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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1228031
審判番号 不服2007-33341  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2010-12-08 
事件の表示 特願2002- 20052「服薬指導文書作成システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 8日出願公開、特開2003-223510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年1月29日の出願であって、平成19年5月2日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年7月17日付けで手続補正がなされたが、同年10月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月15日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年12月15日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年12月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年12月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
平成19年12月15日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「コンピュータ本体に、記憶装置および制御装置が設けられて、いるとともに前記記憶装置には薬剤情報および患者の個人情報が記憶され、制御装置によって前記情報が検索可能とされており、前記コンピュータ本体へデータを入力するための入力装置、コンピュータ本体の処理内容を表示する表示装置、およびコンピュータ本体の処理結果を印刷する印刷装置が接続されている服薬指導文書作成システムにおいて、前記記憶装置に記憶させてある副作用や注意事項等の薬剤情報が、薬剤の成分や効能などを示す医薬品コードに対応して登録されていることを特徴とする服薬指導文書作成システム。」

から、
「コンピュータ本体に、記憶装置および制御装置が設けられているとともに前記記憶装置には個人情報の各項目の内容による薬剤使用の際に生じる危険度の段階および副作用や注意事項等の薬剤情報と、患者の個人情報とが記憶され、前記コンピュータ本体へデータを入力するための入力装置、コンピュータ本体の処理内容を表示する表示装置、およびコンピュータ本体の処理結果を印刷する印刷装置が接続されている服薬指導文書作成システムにおいて、前記入力装置により患者情報および処方薬剤がコンピュータ本体に入力されたとき、前記制御装置によって、前記入力された患者情報と処方薬剤情報と前記憶装置に記憶されている個人情報と処方薬剤情報とを照合して前記薬剤使用の際に生じる危険度の段階を検索して投薬の可否を判定するとともに、投薬可能のときに前記患者の個人情報に応じて前記副作用や注意事項等の薬剤情報を選択して出力することを特徴とする服薬指導文書作成システム。」

に補正された。
上記補正は、補正前の請求項1の「前記記憶装置に記憶させてある副作用や注意事項等の薬剤情報が、薬剤の成分や効能などを示す医薬品コードに対応して登録されている」構成を削除する補正を含むものである。
上記削除された構成に含まれる「医薬品コード」は補正後の請求項のどこにも記載されていないし、また該「医薬品コード」を下位概念化する記載が新たに追加されたわけでもない。
よって、補正前の請求項1の「前記記憶装置に記憶させてある副作用や注意事項等の薬剤情報が、薬剤の成分や効能などを示す医薬品コードに対応して登録されている」構成を削除しようとする本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項のいずれかを下位概念化したものではなく、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものでないことは明らかである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的としているものとは認められない。
また、本件補正が平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の同法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号のいずれをも目的とするものでないことは明らかである。

以上のとおり、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年12月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年7月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「コンピュータ本体に、記憶装置および制御装置が設けられて、いるとともに前記記憶装置には薬剤情報および患者の個人情報が記憶され、制御装置によって前記情報が検索可能とされており、前記コンピュータ本体へデータを入力するための入力装置、コンピュータ本体の処理内容を表示する表示装置、およびコンピュータ本体の処理結果を印刷する印刷装置が接続されている服薬指導文書作成システムにおいて、前記記憶装置に記憶させてある副作用や注意事項等の薬剤情報が、薬剤の成分や効能などを示す医薬品コードに対応して登録されていることを特徴とする服薬指導文書作成システム。」

(1)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-168578号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は薬袋印刷装置、特に、服用データを印刷することができ、しかも各患者及び各薬剤に対応した文章表現とすることのできる薬袋印刷装置に関するものである。」

(イ)「【0006】そこで、本発明は、病名、薬剤あるいは患者の違いに応じて、適切な表現で、服薬指導文等を詳細に印刷できる薬袋印刷装置を提供することを課題とする。」

(ウ)「【0017】(第1の実施の形態) 第1の実施の形態に係る薬袋印刷装置は、図1及び図2に示すように、大略、薬袋形成部1と、薬袋印刷部2と、制御部3とから構成されている。

