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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1228912
審判番号 不服2008-19893  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-05 
確定日 2010-12-15 
事件の表示 特願2001-565261「カートンのためのハンドル構造」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月13日国際公開、WO01/66434、平成15年 9月 2日国内公表、特表2003-525826〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2001年2月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年3月7日、イギリス)を国際出願日とする出願であって、平成20年5月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年8月5日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。その後、当審において、平成20年8月5日付けの手続補正の却下の決定が平成22年3月26日付けでなされるとともに、同日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成22年6月25日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、平成22年6月25日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「基部と、この基部の対向した上側並びに下側エッジに夫々ヒンジ接続された第1、第2側パネルと、この第1側パネルの上側エッジにヒンジ接続された第1上パネルと、前記第2側パネルの下側エッジにヒンジ接続された第2上パネルと、前記第1上パネルの両側に夫々ヒンジ接続された付属端部パネルとを具備し、
前記第1上パネルは、少なくとも部分的にハンドル手段を規定する複数の開口部を有し、
前記付属端部パネルの夫々は、第1上パネルに折り重ねられて、この第1上パネルに接着して取着されており、
前記付属端部パネルの各々は、付属端部パネルが第1上パネルに折り重ねられる前に形成され、互いに離間した2つの切り取り部を有し、付属端部パネルの各々の2つの切り取り部周辺は、前記第1上パネルの複数の開口部周囲を補強し、
前記第2上パネルは、第1上パネルと付属端部パネルの夫々との組合せに重なって接着して取着され、
この第2上パネルは、第1上パネルの前記ハンドル手段へのアクセスを可能にし、
基端部パネルが前記基部の両側に、また、上端部パネルが前記第2上パネルに夫々ヒンジ接続されており、また、
前記第1、第2側パネルは、これらの両側のエッジに、ヒンジ接続されたクロージャパネルを有し、また、
前記基端部パネルと上端部パネルとは、各側でクロージャパネルに重なって、これらに、互いに接着して取着されており、
前記付属端部パネルは、第1上パネルの上面に夫々接着して取着され、また、前記第2上パネルは、付属端部パネルの上面に接着して取着されている、厚紙でできているカートン。」

3.引用発明
これに対して、当審で通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特表平5-502425号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「発明の分野
本発明は、密閉端面パネルを有するスリーブ形の物品キャリヤに関する。・・・
発明の背景
一般に、スリーブ形の板紙キャリヤが、飲料容器を包装するために使用されている。・・・」(第2頁右下欄3-10行参照)

(2)「図1について、本発明の特徴を実施する運搬容器10は、上部パネル12、この図面で不可視の底部パネル、上部および底部パネルを接続する側面パネル14、および上部、側面および底部パネルを接続する端面パネル16より成る。それぞれの側面パネルか、底部パネルに対し実質的に垂直である下垂置部18、および、下垂置部18から上部パネル12に延びる上傾斜部20から形成されている。」(第3頁左下欄6-11行参照)

(3)「類似形状の従来技術の運搬容器が直面する難点をさらによく理解するため、図1の運搬容器と実質的に同じ形状の運搬容器に形成されるようになされた代表的従来技術のスリーブ100が第2図に示されている。公知技術のスリーブは、それぞれの側面パネル114の下垂直縁に折曲げ可能に接続された下ダストフラップ102、および、側面パネル114の上傾斜縁に折曲げ可能に接続された上ダストフラップ104を含む。スリーブから運搬容器を形成する際、ダストフラップ102および104は、スリーブに飲料容器か装入された後折たたまれ、かつ上部および底部パネル112および116に接続されている上および下端面フラップ106および108か折曲げられかつ、折たたまれたダストフラップに接着される。代表的に、上端面フラップ106が下端面フラップよりも長くかつはじめに折下げられる。その後にそれが、上ダストフラップ104および、下端面フラップ108か折たたまれる前に、下ダストフラップ102の上部に接着される。下端面フラップ108が、端面フラップ106に部分的に重なり、かつ下ダストフラップ102および、上端面フラップ106の部分的に重なり合った部分に接着される。」(第3頁左下欄16行-同右下欄5行参照)及び第2図

(4)「公知技術の運搬容器の難点が、図4にブランクの形で示されている本発明により解決される。ブランクは、その側線に沿い折曲げ線24により側面パネル部14に接続された底部パネル部22を含む。上部パネル部12Aが、その内縁に沿い折曲げ線26により隣接する側面パネル14に接続されている。もう1つの上部パネル部12Bが、その内縁に沿い折曲げ線28により他の側面パネル部14に接続されている。上部パネル部12Aが、上部パネル部12Bに重なりかつ付着されるようになされている。ハンドル開口を、部分12B中の開口を被覆するタブ30および、部分12B中の開口を被覆するタブ32により示された、上部パネル部中に整列された開口により、ブランクに形成された上部パネル中に備えてもよい。また、下にある上部パネル部12Bに運搬容器中のボトルを仕切るヒンジ式の仕切りパネルを備えてもよい。ハンドルもまた仕切りパネルも本発明の機能に影響しないので、このような仕切りパネルの具備は任意であり、かつハンドルの設計は本発明と無関係の選択事項である。」(第3頁右下欄下から2行-第4頁左上欄14行参照)及び第1,4図

(5)「ダストフラップ40が、側面パネル縁36および38に相応する折曲げ線に沿い側面パネル部14のそれぞれの終端縁に接続されている。」(第4頁右上欄24-25行参照)

