• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1228671
審判番号 不服2007-18319  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-02 
確定日 2010-12-15 
事件の表示 特願2000-526894「コンピュータシステム等におけるビデオ処理を改善するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 8日国際公開、WO99/34320、平成14年 1月 8日国内公表、特表2002-500399〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,1998年12月31日(パリ条約による優先権主張1997年12月31日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成19年3月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対し平成19年7月2日に拒絶査定不服審判が請求され,当審において,平成22年2月16日付けで拒絶理由が通知されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?24に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】 バス及びグラフィックスサブシステムに接続されるよう構成されたビデオサブシステムで,第1のフィールド及び第2のフィールドのビデオデータを生成するよう構成され,かつ第1のフィールドのビデオデータをグラフィックスサブシステムに,第2のフィールドのビデオデータをバスに転送するよう構成されたビデオサブシステムを具備したことを特徴とするビデオ処理システム。」

3.引用例
当審における平成22年2月16日付けの拒絶理由通知に引用された,本願優先日前に頒布された刊行物である特開平9-224216号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(イ)「【0026】
【発明の実施の形態】以下,本発明に係る最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0027】図14は,最良の実施の形態の画像記録再生装置を適応しうるパーソナルコンピュータ等の情報処理装置のハードウェア構成図である。
【0028】図14に示すように,該装置は,CPU1と,主記憶2と,補助記憶装置3と,入力装置4と,表示装置5と,画像入力装置6と,画像取り込み装置12と,圧縮画像再生装置9とを有して構成される。そして,画像入力装置6以外の各構成要素は,バス10によって接続され,各構成要素間で,必要な情報が伝送可能に構成されている。
【0029】また,画像入力装置6は,画像取り込み装置12に接続され,画像入力装置6から画像取り込み装置12に映像情報を伝送可能なように構成されている。画像取り込み装置12は,バスを介して接続されるCPU1等により構成されるPC等の情報処理装置21に装着されるか,図22に示すように画像入力装置6に内蔵される構成とする。尚,図22に示された画像取り込み装置は,CCDカメラ56が内蔵されているほかは図15に示した画像取り込み装置12と同様の構成である。」(第6欄第24?45行),
(ロ)「表示装置5は,圧縮された動画像の再生表示等の各種の情報を表示する手段であり,例えば,CRT,ELディスプレイ,プラズマディスプレイ,液晶ディスプレイ等によって実現できる。」(第7欄第5?9行),
(ハ)「【0031】画像入力装置6は,上述した従来技術における画像入力装置22と同様に,アナログの動画像(映像)を入力する手段であり,ビデオカメラ,VTR,テレビジョン,TVチューナー等によって実現される。画像取り込み装置12は,上記画像入力装置6から入力されるアナログの動画像をデジタル化し,かつデジタル化した動画像を圧縮するための手段である。」(第7欄第10?16行),
(ニ)「【0033】また,CPU1は,主記憶2や補助記憶装置3に,予め格納されているプログラムに従って所定の動作を行う。」(第7欄第31?33行),
(ホ)「【0042】バス入出力部60は,一般的に情報処理装置などで採用されているPCIやISAなどのバスのプロトコルに従って実現され,バス10にデータを流したり,バス10に流れているデータを取得する。」(第8欄第30?33行),
(ヘ)「【0114】次に,第三の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0115】第一あるいは第二の実施の形態では,非圧縮画像と圧縮画像とをリアルタイムにかつ同時に取り込むが,非圧縮画像のみをリアルタイムに取り込み,シーンの変化を検出しながら,検出に使った非圧縮画像を圧縮するような構成にしてもよい。この場合,画像記憶装置を適応しうる情報処理装置のハードウェア構成を図12に示す構成とし,制御手段101を図13に示すように変更(制御手段101’)すればよい。
【0116】図12において,画像圧縮装置11以外は図1に示す構成要素と同じである。上記画像圧縮装置は,CPU1から渡される非圧縮動画像を,例えば,MPEG圧縮して主記憶2あるいは補助記憶装置3に格納するための装置である。
【0117】図13に示すように,制御手段101’は,まず,動画像の取り込みを開始する(ステップ161)。具体的には,非圧縮画像取り込み装置7を駆動するためのそれぞれのプログラムを実行し,主記憶2上にワークエリアを確保するなどの,動画像を取得するための準備を行う。
【0118】次に,制御手段101’は,画像入力装置6から入力され,非圧縮画像取り込み装置7においてデジタル化された非圧縮画像を取得し,上記ワークエリアに格納する(ステップ162)。続いて,非圧縮画像解析手段102を起動してシーンが変化したかどうかを検出する(ステップ163)。さらに,上記ワークエリアに格納された非圧縮画像を上記画像圧縮装置11を用いて圧縮する(ステップ164)。そして,動画像の取り込みが継続しているならば,ステップ162とステップ164を繰り返し実行する(ステップ165)。
【0119】ステップ165において,例えば,ユーザからの指示等で動画像の取り込みが終了しているならば,上記画像圧縮装置11においてMPEG圧縮された動画像を取得し,上記ワークエリアあるいは補助記憶装置3に格納する(ステップ166)。
【0120】そして,制御手段101’は,対応情報生成手段103を起動して,シーンが変化した時刻での非圧縮画像と,圧縮動画像における該時刻の画像とを対応づける情報を生成する(ステップ167)。
【0121】最後に,圧縮画像再生装置104を起動して,例えば,ユーザが指示する時刻からの上記圧縮動画像の再生表示を行い(ステップ168),制御手段101’の処理が継続しているならば,ステップ161に戻り処理を繰り返す(ステップ169)。ステップ169において,例えば,ユーザからの終了指示等がある場合は,制御手段101’の処理を終了する。
【0122】以上,第三の実施の形態によれば,例えば,非圧縮画像取り込み装置7によって画像入力装置6から入力されるデータを奇数フィールドデータと偶数フィールドデータとに分け,奇数フィールドデータをYUV形式の色フォーマットで主記憶2に転送し,偶数フィールドデータを表示装置5に表示可能な色フォーマットに変換して表示装置5に転送し,さらに,YUV形式の奇数フィールドデータを画像圧縮装置11に入力して圧縮すれば,比較的安価な画像記録再生装置を提供することができる。
【0123】画像圧縮装置11は従来技術を適用可能であり,従来技術の画像圧縮装置11は,通常YUV形式のデータを入力されるべきものが多い。また,画像圧縮装置11をソフトウェアで実現すれば,非圧縮動画像を表示装置5に表示しながら,YUV形式の色フォーマットのデータを主記憶2に転送する機能は非常に有効である。」(第19欄第43行?第21欄第6行),
(ト)「【0126】さらに,上記非圧縮の動画像を上記情報処理装置に取り込む場合,上記画像入力装置から入力されるインターレース信号における奇数フィールドデータと偶数フィールドデータとを,同等のあるいは異なる大きさ及び色フォーマットに変換して,同等のあるいは異なる領域あるいは装置に転送することで,上記情報処理装置が具備する表示装置で上記画像入力装置から入力される動画像をモニタしながら,同時に該動画像を記録することができる。」(第21欄第17?25行)
次に,引用例1の図12には,「CPU1と,主記憶2と,補助記憶装置3と,入力装置4と,表示装置5と,画像入力装置6と,非圧縮画像取り込み装置7と,圧縮画像再生装置9と,画像圧縮装置11を有し,画像入力装置6以外の各構成要素が,バス10によって接続された画像記録再生装置のハードウェア構成図」が示されている。

