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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1228070
審判番号 不服2008-16661  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-30 
確定日 2010-12-07 
事件の表示 特願2003-559065「非同期ネットワークを介するストリームの受信」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月17日国際公開、WO03/58869、平成17年 5月26日国内公表、特表2005-515663〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、2003年1月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年1月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年9月6日付けの拒絶理由通知に対し平成20年3月10日付けで手続補正がなされたものの、同年3月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月30日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに同年7月30日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年7月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成20年7月30日付けの手続補正は補正前の平成20年3月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「トランスポートパケットのストリームに含まれるコンテンツを受け取る方法であって、該方法は、
ネットワークフレームのストリームを受け取るステップであって、該ネットワークフレームは、トランスポートパケットの第1の同期ストリームの部分をカプセル化し、該トランスポートパケットの第1のストリームのためのストリーム情報をカプセル化したものであり、該ストリーム情報は、該トランスポートパケットの第1のストリームのうちの所与の組のトランスポートパケットにおけるヌルパケットの数、および、該所与の組のトランスポートパケットにおけるヌルパケットおよびコンテンツパケットのシーケンスを示し、該ネットワークフレームのストリームによって運ばれる該トランスポートパケットの第1のストリームの部分は、該コンテンツパケットから構成されている、ステップと、
該ネットワークフレームで運ばれるコンテンツパケットのカプセル化を解除するように該ネットワークフレームを処理するステップと、
トランスポートパケットの第2の同期ストリームを送信するステップであって、該トランスポートパケットの第2のストリームは、該ネットワークフレームのストリームで運ばれる該コンテンツパケットを含む、ステップと
を含む、方法。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「トランスポートパケットのストリームに含まれるコンテンツを受け取る方法であって、該方法は、
ネットワークフレームのストリームを受け取るステップであって、該ネットワークフレームは、トランスポートパケットの第1の同期ストリームの部分をカプセル化し、該トランスポートパケットの第1のストリームのためのストリーム情報をカプセル化したものであり、該ストリーム情報は、該トランスポートパケットの第1のストリームのうちの所与の組のトランスポートパケットにおけるヌルパケットの数、および、該所与の組のトランスポートパケットにおけるヌルパケットおよびコンテンツパケットのシーケンスを示し、該ネットワークフレームのストリームによって運ばれる該トランスポートパケットの第1のストリームの部分は、該コンテンツパケットから構成されており、該ネットワークフレームのストリームに含まれる各ネットワークフレームは、該トランスポートパケットの第1のストリームのうちの所与の組のトランスポートパケットのためのストリーム情報を含み、該所与の組のトランスポートパケットは、特定の順序で、少なくとも1つのコンテンツパケットおよび少なくとも1つのヌルパケットを含み、該ストリーム情報は、該所与の組についてのシーケンス情報を含む、ステップと、
