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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G04B
管理番号 1228877
審判番号 不服2008-3176  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-12 
確定日 2010-12-15 
事件の表示 平成 9年特許願第124437号「硬質プラスティック時計ケースおよびプッシュボタンを含むアセンブリーおよびその製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月20日出願公開、特開平10- 48352〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年(1997年)5月14日(パリ条約による優先権主張1996年5月17日、フランス国)の出願であって、平成16年4月15日付けで明細書又は図面についての補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成19年8月3日付けで明細書又は図面についての補正(以下、「補正2」という。)がなされ、同年11月7日付け(送達:同年11月13日)で拒絶査定がなされたところ、平成20年2月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月11日付けで明細書又は図面についての補正(以下、「補正3」という。)がなされた。
その後、当審より平成22年1月21日付けで上記補正3を決定をもって却下するとともに、同年同月同日付けで拒絶理由を通知したところ、同年4月23日付けで明細書又は図面についての補正(以下、「補正4」という。)がなされた。
本願の請求項1に係る発明は、上記補正1、補正2及び補正4によって補正された明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】 硬質プラスティック時計ケース(2)および少なくとも1個のプッシュボタン(5)を含むアセンブリーであって、プッシュボタン(5)は、ステム(10)、および、ケース(2)の外側に突き出している可撓性ヘッド(12)を有し、ステム(10)はケース(2)の側面開口部(11)を通して可撓性ヘッド(12)から延びており、可撓性ヘッド(12)は弾性材料からできており、その弾性によってプッシュボタン(5)の戻り力が確保され、可撓性ヘッド(12)は開口部(11)を取り囲むケース(2)の外側表面の部分(15)の上に密閉状態で固定され、密閉状態で開口部(11)を閉止しており、
ここで、部分(15)はくぼんでおり、ステム(10)はケース(2)と同じ硬質プラスティック材料からできており、且つ、ステム(10)の第一末端(14)上、および前記外側表面のくぼんでいる部分(15)の上に、プッシュボタン(5)の可撓性ヘッド(12)が成形されていることを特徴とする、アセンブリー。」(以下、「本願発明」という。)

第2 当審の拒絶理由
これに対し、当審において通知した拒絶理由の概要は、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開昭61-271491号公報(昭和61年12月1日発行、以下、「引用文献1」という。)に記載された発明、及び特開昭63-34814号公報(昭和63年2月15日発行、以下、「引用文献2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第3 引用文献に記載の事項・発明
(1)引用文献1について
引用文献1には、以下の記載事項1A?1Bが図面とともに記載されている。

・記載事項1A
「この電子腕時計は時計ケース1の上面に外装部材であるキースイッチ2を一体に形成したものであり、時計ケース1はABS樹脂等の硬質合成樹脂からなり、キースイッチ2はポリウレタン等の軟質合成樹脂からなっている。この場合、時計ケース1は第2図に示すように、その左側ほぼ半分が若干(約20度)傾斜しており、この傾斜した部分に開口1aが形成されていると共にその上面に透明なアクリル板の時計ガラス(図示せず)が装着されるようになっている。また、右側ほぼ半分は平坦になっており、この平坦な部分に貫通孔1b・・・が上下に貫通して形成されている。一方、キースイッチ2はスイッチの押釦部分をなすものであり、時計ケース1の平坦上を覆うように配置され、平坦の貫通孔1b・・・と対応する箇所に膨出部2a・・・が若干上方へ膨出形成されていると共に、この膨出部2a・・・の内部には押圧部2b・・・が貫通孔1b・・・内に突出した状態で形成されている。即ち、膨出部2a・・・は上方から押されたときに弾性変形するものであり、第2図に示すように左側から右側に向って段階的に高くなっており、その配列は第1図に示すように左下側から右上側に向って斜めに配列されており、これに伴って時計ケース1の平坦の貫通孔1b・・・も同様に配列形成されている。また、押圧部2b・・・は膨出部2a・・・が押されて弾性変形したときに、その下端が時計ケース1の内部へ出没自在に突出するものであり、第2図に示すように各下端はおなじ高さをなし、時計ケース1の貫通孔1b内の下端に位置している。」(第2頁右上欄第2行?左下欄第12行)