上記引用例1記載事項及び図面の記載を総合勘案すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用例1記載発明」という。)が記載されていると認められる。
「CPU1と,主記憶2と,入力装置4と,表示装置5と,画像入力装置6と,非圧縮画像取り込み装置7とを有し,画像入力装置6以外の各構成要素が,バス10によって接続され,
非圧縮画像取り込み装置7によって画像入力装置6から入力されるデータを奇数フィールドデータと偶数フィールドデータとに分け,奇数フィールドデータを主記憶2に転送し,偶数フィールドデータを表示装置5に転送することができる情報処理装置。」

4.対比
引用例1記載発明の「表示装置5」が,本願発明1の「グラフィックスサブシステム」に相当する。
次に、引用例1記載発明の「画像入力装置6」及び「非圧縮画像取り込み装置7」が,本願発明1の「ビデオサブシステム」に相当する。
そして,引用例1記載発明の「非圧縮画像取り込み装置7」は,「バス10」に接続されるとともに,該「バス10」を介して「表示装置5」に接続されているから,かかる接続のなされた引用例1記載発明の「画像入力装置6」及び「非圧縮画像取り込み装置7」と,本願発明1の「バス及びグラフィックスサブシステムに接続されるよう構成されたビデオサブシステム」とは,バス及び最終的にグラフィックスサブシステムに接続されるよう構成されたビデオサブシステムである点で一致する。
次に,引用例1記載発明の「画像入力装置から入力されるデータ」が,本願発明1の「ビデオデータ」に相当する。
次に,引用例1記載発明の「画像入力装置から入力されるデータ」から生成される「偶数フィールドデータ」及び「奇数フィールドデータ」が,それぞれ本願発明1の「第1のフィールドのビデオデータ」及び「第2のフィールドのビデオデータ」に相当する。
次に,引用例1記載発明において,「偶数フィールドデータ」は,「バス10」を介して「表示装置5」に転送されているから,引用例1記載発明の「偶数フィールドデータを表示装置5に転送する」と,本願発明1の「第1のフィールドのビデオデータをグラフィックスサブシステムに転送する」とは,第1のフィールドのビデオデータを,最終的にグラフィックスサブシステムに転送する点で一致する。
次に,引用例1記載発明では,「奇数フィールドデータを主記憶2に転送し」ているが,該「主記憶2」は「バス10」に接続されているから,引用例1記載発明は、「奇数フィールドデータ」を「バス10」に「転送」しているといえる。
次に,引用例1記載発明の「情報処理装置」は,画像入力装置6から入力されるデータ、すなわちビデオデータを処理しているから、「ビデオ処理システム」といえる。

