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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1228698
審判番号 不服2008-74  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-04 
確定日 2010-12-15 
事件の表示 特願2004- 90565「ホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月24日出願公開、特開2004-362546〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年3月25日の出願(パリ条約による優先権主張2003年6月5日、韓国)であって、平成18年6月30日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月3日付けで手続補正がなされたが、平成19年9月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月4日に審判請求がなされるとともに、同年2月4日付けで手続補正がなされたものである。そして、平成21年3月27日付けで審査官から前置報告がなされ、同年12月11日付けで当審より審尋がなされたものである。

第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年2月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成20年2月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成18年10月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
ライセンスサーバ提供の正式ライセンスを格納するライセンス格納モジュールと、
前記ライセンス格納モジュールに格納された正式ライセンスを用いて、ネットワーク内のホームデバイスで使用することが可能な臨時ライセンスを発給する臨時ライセンス発給モジュールとを含むことを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理装置。
【請求項2】
ホームデバイスからライセンス発給要請を受け、当該正式ライセンスがライセンス格納モジュールに格納されているか否かを検索し、検索結果をライセンス要請モジュールと臨時ライセンス発給モジュールに伝達するライセンス検索モジュールと、
前記正式ライセンスが前記ライセンス格納モジュールに存在しない場合には、ライセンスサーバに当該正式ライセンスを発給することを要請するライセンス要請モジュールとをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理装置。
【請求項3】
コンテンツに合わせてライセンスを与えるライセンスサーバと、
前記コンテンツのダウンロードサービスを提供するWebサーバと、
前記Webサーバからダウンロードしたコンテンツとライセンスサーバから発給されたライセンスとを用いてメディアファイルを再生するコンテンツ再生器を含むホームデバイスと、
前記ライセンスサーバから与えられたライセンスをホームネットワーク上で共有できるようにするライセンス管理モジュールとを含むことを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム。
【請求項4】
原コンテンツをパッケージングすることにより、暗号化されたコンテンツを生成するパッケージサーバをさらに含むことを特徴とする請求項3記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム。
【請求項5】
前記コンテンツのストリームサービスを提供するメディアサーバをさらに含むことを特徴とする請求項3又は4記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム。
【請求項6】
前記ライセンス管理モジュールは、
ライセンスサーバ提供の正式ライセンスを格納するライセンス格納モジュールと、
前記ライセンス格納モジュールに格納された正式ライセンスを用いて、ネットワーク内のホームデバイスで使用することが可能な臨時ライセンスを発給する臨時ライセンス発給モジュールとを含むことを特徴とする請求項3又は4記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム。
【請求項7】
前記ライセンス管理モジュールは、
ホームデバイスからライセンス発給要請を受け、当該正式ライセンスがライセンス格納モジュールに格納されているか否かを検索し、検索結果をライセンス要請モジュールと臨時ライセンス発給モジュールに伝達するライセンス検索モジュールと、
前記正式ライセンスが前記ライセンス正式モジュールに存在しない場合には、ライセンスサーバに当該ライセンスを発給することを要請するライセンス要請モジュールとをさらに含むことを特徴とする請求項6記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム。
【請求項8】
ホームデバイスがライセンス管理モジュールに当該ライセンスを要請する段階と、
前記ライセンスがライセンス管理モジュール内にあるか否かを、前記ライセンス管理モジュールが判断する段階と、
前記判断結果に応じて前記ライセンス管理モジュールが前記ホームデバイスに臨時ライセンスを与える段階と、
前記ホームデバイスに存在するコンテンツ再生器を用いてメディアを実行する段階とを含むことを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理方法。
【請求項9】
前記判断の結果、当該ライセンスがライセンス管理モジュールになければ、前記ホームデバイスに臨時ライセンスを与える段階は、
前記ライセンス管理モジュールがライセンスサーバからライセンスをダウンロードする段階と、
前記ライセンス管理モジュールがダウンロードしたライセンスと同一の臨時ライセンスを与える段階とを含むことを特徴とする請求項8記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理方法。
【請求項10】
前記判断の結果、当該ライセンスがライセンス管理モジュールにあれば、前記ホームデバイスに臨時ライセンスを与える段階は、
前記ライセンス管理モジュールがハードウェアID及び再生器IDを用いて臨時ライセンスを与える段階とを含むことを特徴とする請求項8記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理方法。
【請求項11】
前記ライセンス管理モジュールに当該ライセンスを要請する段階の以前段階として、
コンテンツ提供者のシステムが原コンテンツをパッケージングする段階と、
コンテンツ提供者のシステムがパッケージングされたコンテンツを配布する段階と、
コンテンツ提供者のシステムがライセンスのポリシーを設定する段階と、
ホームデバイスがコンテンツをダウンロードする段階とをさらに含むことを特徴とする請求項8?10のいずれか1項に記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理方法。
【請求項12】
コンピュータに請求項8?10のいずれか1項に記載の方法を実行させるためのコンピュータプログラムを、コンピュータで判読可能なフォーマットで記録した記録媒体。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)を、