該ネットワークフレームで運ばれるコンテンツパケットのカプセル化を解除するように該ネットワークフレームを処理するステップと、
トランスポートパケットの第2の同期ストリームを送信するステップであって、該トランスポートパケットの第2のストリームは、該ネットワークフレームのストリームで運ばれる該コンテンツパケットを含む、ステップと
を含み、
該ネットワークフレームを処理するステップは、
該ストリーム情報を読むステップであって、該ストリーム情報は、該所与の組におけるヌルパケットの数を特定する、ステップと、
特定の数の置き換えトランスポートパケットを生成するステップであって、該特定の数は、該ストリーム情報によって特定されるヌルパケットの数に等しい、ステップと
該生成された置き換えトランスポートパケットを該トランスポートパケットの第2のストリームに含めるステップと、
該生成された置き換えトランスポートパケットとともに該少なくとも1つのコンテンツパケットを配置することにより、それらのシーケンスが該所与の組の該特定の順序に対応するようにするステップと
を含む、方法。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、
「ネットワークフレーム」が「トランスポートパケットの第1のストリームのうちの所与の組のトランスポートパケットのためのストリーム情報を含み、該所与の組のトランスポートパケットは、特定の順序で、少なくとも1つのコンテンツパケットおよび少なくとも1つのヌルパケットを含み、該ストリーム情報は、該所与の組についてのシーケンス情報を含む」点、
および、
「ネットワークフレームを処理するステップ」が「ストリーム情報を読むステップであって、該ストリーム情報は、該所与の組におけるヌルパケットの数を特定する、ステップと、特定の数の置き換えトランスポートパケットを生成するステップであって、該特定の数は、該ストリーム情報によって特定されるヌルパケットの数に等しい、ステップと 該生成された置き換えトランスポートパケットを該トランスポートパケットの第2のストリームに含めるステップと、該生成された置き換えトランスポートパケットとともに該少なくとも1つのコンテンツパケットを配置することにより、それらのシーケンスが該所与の組の該特定の順序に対応するようにするステップとを含む」点、
を付加することにより、それぞれ「ネットワークフレーム」、「ネットワークフレームを処理するステップ」の構成を限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。

(2)引用発明
原査定の拒絶理由に引用された特開平11-317768号公報(以下、「引用例」という。)には「伝送システム、送信装置、記録再生装置、および記録装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、MPEG2システムのTSのような複数のパケットから構成されるストリームを伝送、あるいは記録するための、伝送システム、送信装置、記録再生装置および記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】 圧縮したデジタル映像やデジタル音声のストリームとして良く知られているものに、MPEG2(Moving Picture Expert Group 2)システムのTS(Transport Stream)がある。このMPEG2システムのTSはデジタル放送に用いられており、1 本のストリームで複数のプログラムを多重することができる。以下、TSと表記した場合、MPEG2システムのTSを示す。MPEG2システムについては、ITU-Tの勧告H.222.0(ISO/IEC13818-1)“GENERIC CODING OF MOVING PICTURES AND ASSOCIATED AUDIO INFORMATION”により規定されている。
【0003】図3はTSの説明図である。図3(a) にはTSパケットを示している。TSは、図に示すように、188Byte固定長のパケットであるTSパケットの集合である。TSパケットは、8ビットのSyncByte、13ビットのPID、4ビットのCC(Continuity Counter)、0?184バイトのAF(Adaptation Field)、0?184バイトのpayloadなどの情報を持つ。ここでは、本発明に関係のない情報については記述していない。TSパケットの各情報について説明する。
【0004】・SyncByteはTSパケットの先頭の8ビットの情報であり0x47(0xは16進表示を意味する)と決められており、パケットの先頭を検出するために用いられる。
