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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J
管理番号 1228077
審判番号 不服2009-2944  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-09 
確定日 2010-12-06 
事件の表示 特願2006-500242「飲料を調製するための機械」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月 5日国際公開、WO2004/064585、平成18年 7月27日国内公表、特表2006-517429〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

本件出願は、2004年 1月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年 1月24日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成20年11月 6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年 2月 9日に本件審判請求がなされるとともに、同年 3月11日付けで手続補正がなされたものである。


2 本願発明

本件出願の請求項1?16に係る発明は、平成21年 3月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。このうち請求項1に係る発明は、当該平成21年 3月11日付け手続補正書により補正されてはいないものであるから、以下特許法第17条の2各項号、第53条第1項及び第159条第1項の適用について検討することはせず、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)が、特許を受けることができるものであるか否かについて検討を行う。
本願発明は、平成21年 3月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
一連の飲料カートリッジから一連の飲料タイプを自動的に調製するための低圧飲料調製システムであって、
飲料調製機(201)と、複数の飲料カートリッジ(1)とを備え、それぞれの飲料カートリッジが、特定の飲料タイプに関する1種類または複数種類の飲料原料(200)を含有する低圧飲料調製システムであり、
a.前記飲料調整器において前記複数の飲料カートリッジの一つを受け入れる手段と、使用時、前記飲料カートリッジに、2バールより低い圧力で水媒体を供給するための手段であって、これによりその中に収容されている前記1種類または複数種類の飲料原料から飲料を生成する手段と、
b.前記飲料カートリッジに記されたコード(320)を自動的に翻訳処理する前記飲料調製機におけるリーダー(252)と、
c.前記コードに基づいて、特定の煎出サイクルを生成する処理手段と、
d.前記水媒体の前記飲料カートリッジへの供給前に、前記水媒体の温度を前記コードに基づいて自動的に調節する手段と、
e.飲料タイプに応じて選択的に飲料の泡を生成する、前記複数の飲料カートリッジの少なくともいくつかにおけるエダクタ手段と、
f.分配されている飲料タイプから独立して、操作サイクルを開始するためのユーザインタフェース(240)と、
を備え、
限定されないが少なくとも濾過コーヒー、カプチーノ、茶、チョコレート及び泡立てミルクを含む一連の飲料タイプを生成可能である
ことを特徴とする低圧飲料調製システム。」


3 引用刊行物とその記載事項

(1)引用刊行物に記載された事項

原査定の拒絶理由に引用した、本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である国際公開第01/058786号(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。

(ア)「It has previously been proposed to seal beverage preparation
ingredients in individual air-impermeable packages. For example,
cartridges or capsules containing compacted ground coffee are known
for use in certain coffee making machines which are generally
termed"espresso"machines. In the production of coffee using these
coffee machines the coffee cartridge is placed in a brewing chamber
and hot water is generally caused to pass under pressure through
the cartridge, thereby extracting the aromatic coffee constituents
from the ground coffee and producing a coffee beverage. Typically
in the production of "espresso"coffee a brewing time of about 25
seconds is used at a pressure of about 6 x 10^(5) Pa, or greater.」{空気に対し不浸透性の個々のパッケージ内に飲料作製用材料を密封することが以前から提案されている。挽いたコーヒーが緻密に詰まったカートリッジ、即ち、カプセルは、例えば、一般的に「エスプレッソ」機械と呼ばれているコーヒー製造機械で使用する事が知られている。これらのコーヒー機械を使用してコーヒーを製造するには、コーヒー・カートリッジが、煮出し(brewing)室に入れられ、熱湯が加圧の下でカートリッジ内を通され、それによって挽かれたコーヒーから芳香成分を抽出して、コーヒー飲料を製造する。「エスプレッソ」コーヒーを製造する典型的なやり方では、約25秒の煮出し時間が、約6×10^(5)Pa、またはそれ以上の圧力の下で用いられる。}({ }内は当審による翻訳文。なお翻訳文作成に当たり、刊行物1に対応する国内公表である特表2003-522567号公報を参照した。以下、同様。)(明細書第1頁第9行?同第22行)

(イ)「Although an"espresso"coffee is produced using the cartridge
and method as described in EP-A-0638486, this solution requires the
modification of the beverage preparation machine as described in
EP-A-0334573, which is expensive. There still therefore remains a
requirement for a suitable means to produce an"espresso"coffee in a
simple and effective manner at a relatively low pressure, e. g. of
up to 2 x 10^(5) Pa.」{「エスプレッソ」コーヒーは、EP-A-0638486号公報に記載されたカートリッジおよび方法を用いて製造されるが、この解決法は、EP-A-0334573号公報に記載された飲料作製機械の改造を必要とし、これには費用がかかる。したがって、例えば、2×10^(5)Paまでの比較的低い圧力で簡単で効率的に「エスプレッソ」コーヒーを得る適当な手段に対する要望がなお存在している。}(明細書第3頁第4行?同第12行)