「【請求項1】
ライセンスサーバ提供の正式ライセンスを格納するライセンス格納モジュールと、
前記ライセンス格納モジュールに格納された正式ライセンスを用いて、ネットワーク内のホームデバイスで使用することが可能な臨時ライセンスを発給する臨時ライセンス発給モジュールと、
ホームデバイスからライセンス発給要請を受け、当該正式ライセンスがライセンス格納モジュールに格納されているか否かを検索し、検索結果をライセンス要請モジュールと臨時ライセンス発給モジュールに伝達するライセンス検索モジュールと、
前記正式ライセンスが前記ライセンス格納モジュールに存在しない場合には、ライセンスサーバに当該正式ライセンスを発給することを要請するライセンス要請モジュールと、
を含み、
前記ライセンス要請モジュールからの要請により正式ライセンスが発給された場合、前記臨時ライセンス発給モジュールは、前記当該正式ライセンスと同一のライセンスを臨時ライセンスとして前記ホームデバイスに発給することを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理装置。
【請求項2】
コンテンツに合わせてライセンスを与えるライセンスサーバと、
前記コンテンツのダウンロードサービスを提供するWebサーバと、
前記Webサーバからダウンロードしたコンテンツとライセンスサーバから発給されたライセンスとを用いてメディアファイルを再生するコンテンツ再生器を含むホームデバイスと、
前記ライセンスサーバから与えられたライセンスをホームネットワーク上で共有できるようにするライセンス管理モジュールと、を含み、
前記ライセンス管理モジュールは、
ライセンスサーバ提供の正式ライセンスを格納するライセンス格納モジュールと、
前記ライセンス格納モジュールに格納された正式ライセンスを用いて、ネットワーク内のホームデバイスで使用することが可能な臨時ライセンスを発給する臨時ライセンス発給モジュールと、
ホームデバイスからライセンス発給要請を受け、当該正式ライセンスがライセンス格納モジュールに格納されているか否かを検索し、検索結果をライセンス要請モジュールと臨時ライセンス発給モジュールに伝達するライセンス検索モジュールと、
前記正式ライセンスが前記ライセンス正式モジュールに存在しない場合には、ライセンスサーバに当該ライセンスを発給することを要請するライセンス要請モジュールと、をさらに含み、
前記ライセンス要請モジュールからの要請により正式ライセンスが発給された場合、前記臨時ライセンス発給モジュールは、前記当該正式ライセンスと同一のライセンスを臨時ライセンスとして前記ホームデバイスに発給することを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム。
【請求項3】
原コンテンツをパッケージングすることにより、暗号化されたコンテンツを生成するパッケージサーバをさらに含むことを特徴とする請求項2記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム。
【請求項4】
前記コンテンツのストリームサービスを提供するメディアサーバをさらに含むことを特徴とする請求項2又は3記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム。
【請求項5】
ホームデバイスがライセンス管理モジュールに当該ライセンスを要請する段階と、
前記ライセンスがライセンス管理モジュール内にあるか否かを、前記ライセンス管理モジュールが判断する段階と、
前記判断結果に応じて前記ライセンス管理モジュールが前記ホームデバイスに臨時ライセンスを与える段階と、
前記ホームデバイスに存在するコンテンツ再生器を用いてメディアを実行する段階と、を含み、
前記判断の結果、当該ライセンスがライセンス管理モジュールになければ、前記ホームデバイスに臨時ライセンスを与える段階は、
前記ライセンス管理モジュールがライセンスサーバからライセンスをダウンロードする段階と、
前記ライセンス管理モジュールがダウンロードしたライセンスと同一の臨時ライセンスを与える段階と、を含み、
一方、前記判断の結果、当該ライセンスがライセンス管理モジュールにあれば、前記ホームデバイスに臨時ライセンスを与える段階は、
前記ライセンス管理モジュールがハードウェアID及び再生器IDを用いて臨時ライセンスを与える段階を含む
ことを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理方法。
【請求項6】
前記ライセンス管理モジュールに当該ライセンスを要請する段階の以前段階として、
コンテンツ提供者のシステムが原コンテンツをパッケージングする段階と、
コンテンツ提供者のシステムがパッケージングされたコンテンツを配布する段階と、
コンテンツ提供者のシステムがライセンスのポリシーを設定する段階と、
ホームデバイスがコンテンツをダウンロードする段階とをさらに含むことを特徴とする請求項5記載のホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理方法。
【請求項7】
コンピュータに請求項5または6記載の方法を実行させるためのコンピュータプログラムを、コンピュータで判読可能なフォーマットで記録した記録媒体。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
に補正するものである。

2.補正の適否
2-1.新規事項の有無、補正の目的要件
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合している。
そして、本件補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2を独立請求項とし、その補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものを補正後の請求項1とする補正を含むものである。前記限定は、その補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項2に記載された発明とその補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

2-2.補正後の発明の独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の請求項1記載の発明(以下「補正後の発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。
ここで、補正後の発明は、前記「1.補正の内容」の「補正後の請求項1」に記載された以下のものと認められる。

「ライセンスサーバ提供の正式ライセンスを格納するライセンス格納モジュールと、
前記ライセンス格納モジュールに格納された正式ライセンスを用いて、ネットワーク内のホームデバイスで使用することが可能な臨時ライセンスを発給する臨時ライセンス発給モジュールと、
ホームデバイスからライセンス発給要請を受け、当該正式ライセンスがライセンス格納モジュールに格納されているか否かを検索し、検索結果をライセンス要請モジュールと臨時ライセンス発給モジュールに伝達するライセンス検索モジュールと、
前記正式ライセンスが前記ライセンス格納モジュールに存在しない場合には、ライセンスサーバに当該正式ライセンスを発給することを要請するライセンス要請モジュールと、
を含み、
前記ライセンス要請モジュールからの要請により正式ライセンスが発給された場合、前記臨時ライセンス発給モジュールは、前記当該正式ライセンスと同一のライセンスを臨時ライセンスとして前記ホームデバイスに発給することを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理装置。」