(エ)「【0019】前記薬袋印刷部2は、複数のプリンタ10からなっている。各プリンタ10には、インクジェット方式、熱転写方式等、種々のものが採用可能であり、文字印刷のほか、下記するイメージスキャナ15から読み込んだ薬剤の外観を直接示すグラフィック印刷やカラー印刷、眼の見えない人用の点字印刷も可能である。また、印刷のレイアウト等は変更可能であり、文字印刷では、フォントの変更や強調表示等が可能である。なお、薬袋印刷部2で印刷された薬袋9は、薬袋トレイ11に排出されるようになっている。
【0020】前記制御部3は、図2に示すように、中央演算装置(CPU)12、メモリ13等からなる。制御部3には、前記薬袋印刷部2のほかに、記憶装置14、イメージスキャナ15、外部端末装置16、ディスプレイ17等が接続されている。
【0021】記憶装置14には、薬剤データ、印刷データ等が記憶されている。
【0022】前記薬剤データは薬剤ファイルに記憶されている。薬剤ファイルに記憶される内容は、図4に示すように、薬剤名、効能効果名、製薬会社名、薬剤外観、副作用、副作用対処方法等に関するものである(効能効果名、薬剤外観、副作用及び副作用対処方法の内容は、後述する印刷データにも該当する。)。前記効能効果名とは、ある特定薬剤の総称をいい、胃腸薬、整腸剤、解熱剤、咳止め等の患者がその薬剤の効能や効果を認識できる名称である。前記薬剤外観は、前記イメージスキャナ15で読み取った画像データ(カラー、白黒のいずれでもよい。)である。前記副作用情報は、発生の可能性のある副作用に関する内容であり、患者が副作用の症状を段階的に判断できるように、例えば、『すぐに医師に報告しなくてもよい症状』、『すぐ報告すべき症状』、『すぐに病院に行くべき症状』の3段階で表現したもの等が使用できる。また、この副作用情報には、薬剤同士の副作用のほか、患者特有の症状についても含まれる。
(中略)
【0024】印刷データは、前記薬剤ファイルのほか、病名ファイル、服用時間ファイル、服用方法ファイル、用法ファイル、注意情報ファイル、印刷フォーマット用ファイルにそれぞれ記憶されている。病名ファイル以外の他のファイルの各説明文は、同一ファイル内で重複しないように薬剤識別上方である薬剤コードが一対一で対応している。」

(オ)「【0029】注意情報ファイルに記憶される内容は、図9に示すように、薬剤コードと、この薬剤コードに対応する各薬剤に対する注意事項に関するものである。注意事項とは、副作用により想定される不具合に対して注意を促す内容をいい、例えば、『抗生物質を服用するときは車や機械の運転をしないで下さい。』のように、具体的で患者が理解しやすい内容となっている。
【0030】なお、前記服用方法、用法及び注意情報は、従来、薬局で患者に薬剤を手渡す際に口頭で行っていた内容を薬袋9に印刷するために文字データとしたものである。」

(カ)「【0041】前記外部端末装置16は、診察室等に設置され、医師による処方箋データの入力に利用される。処方箋データには、前述のような病名ファイルから選択した病名データのほか、処方する薬剤についての処方箋データや、患者名や患者のID番号、患者自身の副作用等の患者データが含まれる。
【0042】前記ディスプレイ17には、前記印刷イメージやリスト項目、現在の印刷内容やエラー情報、指示情報等が表示されるようになっている。」

(キ)「【0053】記憶装置14には判定データ、薬剤データ及び患者データが記憶されている。」

(ク)引用例の図4には、「薬剤ファイルに記憶される内容」として、「薬剤コード DA3564825」と「副作用情報 稀に湿疹が現れます。睡眠作用があります。」が示されている。

これらの記載事項及び関連する図面の記載によれば、引用例には以下の発明(以下「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「中央演算装置(CPU)12、メモリ13等からなる制御部3、印刷データを印刷する複数のプリンタ10からなる薬袋印刷部2とから構成される薬袋印刷装置であって、前記制御部3に、薬剤名、効能効果名、及び副作用等に関する薬剤データ、各薬剤に対応する注意事項に関する注意情報、及び患者データが記憶されている記憶装置14、処方箋データを入力するための外部端末装置16、及び印刷イメージやリスト項目、現在の印刷内容やエラー情報、指示情報等が表示されるディスプレイ17が接続され、前記制御部3によって前記薬剤データ及び患者データが検索可能とされている薬袋印刷装置において、前記記憶装置14に記憶させてある前記薬剤名、前記効能効果名、前記副作用、及び前記注意事項が、薬剤コードに対応して登録されている薬袋印刷装置。」