(ウ)「In use, the cartridge of the present invention will have
water under pressure passed therethrough. Generally the pressure
within the compartment containing the beverage ingredients will be
in the range of from 0.7 to 2.0 x 10^(5) Pa.」{使用の際、本発明のカートリッジは、加圧された水を通過させるであろう。一般的に、飲料材料の入った小部屋内の圧力は、0.7?2.0×10^(5) Paの範囲にあるであろう。}(明細書第3頁第33行?同第37行)

(エ)「The beverage preparation ingredients contained in the
cartridges of the invention are preferably roast and ground coffee,
powdered chocolate, and according to individual taste, powdered
milk or creamer, sugar or artificial sweetener.」{本発明のカートリッジに収容される飲料作製用材料は、焙煎されて挽かれたコーヒー、粉末チョコレート、個々の好みに応じて粉末ミルク又はクリーム、砂糖或いは人工甘味料等が好ましい。}(明細書第6頁第35行?同第7頁第2行)

(オ)「The cartridges of the present invention are preferably
provided with at least one recognition means whereby, in use, the
cartridge is identified by the machine into which it is placed for
treatment and the identification of the cartridge thereby causes it
to be subjected to the correct treatment steps including the
introduction of the aqueous medium into the cartridge and the
activation of the whipping means.
The recognition means may comprise one or more surface features
formed in the body of the cartridge. For example, the cartridge
body may be provided with one or more indents, cut outs,
protrusions or holes which can be identified by a mechanical sensor
in the beverage preparation machine, the mechanical sensor
registering the presence or absence of the indents, cut outs,
protrusions or holes.
The recognition means may, alternatively, comprise a system
which can be sensed by a simple optical device, for example a bar
code printed onto the body of the cartridge, a pattern of through
holes in the cartridge, a pattern of contrasting tones or colours
printed onto the cartridge or cartridges containing different
comestibles being of different colours.
The recognition means may also comprise one or more strips of a
magnetic material applied to the body of the cartridge which can be
read by an appropriate magnetic sensor, one or more shaped or
divided areas of metal foil applied to the cartridge body which
cause an inductive effect on movement of the cartridge in the
machine, which inductive effect can be sensed; or one or more
electrically conductive areas formed on the body of the cartridge
which can be sensed electrically.
As mentioned above, the cartridge of the present invention
contains one or more beverage preparation ingredients, for example,
roast and ground coffee or leaf tea and sugar and/or creamer, as
desired. One machine which can readily be adapted for the
preparation of a beverage from the preferred cartridge of the
invention which includes a recognition means is described in our
EP-A-0334573. The only modification required to be made to such
a beverage preparation machine is to incorporate an appropriate
sensor or sensors into it, the sensor or sensors being designed to
read the particular coding on the cartridge and to send a signal to
the controller, which then selects the appropriate beverage
preparation cycle and activates the whipping means.」{本発明のカートリッジは、少なくとも一つの識別手段を具え、カートリッジが使用の際、このカートリッジが処理のために配される機械によって識別され、カートリッジの識別によって、カートリッジは、水性媒体のカートリッジへの導入及び泡立て手段の作動を含むカートリッジの正しい処理ステップが行われるようになされることが好ましい。
その識別手段は、カートリッジの本体に形成された一つ以上の表面特徴部からなっている。例えば、カートリッジ本体は、飲料作製機械の機械的センサによって識別可能な一つ以上の刻み部分、切り欠き部分、突起又は孔を具えてもよい。その機械的センサは、刻み部分、切り欠き部分、突起又は孔の有無を示す。
代替的には、その識別手段は、カートリッジの本体にプリントされたバーコード、カートリッジの貫通孔のパターン、対照的な色調のパターン、或いは異なる色の異なる食品の入ったカートリッジの上にプリントされた色等の簡単な光学的装置によって感知可能なシステムを具えていてもよい。
その識別手段は、磁気センサによって読取可能なカートリッジの本体に付与された適宜な磁性材料の一つ以上の細片、機械内でのカートリッジの運動によって感知可能な誘導効果を起こさせるカートリッジ本体に付与された一つ以上の形造られ或いは分割された金属箔の領域、又はカートリッジの本体に形成された電気的に感知可能な一つ以上の導電性領域を具えてもよい。
前述したように、本発明のカートリッジは、一つ以上の飲料材料、例えば、焙煎されて挽かれたコーヒーや葉茶及び所望に応じて砂糖/又はクリーム等を収容している。識別手段を具えた本発明の好適カートリッジから飲料の作製をするように容易に適用し得る一つの機械は、我々の EP-A-0334573号公報 に記載されている。この飲料作製機械に対して行う必要がある唯一の改造は、適宜な単数又は複数のセンサをこれに組み込むことであり、その単数または複数のセンサは、カートリッジ上の特殊なコーディングを読み取って信号をコントローラに送るように設計されている。その結果、次いでコントローラは、適宜な飲料作製サイクルを選択し、泡立て手段を作動させる。}(明細書第7頁第27行?同第9頁第2行)