2-2-1.特許法第29条の2に規定する要件についての検討
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由Cに引用された、本願の優先権主張の日前の国際出願日(平成15年3月17日)に出願された他の国際出願であって、本願出願後に特許協力条約第21条に規定する国際公開がされた特願2003-579146号(国際公開第03/081499号パンフレット)の前記国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下「先願明細書」という)には、その国際公開パンフレットを参照すると次の(ア)?(キ)の事項が記載されている。(備考:下線は当審で便宜上付与したものである。)

(ア)「本発明の目的は、コンテンツ配信サービスにおいて、配信されたコンテンツをホームネットワークに接続された複数の端末間で利用するために、複数端末間でライセンスを共有することを可能とするライセンス管理方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、コンテンツ配信サービスにおいて、配信されたコンテンツをホームネットワークに接続された複数の端末間で利用するために、ライセンスを一括管理するライセンス管理装置と、上記ライセンス管理装置からコンテンツを再生するためのライセンスを取得する端末装置と、上記ライセンス管理装置と上記端末装置にライセンスを送信するライセンスサーバ装置とを提供することにある。」(3頁27行目?4頁1行目)

(イ)「さらに、上記ライセンス管理装置において、上記ホームネットワークに接続された端末装置からの要求に応じて、上記ライセンス制御手段は、保持する任意のライセンスに対して、復号鍵(コンテンツ鍵)と該ライセンスの利用条件を超えない範囲の新規の利用条件とで新規にライセンス(宅内ライセンス)を生成し、上記通信手段を用いて、該宅内ライセンスを上記端末装置に送信する構成とした。
さらに、上記ライセンス管理装置において、上記端末装置から要求されるライセンスが存在しない場合、上記ライセンスサーバから該ライセンスを取得し、該ライセンスから宅内ライセンスを生成して上記端末装置に送信する構成とした。」(4頁20行目?30行目)

(ウ)「図3に示すように、ライセンス管理装置10は、CPU11と、主記憶12と、通信制御装置13と、ストレージ装置14と、ライセンス制御装置15と、ライセンス生成装置16と、放送受信装置17と、入力装置19とを有して構成される。そして、ライセンス管理装置10の各構成要素はバス18によって接続され、各構成要素間で必要な情報が伝送可能なように構成されている。」(9頁21行目?26行目)

(エ)「まず、端末装置20が、ユーザが選択したコンテンツのメタデータに含まれるコンテンツIDを取得し(ステップS201)、該コンテンツIDが示すコンテンツに対する宅内ライセンスが端末装置20に存在するかどうかを検索する(ステップS202)。 ・・・(中略)・・・
また、上記コンテンツIDが示すコンテンツに対する宅内ライセンスが端末装置20に存在しないならば、ライセンス管理装置10に対し、ホームネットワーク50を介して宅内ライセンス取得を指示する旨の情報を送信する。このとき、ライセンス管理装置10に送信される情報には、上記コンテンツIDの他に、要求利用条件、ユーザ認証に必要なユーザID(もしくはユーザIDとパスワード)や機器認証に必要な端末装置20に固有な情報(機器ID)といった認証データ、該コンテンツのメタデータに含まれるライセンスサーバのURLを必要に応じ含むことができる。要求利用条件とは、取得すべき宅内ライセンスに含まれる利用条件155(視聴期限156、視聴回数157等)に設定する値である。要求利用条件はその都度ユーザが入力装置28を使用して指定したり、あらかじめ決めておくこともできる。 続いて、ライセンス管理装置10では、ライセンス制御装置15が端末装置20から送信される情報を用いて認証処理を行う(ステップS203)。 ・・・(中略)・・・
ステップS203において認証が成功したならば、ライセンス制御装置15が端末装置20から送信される情報に含まれるコンテンツIDが示すコンテンツに対するライセンスがライセンス制御装置15に存在するかどうかを検索する(ステップS204)。」(22頁36行目?24頁5行目)

(オ)「上記コンテンツIDが示すコンテンツに対するライセンスがライセンス管理装置10に存在しないならば、端末装置20から送信されたライセンスサーバのURLに記述されたアドレスを持つライセンスサーバ31に対し、通信網60を介してライセンス取得を指示する旨の情報を送信する。・・・(中略)・・・
続いて、ライセンスサーバ31では、・・・(中略)・・・
ステップS205において認証が成功したならば、ライセンス管理装置10から送信される情報に含まれるコンテンツIDが示すコンテンツに対するライセンスが、ライセンスサーバ31のライセンス情報206に保持され、かつ上記ユーザIDで示されるユーザの購入ライセンスに存在するかどうかをライセンス発行部203が検索する(ステップS206)。つまり、ライセンス情報206で保持されるライセンスのうち、上記ユーザIDで示されるユーザが購入した全ライセンスのコンテンツID101が指示する値と該コンテンツIDとを比較し、一致したライセンスがあれば存在するということになる。
もし、一致したライセンスが存在するならば、ライセンス発行部203が該ライセンスを要求元であるライセンス管理装置10に送信する(ステップS207)。」(24頁9行目?25頁9行目)