以上の記載によると、引用例には、

「側線に沿い折曲げ線24により2つの側面パネル部14に接続された底部パネル部22を含み、
上部パネル部12Aが、内縁に沿い折曲げ線26により隣接する側面パネル14に接続され、
もう1つの上部パネル部12Bが、内縁に沿い折曲げ線28により他の側面パネル部14に接続され、
上部パネル部12Aが、上部パネル部12Bに重なりかつ付着されるようになされ、
2つのハンドル開口を、上部パネル部12A中の開口、および、上部パネル部12B中の開口による整列された開口により、上部パネル中に備え、
それぞれの側面パネルが、底部パネルに対し実質的に垂直である端面フラップ18、および、端面フラップ18から上部パネル12に延びる端面フラップ20から形成され、
ダストフラップ40が、側面パネル縁36および38に相応する折曲げ線に沿い各側面パネル部14のそれぞれの終端縁に接続され、
各ダストフラップ40と端面フラップ18,20とは、折たたみかつ接着される板紙でできた運搬容器10。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

なお、請求人は、平成22年6月25日付け意見書において「引用文献に記載の発明では、上部パネル部12Bの側方には、仕切りパネル34が設けられ、また、下部パネル部12Aには、上傾斜部20が設けられていますので、本願発明の付属端部パネルを付加できない構造」となっている旨の主張をしているが、上記「仕切りパネル34」を具備することは、上記記載事項(4)にあるように任意の選択事項である。

4.対比
本願発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「底部パネル部22」、「他の側面パネル部14」、「側面パネル部14」、「上部パネル部12B」、「上部パネル部12A」、「ハンドル開口」、「端面フラップ18」、「端面フラップ20」、「ダストフラップ40」、「板紙」及び「運搬容器10」は、それぞれ本願発明の「基部」、「第1側パネル」、「第2側パネル」、「第1上パネル」、「第2上パネル」、「開口部」、「基端部パネル」、「上端部パネル」、「クロージャパネル」、「厚紙」及び「カートン」に相当することから、両者は、
「基部と、この基部の対向した上側並びに下側エッジに夫々ヒンジ接続された第1、第2側パネルと、この第1側パネルの上側エッジにヒンジ接続された第1上パネルと、前記第2側パネルの下側エッジにヒンジ接続された第2上パネルとを具備し、
前記第1上パネルは、少なくとも部分的にハンドル手段を規定する複数の開口部を有し、
前記第2上パネルは、第1上パネルに重なって接着して取着され、
この第2上パネルは、第1上パネルの前記ハンドル手段へのアクセスを可能にし、
基端部パネルが前記基部の両側に、また、上端部パネルが前記第2上パネルに夫々ヒンジ接続されており、また、
前記第1、第2側パネルは、これらの両側のエッジに、ヒンジ接続されたクロージャパネルを有し、また、
前記基端部パネルと上端部パネルとは、各側でクロージャパネルに重なって、これらに、互いに接着して取着されている厚紙でできたカートン。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点;本願発明では、第1上パネルの両側に夫々ヒンジ接続された付属端部パネルを具備し、前記付属端部パネルの夫々は、第1上パネルに折り重ねられて、この第1上パネルに接着して取着されており、前記付属端部パネルの各々は、付属端部パネルが第1上パネルに折り重ねられる前に形成され、互いに離間した2つの切り取り部を有し、前記付属端部パネルの各々の2つの切り取り部周辺は、前記第1上パネルの複数の開口部周囲を補強し、前記付属端部パネルは、第1上パネルの上面に夫々接着して取着され、また、前記第2上パネルは、付属端部パネルの上面に接着して取着されているのに対し、引用発明では、上部パネル部12Bにそのような付属端部パネルを具備していない点。

5.判断
上記相違点について検討すると、
容器の持手となる開口部を備えたシートに切かきが形成された補強部を折り重ねて接着することにより上記開口部周囲を補強することは、本願出願前周知の技術(例えば、実願昭56-45312号(実開昭57-159626号)のマイクロフィルムの「持手補強部13」、米国特許第2372351号明細書の「側部19」参照)であり、また、上記切りかきの個数を上記開口部の個数に合わせて形成することは、当業者が容易に想到しうる事項であること、
容器の上面に設けた持手となる開口部の近傍を補強することは、該容器に収納する物品の重量等を考慮して当業者が適宜になし得る事項(周知例としては、実願昭63-160995号(実開平2-80526号)のマイクロフィルムの「補強片3」、特表平6-503539号公報の「補強フラップ58,62」参照)と認められることより、
引用発明において、ハンドル開口周囲を補強するために、上記周知の技術を適用し、上部パネル部12Bの両側に2つの切りかきを形成した補強部をそれぞれ接続し、上記相違点の本願補正発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び上記周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は、平成22年6月25日付け意見書において、上記周知例である実願昭56-45312号(実開昭57-159626号)のマイクロフィルムに記載されたものは、「全くの別のバネルを使用して3層構造にしており、本願発明のように1つのパネルにより3層構造としたもの」ではない旨の主張をしているが、上記のように引用発明に適用すれば、1つのパネルにより3層構造となることは明らかであり、さらに、持手となる開口部周囲を1つのパネルを折りたたんで三層構造とすることは、本願出願前周知の技術(例えば、実願昭57-166197号(実開昭60-18917号)のマイクロフィルム、特開平9-315422号公報参照)でもある。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-14 
結審通知日 2010-07-20 
審決日 2010-08-02 
出願番号 特願2001-565261(P2001-565261)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 佐野 健治
千馬 隆之
発明の名称 カートンのためのハンドル構造  
代理人 風間 鉄也  
代理人 村松 貞男  
代理人 白根 俊郎  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 福原 淑弘  

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