(2)対比
本願発明と引用例記載の発明を対比すると、以下の対応関係が認められる。
(あ)引用例記載の発明の「中央演算装置(CPU)12、メモリ13等からなる制御部3」は本願発明の制御装置に相当し、引用例記載の発明の制御部3は中央演算装置(CPU)12が設けられているコンピュータ本体ということができるから、引用例記載の発明の制御部3と本願のコンピュータ本体とは、ともに「制御装置が設けられているコンピュータ本体」である点で共通している。
(い)引用例記載の発明の「印刷データを印刷する複数のプリンタ10からなる薬袋印刷部2」は、制御部3(制御装置が設けられているコンピュータ本体)で処理された結果を薬袋に印刷するものであるから、本願発明の「コンピュータ本体の処理結果を印刷する印刷装置」に相当するといえる。
(う)引用例記載の発明の「薬剤名、効能効果名、及び副作用等に関する薬剤データ」と「各薬剤に対応する注意事項に関する注意情報」とは、本願発明の「薬剤情報」に相当し、引用例記載の発明の「患者データ」は本願発明の「患者の個人情報」に相当するから、引用例記載の発明の「薬剤名、効能効果名、及び副作用等に関する薬剤データ、各薬剤に対応する注意事項に関する注意情報、及び患者データが記憶されている記憶装置14」は、本願発明の「薬剤情報および患者の個人情報が記憶された記憶装置」に相当するといえる。
(え)引用例記載の発明の「処方箋データを入力するための外部端末装置16」は、本願発明の「コンピュータ本体へデータを入力するための入力装置」に相当する。
(お)引用例記載の発明の「印刷イメージやリスト項目、現在の印刷内容やエラー情報、指示情報等が表示されるディスプレイ17」は、本願発明の「コンピュータ本体の処理内容を表示する表示装置」に相当する。
(か)引用例記載の発明の「薬剤コード」と、本願発明の「薬剤の成分や効能などを示す医薬品コード」とは、ともに薬剤を特定するためのコードである点で共通している。
(き)引用例記載の発明の「薬袋印刷装置」は、上記(1)(ア)の「本発明は薬袋印刷装置、特に、服用データを印刷することができ、しかも各患者及び各薬剤に対応した文章表現とすることのできる薬袋印刷装置」、上記(1)(イ)の「病名、薬剤あるいは患者の違いに応じて、適切な表現で、服薬指導文等を詳細に印刷できる薬袋印刷装置」との記載から、患者が薬剤を服用するときの指導文書を作成し、印刷する薬袋印刷装置であるから、該薬袋印刷装置とそれに接続されている記憶装置、外部端末装置、ディスプレイの全体を、服薬指導文書作成システムということができる。

したがって、本願発明と引用例記載の発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「コンピュータ本体に、制御装置が設けられ、薬剤情報および患者の個人情報が記憶された記憶装置、前記コンピュータ本体へデータを入力するための入力装置、コンピュータ本体の処理内容を表示する表示装置、およびコンピュータ本体の処理結果を印刷する印刷装置が接続され、前記制御装置によって前記情報が検索可能とされている服薬指導文書作成システムにおいて、前記記憶装置に記憶させてある副作用や注意事項等の薬剤情報が、薬剤を特定するためのコードに対応して登録されている服薬指導文書作成システム。」
である点。
(相違点1)
本願発明においては、コンピュータ本体に記憶装置が設けられているのに対し、引用例記載の発明においては、コンピュータ本体に記憶装置は接続されているものであって、コンピュータ本体に設けられているものではない点。
(相違点2)
本願発明の「薬剤を特定するためのコード」は、「薬剤の成分や効能などを示す医薬品コード」であるのに対し、引用例記載の発明の「薬剤を特定するためのコード」は、「薬剤コード」であって、「薬剤の成分や効能などを示す医薬品コード」ではない点。

(3)判断
(相違点1)について
一般に、記憶装置を、コンピュータ本体に設けるか、コンピュータ本体に接続するかは当業者が適宜選択しうる設計的事項に過ぎない。コンピュータ本体に記憶装置が接続されている引用例記載の発明においても、該記憶装置をコンピュータ本体に設ける構成とすることに何ら技術的困難性も阻害要因も認められない。
したがって、引用例記載の発明において、コンピュータ本体に記憶装置を設ける構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2)について
薬剤の成分や効能などを示す医薬品コードである「薬価基準収載医薬品コード(別名;厚生省コード、薬価コード)」は、薬剤を特定するためのコードとして当業者に広く知られた技術常識であって、引用例記載の発明においても上記「薬価基準収載医薬品コード」を薬剤を特定するためのコードとして採用することに何ら技術的困難性も阻害要因も認められない。
したがって、引用例記載の発明において、「薬剤を特定するためのコード」を、上記「薬価基準収載医薬品コード」、すなわち「薬剤の成分や効能などを示す医薬品コード」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-30 
結審通知日 2010-10-05 
審決日 2010-10-18 
出願番号 特願2002-20052(P2002-20052)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 幸一  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 長島 孝志
池田 聡史
発明の名称 服薬指導文書作成システム  
代理人 橋本 克彦  

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