(カ)「続いて、ライセンス管理装置10は、ステップS207から送信される情報がライセンスであるならば、該ライセンスをライセンス制御装置15における不揮発メモリ73に格納する(ステップS208)。さらに、ステップS204において一致したライセンスもしくはステップS208において格納したライセンスから、上記要求利用条件に合致した宅内ライセンスを生成し(ステップS209)、該宅内ラインセンスを要求元である端末装置20に送信する(ステップS210)。 ・・・(中略)・・・
そして、端末装置20は、ステップS210において送信された情報が宅内ライセンスであれば、宅内ライセンス処理装置25における不揮発性メモリ73に格納し(ステップS211)、処理を終了する。
以上のように、ユーザがライセンス購入後初めてコンテンツを視聴する場合は、該ライセンスをライセンスサーバ31からライセンス管理装置10に送信して、宅内ライセンスを発行する。それ以降(2回目以降)の視聴時は、ライセンス管理装置10から宅内ライセンスを発行するだけであり、ライセンスをライセンス管理装置10で集中的に管理することが可能になる。」(25頁15行目?25頁36行目)

(キ)「図6に戻り、次に、コンテンツの再生が終了し必要の無くなった宅内ライセンスの後処理を行う(ステップS400)。ここでは、後処理として、端末装置20(宅内ライセンス処理装置25)が該宅内ライセンスを該宅内ライセンスの生成元であるライセンス管理装置10に送信(返却)し、ライセンス管理装置10(ライセンス制御装置15)が該宅内ライセンスを生成したライセンスの利用条件を更新する。例えば、図8(c)に示した宅内ライセンス110をライセンス管理装置10に返却することで、図8(b)に示したライセンス100を、図8(a)に示したライセンス100の状態に戻すことができる。」(30頁14行目?23行目)

(ア)における記載から、先願明細書には、ホームネットワーク上におけるコンテンツを利用するためのライセンス管理装置が記載されていると解される。

(ウ)における記載、(オ)における記載「ライセンスサーバ31では、・・・(中略)・・・ライセンス発行部203が該ライセンスを要求元であるライセンス管理装置10に送信する(ステップS207)。」、及び(カ)における記載「続いて、ライセンス管理装置10は、ステップS207から送信される情報がライセンスであるならば、該ライセンスをライセンス制御装置15における不揮発メモリ73に格納する(ステップS208)。」からすると、ライセンス管理装置が、ライセンスサーバ提供のライセンスを格納するライセンス制御装置における不揮発メモリ(以下、「ライセンス格納手段」という)を有していると解される。
(イ)における記載「上記ライセンス管理装置において、上記ホームネットワークに接続された端末装置からの要求に応じて、上記ライセンス制御手段は、保持する任意のライセンスに対して、復号鍵(コンテンツ鍵)と該ライセンスの利用条件を超えない範囲の新規の利用条件とで新規にライセンス(宅内ライセンス)を生成し、上記通信手段を用いて、該宅内ライセンスを上記端末装置に送信する」からすると、前記ライセンス管理装置は、前記ライセンス格納手段に格納されたライセンスを用いて、ホームネットワーク内の端末装置で使用することが可能な宅内ライセンスを発給する手段(以下、「宅内ライセンス発給手段」という)を有していると解される。
(キ)における記載からすると、前記ライセンス管理装置は、端末装置から、ユーザが前記端末装置を使用してコンテンツの利用を終えた場合に、必要のなくなった前記宅内ライセンスの返却を受け、該宅内ライセンスを生成したライセンスの利用条件を更新する手段(以下、「ライセンス利用条件更新手段」という)を有していると解される。
(エ)における記載「上記コンテンツIDが示すコンテンツに対する宅内ライセンスが端末装置20に存在しないならば、ライセンス管理装置10に対し、ホームネットワーク50を介して宅内ライセンス取得を指示する旨の情報を送信する。」、及び(エ)における記載「ライセンス管理装置10では、 ・・・(中略)・・・ ライセンス制御装置15が端末装置20から送信される情報に含まれるコンテンツIDが示すコンテンツに対するライセンスがライセンス制御装置15に存在するかどうかを検索する(ステップS204)。」からすると、ライセンス管理装置は、端末装置から宅内ライセンス取得要求を受け、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されているか否かを検索する手段(以下、「ライセンス検索手段」という)を有していると解される。
そして、(カ)における記載「ステップS204において一致したライセンスもしくはステップS208において格納したライセンスから、上記要求利用条件に合致した宅内ライセンスを生成し(ステップS209)、該宅内ラインセンスを要求元である端末装置20に送信する」からすると、前記ライセンス検索手段は、前記検索結果が“格納されている”場合には、ライセンス格納手段に格納されたライセンスを用いて、ホームネットワーク内の端末装置で使用することが可能な宅内ライセンスを発給する宅内ライセンス発給手段に処理をつなげると解される。
また、(オ)における記載「上記コンテンツIDが示すコンテンツに対するライセンスがライセンス管理装置10に存在しないならば、端末装置20から送信されたライセンスサーバのURLに記述されたアドレスを持つライセンスサーバ31に対し、通信網60を介してライセンス取得を指示する旨の情報を送信する。」からすると、ライセンス管理装置は、前記ライセンスが前記ライセンス格納手段に存在しない場合には、ライセンスサーバに当該ライセンスを発給することを要求する手段(以下、「ライセンス要求手段」という)を有しており、前記ライセンス検索手段は、前記検索結果が“格納されていない”場合には、前記ライセンス要求手段に処理をつなげると解される。
すなわち、前記ライセンス検索手段は、検索結果をライセンス要求手段と宅内ライセンス発給手段に伝達すると解される。
そして、(イ)における記載「上記ライセンス制御手段は、保持する任意のライセンスに対して、…該ライセンスの利用条件を超えない範囲の新規の利用条件とで新規にライセンス(宅内ライセンス)を生成し、…該宅内ライセンスを上記端末装置に送信する」、(エ)における記載「ライセンス管理装置10に送信される情報には、上記コンテンツIDの他に、要求利用条件、… を必要に応じ含むことができる。要求利用条件とは、取得すべき宅内ライセンスに含まれる利用条件155(視聴期限156、視聴回数157等)に設定する値である。要求利用条件は … あらかじめ決めておくこともできる。」及び(カ)における記載「ステップS208において格納したライセンスから、上記要求利用条件に合致した宅内ライセンスを生成し(ステップS209)、該宅内ラインセンスを要求元である端末装置20に送信する(ステップS210)。」からすると、ライセンス要求手段からの要求によりライセンスが発給された場合、前記宅内ライセンス発給手段は、前記当該ライセンスの利用条件を超えない範囲でユーザがあらかじめ決めておいた利用条件を含む宅内ライセンスを前記端末装置に発給すると解される。

