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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24D
管理番号 1228935
審判番号 不服2008-27747  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-30 
確定日 2010-12-10 
事件の表示 特願2004-33277号「床暖房装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年8月25日出願公開、特開2005-226869号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成16年2月10日の特許出願であって、平成20年8月27日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年9月30日)、これに対し、同年10月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成20年10月30日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年10月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「床下地板の上に配置される電熱マットと、該電熱マットの周囲に設けられるとともに前記床下地板の上に配置される前記電熱マットと略同じ厚さで木質系材料から形成される周辺パネルと、前記電熱マットおよび前記周辺パネルの上に敷設される床板と、前記電熱マットを電気的に制御する制御装置とを備え、前記電熱マットは該電熱マットの表面または内部に設けられる電気ヒーター線および該電気ヒーター線と重ならない位置に設けられる小根太を有してなる床暖房装置であって、前記周辺パネルは複数に分割された部分パネルから形成され、これら部分パネル同士の間に隙間を設けてなることを特徴とする床暖房装置。」とあったものを、「床下地板の上に配置される電熱マットと、該電熱マットの周囲に設けられるとともに前記床下地板の上に配置される前記電熱マットと略同じ厚さで木質系材料から形成される周辺パネルと、前記電熱マットおよび前記周辺パネルの上に敷設される床板と、前記電熱マットを電気的に制御する制御装置とを備え、前記電熱マットは該電熱マットの表面または内部に設けられる電気ヒーター線および該電気ヒーター線と重ならない位置に設けられる小根太を有してなる床暖房装置であって、前記周辺パネルは複数に分割された部分パネルから形成され、これら部分パネル同士の間、電熱マットと周辺パネルとの間並びに周辺パネルと周囲の壁との間にそれぞれ隙間を設けてなることを特徴とする床暖房装置。」(下線は当審にて付与。以下同様。)と補正することを含むものである。