(カ)「The sensor may be, for example, a mechanical sensor, an
optical sensor, a magnetic sensor, an electrical sensor or an
inductive sensor. The machine is preferably adapted so that the
cartridge is handled automatically following its insertion into the
machine.」{例えば、そのセンサは、機械式センサ、光学式センサ、磁気センサ、電気的センサ、或いは誘導式センサ等でもよい。その機械は、カートリッジがこの機械に挿入された後、自動的に取り扱われるようになされることが好ましい。}(明細書第9頁第3行?同第8行)

(キ)「The incorporation of air into the beverage using the
cartridges of the present invention produces a foamy, frothy
beverage. Beverages which can be produced in this manner are,
for example, whipped chocolate, cappuccino and espresso-type
coffee. Preferably the incorporation of air into the beverage will
result in from 5 to 35 percent by volume, more preferably 5 to 10
percent by volume, of air being incorporated into the beverage as
bubbles having a bubble size preferably of below 300 micrometers,
more preferably in the range of from 10 to 200 micrometers.
Generally, whipped chocolate will incorporate a higher percentage
of air by volume therein than whipped coffee.」{本発明のカートリッジを使用して飲料に空気を混ぜると、小さな気泡のある泡立たせた、飲料が作られる。このようにして製造可能な飲料は、例えば、ホィップチョコレート、カプチーノ及びエスプレッソタイプのコーヒー等である。飲料に空気を混合させることは、好ましくは、5?35体積%、更に好ましくは5?10体積%という結果となり、その空気は、好ましくは300μm 以下、更に好ましくは10?200μm の範囲の気泡サイズを有する泡として飲料に混ぜられる。一般的に、ホィップチョコレートは、ホィップコーヒーよりも高い容積比の空気が混ぜられている。}(明細書第9頁第9行?同第22行)

(ク)「The chamber 17 into which the jet of beverage is delivered
is at atmospheric pressure and is connected to an air inlet area 18
by means of an elongate passage 19. Chamber 17 acts as an
expansion chamber and, as the pressure of the jet of beverage is
reduced, air is incorporated into the beverage via the air passage
1. The jet of beverage issuing through restriction hole 16
impinges on a surface 20 which is positioned in the beverage
flow path. The surface 20 onto which the beverage impinges is
at an included angle of from 30 to 35 degrees, preferably an
included angle of about 33 degrees. The surface 20 has a
plurality of grooves 21 cut therein. The impingement of the jet
of beverage on the grooves 21 assists in causing turbulent motion
of the beverage and the incorporation of air therein as a plurality
of discrete bubbles. The surface 20 is formed on one side of a
projecting tongue 22 which projects into the path of the beverage.」{飲料の噴流が供給される室17は、大気圧であり、細長い通路19によって空気入口領域18に接続されている。室17は、膨張室として作用し、飲料の噴流の圧力が減少するにつれて、空気が空気通路19を通じて飲料の中に混合する。絞り孔16を通じて出て来る飲料の噴流は、飲料流路に位置する表面20に吹き付ける。飲料が吹き付ける表面20は、30?35度、好ましくは、約33度の角度になっている。この表面20は、そこに刻まれた複数の溝21を有する。飲料の噴流が溝21に吹き付けると、飲料の渦運動が発生し、多数の個々の気泡として空気が飲料へ混合されることが促進される。この表面20は、飲料の通路内に突出したタング22の一方の側面に形成されている。}(明細書第11頁第16行?同第34行)