・記載事項1B
「しかるに、上記のようなケースによれば、1次成形品である時計ケース1に2次成形品であるキースイッチ2を融合させて一体に成形したので、確実かつ強固に固着でき、防水が極めて確実なものとなることは勿論のこと、時計ケース1の中に形成されたゲート9内にキースイッチ2の樹脂bが充填されているので、これによってもキースイッチ2の固定がより一層強固なものとなり、しかもゲート9は時計ケース1の側壁に僅かに露呈しているだけなので、外部から見え難く、外観的にもデザイン的にも好ましいものとなる。」(第3頁左下欄第5行?第15行)

ここで、図面の第1、2図によれば、時計ケース1およびキースイッチ2を含むアセンブリーに関するものが記載されているということができる。
そして、上記記載事項1Aによれば、「膨出部2a・・・は弾性変形するポリウレタン等の軟質合成樹脂からできており、その弾性によってキースイッチ2の戻り力が確保され」るものが記載されているということができる。
また、上記記載事項1A?1B及び図面の第1、2図によれば、「膨出部2a・・・は貫通孔1b・・・を取り囲む時計ケース1の外側表面の部分の上に密閉状態で固定され、密閉状態で貫通孔1b・・・を閉止している」ことが記載されているということができる。
つぎに、図面の第2、3、4図によれば、「時計ケース1の外側表面の右側ほぼ半分の平坦な部分のうち、貫通孔1b・・・を取り囲む部分はそうでない部分よりやや低く描かれていることから、この部分はくぼんでおり、このくぼんでいる部分の上にキースイッチ2の弾性変形する膨出部2a・・・が成形されているものが図示されているということができる。
ところで、「時計ケースの当該部分はくぼんでおり、このくぼんでいる部分の上にキースイッチの弾性変形する膨出部が成形されること」は、例えば、本願の原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である「実願昭60-179327号(実開昭62-86589号)のマイクロフィルム」(特に第1図の「ケース12」と「ボタン相当部15」を参照。)や、本願の原査定に「周知の技術(参考文献1-3)」として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である「実願昭54-182092号(実開昭56-97825号)のマイクロフィルム」(特に「ここで取付部8を含むスイッチ基体2の幅は胴の溝部7の幅より大きく設定してあるため胴1とスイッチ基体2の接合面は全周にわたり密封され防水性が保たれる。」なる記載(明細書第2頁第14行?17行)と第1図の「溝部7」を参照。)、「特開昭50-7563号公報」(特に第2図(イ)、第8図(イ)(ロ)の「ケース4」と「弾性カバー5」を参照。)及び「実願昭57-159183号(実開昭59-64585号)のマイクロフィルム」(特に第3、4図の「ケース3」と「ボタンカバーの端縁部2-a」を参照。)にみられるように、一般に時計ケース技術分野における周知技術にすぎない。
この周知技術をも勘案すれば、引用文献1の図面の第2、3、4図には、時計ケース1の外側表面の部分にくぼんでいる部分が見て取れるから、引用文献1には、「貫通孔1b・・・を取り囲む時計ケース1の外側表面の部分はくぼんでおり、このくぼんでいる部分の上に、キースイッチ2の弾性変形する膨出部2a・・・が成形されていること」が記載されているとみるのが相当である。

したがって、以上の記載事項1A?1B及び図面によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「ABS樹脂等の硬質合成樹脂からなる時計ケース1および少なくとも1個のキースイッチ2を含むアセンブリーであって、キースイッチ2は、押圧部2b・・・、および、時計ケース1の外側に突き出している弾性変形する膨出部2a・・・を有し、押圧部2b・・・は時計ケース1の貫通孔1b・・・を通して膨出部2a・・・から延びており、膨出部2a・・・は弾性変形するポリウレタン等の軟質合成樹脂からできており、その弾性によってキースイッチ2の戻り力が確保され、膨出部2a・・・は貫通孔1b・・・を取り囲む時計ケース1の外側表面の部分の上に密閉状態で固定され、密閉状態で貫通孔1b・・・を閉止しており、
ここで、貫通孔1b・・・を取り囲む時計ケース1の外側表面の部分はくぼんでおり、前記外側表面のくぼんでいる部分の上に、キースイッチ2の弾性変形する膨出部2a・・・が成形されているアセンブリー。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)引用文献2について
引用文献2には、以下の記載事項2A?2Fが図面とともに記載されている。