よって、上記(ア)?(キ)の記載事項によると、先願明細書には、 以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

ライセンスサーバ提供のライセンスを格納するライセンス格納手段と、
前記ライセンス格納手段に格納されたライセンスを用いて、ホームネットワーク内の端末装置で使用することが可能な宅内ライセンスを発給する宅内ライセンス発給手段と、
端末装置から、ユーザが前記端末装置を使用してコンテンツの利用を終えた場合に、必要のなくなった前記宅内ライセンスの返却を受け、該宅内ライセンスを生成したライセンスの利用条件を更新するライセンス利用条件更新手段と、
端末装置から宅内ライセンス取得要求を受け、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されているか否かを検索し、検索結果をライセンス要求手段と宅内ライセンス発給手段に伝達するライセンス検索手段と、
前記ライセンスが前記ライセンス格納手段に存在しない場合には、ライセンスサーバに当該ライセンスを発給することを要請するライセンス要求手段と、
を含み、
前記ライセンス要求手段からの要求によりライセンスが発給された場合、前記宅内ライセンス発給手段は、前記当該ライセンスの利用条件を超えない範囲でユーザがあらかじめ決めておいた利用条件を含む宅内ライセンスを前記端末装置に発給することを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツを利用するためのライセンス管理装置。

(2)対比・判断
そこで、本願発明と先願発明とを対比する。
先願発明の「ライセンス」、「宅内ライセンス」、「ホームネットワーク」、「端末装置」、及び「コンテンツを利用する」は、それぞれ本願発明の「正式ライセンス」、「臨時ライセンス」、「ネットワーク」、「ホームデバイス」、及び「コンテンツ実行」に相当する。
先願発明の「ライセンス格納手段」、「宅内ライセンス発給手段」、「宅内ライセンス取得要求」、「ライセンス要求手段」、及び「ライセンス検索手段」は、それぞれ本願発明の「ライセンス格納モジュール」、「臨時ライセンス発給モジュール」、「ライセンス発給要請」、「ライセンス要請モジュール」、及び「ライセンス検索モジュール」に相当する。

そして、先願発明の「当該ライセンスの利用条件を超えない範囲でユーザがあらかじめ決めておいた利用条件を含む宅内ライセンスを前記端末装置に発給する」点と補正後の発明の「正式ライセンスと同一のライセンスを臨時ライセンスとして前記ホームデバイスに発給する」点とは、見かけ上相違する。
しかしながら、先願発明の「当該ライセンスの利用条件を超えない範囲でユーザがあらかじめ決めておいた利用条件を含む宅内ライセンス」について検討すると、そもそも、ライセンスを購入したユーザ本人が、初めてコンテンツを端末装置で視聴する場合に、ライセンスサーバから購入したライセンスの利用条件と同一の利用条件で視聴することには何ら問題もないこと、また先願発明が、ユーザが前記端末装置を使用してコンテンツの視聴を終えた場合に、前記宅内ライセンスの返却を受け、該宅内ライセンスを生成したライセンスの利用条件を更新することからすると、ユーザが初めてコンテンツを端末装置で視聴する場合にあらかじめ決めておく利用条件として、購入したライセンスの利用条件そのものを用いるように設定しておくことは、当業者にとって常識的な事項であって、新たな効果を奏するものでもない。
よって、前記相違点は、課題解決のための具体化手段における微差であるから、補正後の発明と先願発明とは、実質同一である。

してみると、補正後の発明の構成は、すべて先願発明に示されているものであって、本願発明は先願発明と実質同一ということになる。
以上のように、補正後の発明は先願明細書に記載された発明と実質同一であり、しかも、補正後の発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、補正後の発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

(3)小括
したがって、補正後の発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-2-2.特許法第29条第2項に規定する要件についての検討
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由Eに引用された刊行物「岡山祐孝,外1名,“コンテンツ配信ソリューションにおける著作権管理・保護技術”,日立評論,日本,日立評論社,2002年10月1日,2002年10月増刊号,p.17-22」(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(備考:下線は当審で便宜上付与したものである。)