・PIDは13ビットのフィールドで、ペイロードのデータを識別するために用いられる。PIDで識別することにより、一つのTS中に複数のプログラムを入れることが可能である。PID=0x1fffはそのTSパケットがNullパケット(無効パケット)であることを示す。
・CC(continuity_counter)は4ビットの情報で、は同じPIDのTSパケットに関して、1ずつ増加する。同じPIDのとなりあうTSパケットにおいて、同じCCの値を取ることがある。これは、Duplicated Packetを示す。Duplicated Packetとは、同じ内容のTSパケットを二つ連続して送信することである。
・AFは付加情報を格納する0から184バイトの情報である。payloadは0から184バイトのフィールドであり、その長さはAFの長さによって決まる。
・payloadは実際のデータを格納するフィールドである。
【0005】また、TSには一定間隔でPCR(Program Clock Reference)が挿入される。このPCRは、受信側の復号装置において、時刻の基準となるSTC(System Time Clock)の値を送信側で意図した値に設定するための情報である。したがってPCRが受信側に到着するタイミングは、送信側で意図したタイミングで到着しなければならない。」(第4頁第5-6欄)

イ.「【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図1から図5を用いて説明する。まず、処理の対象となる入力データについて説明する。本発明の処理の対象となる入力データは固定長のパケットの集合であり、クロックに同期したストリームとする。例として、従来例において説明したMPEG2システムのTSとする。
【0030】実施の形態1.図1は本発明の実施の形態1による伝送システムの構成を示す図である。図1において、11は送信装置、12は受信装置、13は伝送路を示す。また、送信装置11において、14はパケット圧縮手段、111は送信手段を、パケット圧縮手段14において、141は識別手段、142は選択手段、143は送信側カウンタ、144は圧縮情報多重手段を示す。受信装置12において、15はパケット復元手段、121は受信手段、122は記憶手段、123は適応クロック生成装置、パケット復元手段15において、151は分離手段、152は無効パケット生成手段、153は多重手段を示す。以下、図1を用いて本発明の実施の形態の動作を説明する。
【0031】まず、送信装置11の動作について説明する。送信装置11には、入力クロックと、入力データとして、入力クロックに同期したMPEGのTS,及び選択情報が入力される。選択情報はTSパケットを選別するための情報であり1つまたは複数のPIDからなる。この選択情報により、入力データ中のTSパケットは、有効パケットと廃棄パケットに分けられる。ここで、選択情報は、例えば有効パケットを示すPIDの集合であってもよいし、廃棄パケットを示すPIDの集合であっても良く、TSパケットを選別できる情報であれば任意の形態で良い。さらには、固定のPID、例えばNULLパケットは常に廃棄パケットとするといったようにあらかじめ決めておけば、選択情報はなくても良い。また、選択情報の全てあるいは一部は、送信装置11の内部に既定値として固定されていても良い。また、送信装置11がプログラムの番号とPIDの対応表をもっており、ユーザがプログラムの番号を指定すれば、送信装置が対応するPIDに変換して選択情報とするような構成にしても良い。」(第7頁第11-12欄)

ウ.「【0032】パケット圧縮手段14においては、識別手段141が、選択情報に基づいて入力データ中のパケットを有効パケットと、廃棄パケットに識別する。入力したパケットが有効パケットの場合、有効パケットを示す識別信号を出力する。入力したパケットが無効パケットの場合、カウンタの値が既定値以下ならば、無効パケットを示す識別信号を出力し、カウンタの値が既定値より大きい場合、有効パケットを示す識別信号を出力する。
【0033】次に、選択手段142は、入力クロック、入力データ、識別信号を入力し、識別信号の指示により、有効パケットのみを出力する。すなわち、廃棄パケットについては、ここで廃棄されることになる。また、送信側カウンタ143は識別信号を入力し、識別信号が廃棄パケットを示すとき、カウンタの値を1増やし、識別信号が有効パケットを示す場合に、その時のカウンタの値を圧縮情報として出力し、その後でカウンタの値を0にする。すなわち、送信側カウンタ143は、有効パケットと有効パケットの間の廃棄パケットの連続数を圧縮情報として出力することになる。