・記載事項2A
「(1)キーに相当する部分に貫通孔を有しているパネル状の合成樹脂成型体の表側の面に絵付けシートが積層されていて、絵付けシートの表側の面にはキーボードの表示部を有し、絵付けシートの裏面の合樹脂成型体の貫通孔部より露出している部分には、合成樹脂製の突起物を合成樹脂成型体とは分離して有していることを特徴とするキーボードパネル。」(第1頁左下欄「特許請求の範囲」)

・記載事項2B
「本発明は、電算機、電卓、ワードプロセッサなどにおいて使用される、構造が簡略なキーボードパネルおよびその製造方法に関するものである」(第2頁左上欄第3行?第6行)

・記載事項2C
「合成樹脂成型体1は、絵付けシート3において表側に表示部の各キーの区域が形成されている部分毎に貫通孔8が形成されている。
そして、絵付けシートが貫通孔8から裏面に露出している部分では、絵付けシート3に突起部7が積層されている。
突起部7は図示の電卓用上側シャーシの下に置かれる回路の接点を導通させるためのものであって」(第3頁左上欄第4行?第12行)

・記載事項2D
「従って、第1図?第3図に示した構造のものをすれば、電卓の上側は単一の部分で構成できるから、各部分を別個に製造し、その後、アセンブルする手間が省略される上、コストダウンが可能になり、部品の管理の手間が軽減される利点が生じる。」(第3頁右上欄第3行?第8行)

・記載事項2E
「絵付けシートを構成するシートしては熱成型が可能であり、繰り返して押す(例えば50万回)のに耐えられるものを選ぶとよく、具体的には、ポリウレタン、・・・(途中省略)・・・構成する。」(第3頁左下欄第1行?第8行)

・記載事項2F
「雄型12については、キーボードパネルの各キーの周縁の裏側への射出成型の樹脂を付着を防止する目的で、雄型の各キー周縁に相当する部分に凸部13を設けておき、それらの部分では雌型と雄型との間には絵付けシートの入るクリアランス14があるのみで、両型がほぼ密着し、射出成型時の溶融樹脂の流入を阻止するようにする。所要の溶融樹脂が流入するよう、各キーの周縁部の内側においては柱状のキャビティー形状を有しており、その他の部分では、キーボードパネルの形状のキャビティー形状を有している。なお、・・・(途中省略)・・・するのがよい。
射出成型に用いる溶融樹脂としては、熱可塑性のプラスチックとして、ABS樹脂、・・・(途中省略)・・・などが使用できる。」(第3頁右下欄第14行?第4頁左上欄第15行)

ここで、上記記載事項2F及び図面の第4、5図によれば、「柱状のキャビティーとキーボードパネルの形状のキャビティー」に「所要の溶融樹脂が流入する」ことで、図面の第2、3図に図示される「突起部7」と「合成樹脂成型体1」がABS樹脂等の熱可塑性プラスチックで射出成型されることが記載されている。「ABS樹脂等の熱可塑性プラスチック」は硬質プラスチックであることは技術常識であるから、ここには「突起部7を合成樹脂成型体1と同じABS樹脂等の硬質プラスチック材料とする」構成が記載されているということができる。そして、主にこの構成により、上記記載事項2Dによれば、「電卓の上側は単一の部分で構成できるから、各部分を別個に製造し、その後、アセンブルする手間が省略される」という効果が奏され得る旨が記載されているとみるのが相当である。