(ク)「3.2 コンテンツ利用権管理の考え方
コンテンツ配信モデルとして超流通配信^(2))をべースとしており,コンテンツは暗号化されていて,自由に流通する。つまり,コンテンツはどのような流通経路をたどってもよく,また,暗号化コンテンツのコピーも自由である。ユーザーは,コンテンツを利用するときに,暗号化コンテンツを復号するために必要な復号かぎと,コンテンツの利用条件を含んだライセンスを購入し,利用条件に従って利用する。このモデルで著作権保護を実現するためには,ライセンスに含まれる復号かぎの秘匿性や,利用条件の強制が条件となる。
コンテンツ配信ビジネスでは,ライセンスを正規に購入したユーザーに,安全かつ正確に配信することが重要であるが,その一方で,ユーザーの利便性を損ねることがないようにしなければならない。そのためには,以下のような要件を満たすコンテンツ利用権管理が重要である。
(1)ユーザーが所有する複数の端末での利用
正規に購入したコンテンツは,ユーザーが所有する複数の端末,例えばパソコンやセットトップボックス,PDA(Personal Digital Assistant)など,さまざまな端末で利用できることが望ましい。端末ごとにライセンスを購入することになれば,ユーザーにとって割高感はぬぐいきれない。ユーザーは,いつでもどこでもコンテンツを利用できることが重要である。
(2)同じ端末で複数のサービス利用
サービスごとに違う端末が必要になると,コンテンツごとに端末を変えるなどの操作が必要となり,不便である。このような状況を避けるためにも,同じ端末で複数のサービスを利用できることが望ましい。しかし,ライセンスの管理をしないと,利用したいコンテンツのライセンスの所在がわからなくなる。このようなことを考えると,購入したライセンスを集中的に管理する必要がある。」(19頁左欄5行目?右欄1行目。)

(ケ)「3.3 ライセンス管理
ユーザーが所有する複数の端末でライセンスを共有して使用するために,ライセンス発行サーバでライセンスを管理する。端末で利用するときは,ライセンスそのものではなく,ライセンスに含まれる利用条件を制限し,一時的に生成されるライセンス(一時ライセンス)を取得して利用する。一時ライセンスを取得するときには,ネットワーク上での盗聴や成り済まし,改ざんを防ぐために,一時ライセンスを受け渡しする機器・モジュール間で,相互認証と暗号化通信を行う。 ・・・(中略)・・・

3.4 コンテンツ利用の手順
コンテンツを利用するための手順は以下のとおりである。
(1)相互認証・かぎ交換
・・・(中略)・・・
(2)一時ライセンス取得
ユーザーがコンテンツを利用するとき,端末(ライセンスモジュール)でライセンス発行サーバから一時ライセンスを取得し,耐タンパモジュールに格納する。・・・(中略)・・・
(3) コンテンツ再生
・・・(中略)・・・
(4)一時ライセンス返却
コンテンツ利用を終えればライセンス発行サーバに一時ライセンスを返却する。このような操作により,ユーザーが所有する他の端末でも,一時ライセンスを取得してコンテンツを利用することができる。」(19頁右欄2行目?20頁左欄25行目。)

(コ)「3.5 一時ライセンスの利用条件
ライセンスに含まれる利用条件には,再生回数,期限などがある。例えば,10回再生という利用条件のライセンスがあり,端末から3回再生の要求があると,ライセンスは再生回数を7にし,利用条件3回の一時ライセンスを発行する(図2参照)。そのとき,端末側で2回しか再生しなければ,その一時ライセンスをライセンス発行サーバに返却し,残りの1回分の利用条件をライセンスの利用条件に併合させ,再生回数を8にする。このように,消費していない一時ライセンスを返却することで,ユーザーは,購入した権利をむだなく利用することができる。」(20頁左欄下から4行目?右欄6行目。)

(サ)「図2 一時ライセンスの利用条件の例
一時ライセンスの利用条件では,ライセンスの利用条件を超えない範囲で設定する。消費しなかった利用条件は,一時ライセンスを返却することにより,ライセンスの利用条件に併合される。」(20頁図2)

(シ)「3.6 ホームサーバによるライセンスー括管理
ユーザーが複数の配信事業者のサービスを利用している場合,購入したコンテンツの一時ライセンスは,各配信事業者のライセンス発行サーバに接続して取得することになる。そのため,宅内にホームサーバを設置し,各配信事業者から購入したライセンスをホームサーバで一括管理する(図3参照)。これにより,端末をホームサーバに接続さえすれば,購入したすべてのライセンスの一覧が取得でき,一時ライセンスの取得が可能となる。また,端末情報の登録もホームサーバに一度行うだけで済むので,ユーザーの利便性が損なわれることはない。
また,ダウンロード型のサービスでは,ダウンロードしたコンテンツをホームサーバに蓄積しておき,実際の端末での利用では,ストリーミングでリアルタイムに配信すれば端末のハードデイスクが必要なくなり,いっそう安価な端末を提供することができる。
ホームサーバは配信事業者のライセンス発行サーバの代行として動作することになり,ライセンスを管理するためには,耐タンパ領域が必須となる。」(20頁右欄7行目?右欄25行目。)

(ス)「図3 ホームサーバでのライセンス管理の仕組み
ホームサーバでライセンスを一括管理し,端末では,宅内ネットワークを介してホームサーバから一時ライセンスを取得して利用する。」
そして、「図3」から、ホームサーバでのライセンス管理の仕組みが、ライセンスが配信事業者のライセンス発行サーバからホームサーバに発給され、前記発給されたライセンスを前記ホームサーバの耐タンパ領域で一括管理し、宅内の端末に対して一時ライセンスを発給するものと認められる。(21頁図3)