(ケ)「The side edge of cartridge 1 opposite to the edge provided
with teeth 30 has a plurality of pegs 32,33 34 and 35 provided
thereon. As the package is driven into the machine the presence or
absence of the upstanding pegs 32,33,34,35 is sensed by a sensing
arm (not shown). If one or more of pegs 32,33,34, 35 is not present
the sensing arm will thereby identify a different type of
cartridge. The sensing arm operates a switch in the beverage
preparation machine (not shown) which thereby transmits
information concerning the presence or absence of the pegs on the
package to the control mechanism for the beverage dispensing
machine. The arrangement of pegs 32,33,34,35 on the cartridge
thus identifies the type of cartridge to a controller which then
selects the appropriate beverage preparation conditions.」{歯30を具えた縁に対向するカートリッジ1の側縁は、複数のペッグ32、33、34及び35を有している。筐体が機械の中に押し込まれるとき、直立したペッグ32、33、34及び35の有無が感知アーム(図示しない)によって検出される。一つ以上のペッグ32、33、34及び35が存在しない場合、それにより、感知アームは、異なるタイプのカートリッジであると識別するであろう。感知アームは、飲料作製機械(図示しない)のスイッチを作動させ、それによって筐体上のペッグの有無に関する情報を飲料販売機械用の制御機構に伝達する。従って、カートリッジ上にペッグ32、33、34及び35を配置することにより、適宜な飲料作製条件を選択するコントローラは、カートリッジのタイプを識別する。}(明細書第14頁第20行?同第35行)


(2)引用刊行物の記載及び図面より、引用刊行物に記載されていることが明らかな事項

(a)上記摘記事項(イ)、(ウ)及び(オ)より、引用刊行物には、カートリッジから飲料を自動的に調整する低圧飲料調整システムが記載されていることが明らかである。

(b)1バール=10^(5)Paであるから、上記摘記事項(ウ)より、カートリッジを通過する水の圧力が0.7?2.0バールであることは明らかである。

(c)上記摘記事項(キ)?(ケ)より、飲料タイプに応じて選択的に飲料の泡を生成する、前記複数のカートリッジの少なくともいくつかにおける手段を有することは明らかである。


(3)引用発明

すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。

「カートリッジから飲料を自動的に調整するための低圧飲料調製システムであって、
飲料作製機械と、複数のカートリッジとを備え、それぞれのカートリッジが、特定の飲料タイプに関する一つ以上の飲料材料を含有する低圧飲料調製システムであり、
前記飲料作製機械において前記複数のカートリッジの一つを受け入れる手段と、使用時、前記カートリッジに、0.7?2.0バールの圧力で水性媒体を供給するための手段であって、これによりその中に収容されている前記一つ以上の飲料材料から飲料を生成する手段と、
前記カートリッジに記された識別手段を自動的に識別する前記飲料作製機械におけるセンサと、
前記識別手段に基づいて、特定の処理ステップを生成するコントローラと、
飲料タイプに応じて選択的に飲料の泡を生成する、前記複数のカートリッジの少なくともいくつかにおける手段と、
を備え、
ホイップチョコレート、カプチーノ及びエスプレッソタイプのコーヒー等を生成可能である
低圧飲料調製システム。」


4 対比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「飲料作製機械」、「カートリッジ」、「一つ以上の飲料材料」及び「水性媒体」は、本願発明の「飲料調整機」、「飲料カートリッジ」、「1種類または複数種類の飲料原料」及び「水媒体」にそれぞれ相当し、引用発明の「カートリッジから飲料を自動的に調整する」は、本願発明の「一連の飲料カートリッジから一連の飲料タイプを自動的に調製する」に対応する。

また、引用発明の「識別手段」、「識別」、「センサ」、「処理ステップ」及び「コントローラ」は、本願発明の「コード」、「翻訳処理」、「リーダー」、「煎出サイクル」及び「処理手段」にそれぞれ相当する。

本願発明の「エダクタ手段」は、本願の明細書の【0049】段落から明らかなとおり、カートリッジに設けられた、空気を飲料内に取り込むように作用する構成であるから、引用発明の「飲料タイプに応じて選択的に飲料の泡を生成する、前記複数のカートリッジの少なくともいくつかにおける手段」は、本願発明の「飲料タイプに応じて選択的に飲料の泡を生成する、前記複数の飲料カートリッジの少なくともいくつかにおけるエダクタ手段」に対応する。
さらに、引用発明の「ホイップチョコレート、カプチーノ及びエスプレッソタイプのコーヒー等」は、本願発明の「限定されないが少なくとも濾過コーヒー、カプチーノ、茶、チョコレート及び泡立てミルクを含む一連の飲料タイプ」に対応する。

してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下の通りである。


<一致点>
「一連の飲料カートリッジから一連の飲料タイプを自動的に調製するための低圧飲料調製システムであって、
飲料調製機と、複数の飲料カートリッジとを備え、それぞれの飲料カートリッジが、特定の飲料タイプに関する1種類または複数種類の飲料原料を含有する低圧飲料調製システムであり、
前記飲料調製機において前記複数の飲料カートリッジの一つを受け入れる手段と、使用時、前記飲料カートリッジに、水媒体を供給するための手段であって、これによりその中に収容されている前記1種類または複数種類の飲料原料から飲料を生成する手段と、
前記飲料カートリッジに記されたコードを自動的に翻訳処理する前記飲料調製機におけるリーダーと、
前記コードに基づいて、特定の煎出サイクルを生成する処理手段と、
飲料タイプに応じて選択的に飲料の泡を生成する、前記複数の飲料カートリッジの少なくともいくつかにおけるエダクタ手段と、
を備え、
限定されないが少なくとも濾過コーヒー、カプチーノ、茶、チョコレート及び泡立てミルクを含む一連の飲料タイプを生成可能である
ことを特徴とする低圧飲料調製システム。」


<相違点1>
供給される水媒体の圧力について、本願発明では、「2バールより低い圧力」であるのに対して、引用発明では0.7?2.0バールの圧力である点。

<相違点2>
本願発明では、「水媒体の飲料カートリッジへの供給前に、水媒体の温度をコードに基づいて自動的に調節する手段」を有するのに対して、引用発明では、当該構成の有無について明らかでない点。

<相違点3>
本願発明では、「分配されている飲料タイプから独立して、操作サイクルを開始するためのユーザインタフェース」を有するのに対して、引用発明では、当該構成の有無について明らかでない点。


5 相違点についての検討(容易想到性の判断)

上記各相違点について検討する。

(1)上記<相違点1>について
引用発明の0.7?2.0バールの圧力と、本願発明の2バールより低い圧力とは、両者とも低圧飲料調整における圧力を規定するものであり、また、両者は重複する数値範囲を含んでいる。そして、本願の明細書及び図面全体を参酌しても、本願発明の「2バールより低い圧力」という数値限定には臨界的な意義を見出すことはできない。
よって、引用発明の低圧飲料調整システムに基づいて、水媒体の供給する圧力について、本願発明のように「2バールより低い圧力」とすることは、当業者にとって困難な事項ではない。

(2)上記<相違点2>について
上記摘記事項(ア)からも明らかなように、飲料調整システムにおいて熱湯を使用してエスプレッソコーヒーを製造することは周知の技術であり、さらに飲料調整するにあたって温度を調整することも周知の技術である。(例えば、特表2000-515031号公報の第12頁第28行?第13頁第4行参照。以下「周知技術1」という。)。
よって、引用発明の飲料を自動的に調整する低圧飲料調整システムにおいて、上記周知技術1を適用し、本願発明のように「水媒体の飲料カートリッジへの供給前に、水媒体の温度をコードに基づいて自動的に調節する手段」を設けることは、当業者であれば容易に想到し得る程度の事項にすぎない。

(3)上記<相違点3>について
飲料調整システムにおいて、操作サイクルすなわち、飲料抽出を開始する為のスイッチを設けることは周知の技術であり(例えば、特開平3-158116号公報の第2頁右上欄第11行?同第19行、特表2002-535021号公報の【0018】段落、特表2000-515031号公報の第12頁第28行?第13頁第20行参照。以下「周知技術2」という。)、当該飲料抽出を開始する為のスイッチは、抽出しようとする飲料タイプには依存しないことは明らかである。また、引用発明の飲料を自動的に調整する低圧飲料調整システムにおいては、上記摘記事項(カ)及び(ケ)より明らかなとおり、カートリッジが挿入されたとき使用者の操作なしでカートリッジの識別が行われるものであるが、当該構成を有することが飲料抽出を開始する為のスイッチを備えることを妨げるものではないことは明らかである。
以上により、引用発明の飲料を自動的に調整する低圧飲料調整システムにおいて、上記周知技術2を適用し、本願発明のように「分配されている飲料タイプから独立して、操作サイクルを開始するためのユーザインタフェース」を設けることは、当業者であれば容易に想到し得る程度の事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明並びに上記周知技術1及び2から、当業者であれば予測できる範囲のものにすぎない。

したがって、本願発明は、引用発明並びに上記周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでものなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-17 
結審通知日 2010-07-13 
審決日 2010-07-26 
出願番号 特願2006-500242(P2006-500242)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 金丸 治之
藤井 昇
発明の名称 飲料を調製するための機械  
復代理人 柱山 啓之  
代理人 谷 義一  
復代理人 伊藤 勝久  
代理人 阿部 和夫  

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