮断するようにセットする。 【0020】以上のようにセットした状態でブロワ27を始動すると外気は温調空気通路15に取り込まれ吸加熱素子で囲まれた部分を通過する間に冷却されダクト21を経てベンチレータ22より室内に放出される。吸加熱素子14は外気を約10度前後温度を下げることができるが、本実施例ではボルテックスチューブにより約数度温度低下された外気がダクト19を通して放熱空気通路17に導かれるため放熱板16が冷され、その結果吸加熱素子14の温調空気通路15側の温度が相対的に下がり電子温度制御ユニット15の冷却効果を高めることができる。更に図示の如く温調空気通路15内に伝熱部材28を設けることにより伝熱面積を増し冷却効率を更に向上させることができる。放熱空気通路17を通過した空気は排気管23を通して大気に放出される。 【0021】以上の装置により更に強い冷房が望まれる場合は遮断弁30を開き導管12に供給される低温空気の一部を直接温調空気通路15に導く。こうして電子温度制御ユニット13で冷却されるべき空気を予め若干温度の低い空気として置くことによりベンチレータ22より更に温度の低下した空気を放出することができる。 【0022】本装置を暖房装置として使用する場合には全ての切換弁、切換スイッチ等を冷房の場合と逆にセットすることにより実施できることは第1実施例の説明から容易に理解できるであろう。」 e 段落【0010】(上記b)の記載を刊行物2の図1ないし4に照らすと、電子温度制御ユニット13は筐体を有しており、放熱空気通路17は、放熱板16を囲繞する電子温度制御ユニットの筐体によって区画されている、ということができる。 上記aないしdに摘示した事項並びに上記eで認定した事項をふまえると、刊行物2には、次の事項が記載されているものと認められる。 「温調空気通路内の空気を加熱もしくは冷却する吸加熱素子に、該吸加熱素子から外方に突出する放熱板を設けるとともに、該放熱板を囲繞して放熱空気通路を区画する電子温度制御ユニットの筐体と、前記放熱空気通路に接続されたダクトと、前記放熱空気通路に接続された排気管を設けたこと。」 ウ 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「シリンジ本体内に収容されたクリームハンダ、接着剤等の材料」は本件補正発明の「シリンジ内に貯留された液体材料」に相当する。 以下同様に、 「シリンジ本体の先端に取り付けられたニードル」は「シリンジ下端に装着した吐出ノズル」に、 「一定量射出する」は、シリンジ本体内に収容されたクリームハンダ、接着剤等の材料はワークに吐出されることが技術常識であるから、「ワークに定量吐出する」に、 「温度調整式シリンジ」は「温度制御装置」に、 「シリンジ本体内の材料の温度を間接的に検知するセンサ」は、「シリンジ内の液体材料の温度を検知する温度センサ」に、 「半導体加熱冷却装置」は「ペルチェ素子」に、 「半導体加熱冷却装置の他側に対して、取り付け板を介して密着するように取り付けられた放熱装置」は「ペルチェ素子に取り付けられた放熱手段」に、 それぞれ相当する。 次に、引用発明の「半導体加熱冷却装置」が、「シリンジ本体の周囲を覆うように形成されたホルダー部の側面に対して、一側が取り付け板を介して密着するように取り付けられ」る点と、本件補正発明のペルチェ素子の「一方の面がシリンジ外周面に向けられ」る点について対比する。 前者における半導体加熱冷却装置の「一側」は、刊行物1の図1に照らすと、半導体加熱冷却装置の一方の面であり、該一方の面は、取り付け板及びホルダ部を介してシリンジ本体の外周面に向けられている、ということができるから、前者においては、ペルチェ素子の一方の面が、取り付け板及びホルダ部を介してシリンジ外周面に向けられている、ということができる。 一方、後者における「一方の面がシリンジ外周部に向けられ」る点については、ペルチェ素子の一方の面が、シリンジ外周面に直接的に貼り付けられる場合以外も含むものである(これについては、本件明細書の段落【0012】に「4は、片方の面をシリンジ2の外周面に貼り付けたペルチェ素子」と記載され、平成18年10月26日付け手続補正により、請求項1及び段落【0008】において、「一方の面がシリンジ外周面に貼り付けられ」とされていたところ、平成21年4月6日付け手続補正により、請求項1及び段落【0008】において、「一方の面がシリンジ外周面に向けられ」とした上で、同日付の意見書((2)補正の内容およびその根拠)において、「『一方の面がシリンジ外周面に向けられ、』との訂正は、ペルチェ素子の一方の面が、シリンジ外周面に直接的に貼り付けられる場合以外も含むように、『貼り付けられ、』の表現を、上位概念化して『向けられ、』に訂正した」と記載していることからも明らかである。)。 そうすると、引用発明の「シリンジ本体の周囲を覆うように形成されたホルダー部の側面に対して、一側が取り付け板を介して密着するように取り付けられ」る点は、本件補正発明の「一方の面がシリンジ外周面に向けられ」る点に相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。 <一致点> 「シリンジ内に貯留された液体材料を、シリンジ下端に装着した吐出ノズルからワークに定量吐出するにあたり、前記シリンジ内に貯留された液体材料の温度を制御する温度制御装置であって、 前記シリンジ内の液体材料の温度を検知する温度センサと、 一方の面がシリンジ外周面に向けられ、かつ、温度センサの検知結果に基づいてシリンジ内の液体材料を冷却もしくは加熱するペルチェ素子と、 前記ペルチェ素子に取り付けられた放熱手段と を具えてなる温度制御装置。」の点。 <相違点> 本件補正発明は、放熱手段を囲繞して冷媒通路を区画するハウジングと、ハウジングに接続された冷媒送給用通路と、ハウジングに接続され、シリンジ周辺で塵埃を舞い上がらせないように、シリンジから十分離れた位置に冷媒を移送する冷媒排出路を有しているのに対し、 引用発明は、放熱装置の放熱を行うためのファンを有するものであって、かかるハウジング、冷媒送給用通路及び冷媒排出路を有していない点。 エ 当審の判断 (ア)相違点について a 刊行物2には、前記イの(イ)で示したとおりの事項(「温調空気通路内の空気を加熱もしくは冷却する吸加熱素子に、該吸加熱素子から外方に突出する放熱板を設けるとともに、該放熱板を囲繞して放熱空気通路を区画する電子温度制御ユニットの筐体と、前記放熱空気通路に接続されたダクトと、前記放熱空気通路に接続された排気管を設けたこと。」)