第4 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ABS樹脂等の硬質合成樹脂からなる時計ケース1」は、本願発明の「硬質プラスティック時計ケース(2)」に相当し、同様に、「キースイッチ2」は「プッシュボタン(5)」に、「押圧部2b・・・」は「ステム(10)」に、「弾性変形する膨出部2a・・・」は「可撓性ヘッド(12)」に、「貫通孔1b・・・」は「側面開口部(11)」に、「くぼんでいる部分」は「くぼんでいる部分(15)」に、それぞれ相当する。
してみると、本願発明と引用発明1とは、
「硬質プラスティック時計ケース(2)および少なくとも1個のプッシュボタン(5)を含むアセンブリーであって、プッシュボタン(5)は、ステム(10)、および、ケース(2)の外側に突き出している可撓性ヘッド(12)を有し、ステム(10)はケース(2)の側面開口部(11)を通して可撓性ヘッド(12)から延びており、可撓性ヘッド(12)は弾性材料からできており、その弾性によってプッシュボタン(5)の戻り力が確保され、可撓性ヘッド(12)は開口部(11)を取り囲むケース(2)の外側表面の部分(15)の上に密閉状態で固定され、密閉状態で開口部(11)を閉止しており、
ここで、部分(15)はくぼんでおり、前記外側表面のくぼんでいる部分(15)の上に、プッシュボタン(5)の可撓性ヘッド(12)が成形されている、アセンブリー。」である点で一致し、以下の2点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、「ステム(10)はケース(2)と同じ硬質プラスティック材料からできて」いるのに対して、引用発明1では、「押圧部2b・・・」(「ステム(10)」に相当)は「膨出部2a・・・」(「可撓性ヘッド(12)」に相当)と同じ弾性材料からできており、「時計ケース1」(「時計ケース(2)」に相当)と同じ硬質プラスティック材料からできていない点。

<相違点2>
本願発明では、「ステム(10)の第一末端(14)上に、プッシュボタン(5)の可撓性ヘッド(12)が成形されている」のに対して、引用発明1では、「押圧部2b・・・」(「ステム(10)」に相当)は、「第一末端(14)」を有しておらず、「膨出部2a・・・」(「可撓性ヘッド(12)」に相当)と一体成形されている点。

第5 当審の判断
上記<相違点1><相違点2>について併せて検討する。
引用文献2には、上述したように、各部分を別個に製造する手間を省略するために、電卓の上側は単一の部分で構成すること、すなわち、突起部7を合成樹脂成型体1と同じABS樹脂等の硬質プラスチック材料とすることが記載されている。
また、引用文献2には、突起部7は、第一末端を有し、第一末端上にキーに相当する部分の絵付けシート3を成形することが記載されている(上記記載事項2A、2C、2E及び図面第2?3図参照)。
すなわち、引用文献2には、上記<相違点1>の本願発明の如く、「ステム(10)をケース(2)と同じ硬質プラスティック材料から成形する」ことも、上記<相違点2>の本願発明の如く、「ステム(10)の第一末端(14)上に、プッシュボタンの可撓性ヘッド(12)が成形されている」ことも記載されている。(以下、「引用発明2」という。)
そして、引用発明1と引用発明2はともに、硬質プラスチックケースおよび少なくとも1個のプッシュボタンを含むアセンブリーの技術分野において共通するものであるから、引用発明1における押圧部2bを、膨出部2aと同じ弾性材料から成型することはやめて、引用発明2の如く、時計ケース1と同じ硬質プラスティック材料で成型する構成に変更すること、すなわち、上記<相違点1>の本願発明の如く、「ステム(10)をケース(2)と同じ硬質プラスティック材料から成形する」構成に変更することは、当業者であれば容易に想到し得るというべきである。
その際、押圧部2bと膨出部2aは材料が異なり、一体的に成形することはできないから、押圧部2bと膨出部2aは別体とし、押圧部2bの第一末端上に、膨出部2aを成形すること、すなわち、上記<相違点2>の本願発明の如く「ステム(10)の第一末端(14)上に、プッシュボタン(5)の可撓性ヘッド(12)が成形されている」ことは、上記変更に伴って必然的に付随する技術的事項であるというべきである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明1および引用発明2から当業者が予測できる範囲内のものであって格別のものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明および引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-26 
結審通知日 2010-06-01 
審決日 2010-08-04 
出願番号 特願平9-124437
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 憲二  
特許庁審判長 山田 昭次
特許庁審判官 松浦 久夫
飯野 茂
発明の名称 硬質プラスティック時計ケースおよびプッシュボタンを含むアセンブリーおよびその製造法  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 吉田 維夫  
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