すると,本願発明1と,引用例1記載発明とは,次の点で一致する。
(一致点)
バス及び最終的にグラフィックスサブシステムに接続されるよう構成されたビデオサブシステムで,第1のフィールド及び第2のフィールドのビデオデータを生成するよう構成され,かつ第1のフィールドのビデオデータを,最終的にグラフィックスサブシステムに,第2のフィールドのビデオデータをバスに転送するよう構成されたビデオサブシステムを具備したことを特徴とするビデオ処理システム。

一方で,両者は,次の点で相違する。
<相違点>
本願発明1では,ビデオサブシステムがグラフィックスサブシステムに接続され,第1のフィールドのビデオデータをグラフィックスサブシステムに転送しているのに対し,引用例1記載発明では,「画像入力装置6」及び「非圧縮画像取り込み装置7」(ビデオサブシステム)が,バス10を介して,表示装置5(グラフィックスサブシステム)に接続され,偶数フィールドデータ(第1のフィールドのビデオデータ)を,バス10を介して,表示装置5(グラフィックスサブシステム)に転送している点。

5.判断
そこで,上記相違点について検討すると,当審における拒絶理由通知で引用された特開平9-233453号公報第【0020】段落に,「ビデオ・ボード34は,先に説明したようにビデオ・キャプチャ機能を具備し,取り込んだビデオ・データをビットマップ・ディスプレイ35に供給して映像表示させるだけでなく,バス38を介してCPU22にも供給する。」と記載され,また,当審における拒絶理由通知において周知例として示した特開平9-237166号公報第【0005】段落に,「最近では,ZV(Zoomed Video)ポートと称する動画専用のバスを使用して,PCカードとディスプレイコントローラとを直接接続する技術が開発され始めている。ZVポートは,システムバスを使用することなく,PCカードがディスプレイコントローラ/オーディオコントローラにビデオ/オーディオデータを直接出力することを可能にする。」と記載され,特開平9-44270号公報第【0030】段落に,「上記データ入出力ポートPAより入力された,MPEGエンコーダ31で圧縮処理されたビデオデータをシステムバス10に送出制御するとともに,ZVポート(NTSCデータ入力ポート)PBより入力された,MPEGエンコーダ31で圧縮処理される前のビデオデータを表示コントローラ16に出力制御して,MPEGエンコーダカード3によるエンコード時のビデオデータを装置内に取り込む際に,そのライブデータを同時表示制御する。」と記載され,さらに,New PC Card Standerdの最新動向,日経バイト,第140号,1995年7月1日,p.240?248の「PC Card ZV Portとは」欄に,「ZV Portとは,PC CardとVideoコントローラを直接つなげて,PCIバスやCPUを介さずにPCカードからVideoコントローラのVGAのフレームバッファにデータを送るバスである。」(第242頁右欄第2?7行),「ビデオキャプチャPCカードから入力される動画情報をPCIC(当審注:「PC Card Interface Controller」の略語)からPCIへ送りデータ処理を行うと同時に直接Videoコントローラにも送ることができるため,現在キャプチャしている内容をモニターで確認することができる。」(第242頁右欄第13?19行)と記載されているように,ビデオ・データ取り込み部を,システムバスを介さずに,表示部に接続し,取り込んだビデオ・データを,システムバスを介さずに,該表示部に送ることは,本願優先日前において、周知技術である。
よって,引用例1記載発明において,かかる周知技術を適用し,「画像入力装置6」及び「非圧縮画像取り込み装置7」(ビデオサブシステム)を,バス10を介して,表示装置5(グラフィックスサブシステム)に接続することに代え,バス10を介さずに,表示装置5(グラフィックスサブシステム)に接続するようにし,偶数フィールドデータ(第1のフィールドのビデオデータ)を,バス10を介して,表示装置5(グラフィックスサブシステム)に転送することに代え,バス10を介さずに,表示装置5(グラフィックスサブシステム)に転送するようになすことは,当業者が容易になし得たことである。
また,本願発明1の作用効果も,引用例1に記載された発明及び周知技術より,当業者が予測しうるものである。

よって,本願発明1は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-30 
結審通知日 2010-07-13 
審決日 2010-07-27 
出願番号 特願2000-526894(P2000-526894)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 茂和  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 清水 稔
鈴木 重幸
発明の名称 コンピュータシステム等におけるビデオ処理を改善するための方法及び装置  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 山川 茂樹  
代理人 西山 修  
代理人 山川 政樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