ここで、(シ)における記載「ユーザーが複数の配信事業者のサービスを利用している場合,購入したコンテンツの一時ライセンスは,各配信事業者のライセンス発行サーバに接続して取得することになる。そのため,宅内にホームサーバを設置し,各配信事業者から購入したライセンスをホームサーバで一括管理する(図3参照)。」、(シ)における記載「ホームサーバは配信事業者のライセンス発行サーバの代行として動作することになり,ライセンスを管理するためには,耐タンパ領域が必須となる。」、及び(オ)の「図3 ホームサーバでのライセンス管理の仕組み」における記載「ホームサーバでライセンスを一括管理し,端末では,宅内ネットワークを介してホームサーバから一時ライセンスを取得して利用する。」からすると、引用文献には、配信事業者のライセンス発行サーバの代行として動作するホームサーバについて記載されている。
よって、上記(ケ)及び(コ)に記載された、ユーザが所有する複数の端末でライセンスを共有して使用するための、ライセンス発行サーバでライセンスを管理する機能は、ホームサーバが配信事業者のライセンス発行サーバの代行として動作する場合に、該ホームサーバの有する機能として読み替えることができる。そこで、以下、(ケ)及び(コ)に記載された事項を、ホームサーバの機能として読み替えることとする。

(ケ)における記載「ユーザーが所有する複数の端末でライセンスを共有して使用するために,ライセンス発行サーバでライセンスを管理する。端末で利用するときは,ライセンスそのものではなく,ライセンスに含まれる利用条件を制限し,一時的に生成されるライセンス(一時ライセンス)を取得して利用する。」、(ケ)における記載「ユーザーがコンテンツを利用するとき,端末(ライセンスモジュール)でライセンス発行サーバから一時ライセンスを取得し,耐タンパモジュールに格納する。」、及び(ス)における記載「「図3」から、ホームサーバでのライセンス管理の仕組みが、ライセンスが配信事業者のライセンス発行サーバからホームサーバに発給され、前記発給されたライセンスを前記ホームサーバの耐タンパ領域で一括管理し、宅内の端末に対して一時ライセンスを発給するものと認められる。」からすると、引用文献2には、配信事業者のライセンス発行サーバ提供のライセンスを格納して一括管理する耐タンパ領域(以下、「ライセンス格納手段」という)と、端末からライセンス取得要求を受け、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されている場合に、前記ライセンス格納手段に格納されたライセンスを用いて、宅内ネットワーク内の端末で使用することが可能な一時ライセンスを発給する手段(以下、「一時ライセンス発給手段」という)を有する、ホームサーバが記載されていると解される。
すなわち、端末からライセンス取得要求を受け、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されている場合には、ライセンス格納手段に格納されたライセンスを用いて、宅内ネットワーク内の端末装置で使用することが可能な一時ライセンスを発給する一時ライセンス発給手段に処理をつなげると解される。
なお、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されていることを判断するために、前記ホームサーバが、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されているか否かを検索する手段(以下、「ライセンス格納手段」という)を有していることは、当業者にとって自明である。
また、(ケ)における記載「コンテンツ利用を終えればライセンス発行サーバに一時ライセンスを返却する。このような操作により,ユーザーが所有する他の端末でも,一時ライセンスを取得してコンテンツを利用することができる。」及び(コ)における記載からすると、前記ホームサーバは、端末から、ユーザが前記端末を使用してコンテンツの利用を終えた場合に、必要のなくなった前記一時ライセンスの返却を受け、該一時ライセンスを生成したライセンスの利用条件を更新する手段(以下、「ライセンス利用条件更新手段」という)を有していると解される。

よって、上記(ク)?(ス)及び関連する図面を参酌すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

ライセンス発行サーバ提供のライセンスを格納するライセンス格納手段と、
前記ライセンス格納手段に格納されたライセンスを用いて、宅内ネットワーク内の端末で使用することが可能な一時ライセンスを発給する一時ライセンス発給手段と、
端末から、ユーザが前記端末を使用してコンテンツの利用を終えた場合に、必要のなくなった前記一時ライセンスの返却を受け、該一時ライセンスを生成したライセンスの利用条件を更新するライセンス利用条件更新手段と、
端末からライセンス取得要求を受け、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されているか否かを検索し、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されている場合には、処理を一時ライセンス発給手段につなぐ、ライセンス検索手段を含むことを特徴とする宅内ネットワーク上におけるコンテンツを利用するためのホームサーバ。

(2)対比
ここで、補正後の発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「ライセンス発行サーバ」、「ライセンス」、「端末」、「一時ライセンス」、「コンテンツを利用するため」、及び「ホームサーバ」は、それぞれ補正後の発明の「ライセンスサーバ」、「正式ライセンス」、「ホームデバイス」、「臨時ライセンス」、「コンテンツ実行のため」、及び「ライセンス管理装置」に相当する。
引用発明の「宅内ネットワーク」は、補正後の発明の「ネットワーク」、及び「ホームネットワーク」に相当する。
引用発明の「ライセンス格納手段」、「一時ライセンス発給手段」、「ライセンス取得要求」、及び「ライセンス検索手段」は、それぞれ本願発明の「ライセンス格納モジュール」、「臨時ライセンス発給モジュール」、「ライセンス発給要請」、及び「ライセンス検索モジュール」に相当する。

よって、補正後の発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
ライセンスサーバ提供の正式ライセンスを格納するライセンス格納モジュールと、
前記ライセンス格納モジュールに格納された正式ライセンスを用いて、ネットワーク内のホームデバイスで使用することが可能な臨時ライセンスを発給する臨時ライセンス発給モジュールと、
ホームデバイスからライセンス発給要請を受け、当該正式ライセンスがライセンス格納モジュールに格納されているか否かを検索し、前記正式ライセンスが前記ライセンス格納モジュールに存在する場合に、臨時ライセンス発給モジュールに伝達するライセンス検索モジュールと、を備えることを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理装置。