【0034】そして、圧縮情報多重手段144は有効パケットと圧縮情報が入力されると、これらを多重し、圧縮データとして出力する。圧縮情報多重手段144における有効パケットと圧縮情報の多重の方法としては、例えば、有効パケット前に圧縮情報を付加してパケットとする方法、有効パケットの後ろに同様に付加する方法、有効パケットと有効パケットの間に圧縮情報を別データとして送信する方法などがある。また、圧縮情報が0すなわち、有効パケットと有効パケットの間に廃棄パケットが無かった場合には、0を示す圧縮情報を送信しても良いし、圧縮情報を送信しなくても良い。もちろん、これらに限られるものではなく、有効パケットと圧縮情報の位置関係が分かる方法であれば任意の方法で送信してもよい。
【0035】また、圧縮情報のデータ長については任意である。例えば1バイトとすれば、255個までの連続した廃棄パケットを表現可能である。この時、圧縮情報のデータ長が送信側カウンタ143の取り得る値の最大値となる。圧縮情報のデータ長を可変にする場合や、圧縮情報のデータ長が考えうる廃棄パケットの連続数より大きい場合には、識別手段141にカウンタの値を入力する必要はなく、識別手段141は、入力したパケットが有効パケットか廃棄パケットかを示す識別信号を出力すれば良い。
【0036】以上の様な構成により、パケット圧縮手段14は、入力データから廃棄パケットを廃棄し、廃棄した廃棄パケットの連続数を示す情報を圧縮情報とし、その直後の有効パケットとをパケット化し、圧縮データを生成して出力する。ここで生成するパケットを圧縮データと呼ぶ。すなわち、有効パケットと、その有効パケットの直前の廃棄パケットの連続数を示す圧縮情報から、圧縮データを生成して出力する。パケット圧縮手段14は、このような動作を行うものであれば、任意の構成で良い。
【0037】パケット圧縮手段14から出力されたデータは、送信手段111により、伝送路13を介して送信する。伝送路13は、ATM(Asyncronous Transfer Mode)や、IEEE1394など任意の伝送路を用いることが出来る。」(第7頁第12欄-第8頁第13欄)

エ.「【0038】次に受信装置12の動作を説明する。受信手段121は伝送路13から圧縮データを受信し、パケット復元手段15にデータを入力する。パケット復元手段15では、まず分離手段151において、圧縮データを圧縮情報と有効パケットに分離してそれぞれ出力する。次に、無効パケット生成手段152は、入力された圧縮情報により示される廃棄パケットの連続数と同じだけの無効パケットを出力する。無効パケットとは、MPEG2システムのTSの場合、PIDが0x1fffを示すパケットである。次に多重手段153は、有効パケットあるいは1個以上の無効パケットを入力し、無効パケットがある場合には、全ての無効パケットを出力した後に有効パケットを出力する。無効パケットが無い場合には有効パケットを出力する。
【0039】以上の様に、パケット復元手段15は、圧縮情報あるいは有効パケットからなる圧縮データを入力し、圧縮情報に示される数の無効パケットと有効パケットを出力する。この時、圧縮情報の後ろにある有効パケットは、その圧縮情報により復元される無効パケットの後ろに出力される。パケット復元手段15は、このような動作を行うものであれば、図1に示す構成に限らず、任意の構成をとることができる。
【0040】次に記憶手段122は、パケット復元手段15から出力された無効パケットおよび有効パケットを記憶し、記憶しているデータを入力された順番に出力データとして、出力する。この時、出力データは出力クロックに同期して出力される。また、記憶手段122は、記憶手段122内にあるデータ量を示す情報を出力する。適応クロック生成装置123は、入力されたデータ量を規定された値にするように出力クロックを調整する。すなわち、データ量が規定された値よりも大きい場合には出力クロックを速くし、データ量が規定された値よりも小さい場合には出力クロックを遅くする。適応クロック生成装置123は、上記のような動作を行う任意の構成をとることができる。例えば、入力クロックの周波数付近で動作するPLL(Phase Lock Loop)により実現可能である。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、入力クロックよりも早めのクロックを出力するクロック生成装置を持ち、その出力するクロックを間引く、すなわちデータの量に応じてクロックを間引く量を調整するような構成によっても実現できる。」(第8頁第13-14欄)