上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、隙間を設ける箇所について、本件補正前に「これら部分パネル同士の間に隙間を設けてなること」とあったものを「これら部分パネル同士の間、電熱マットと周辺パネルとの間並びに周辺パネルと周囲の壁との間にそれぞれ隙間を設けてなること」と限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-132482号公報(以下「刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a)「【発明の属する技術分野】本発明は、床下地上に発熱面体、床表面材が積層構造となって敷設された暖房床構造に関するものである。」(段落【0001】)
b)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の技術においては、床表面材5として暖房機能を有する木質床板材11aを別途に製造して品揃えする必要があり、しかも、該暖房機能を有する木質床板材11aが内部に発熱面体1を埋設した構造となっていて、該木質床板材11aを各々製造するコストは高く、又、複数枚敷設される同木質床板材11aの各発熱面体1を相互に電気的に接続する配線作業は困難で、施工が複雑で面倒なもっとなっていた。
本発明は、上記従来の技術における問題を悉く解決するために発明されたもので、すなわち、その課題は、部屋の床表面全体に通常の床表面材を敷設することができ、発熱面体を相互に電気的に接続する配線作業も不要で、電気配線を含めた施工が簡単であり、しかも、発熱面体が床下地から浮いた位置に保持されて床下への熱の逃げが防止されると共に、該発熱面体は床下地上に一面となって敷設されて、部屋の床表面が効果的に且つムラなく均等に温められ暖房される暖房床構造を提供することである。」(段落【0004】、【0005】)
c)「【発明の実施の形態】図1、2は、本発明の請求項1?5全てに対応する一実施形態を示し、該実施形態の暖房床構造は、発熱面体1の裏面に根太桟材2を相互に間隔をあけ並設固着して床暖房具3を形成し、該床暖房具3を床下地4上にその根太桟材2を当接支持させて敷設し、同床暖房具3の発熱面体1上に床表面材5を敷設してなるものである。
該実施形態の暖房床構造においては、均熱シート6の裏面にコードヒータ7を配線付設して発熱面体1となし、該発熱面体1のコードヒータ7が配線付設された箇所以外の部分の裏面に根太桟材2を相互に間隔をあけて並設固着し、該根太桟材2の間隔で同発熱面体1の裏面にコードヒータ7を覆うよう断熱材8を充填付設して床暖房具3を形成している。
又、相互に間隔をあけて並設された本根太9上に捨て貼り合板10を架設固定して床下地4となし、該床下地4の捨て貼り合板10上に床暖房具3を敷設すると共に、相互に実接合される複数枚の木質床板材11を床表面材5として発熱面体1上に敷設してもいる。この場合、床暖房具3と略同じ厚さ寸法を有するボーダーパネル12を該床暖房具3の周縁に隣接させて床下地4上に敷設し、同床暖房具3及びボーダーパネル12上に床表面材5を跨がるよう連続させて敷設している。
本根太9は木質角材でなり、コンクリートでなる床基礎面13上に等間隔にして並設固定されており、該本根太9上に架設固定される捨て貼り合板10は厚さ寸法12mm、或いは、それ以上の木質合板でなる。該捨て貼り合板10上に敷設される床暖房具3及びボーダーパネル12は、いずれも厚さ寸法が 4?5mm程度に形成されている。ボーダーパネル12は木質合板でなり、部屋の中程部分を囲むように該部屋の周辺部分に敷設されている。この場合、適宜大きさに分割形成された矩形状のボーダーパネル12が順次敷設され、捨て貼り合板10上に接着固定されれば良いものである。
床暖房具3の発熱面体1は、厚さ寸法が約 150μのアルミ箔でなる均熱シート6の裏面にコードヒータ7を配線付設して形成されている。又、均熱シート6の裏面にはピッチPが303mm の間隔で複数本の木質角材でなる根太桟材12が予め接着固定されており、該根太桟材12間にポリエステル100g/m^(2)以上の不織布でなる断熱材8が充填固着されている。この場合、根太桟材12の端部の欠除された部分を通してコードヒータ7が一連に配線されており、断熱材8によって同コードヒータ7は保護されて均熱シート6の裏面に確実に付設されている。又、上記本根太9も根太桟材12と同じくピッチPが303mm の間隔で並設固定されていて、該本根太9上に対応して根太桟材12が配置され強固に支持されている。」(段落【0016】?【0020】)
d)「なお、コードヒータ7には部屋の周縁端部分に設けられるコントローラー16から電気が供給されるもので、これにより、コードヒータ7が発熱されて該発熱は均熱シート6により発熱面体1全体に熱伝達され、該発熱面体1が一面均等に加熱される。又、発熱面体1の電気供給・停止動作や温度調整や過昇温防止等の制御も、同コントローラー16にて行われるものである。」(段落【0022】)
e)「【発明の効果】上述の如く、本発明の請求項1記載の暖房床構造においては、通常の床表面材を部屋の床表面全体に敷設することができ、しかも、発熱面体が床下地から浮いた位置に保持されて床下への熱の逃げが防止されると共に、該発熱面体は床下地上で一面となって部屋の床表面が効果的に且つ均等に温められ暖房され、又、同発熱面体は相互に電気的に接続するというような配線作業も不要で施工全般が簡単となる。」(段落【0027】)

上記a?eの記載事項および図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「床下地4の捨て貼り合板10上に敷設される床暖房具3と、
部屋の中程部分を囲むように部屋の周辺部分に敷設されるとともに、床暖房具3と同じ4?5mm程度の厚さ寸法に形成され、木質合板でなるボーダーパネル12と、
床暖房具3およびボーダーパネル12上に跨がるように連続して敷設される床表面材5と、
発熱面体1の電気供給・停止動作や温度調整や過昇温防止等の制御を行うコントローラ16とを備え、
床暖房具3は、均熱シート6の裏面に配線付設して発熱面1となされるコードヒータ7と、発熱面体1のコードヒータ7が配線付設された箇所以外の部分の裏面に相互に間隔をあけて並設固着された根太桟材2とを有する暖房床構造であって、
ボーダーパネル12は、矩形状で適宜大きさに分割形成された床暖房構造。」

3.対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「床下地4の捨て貼り合板10」は、その構成および機能からみて、本件補正発明の「床下地板」に相当し、以下同様に、
「床暖房具3」は「電熱マット」に、
「部屋の中程部分を囲むように部屋の周辺部分に敷設される」ことは、部屋の中心部分には床暖房具3が敷設されることであるから、「電熱マットの周囲に設けられる」ことに、
「床暖房具3と同じ4?5mm程度の厚さ寸法に形成され、木質合板でなる」「ボーダーパネル12」は「電熱マットと略同じ厚さで木質系材料から形成される」「周辺パネル」に、
「床表面材5」は「床板」に、
「コントローラ16」は「制御装置」に、
「均熱シート6の裏面に配線付設して発熱面1となされるコードヒータ7」は、コードヒータ7は、均熱シート6の裏面である床暖房具3の内部に設けられているといえるから、「電熱マットの内部に設けられる電気ヒーター線」に、
「根太桟材2」は「小根太」に、
「暖房床構造」は「床暖房装置」に、
「矩形状で適宜大きさに分割形成され」ることは「複数に分割された部分パネルから形成され」ることに、
それぞれ相当する。

したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「床下地板の上に配置される電熱マットと、該電熱マットの周囲に設けられるとともに前記床下地板の上に配置される前記電熱マットと略同じ厚さで木質系材料から形成される周辺パネルと、前記電熱マットおよび前記周辺パネルの上に敷設される床板と、前記電熱マットを電気的に制御する制御装置とを備え、前記電熱マットは該電熱マットの内部に設けられる電気ヒーター線および該電気ヒーター線と重ならない位置に設けられる小根太を有してなる床暖房装置であって、前記周辺パネルは複数に分割された部分パネルから形成される床暖房装置。」

[相違点]
本件補正発明では、周辺パネルは、部分パネル同士の間、電熱マットと周辺パネルとの間並びに周辺パネルと周囲の壁との間にそれぞれ隙間を設けてなるのに対して、刊行物に記載された発明では、当該発明特定事項を具備していない点。

4.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
床暖房装置の技術分野において、熱膨張による伸縮で床暖房パネルを変形させないために、個々の床暖房パネルとその周囲に存在する、他の床暖房パネルや周辺パネルと、隙間を設けて配置することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-78034号(実開昭58-183412号)のマイクロフィルムの「隙間(Q)」や、同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-338641号公報の「側面部4、4間の隙間」や、特開2000-266357号公報の「隙間5、空隙部8」を参照。以下「周知の技術事項1」という。)。
また、床暖房装置の技術分野において、周辺パネル等の床暖房パネルからの熱の伝達を受け、熱膨張による影響を受ける部材についても、それら部材の間、あるいは、それら部材と周囲の壁と、隙間を設けることにより熱膨張による影響を減少させることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、実願昭60-148524号(実開昭62-56644号)のマイクロフィルムの「床パネル2」や、特開平11-62203号公報の「仕上げ床材5」を参照。以下「周知の技術事項2」という。)。
そして、上記周知の技術事項2を参酌すれば、刊行物に記載された発明におけるボーダーパネル12(本件補正発明の「周辺パネル」に相当する。)が、床暖房具3(本件補正発明の「電熱マット」に相当する。)からの熱の伝達を受け、熱膨張による影響を多少なりとも受ける部材であり、その影響を減少させる必要があることは明らかである。
したがって、刊行物に記載された発明において、上記周知の技術事項1に倣って、床暖房具3からの熱の伝達を受けるボーダーパネル12が、熱膨張による伸縮で変形することを防止するために、ボーダーパネル12とボーダーパネル12の周囲に存在する、他のボーダーパネル12や、床暖房具3や、周囲の壁と、隙間を設けて配置することは当業者が容易になし得たものといえる。
さらに、本件補正発明の奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明および周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年10月30日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年7月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「床下地板の上に配置される電熱マットと、該電熱マットの周囲に設けられるとともに前記床下地板の上に配置される前記電熱マットと略同じ厚さで木質系材料から形成される周辺パネルと、前記電熱マットおよび前記周辺パネルの上に敷設される床板と、前記電熱マットを電気的に制御する制御装置とを備え、前記電熱マットは該電熱マットの表面または内部に設けられる電気ヒーター線および該電気ヒーター線と重ならない位置に設けられる小根太を有してなる床暖房装置であって、前記周辺パネルは複数に分割された部分パネルから形成され、これら部分パネル同士の間に隙間を設けてなることを特徴とする床暖房装置。」

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物に記載された発明は、前記「第2[理由]2刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2[理由]1」で検討した本件補正発明において、隙間を設ける箇所について、「これら部分パネル同士の間、電熱マットと周辺パネルとの間並びに周辺パネルと周囲の壁との間にそれぞれ隙間を設けてなること」とあったものを「これら部分パネル同士の間に隙間を設けてなること」とその限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]3対比および4当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-18 
結審通知日 2010-09-07 
審決日 2010-10-01 
出願番号 特願2004-33277(P2004-33277)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24D)
P 1 8・ 121- Z (F24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 松下 聡
長崎 洋一
発明の名称 床暖房装置  
代理人 ▲桑▼原 史生  

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