(相違点)
補正後の発明の「ライセンス管理装置」は、ホームデバイスからライセンス発給要請を受け、当該正式ライセンスがライセンス格納モジュールに格納されているか否かを検索し、検索結果をライセンス要請モジュールと臨時ライセンス発給モジュールに伝達するライセンス検索モジュールと、前記正式ライセンスが前記ライセンス格納モジュールに存在しない場合には、ライセンスサーバに当該正式ライセンスを発給することを要請するライセンス要請モジュールとを含み、前記ライセンス要請モジュールからの要請により正式ライセンスが発給された場合、前記臨時ライセンス発給モジュールは、前記当該正式ライセンスと同一のライセンスを臨時ライセンスとして前記ホームデバイスに発給するのに対して、引用発明の「ホームサーバ」は、端末からライセンス取得要求を受け、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されているか否かを検索し、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されている場合には、処理を一時ライセンス発給手段につなぐ、ライセンス検索手段を含むが、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されていない場合に、ライセンス検索手段は、どのような処理につなげるのか、明らかでない点。

(3)判断
相違点について検討する。
引用文献2の上記(ク)に「ユーザーは,コンテンツを利用するときに,暗号化コンテンツを復号するために必要な復号かぎと,コンテンツの利用条件を含んだライセンスを購入し,利用条件に従って利用する。」、及び上記(シ)に「宅内にホームサーバを設置し,各配信事業者から購入したライセンスをホームサーバで一括管理する(図3参照)。」との記載があることからすると、引用発明の「ホームサーバ」が、端末からライセンス取得要求を受け、当該ライセンスがライセンス格納手段に格納されていない場合に、ユーザがコンテンツを利用できるように、配信事業者のライセンス発行サーバから該コンテンツの利用条件を含んだライセンスを購入する(すなわち、ライセンス発行サーバに当該ライセンスを発給することを要請する)ように構成する(すなわち、ライセンス購入手段を有するように構成する)ことは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。
その際に、上記(ク)に「ユーザーは,コンテンツを利用するときに,…コンテンツの利用条件を含んだライセンスを購入し,利用条件に従って利用する。」と記載されているように、ユーザーがコンテンツの利用条件を含んだライセンスを購入した際に,当該利用条件に従ってコンテンツを利用することは常識であって、ライセンスを購入したユーザ本人が、初めてコンテンツを端末で利用する場合に、ライセンスサーバから購入したライセンスの利用条件と同一の利用条件で利用することには何ら問題もないこと、また引用発明のホームサーバが、ユーザが前記端末を使用してコンテンツの利用を終えた場合に、前記一時ライセンスの返却を受け、該一時ライセンスを生成したライセンスの利用条件を更新することからすると、ユーザが初めてコンテンツを端末で利用する場合に、前記購入したライセンスの利用条件そのものを用いるようにすること、すなわち前記購入したライセンスの利用条件と同一の利用条件を含む一時ライセンスを一時ライセンスとして前記端末に発給するように構成することは、当業者であれば常識的になし得る事項である。
よって、相違点は格別のものではない。

上記で検討したごとく、相違点は格別のものではなく、そして、補正後の発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、補正後の発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)小括
補正後の発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年2月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成18年10月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(便宜上、補正前の請求項1と補正前の請求項2とを合わせて記載した。)

ライセンスサーバ提供の正式ライセンスを格納するライセンス格納モジュールと、
前記ライセンス格納モジュールに格納された正式ライセンスを用いて、ネットワーク内のホームデバイスで使用することが可能な臨時ライセンスを発給する臨時ライセンス発給モジュールとを含むホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理装置であって、
ホームデバイスからライセンス発給要請を受け、当該正式ライセンスがライセンス格納モジュールに格納されているか否かを検索し、検索結果をライセンス要請モジュールと臨時ライセンス発給モジュールに伝達するライセンス検索モジュールと、
前記正式ライセンスが前記ライセンス格納モジュールに存在しない場合には、ライセンスサーバに当該正式ライセンスを発給することを要請するライセンス要請モジュールとをさらに含むことを特徴とするホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理装置。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「2-2.補正後の発明の独立特許要件について」の「2-2-1.特許法第29条の2に規定する要件についての検討」の「(1)引用文献」及び「2-2-2.特許法第29条第2項に規定する要件についての検討」の「(1)引用文献」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、補正後の発明の発明特定事項「前記ライセンス要請モジュールからの要請により正式ライセンスが発給された場合、前記臨時ライセンス発給モジュールは、前記当該正式ライセンスと同一のライセンスを臨時ライセンスとして前記ホームデバイスに発給すること」を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の構成要件に限定要件を付加したものに相当する補正後の発明が、前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「2-2.補正後の発明の独立特許要件について」の「2-2-1.特許法第29条の2に規定する要件についての検討」の「(2)対比・判断 」に記載したとおり、先願明細書に記載された発明と実質同一であり、しかも、補正後の発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないものであるから、本願発明も、同様の理由により、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、補正後の発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

また、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の構成要件に限定要件を付加したものに相当する補正後の発明が、前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「2-2.補正後の発明の独立特許要件について」の「2-2-2.特許法第29条第2項に規定する要件についての検討」の「(3)判断」に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の請求項2に係る発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願の請求項2に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

また、本願の請求項2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-15 
結審通知日 2010-07-20 
審決日 2010-08-03 
出願番号 特願2004-90565(P2004-90565)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 161- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔小林 秀和宮司 卓佳  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 宮司 卓佳
石井 茂和
発明の名称 ホームネットワーク上におけるコンテンツ実行のためのライセンス管理システム及び方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  

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