オ.「【0041】図2は本実施の形態1による伝送システムにおける処理の概要を説明する説明図である。21は入力データ、22は圧縮データであり、211、221、231は有効パケット、212は廃棄パケット、222は圧縮情報、232は無効パケットである。図2を用いて本発明の効果を説明する。送信装置の処理は、入力データ21から圧縮データ22を作成する。入力データは有効パケット211および廃棄パケット212に識別される。パケット圧縮部111は、廃棄パケット212を廃棄し、圧縮データ22を生成する。圧縮データは有効パケット221と圧縮情報222から構成され、有効パケット221は入力データの有効パケット211であり、圧縮情報222は有効パケット221の直前に廃棄された廃棄パケット212の数を示す。受信装置の処理は、圧縮データ22を復元データ23にする処理である。圧縮データ22中の圧縮情報222の数の無効パケット232を生成し、関連する有効パケット221の直前に挿入する。そして、受信した有効パケット221を有効パケット231とする。これらの無効パケット232と有効パケット231を出力データとする。
【0042】以上のように本発明の実施の形態1による伝送システムにおいては、送信装置11で廃棄パケットを廃棄して廃棄パケットの連続数を示す圧縮情報を伝送する。これにより、伝送する情報量を削減可能であり、伝送路の伝送効率を向上できる。
【0043】さらに、本実施の形態1による伝送システムの送信装置11においては、識別手段141で送信側カウンタ143の値が既定値よりも大きい場合には、入力データのパケットが無効パケットでも有効パケットを示す識別信号を出力する。この既定値を送信側カウンタ143のサイズに設定することにより、送信側カウンタ143のオーバーフローを防ぐことが可能である。
【0044】さらに、本実施の形態1による伝送システムの受信装置12は、圧縮情報に基づいて、廃棄したパケットの位置に廃棄したパケットと同じ数の無効パケットを挿入することができる。したがって、送信装置に入力される入力データと受信装置から出力される出力データのデータ量は同じである。また、入力データおよび出力データ中の有効パケットの位置も全く同じになる。したがって、伝送時に遅延揺らぎが発生したとしても、適応クロック生成装置123により、容易にクロックを再生できる。さらに、有効パケットがデコーダに到着する時間間隔は入力データにおける有効パケットの時間間隔と同じである。」(第8頁第14欄-第9頁第15欄)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
a.【図1】の伝送システムの送信装置11に入力される入力データは【図3】のMPEG-TS(MPEG2のトランスポートストリーム)であるが(摘記事項イ)、該MPEG-TSは同期用の「Sync Byte」フィールドをもつTSパケットの同期ストリームであり、また、TSパケットの「payload」フィールドに格納されるデータは圧縮したデジタル映像やデジタル音声が含まれることは技術常識であるから、上記引用例には、伝送システムにおいて、TSパケットのストリームに含まれる圧縮したデジタル映像やデジタル音声を受け取る方法が記載されていると言え、また、入力データであるストリームを第1のストリームと呼ぶことは任意であり、
b1.伝送システムの受信装置12は圧縮データのストリームを受信し(摘記事項エ、【図2】)、
b2.上記圧縮データは、有効パケットと圧縮情報の位置関係が分かるように、有効パケットの前に圧縮情報を付加して生成されたパケットであり(摘記事項ウ)、該圧縮データに含まれる有効パケットは同期ストリームである第1のストリームの一部であるから、第1の同期ストリームの部分とも呼ぶことができ、
b3.上記圧縮情報は有効パケットと有効パケットの間の廃棄パケットの連続数である(摘記事項ウ)から、各圧縮データは上記TSパケットのストリームのうちの、特定の順序で少なくとも1つの有効パケットと少なくとも1つの廃棄パケットからなる所与の組についての、廃棄パケットと有効パケットの順番情報と廃棄パケットの数を含むと言えるが、これらの情報は第1のストリームのTSパケットの送信順序に関する情報であるから第1のストリームのためのストリーム情報と言い得るものであり、
b4.上記圧縮データは、ATMをその一例とする伝送路13を介して伝送されるデータであり(摘記事項ウ)、
c.該伝送路13を介して受信装置12で受信された圧縮データの処理として、該圧縮データはパケット復元手段15に入力され、上記圧縮情報に示される数の無効パケットが生成され、関連する有効パケットの直前に挿入され、これらは同期ストリームとして出力、送信され(摘記事項エ,オ)、該送信される同期ストリームを第2の同期ストリームと呼ぶことは任意であり、