が記載されている。 ここで、刊行物2記載の事項の「吸加熱素子」は、本件補正発明の「ペルチェ素子」ということができる。 以下同様に、 「吸加熱素子から外方に突出する放熱板」は「放熱手段」と、 「放熱板を囲繞して放熱空気通路を区画する電子温度制御ユニットの筐体」は「放熱手段を囲繞して冷媒通路を区画するハウジング」と、 「放熱空気通路に接続されたダクト」は、刊行物2の図1及び3をふまえると、かかるダクトが電子温度制御ユニットの筐体に接続されることで放熱空気通路に接続されているということができるから、「ハウジングに接続された冷媒送給用通路」と、いうことができる。 また、刊行物2記載の事項の「放熱空気通路に接続された排気管」は、刊行物2の図1及び3をふまえると、かかる排気管が電子温度制御ユニットの筐体に接続されることで放熱空気通路に接続されているということができるから、「ハウジングに接続された冷媒排出路」という限りにおいて、本件補正発明の「ハウジングに接続され、シリンジ周辺で塵埃を舞い上がらせないように、シリンジから十分離れた位置に冷媒を移送する冷媒排出路」と共通する。 そうすると、刊行物2記載の事項は、「温調空気通路内の空気を加熱もしくは冷却するペルチェ素子に、放熱手段を設けるとともに、放熱手段を囲繞して冷媒通路を区画するハウジングと、ハウジングに接続された冷媒送給用通路と、ハウジングに接続された冷媒排出路を設けたこと。」と言い換えることができる。 そして、引用発明と刊行物2記載の事項とは、ともに、ペルチェ素子に放熱手段が設けられ、その放熱手段を空気により冷却している点で機能が共通する。その上、引用発明のペルチェ素子の放熱のために、刊行物2記載の事項の「ハウジング」、「冷媒送給用通路」及び「冷媒排出路」を適用できないとする特段の理由は見当たらない。 してみると、引用発明の放熱手段である放熱装置に刊行物2記載の事項を適用することで、放熱手段を囲繞して冷媒通路を区画するハウジングと、ハウジングに接続された冷媒送給用通路と、ハウジングに接続された冷媒排出路を設けることは、当業者が容易になし得たことである。 b 次に、引用発明は、クリームハンダ等をワークに供給するための装置であるところ、クリームハンダ等のペーストをワークに供給する際に、ちりやほこりを巻き込むことが好ましくないことは、従来周知の事項(課題)である(例えば、特開平11-268236号公報の段落【0009】、特開平10-65323号公報の段落【0005】、特開平5-8370号公報の【0002】?【0003】を参照のこと。)。そして、ワーク周辺の空気流によってちりやほこりが舞い上がることは、従来周知の事項(例えば、特開平6-430号公報の段落【0008】、特開平11-274701号公報の段落【0010】を参照のこと。)であるのみならず、日常生活においても、空気流によってちりやほこりが舞い上がることは、ごく普通に認識されている程度のことにすぎない。 してみると、クリームハンダ等のペーストをワークに供給する際に、ちりやほこりを巻き込まないようにすべく、シリンジ周辺において空気流が発生しないようにすることは、当業者が適宜配慮する設計事項というべきであるから、引用発明に刊行物2記載の事項を適用する際に、冷媒排出路を、シリンジ周辺で塵埃を舞い上がらせないように、シリンジから十分離れた位置に冷媒を移送するものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。 c 以上のとおりであるから、引用発明において相違点に係る事項することは、当業者が容易になし得たことである。 (イ)本件補正発明の作用効果について 本件補正発明の作用効果についてみても、引用発明、刊行物2記載の事項及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものであって、顕著なものとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件補正発明は、引用発明、刊行物2記載の事項及び前記周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 したがって、原審の本件補正の却下の決定は適法である。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記のとおり、原審の本件補正の却下の決定は適法であるので、本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、平成21年4月6日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の2(1)アに示す請求項1に記載されたとおりのものである。 2 引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び刊行物2には、それぞれ、前記第2の2(3)イの(ア)及び(イ)で示したとおりの事項が記載されている。 3 対比、判断 本願発明は、本件補正発明の「前記ハウジングに接続され、シリンジ周辺で塵埃を舞い上がらせないように、シリンジから十分離れた位置に冷媒を移送する冷媒排出路」を「前記ハウジングに接続され、シリンジから十分離れた位置に冷媒を移送する冷媒排出路」としたものである。 してみると、本願発明を構成する事項をすべて含む本件補正発明が、上記第2の2(3)ウ及びエで述べたとおり、引用発明、刊行物2記載の事項及び前記周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-14 |
結審通知日 | 2010-09-21 |
審決日 | 2010-10-05 |
出願番号 | 特願平11-306421 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
ZB
(F25B)
P 1 8・ 575- ZB (F25B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保 克彦、藤原 直欣 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
冨岡 和人 鈴木 敏史 |
発明の名称 | 温度制御装置 |
代理人 | 小川 順三 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 中村 盛夫 |