結局、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「TSパケットのストリームに含まれる圧縮したデジタル映像やデジタル音声を受け取る方法であって、該方法は、
圧縮データのストリームを受け取るステップであって、該圧縮データは、TSパケットの第1の同期ストリームの部分、TSパケットの第1のストリームのためのストリーム情報を備えたものであり、該ストリーム情報は、該TSパケットの第1のストリームのうちの所与の組のTSパケットにおける廃棄パケットの数、および、該所与の組のTSパケットにおける廃棄パケットおよび有効パケットの順番を示し、該圧縮データのストリームによって運ばれる該TSパケットの第1のストリームの部分は、該有効パケットから構成されており、該圧縮データのストリームに含まれる各圧縮データは、該TSパケットの第1のストリームのうちの所与の組のTSパケットのためのストリーム情報を含み、該所与の組のTSパケットは、特定の順序で、少なくとも1つの有効パケットおよび少なくとも1つの廃棄パケットを含み、該ストリーム情報は、該所与の組についての順番情報を含む、ステップと、
該圧縮データを処理するステップと、
TSパケットの第2の同期ストリームを送信するステップであって、該TSパケットの第2のストリームは、該圧縮データのストリームで運ばれる該有効パケットを含む、ステップと、
を含み、
該圧縮データを処理するステップは、
該ストリーム情報を読むステップであって、該ストリーム情報は、該所与の組における廃棄パケットの数を特定する、ステップと、
特定の数の無効パケットを生成するステップであって、該特定の数は、該ストリーム情報によって特定される廃棄パケットの数に等しい、ステップと、
該生成された無効パケットを該TSパケットの第2のストリームに含めるステップと、
該生成された無効パケットとともに該少なくとも1つの有効パケットを配置することにより、それらの順番が該所与の組の該特定の順序に対応するようにするステップと、
を含む、方法。」

(4)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比すると、
・引用発明の「TSパケット」、「順番情報」、「順番」はそれぞれ補正後の発明の「トランスポートパケット」、「シーケンス情報」、「シーケンス」に相当し、
・引用発明の「圧縮したデジタル映像やデジタル音声」は「コンテンツ」と言い得るものであり、
・引用発明の「圧縮データ」と補正後の発明の「ネットワークフレーム」に関し、引用発明の「圧縮データ」はパケットであり(摘記事項ウ)、補正後の発明の「ネットワークフレーム」の一例はUDPである(本願明細書の段落【0018】)から、両者はパケットである点で共通し、さらに、第1のストリームのためのストリーム情報を有する点でも共通しているから、両者は「ストリーム情報を有するパケット」である点で共通し、
・さらに、引用発明の「圧縮データ」と補正後の発明の「ネットワークフレーム」はトランスポートパケットの第1の同期ストリームの部分も有する点で共通し、
・引用発明の「有効パケット」、「廃棄パケット」、「無効パケット」はそれぞれ特定のPIDを有するTSパケットとして定義されているのみである(摘記事項イ,エ)が、「有効パケット」が圧縮したデジタル映像やデジタル音声を送信するためのコンテンツパケットであり、「廃棄パケット」がヌルパケットなどの非コンテンツパケットであることは明らかであるから、これらはそれぞれ補正後の発明の「コンテンツパケット」、「ヌルパケット」に相当するものと言え、さらに、引用発明の「無効パケット」は廃棄した廃棄パケットと同じ位置に同じ数だけ挿入されるもの(摘記事項オ)であるから、補正後の発明の「置き換えトランスポートパケット」に相当すると言え、

以上を総合すれば、両者は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「トランスポートパケットのストリームに含まれるコンテンツを受け取る方法であって、該方法は、
ストリーム情報を有するパケットのストリームを受け取るステップであって、該ストリーム情報を有するパケットは、トランスポートパケットの第1の同期ストリームの部分、該トランスポートパケットの第1のストリームのためのストリーム情報を備えたものであり、該ストリーム情報は、該トランスポートパケットの第1のストリームのうちの所与の組のトランスポートパケットにおけるヌルパケットの数、および、該所与の組のトランスポートパケットにおけるヌルパケットおよびコンテンツパケットのシーケンスを示し、該ストリーム情報を有するパケットのストリームによって運ばれる該トランスポートパケットの第1のストリームの部分は、該コンテンツパケットから構成されており、該ストリーム情報を有するパケットのストリームに含まれる各ストリーム情報を有するパケットは、該トランスポートパケットの第1のストリームのうちの所与の組のトランスポートパケットのためのストリーム情報を含み、該所与の組のトランスポートパケットは、特定の順序で、少なくとも1つのコンテンツパケットおよび少なくとも1つのヌルパケットを含み、該ストリーム情報は、該所与の組についてのシーケンス情報を含む、ステップと、
該ストリーム情報を有するパケットを処理するステップと、
トランスポートパケットの第2の同期ストリームを送信するステップであって、該トランスポートパケットの第2のストリームは、該ストリーム情報を有するパケットのストリームで運ばれる該コンテンツパケットを含む、ステップと
を含み、
該ストリーム情報を有するパケットを処理するステップは、
該ストリーム情報を読むステップであって、該ストリーム情報は、該所与の組におけるヌルパケットの数を特定する、ステップと、
特定の数の置き換えトランスポートパケットを生成するステップであって、該特定の数は、該ストリーム情報によって特定されるヌルパケットの数に等しい、ステップと
該生成された置き換えトランスポートパケットを該トランスポートパケットの第2のストリームに含めるステップと、
該生成された置き換えトランスポートパケットとともに該少なくとも1つのコンテンツパケットを配置することにより、それらのシーケンスが該所与の組の該特定の順序に対応するようにするステップと
を含む、方法。」

(相違点)
「ストリーム情報を有するパケット」に関し、補正後の発明は「ネットワークフレーム」であって、それで運ばれる情報を「カプセル化」し、それを処理するステップにおいて「カプセル化を解除」するのに対し、引用発明は「圧縮データ」であって、それが運ぶ情報をカプセル化するか否か、また、それを処理するステップにおいてカプセル化を解除するか否かについて限定されていない点。

以下に、上記相違点につき検討する。
引用例には、圧縮データが伝送される伝送路13の一例としてATM(Asyncronous Transfer Mode)が記載されている(摘記事項ウ、段落【0037】)が、ATMではデータは送信側において固定長データに分割した後に各々ヘッダを付加した、すなわち「カプセル化」した、ATMセルという単位で送出され、受信側において上記ヘッダを除去し、すなわち「カプセル化を解除」してデータを得ることは技術常識である。
一方、補正後の発明の「ネットワークフレーム」は、その一例としてUDPパケットが記載されており(本願明細書の段落【0018】)、UDPパケットもデータ送受信時に「カプセル化」したり「カプセル化を解除」したりするものであることは技術常識である。
そして、ATMとUDPはいずれも周知の非同期データ伝送方式であるから、引用発明の「圧縮データ」を伝送する方式として引用例記載のATMに替えてUDPを選択することにより、該「圧縮データ」を「カプセル化」して「ネットワークフレーム」とし、「圧縮データ」を処理するステップにおいて「カプセル化を解除」することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、補正後の発明の作用・効果も引用発明から当業者が予測し得る範囲のものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年7月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用例の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-09 
結審通知日 2010-07-12 
審決日 2010-07-28 
出願番号 特願2003-559065(P2003-559065)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 真之石田 紀之矢頭 尚之  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 松元 伸次
新川 圭二
発明の名称 非同期ネットワークを介するストリームの受信  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  
代理人 森下 夏樹  

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